甘い短編5

ゆい「やっほーこなた、ゆい姉さんが遊びに」
キョン「・・・・・・」
ゆい「きた、よー・・・?」
 
昼間なのにまるいお月様が出ていた
それもふたつだ
それはよくみると紫色の月食だった
さらによくみると微妙にレースの入った月食だった
 
ええと・・・つまり
 
ゆい「・・・あれ?」
キョン「すいませんでした!!!!!!!」
 
叫ぶいとまもあらばこそ
逃げ場のあるわけがないこなたの部屋で、必死に隅へと後退した
 
ゆい「あらら・・・こなたのお友達かな?」
キョン「すいませんお邪魔させていただいております!!!」
ゆい「こなたに新しい下着見せようと思ったんだけどなあ。あはは、お姉さんびっくりだあ」
 
こっちがびっくりですよなんてこと言えるはずもなく
そうこうしているうちにこなたが帰ってきた
 
こなた「・・・え!!?」
ゆい「あ、こなた。やっほー」
キョン「・・・・・・ええとだな、こなた」
こなた「くそうっ・・・WAWAWA忘れ物って言えばよかった!」
キョン「そこじゃないだろ!」

 
そこからの経緯はあまり書いてもしょうがない気がする
こなたとゆいさんは俺がいるにも関わらず勝手に話題を展開させていた
その、つまり、下着の話を
 
ゆい「それがねーこの下着、すごく着けやすいんだよー」
こなた「ほぅほぅ・・・おぉーすごい柔らかいー」
キョン「・・・」
ゆい「ね?ワイヤーのとこがうんぬんかんぬん・・・」
こなた「ほぅほぅ・・・ぉぅ、これは跡つきにくいねえ」
キョン「・・・・・・」
ゆい「最近の大きいやつはデザイン可愛いのなくてねー、ほんとめっけもんだたよ」
こなた「逆に小さくても子供みたいのしかないけどネ」
ゆい「これからだってこなたはー。ほーれほれ揉んで大きくしてやるぞぃ」
こなた「もーゆい姉さんのエッチー。反撃だヨ!」
ゆい「あ、ちょっとやめてよこなたあ」
こなた「ぐふふ。巨乳の感触はたまりませんなー」
キョン「・・・・・・・・・」
こなた「ね、キョンキョン?」
キョン「そこで俺にふるな!」


ゆいさんは話したことだけ話すと、嵐のように去っていかれた
どうやら仕事があるらしい
ちゃんと謝ったほうがよかったんだろうか・・・?
俺の沈黙をどこまでも曲解したこなたは
 
こなた「クラスメートから、血縁者派生ルートに乗ったか・・・」
キョン「頼むからまともな単語を言ってくれ」
こなた「ゆい姉さんに惚れた?」
キョン「まともな話題を出してくれ・・・」
こなた「でもゆい姉さんはダメだヨ。旦那さんいるから」
キョン「・・・そうなのか?」
こなた「残念?ね、残念?」
キョン「・・・かけらも残念じゃない」
こなた「なんだつまんないなあキョンキョンは」
キョン「残念だったら問題だろうが、いろいろと」
こなた「あはは、まーネー」
 
何を探しているのか、こなたはクローゼットをごそごそし始めた
無防備にケツを向けられるのはどこか落ち着かない
つとめてこなたを見ないように、茶をすすった
 
こなた「おお、あった」
キョン「なんだ」
こなた「ほれ、これ」
 
こなたが見せてくれたのは、ゆいさんの写真だった
ゆいさんの、水着姿の写真だった
ゆいさんの、スクール水着の写真だった
 

こなた「確か一昨年の夏だったかなあ」
キョン「・・・・・・」
こなた「罰ゲームでゆい姉さんがスク水着たんだヨ」
キョン「・・・・・・・・・」
こなた「むちぷりばいーんって感じでよくない?ね?よくない?」
キョン「・・・それで、俺にどうしろってんだ」
こなた「テイクアウトするも良し、この場でコラするのも良し」
キョン「するわけないだろ」
こなた「いい職人さん紹介するけど?」
キョン「するな。頼むから」
こなた「まー元がいいからネ。コラする必要ないけど」
キョン「そういうことをいってるんじゃない」
 
