七誌◆7SHIicilOU氏の作品
『LARK』
小さく、空に影が一つ。
羽を広げ、遠い彼方の空をはばたく雲雀。
高度を自在に変えて風に乗って、風を切って飛ぶ彼らの目線は如何なるものか。
「なにをしてるの?」
「岩崎か、…空を、見てた」
「いい天気、だから?」
「ん~、それもあるけどさ。ほら、あそこに雲雀、飛んでるの見えるか?」
「…いた」
「なんかさ、よくあることだけど。ふと、どんな世界が見えてるのかなって思って」
同じところを旋回し、まるで俺に自身の存在をアピールするかのように、
ぐるぐると、飛び続ける一羽の雲雀。
重力と言う物に縛り付けられた二足歩行生物の、空を夢見る想いは、
今も昔も大して変わりはしない。そしてきっと未来も、変わりはしない。
「私も、空を飛べたらいいなって思ったことある」
「ま、飛べたら飛べたで移動が楽って位しか役に立たないんだけどな」
「ふふっ、たしかにそうかも」
ぴたりと羽の動きを止めて、どこかに滑空して視界から姿を消してしまった雲雀。
俺は建物の向こう側にいるであろうその姿を追い、やがて隣の少女に戻す。
少女は、こちらをじっと見つめていた。穴が開くほどに。
俺は正面からその目線を受け止め、しばし互いに互いの瞳を眺め続けていた。
「…いこうか」
「うん」
そんな状態を一分も続けてから、俺は立ち上がり岩崎を促して校舎に戻る。
岩崎は、うなずいて俺に着いてくる。身長はそこまで変わらないのに、
なぜか歩幅は小さく、どこか幼さを残す少女に俺はなにかを思って、すぐに消えていった。
明日も晴れならば、また空を見上げることにしよう。