「ゆたかの場合」
風車が、まわってます。
なんか遠くでくるくると。
「…あれって風車か?」
「風でまわってるんだからかざぐるまです」
大きいのと、中くらいのと、小さな鯉が泳ぐ、
その棒の上についてる金色の風車。
少し出遅れた鯉幟が、私の心になんでか焼きつきました。
「もいでくれば?」
「な、なんてこと言ってるんですか先輩!」
「冗談だ」
私より頭二つ分大きい先輩は、
傍から見たら兄弟や、下手するとおじさんと姪なんかに見えるそうです。
少し悔しいと思いますけど、おじさんと言われたときの先輩の顔はさらに悔しそうでした。
「ま、そのうち買うだろ」
「へ?」
「お腹の子のためにな」
「せ、せ、先輩!?」
最終更新:2009年05月25日 01:10