「ハルヒの場合」
風車が、まわる。
風車が―
「なにこれ?」
折られる。
風を受け、ようやっと初めての仕事に胸を躍らせていただろう風車は
俺の目の前で無残にも握力の加減の知らない馬鹿に砕かれた。
「お前なにしやがる!?」
「ちょ、なに怒ってんのよ」
「人の物をいきなり破壊するからだろうが! 馬鹿力も大概にしろよな!?」
「な、なによ風車の一つくらいで!」
「大事な人間が作ってくれた大事なもんなんだよ! 返せ!」
黒い学生かばんを手に取り立ち上がり、
横暴な上司から贈り物を奪うように取り返す。
「帰るわ」
「あっ、ちょっとキョン!」
バタン、と音を立てて扉を閉めて俺は早い帰路につく。
作ってくれたその日に壊してしまって、妹に合わす顔が無い。