七誌◆7SHIicilOU氏の作品です
『赤青黄色』
花ってさ、赤青黄色の三色が揃ってるのって無いよね
…そりゃあれだろ、色素の問題だろ?
薔薇だって赤と黄色はあるけど青はないじゃん? チューリップもそうだしさ
白か黒が青の場所取っちゃってるんだよね
まぁ確かにそうっちゃそうだよな
だから私ってば子供のころ実は黒とか白とか嫌いだったかも
なんで?
「私の場所を取られてる様で、かな」
「お前はまた微妙にセンチメンタルだな」
「うるさいよ…」
それにさ、信号
花の次は信号? だがあれは三色揃ってるだろ?
青緑っていうかさ、むしろほとんど緑じゃんか…
だから信号も嫌いだったのか? もしくは緑?
両方…かな? ん、嫌いって言ってもそこまで積極的な感情じゃなかった気がするけどね
「積極的じゃない?」
「漠然と、かな。”あぁ、好きじゃないな”って」
「意外と繊細なんだな」
「だからうるさいよ…」
でもさ、空とか海とかさ。地球は青かったとかさ、壮大なイメージではあるだろ
壮大ね、子供心にはそんな大きなものよりも身近な物の方が重要なんだよ、きっと
ま、それに関しちゃ同意するけどよ
切ない、とは違うかな、哀しい、でもないかな
でも、俺にとっては青はむしろ大事な色だからな
なにそれ? 口説いてるの?
なんだ? 口説かれたいのか?
「ばーか」
「はいはい」
「で?」
「ん? いや、俺としてはな。青ってのは他の誰のものでもないお前だけの色だから」
「ロマンチストだね」
「ロマンよりリアルだ。お前って言う人間はここにある現実だしさ」
「言うね」「言うさ」
しかしあれだなお前は
なにかな
ちょっとこっち向いてみ
ん~、ま、いいけど
…
…いや、恥ずいッスよ?
俺はお前のその瞳も髪も、すげー好きだけど?
「…じゃああれかな」
「どした」
「青、っていうかさ。私の場所は花や信号じゃなくてさ―」
「あぁ、俺の隣に常に用意されてるよ」
風が軽く頬を撫ぜて、常緑樹の葉がサァと音を立てる。
ひんやりとした風は心地よく、動く葉にあわせて地面の木陰が揺れる。
隙間に点在する日の光がキラキラと反射して、
柔らかな太陽を感じさせる温もりが染みている。
「ばーか」
最終更新:2009年05月28日 17:41