『昨日の仲間は今日も友』

 

『だれかゴーレム行かないー?』
様々な人が行き交う街中でそう叫んでいるのは私のかわいいサブキャラ。昔からやっているネトゲで、最近作ったサブキャラの育成中。
一応女キャラなんだけど、みゆきさんのように男どもが群がってくることは無く、作りたてで友達リストもほとんどいないためレアアイテムを手に入れるためには今日も叫ばないといけない。
ちなみに目当てのゴーレムとは、私が欲しいレアアイテムを落とすレアモンスターのこと。あまり強くないからパーティーさえ組んでいればそれほど苦戦しないんだけどね。

パーティーも無事見つかり、挨拶しながらゴーレムが湧くポイントへと移動する……途中……

《YUKI.Nがログインしました》

「おお!?」
YUKI.Nとはそのキャラ名の通りながもんのキャラ。前に私がながもんにこのネトゲを教えて、私もこのサブキャラを作って一緒に遊んでいたのだ。今日は約束してなかったから野良パーティー組んじゃったけどネ。
「おしいねえながもん。あと二分早かったら一緒に行けたのに」
そんな事をぼやきながらゴーレムを待ち続ける我がパーティー。すると別のパーティーがその横を通り過ぎ、そして目の前で止まった。
そのパーティーには、なんとながもんのキャラが混じっていた。

『やふーながもん。そっちもゴーレム狩りかい?』
『そう』
物凄い速さでながもんらしい単調な返事がくる。このながもんが知らない人を誘ったとは考えにくいし、やっぱり誘われたのかな?
『そかそか、これじゃあ負けるわけにはいきませんなあ』
『大丈夫。あなたが教えてくれた情報は全て覚えている』
と!そこにでっかい岩のモンスターが現れ、私のパーティーメンバーが攻撃を開始する。が、これはゴーレムと同じ見た目の通常モンスター。
このネトゲではモンスターの取り合いは早い者勝ちのシステムだから、遅れたながもんのパーティーは座って観戦し、私のキャラの攻撃でモンスターは倒れた。
『次は負けない』
『ふっふー、勝負とは情け容赦の無い世界なのだよながもん』
とか言いつつ、実はバレないようにながもん達に譲ろうかと思っていた。
ゴーレムはメインキャラで何回も倒しているし、この前深夜に放置されていたときは高レベルに物を言わせてソロで無駄狩りもしたことあるから。そしてながもんは初めて戦うのだから。
でもそれは、わざわざ手伝ってくれてる私のパーティーメンバーに失礼だし、ながもん達にとっても失礼かもしれない事だ……

そして……考えがはっきりしないまま、ゴーレムは現れた。
ここで素早く攻撃し、戦う権利を得たのはながもんだった。私は……反応だけはしたがわざと攻撃はしなかった。失礼とわかっていてもやはり戸惑ってしまった……
ながもんはこの前に教えたことをちゃんと守っていて、順調にゴーレムのHPは減っていってた。私のパーティーの応援の中、ながもんのキャラが放った氷の魔法がゴーレムに止めを刺した。
『おめでとー』
『ドロップ来た?』
私のパーティーメンバーの問いに
『きた』
の二文字だけで答えるながもん。そのキャラの頭に、白いとんがり帽子が乗せられた。

その後、少しだけ騒いだ後2パーティーとも解散し、まだ時間に余裕があった私とながもんは二人だけのパーティーを組んだ。

『よかったねえながもん。帽子が手に入ってサ』
『よかった』
以前は無かったとんがり帽子を被るながもんのキャラと、店売りの盾からレアな盾に変わる予定だった私のキャラ。
『一つ、聞きたい事がある』
『ん?なになに?』
『あのモンスターが出現した時、あなたはわざと攻撃しなかったように見えた』
「ギクッ!」
思わずリアルでギクッ!なんて言ってしまった自分がちょっと恥ずかしい。
『な、なんでそう思ったのカナ?』
『あの時、モンスターが出現した座標は私のキャラクターの後ろであなたの真正面だった』
『どう考えてもあなたが有利。なのに私が先に攻撃できた』
……もう、さすがながもん。としか言えないね。こりゃ……
『くっはー、お見通しだったかね。その通りだヨ。ごめんね、ながもん』
『なぜ謝るの?』
早い者勝ちなのに失礼じゃん?
……と打とうとしていた手は――

『おかげて助かった。ありがとう』

――ながもんのこの一文で止まった……
慌てて今まで入力していた文字を消し、
『じゃあさ、お礼ということで今度ゴーレム狩り手伝ってよ!盾欲しいからサ』
この文字に入力し直した。
どういたしまして。
……と入力出来ない私はやっぱりひねくれているんだと思う。

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最終更新:2009年05月25日 02:14
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