「こなたの場合」
風車が、まわる。
カラカラと言うには少々勢いが強すぎる程に、
クルクルと言うには多少回転が速すぎる程に。
「どっどどどうど、って感じになってるぞ?」
「ん? なにそれ?」
「…宮沢賢治くらい読んどけよ」
竹串のようななにかの先にくっついている、プラスチックの風車。
それは少女の吐息によって意図的に、恣意的に、回転する。
「文字って嫌いなんだよね~」
「見ると眠くなるとか定型句を述べるなよ?」
「面倒じゃない? なんかさ」
「日本人としてどうかと思うがな」
息を吹きかけるのをやめた代わりに、
棒をつかんで左右にふって風車を回す。
休むことなく酷使される風車が不憫にすら思える。
「そんなに言うならキョンが読み語りしてよ、キョンの声でなら静かに聴けそう」
「お前は一々内容に茶々を入れそうだから嫌だ」
「ぶぅー」
再度息を吹きかけられる風車。
「そんなに唇つきだしてるとキスするぞ?」
「…ふぇ!?」
「冗談だ」
くるくる、カラカラ。
風車は回る、俺の頭頂に突き刺さりながら。
最終更新:2009年05月25日 01:03