小泉の人◆KoizumiXMI氏の作品です。
case.1 泉こなた
「えーと、まあゲームしながらってのはどうかと思うんだけどさ。
……あ、負けた。
あ、いや別にゲームしながら聞き流してくれて構わないんだけどね。
キョンキョンってさーさりげなくモテるじゃん?あ、動揺したねスキあり!
でさー…え?冗談じゃなくて、って素で鈍感ってオチですか。
王道だネ。
……んー?変だって?うん、まぁ……そーだね。そうだよ。
自分でも変だと思ってるけどさー。
茶化して話すことしかできないから困ってるんだよねー。
…キョンキョン、手が止まってるよ?
たぶん、今キョンキョンが考えてることで合ってるよ。
あんまこういう表現は好きじゃないけど、まるでマンガみたいな過程だったよ。
でも出来ればまだ口に出したくないんだよね。
だってさ、こんな関係がもしかしたら終わっちゃうんだよ?
かがみんやつかさ、みゆきさんにゆたかちゃん。
ひよりんに岩崎さん。
ハルにゃんや古泉くん、長もんに朝比奈さん、鶴屋さんに…ええと、多すぎて数えきれないや。
そういう、友達関係が終わっちゃうかもだよ?
すごい怖いよね。
だからさ、聞き流してくれてかまわないんだ。
……。
でもさ、こういうことを口に出してる時点でそういうことを期待してるって言っちゃってるよね。
エロゲだったらこういうとき選択肢があるのに。
ほんと現実って厳しいよね。
そう思わない?キョンキョン」
case.2 佐々木
「やあ。顧みればそんな時間はたっていないのだけれど一応言っておくよ。
久しぶり。
これはあくまで僕の体感時間だから君にとってはまたか、といったものかもしれないけどね。
君も長々と僕の無駄な話も聞きたくはないだろうから手短に話を切り上げようかと思う。
そんなことを言いながらもやっぱり無駄な部分が多いのは僕の性ってやつかな?
大変申し訳ないが前言撤回させてもらいたい。
どうやら君と会うと少し饒舌になってしまうみたいなんだ。
これはつまり君にも責任があるということだね。
…ふふ、いや冗談だよ。
僕にだって冗談を解するだけのユーモアはあるさ。
しかし些か強引ではあるけど間違ってはいないだろう?
なにせ君は僕が生きてきたなかで最も僕の心に触れた人物だからね。
たぶん君は今こう考えていないかい?両親はどうした、とね。
いいかい、キョン。僕はこう考える。
人と人の繋がりというのは、共有した時間は問題では無いのさ。
問題は二人の距離さ。
人と人の間なんて簡単に離れもすれば近づきもするだろう?
ああ、しかしこれは僕の考えであり世間一般の常識とかそういうものでないことを念頭に置いておいてほしい。
……これは本当に悪い癖だね。キョン、君といるとどうも駄目だ。
けど、君を僕から抜いたら僕は成り立たないのさ。
本当に率直に言おう。
キョン、君は凉宮さんと僕。選ぶならどっちだい?
少し意地悪な質問だったね。しかも肝心な部分はあいまいなままにして。
言いなおそう。
文芸部の彼らや、僕の周りの彼ら。
そういったものを抜きにして、
この選択が世界に影響を与えないとして、
僕か、凉宮さん。
もしくは他の誰か。
選ぶとしたら誰だい?
……いくら君が鈍感で、そして回りくどく答えをそらそうとしても僕は納得しないよ。
たとえ僕が傷つこうとも、そのために今日ここへ来たんだ。
似合わない真似をするなと言いたいのかい?
確かに僕には似合わないさ。
けどね、それでこの長年の苦しみが消えるならいいさ。
自分勝手な理由で君を傷つけているのは謝る。
しかし、もう耐えられそうにないんだ。
あれだけ近かった君が、こうして距離ができて。
…こんな風に涙を流してまで君に近づきたいと思う僕が。
僕が僕に耐えられそうに無い。
……ごめんよ、キョン。いきなりこんなマネをして。
けど忘れないでくれ。この答えは今じゃなくてもいいから聞かせてほしい」
case.3 黒井ななこ
「コラ、テスト前なのにこないな所で寝とるなんてええ度胸やな?
勿論次のテストは期待してええんな?
今さら逃げようたって無駄やで。
ええか、キョン。教師ってのは他人に説教することだけが楽しみな職業なんやで?
嘘やけど。
ハ?ウチがそないな鬼畜に見えとったんか。
ええで。いやいやいや別に怒っとうわけやあらへんで。
ウチに嫌味言えるほどには次のテストに自信があるっちゅうことやろ?
