「風車 みゆきの場合」


「みゆきの場合」

 風車が、まわる。
俺の眼前三センチ程度の至近距離で、まわる。

「あの…、ゆかりさん?」
「うふふ、なにかしら」

 広いリビング、洋風な家具、
大きな木製のテーブルに、それにあった同じく木製のシックな椅子。
そこに似合わぬ可愛らしい風車が、義母殿の手に握られて俺に迫る。

「もうお母さん、キョンさんで遊ぶのはやめてくださいって」
「あら、嫉妬かしら?」
「もうっ!」

 エプロン姿で腰に手を当てる彼女、
目の前の義母殿からの遺伝子を受け継いでいるのに
こんなにもしっかりとして頭もよく気立てもよい娘が生まれるとは、人体の神秘。

「キョンさんも、嫌なら嫌って言わなくちゃダメですよ?」
「い、いやまぁゆかりさんと話してるのも楽しいもの――」
「わ か り ま し た?」
「了解であります」
「みゆきったら、ダメよキョン君をいじめるのは」
「いじめてません!」

 24時間の中で確実に二度は起こる義母と嫁のこういったやりとり、
聞き様によっては口喧嘩のように聞こえるが、しかし二人の表情は穏やかで、
俺も家族の一員として、もっとスムーズにコミュニケーションがとれるようになりたいと思うばかり。

「あら? キョンさんどうしました?」
「私に見とれちゃったかな? いまからでも私に乗り換える?」
「お母さん!」
「はは…」

 多少以上に疲れるけれど…。

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最終更新:2009年05月25日 01:12
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