空には何かが浮かんでいた

泉どなた ◆Hc5WLMHH4E氏の作品です。

「……ョン……キョン!」

俺を夢の世界から現実へと引き戻したのは、ハルヒの甲高い声だった。
顔を上げると、窓際に立ったハルヒが焦った様子で俺に手招きをしていた。
その右隣には柊姉妹が、そして左隣にはこなたと高良がそれぞれ立っている。

「早く来なさい! UFOよUFO!」
「……は?」

ハルヒは空を指差しながら、トンデモナイことを口にした。
UFOと言ったようだが、どうやらカップ焼きそばのことではないらしい。

「お姉ちゃん、本当にUFOなのかなぁ」
「さぁどうかしらね」
「その正体が分からないということは、広義的にはUFOだと言えますよ」
「ほら、みゆきもそう言ってるじゃない!」

一人だけハイテンションなハルヒに押されてか、他の連中は疑心暗鬼になっているようだ。
俺もみんなに習って空を眺めてみると、星のような光の粒が一つ浮かんでいた。
しかしこんな真昼間に星が見えるはずも無く、確かに不可思議ではある。

「キョンキョン、ちょっと適当に踊ってさ、アレ呼んでみてよ」
「ホントに来たらどうする」
「待って……踊る必要ないみたい」

妙に落ち着いたかがみの声に、今一度空に浮かぶ光の球に注目すると、
それは右へ左へと進路を変えつつ、徐々にこちらに近づいてきているようだった。

「ちょっとキョン! 追い返しなさいよ!」
「無理言うなって」
「ほら、かがみん踊って!」
「何でアタシが!」

UFOはその光を増しながら近づいてくるが、輪郭はハッキリとはせず、あくまでも光の球だった。
やがて目も開けていられないほど光が強くなり、放射される熱も高くなってきた。
それでもなお接近してくるUFOと、それに反して徐々に遠くなる意識……俺たちに出来ることなど何も無かった。

「……ョン……キョン!」

またしても、ハルヒの甲高い声に意識を覚醒されられた俺は、
いつの間にかパイプ椅子に座っていて、机に伏せた状態で気が付いた。

「……UFOは!?」
「UFO? 何言ってんのよ?」
「なんだ、夢か」

ハルヒの馬鹿にしたような視線を受けながら窓の外を眺める。
そこには光の球などはどこにも見当たらず、同じように窓に視線を向けたハルヒ達は、
晴天の空を真剣な眼差しで見つめる俺を見ては、一様に首をかしげた。

「あっ!」
「どうしたのよ?」
「……いや、なんでもない」

俺以外の者が窓から視線を外したとき、俺は確かに遠くの空を横切っていく光の球を見た。
結局見たのはそれきりで、空は何事も無かったかのように平穏そのものだった。
アレは夢だったのか? では今横切った光は? 疑問は尽きないが、今となっては何も分からない。
まぁしょうがないだろう、分からないからこそ未確認飛行物体なのだ。

空には何かが浮かんでいた。



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最終更新:2011年01月23日 18:54
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