しかもまっすぐに家に帰らず部室や教室に放課後残っとるのになぁ。
………。
あー、いや教師とか関係なしに年をとるっちゅうんは嫌やなあ。
自己嫌悪や。自己嫌悪。
若いってのはそれだけで財産やで。
青春っちゅうんはそやな、終わらんと価値がわからんわ。
歳とるとそれを無駄にしとんのが無性に腹立たしくてたまらんのや。
自分も同じように無駄にしといて人に指図できるんかっちゅう話やでホンマ。
キョン、こないな年上のお姉さんを慰めとくれ…え?嫌だ?
泣くで。
ごっつ泣くで。
世間体とか関係なしにめっちゃ泣くで。
あんな、女は女を捨てるまでずっと乙女なんやぞ?
そないなこと言われたらプライドが傷つくねん。
責任とりや?
…ん、せやな。
うーむ…ええーと……アカンアカン、それはアカン……。
おっしゃ、決めたで!
期末テスト平均7割や!
ひどい?本当に償わせるならもっとギリギリの事にするわ!ボケ!
ほな、きちんと勉強するんやで~」
case.4 橘京子
「あ、お待ちしてました。
もうっ!そんな警戒しなくても今日はそんな怪しいことは企んでませんから!
え、あ、いやそうは言っても普段は怪しいことをたくらんでるというわけでもないですよ?
藤原さんと九曜さん?
そんな無粋な真似はしませんよー。もとい、させませんよー。
なんで私にだけそんなj不信感バリバリなんですか?
ああ、そういえばあんなこともありましたけど水に流しましょうよ。ね?
そんな額にしわ寄せてちゃかっこよくても女の子が逃げちゃいますよ~?
あ、少し照れた。
…褒めたんだからすこしは素直に受け取ってくれてもよくないですか。
私=佐々木さん絡みって決めつけるのもよくないですよ。
大体ですね、今日ここに呼び出したのは個人的な背景があるからですよっ!
メルアド?
勿論、佐々木さんからですよ。
え?そんな!ひどいですよ!そんな頼みごとを佐々木さんと交わしてたなんて!
確かにこっそり佐々木さんの携帯からあなたのを拝借しましたけど!
あ。
………。
時効ってことでお願いしま…ってなんで帰ろうとしてるんですか!
ひどい人ですね!そうやって自分の都合が悪くなるとすぐに逃げるなんて!
…うふ♪
こうやって男の人を縛り付けられるのは女の特権ですよね。
でも急に帰ろうとしたあなたも悪いんですよ?
まだ前置きも満足に話せて無いんですから。
えーと、すっぱり言うなら佐々木さんとあなたをくっつけるのはあきらめました。
正確には都合が悪くなりました。
ですから別のアプローチをさせて…ってなんで考え込んでるんですか?
ああ、心配しなくてもいいですよ?あくまで私個人の話ですから。
なんでそんな肩を落として残念そうにするんですか……ところで説明はいります?
あ、はい。
つまりですねー、最終的に私たち側にあなたが居ればいいのですよ。
九曜さんでも佐々木さんでも私でも藤原さんでも。最後のは冗談ですけど。
まー九曜さんは問題外だとしても佐々木さんは積極的に動かないじゃないですか。
だから私が一肌脱ごうかと思いまして。
でも嫌々ってわけでもないですよ?
正直凉宮さん達と敵対するような関係にありますけどそれは残念だとさえ思ってますし。
私的には全然合格ラインですし、まぁ性格にすこし難アリって感じですけどそこは追々直していくとして~…
そうですね、まずデートしましょうよ!
あ、でも流石に最初からガッついてるような人は無理ですよ!?
こう、節度あるお付き合いというのを踏まえて……あれ?伝票もってどこいくんですかー?
もしもーし」
case.5 桜庭ひかる
「またお前か。なんだ?ふゆきに近づきたいのか?
…つまらん返事だなー。
だいたいふゆきは私の面倒を見るので忙しいんだ。帰れ帰れ。
なんだその反抗的な目は。
私がお前の科目を担当してたら成績を悪くつけるところだぞ。
学校において先生とは偉大なんだぞ。絶対君主制なんだぞ。
絶対王政じゃないから気をつけろよー。
あれ?同じだっけ?ふゆきー?
オイ、そこ。笑うな。
いいか、えー…キョンだったよな?
ふゆきは私の嫁だからな。
重婚は犯罪だ。
だからふゆきを狙っても無駄だということを知っておけ。
…えっ?ちょ、ふゆき!?
なんでそういう方向に行くんだ!?
キョン!お前はなんで嫌そうな顔をするんだ!私じゃ不満か!
あ、いやそういう意味じゃなくてだな!
私が拒否するのはいいが拒否されるのはなんだか納得がだな…。
ああもう…ふゆきが変なことを言うから私のイメージが崩れたじゃないか。
おまえな、学校じゃタバコが吸えないからただでさえストレスがたまってるってのに、
これ以上ストレスを溜めさせてどうするつもりだよ全く…
ホラ、予鈴が鳴ったぞ。帰れ。
……ふー。
やっと行ったか。おかげでふゆきの弁当を食べる時間も無くなったじゃないか。
え?アイツが?