いい加減頭痛が痛くなってきたので、いとまを告げることにした
 
こなた「あ、キョンキョンその前に」
キョン「ん」
こなた「今日の黒井先生の授業、ノート写させてー」
 
キョン「、」
 
こなた「?」
キョン「ああ、いいぞ」
 
たぶんわからなかったと思う
わかったとしても、それがどういう種類の動揺なのか、こなたにはわからなかっただろう
ノートを見ても、ただ綺麗に授業内容を取っている。ただそれだけのことだ
でも、何故か俺と先生の約束がばれるような気がして、
俺はノートを返してもらうと一目散に逃げ出した
 
そして俺は今、一目散に泉家に向かっている
はりきって世界史Aの復習をしようとしていた俺の目の前に飛び込んできたのは
ゆいさんのスク水だった
 
はかりやがったのだ、こなたの野郎が
 
ノートを写す名目で、ゆいさんの写真を挟みこんでいたのだ
ったく、なんでこんな意味不明なことをするかなあいつは
これが万が一ゆいさんの耳に届いたら・・・
別にどんな種類の期待も、ゆいさんにはしていないが、
それでも、嫌なものは嫌だ
俺はこういう写真は、ポニーテールの女性と決めているのだ
・・・決めているったら決めているのだ
 
ぐんぐんと泉家ルートをマイチャリでのぼっていく
通いなれた道だった
ショートカットだって何通りも知っていた
急いでいたから、比較的安全なルートを通っていたつもりだった
しかしやはり、つもりはつもりでしかなかった
 
 
気づいたときには、ヘッドライトが目と鼻の先だった

そしてもう一回気づいたときには、俺は地面とキスをしていた
肘のあたりがちょっと痛い
何より痛いのは、マイチャリの前輪がひしゃげていたことだ
アスファルトじゃなかったのは本当にラッキーだよな・・・
ぼんやり思っていると、車から男が出てきた
 
立木文彦「お、おい大丈夫か!?」
キョン「ええ、なんとか」
立木文彦「いま警察呼んでるから!」
キョン「はあ、どうも」
立木文彦「ちょっと横になっていたほうがいい。すぐ警察来るみたいだから!」
キョン「ありがとうございます・・・」
 
年の割りには渋い声だな
あと、ものすごくいい人だっていうのはわかった
 
警察。
そういえばゆいさんも警官だって言ってたな
まさか交通課ってこともないだろうが
・・・・・・まさか、な
 
「大丈夫ですか!?」
 
 
その警官は女性で、眼鏡をかけていて、ショートヘアの、感じのいいお姉さんだった
つまり結論から言うと、ゆいさんだった
 
ゆい「・・・キョンくん?」
キョン「どうも」
 
なるだけ平気な顔をして応えたが、安心してくれただろうか
こなたの部屋で見たときよりもずっと険しく、
ずっと大人びた顔だった
 
ゆい「大丈夫!?救急車、すぐ来るよ!」
キョン「平気です。ちょっと肘が痛いくらいなんで」
ゆい「起き上がらなくていいから!横になってて!」
 
ものすごい剣幕のはずなのに
ゆいさんの顔はちっとも怖くなかった
むしろ少しだけ、頼りなさそうですらあった
 

声の渋いお兄さんに話を聞いた後、ゆいさんはすぐさまこっちに駆け寄ってきた
 
ゆい「こんなところで飛び出しちゃだめじゃない!」
キョン「すみません・・・」
ゆい「相手も速度出してなかったからよかったけど・・・下手したら怪我じゃすまなかったよ!?」
キョン「はい、わかってます・・・すみません」
ゆい「そもそもね、自転車に乗るときはヘルメットをかぶって安全運転を」
 