馬鹿を言うな。私の嫁はお前だけだよ。
ブッ!?旦、げほっ!!旦那!?
お前はいつもそうやって私を誰かとくっつけたがるのが問題だな…まったく。
別に嫌いじゃないが……ってなんでお前がまたここにいるんだ!?
え?ああ…そう言えばここは保健室だったな……
私は次授業でいないからといってふゆきに手を出したらタダじゃおかないからな。
覚悟しておけよ?」
out of case.1 古泉一樹
「あなたはどうもあなたが与える周りの影響というものをご存じないようですね。
僕としては自分の置かれている状況とその重大さを認知して欲しいのですが…。
…ですが、例えてみるならどういったのがいいのかパッとは思いつきません。
そこで行き当たりばったりに考えてみるに鳥の巣、なんて表現はいかがでしょう?
僕が一番最初にイメージしたのは託卵です。
いくつも卵が置いてるのですが、それが実は他の鳥の卵だらけなのです。
カッコウが孵化して、まず最初にする行動を知ってますか?
…他の卵を巣から落としてしまうんです。
そのためにカッコウは本来のヒナよりも早く孵化するんですよ。
しかも、落とすためのくぼみまで付いてるんです。
それでですね、……いや、やはりこういったのは僕には向いてないようですね。
なにかうまいことを言おうと思ったのですがやはりボキャブラリーが乏しいのでしょうか?
……。
これは手厳しい。
確かに芝居がかった言い方や比喩を用いるのは僕の嗜好ですね。
ただ、直接的に言ってしまうとどうあがいても重い話になってしまうでしょう。
そういうのはあまりあなたとはしたくないんですよ。
その一方で僕が抱えてる重圧を分かってほしいとも考えているのも確かなんです。
今は時期がとても悪い。
なんの因果か、こうも立て続けに悪いことは起こるのでしょうかね?
いつかは答えが出る話なのでしょうが、一度に解決するというのはあなたにとって酷な話でしょう。
…ひとつ、はっきりさせておく話があるんですが聞いていただけますか。
ありがとうございます。
心情的には僕はこのSOS団に属しており、個人的にはあなたの味方でありたいと思ってます。
でも、もし。もしもあなたが"世界"を裏切り"世界"を壊してしまうなら対立するのは避けられません。
たとえその選択によって結果的に"世界"が破壊されない可能性があっても、そんな窮地に晒されるのを我々は許容できないのです。
ただし、あなたの選択は自由です。
その結果にあなたが責任を持つ限り」
out of case.2 藤原
「ふん。
お前の周りで何が起こってるかは容易に観測できているが、お前に責任が無いとは言わせんぞ。
貴様は自分の置かれている立場を理解はしていただろう?
ならばどうすれば最も被害が少なく、どのような選択が誰にとっても不幸にならなかったかを知っていた筈だ。
未来は相似ではなく近似であり、重要なポイントさえ押さえておけば僕の仕事は終わりだ。
本来なら貴様と接触する必要も皆無だ。
お前が選ぶのが佐々木であれ、凉宮ハルヒであれ、もしくはその他であれ。そのつど修正を加えるだけだ。
超能力者どもはなんて言ってるか容易に想像できるが、僕らからすれば小学生が経済の行く先を議論しているようなものだ。
…なにも喋らないならこれ以上は何も必要ないとみなして僕は帰るぞ。
ああ、今日の僕は気分がいいからひとつ忠告しておいてやろう。
凉宮はやめておけ。
選ぶなら佐々木だ。
あくまで二択という条件の内でならだがな。
一生を気苦労で終える覚悟か、お前の仲間達に一生頼る覚悟。
もしくはこの世界が壊れるのを期待するなら僕は止めないが。
……?
何を不思議そうな顔をしている。
まさか世界が壊れるというのを、そのままの意味でとらえてるわけではあるまいな?
お前が誤解しないように優しく噛み砕いてやるなら夢が終わった世界、という意味だ。
まぁ、どう転んだとしても僕には関係ない。
貴様の後始末をさせられるという点が不愉快なだけだからな。
しかしどいつもコイツも世話好きな奴らばかりだ。
そうは思わないか?答えは聞いてないがな。
ああ、それはそうと好奇心は猫を殺すって知ってるか?
世話したがりってのはつまり他人への興味が尽きない奴だろう。
他人に興味がなければ世話しようなんて思いもしないだろうしな。
ん?人間は猫じゃない?
それはその通りだな。
でも余計な好奇心さえなければお前も、こんな世界には巻き込まれなかっただろう?
自分のことで手いっぱいだというのに他人の尻ぬぐいをしなければならないなんて知っていれば首をつっこまなかっただろうさ。
…と、いうわけだ。
あとは勝手に終われ。僕の介入する権限は終了だ」
作品の感想はこちらにどうぞ
最終更新:2008年12月14日 18:19