うんたらかんたら
さすが交通課というべきか
今どき小学生でも鼻で笑うような交通ルールをえんえん講釈してくれた
もちろん、事故った俺には鼻で笑う権利なんかない
何よりゆいさんがこんなにも懸命に話してくれているのに、鼻で笑えるはずがない
と、ゆいさんの視線が俺から、俺の周りに移った
周りにあるのは、半死半生のマイチャリ、ぶちまけられた通学カバンの中身
 
あ、やべ
 
目ざとくゆいさんはそれを見つけ、手に取った
まったく間に合わなかった
じっくりと、ゆいさんは自分のスク水姿の写真を見る
 
俺に致命傷を与えるには、それで十分だった
 

ゆい「キョンくーん・・・?」
 
大人の顔が一変して、こなたの部屋のそれに変わった
 
キョン「ええとですね・・・これはその」
ゆい「これ、こなたが持ってるはずなんだけど」
キョン「はい、ですからそのこなたがまさに」
ゆい「キョンくんに渡したと?」
キョン「理解が早くて助かります・・・」
ゆい「ふーーーーーーーん・・・」
 
目と口を半月状にして、ゆいさんは写真と俺を見比べた
何がそんなに面白いかね
 
ゆい「で、これ返しにこなたんちに?」
キョン「ええ、おっしゃる通りです」
ゆい「欲しかったのに?」
キョン「いえ、あのですね別に俺が要求したわけじゃ、」
ゆい「じゃあ欲しくなかったの?」
 
先生といいゆいさんといい
どうも年上のひとは返答に困る言い方しかしないらしい
 

ゆい「まあ、どっちでもいいけどさー」
 
ゆいさんは、すっかり泉家のゆいさんにかわってしまった
まあ、そっちでもいいさ
ゆいさんならどっちでも
 
ん?おれはいまなんていった?
 
ゆい「わたしいちおう人妻だからさ」
キョン「はあ」
ゆい「こういうこと慣れてないんだけど」
キョン「はあ?」
 
ぎゅ、といきなりゆいさんの胸部が近づいてきた
つまりゆいさんの、その、バスト的なものだ
 
キョン「ちょっと、ゆいs」
ゆい「そんな顔されると、ほっとけないんだよね」
 
どんな顔をしているのか自分ではわからなかったが、
少なくともゆいさんに自らをうずめている俺の顔は
 
間違いなくだらしなかったね
 

後日談になる
 
こなたは本当に神妙な顔つきで、何度も何度も何度も俺に謝ってきた
いいさ別にと俺が返すと、しばらく何も言わなかったが、すぐにいつもの糸目に戻った
こういうところが、こいつは憎めないんだよな
 
黒井先生は事故当日のその夜から、我が家に足しげく通ってくれた
初めて先生が来たときの、あの死にそうで泣きそうな顔を、俺は生涯忘れないと思う
もちろん、いてくれるあいだはずっと世界史Aだったけどな>>591
 
ゆいさんは一度だけ、家に見舞いに来てくれた
来てくれたのはいいが、あまりに露出度の高い服装で、家族全員を戦慄させた
彼女が言うにはサービスサービスゥらしい
平成世代にもわかるようなネタをやってほしいものだ
 
最後に俺について言えば
今朝、ようやく三角巾が取れて(実は全治3週間だった)晴れてわが母校へ登校する
だが愛しのマイチャリは今は亡く、代わりのチャリもない
我が家の車も使えない
 
だが、まったく問題なかった
 
あと数分もすれば、迎えが来る
俺には専用のチャーター機が、さる人物によって手配されているからだ
そう、黒と白と赤の、トリコロールの乗用車が
 
運転席に年上の女の人を乗せて
 
終わり
 
 

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最終更新:2008年10月25日 00:15
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