一学期終了後の居酒屋での飲み会
721氏
7月21日。某県某居酒屋。 そこには昼間から酒を飲む大人たちの集団があった。 「いや~。今学期も無事に終わりましたな~」
終業式を終わり、打ち上げをする某学年の担任たちである。
「がはは。ホントホント。
うるさい生徒や保護者たちからもやっと解放されて!」
「教師の言うことじゃないような……」
「ゆかり! 糸色先生の言うとおりよ! あと飲みすぎ!」
「まあまあ黒澤センセ。そう言わんと。今日は少しぐらいはめをはずしたって大丈夫ですやろ」
「そうだそうだ! にゃもは硬すぎる! ほら、糸色先生も飲んで、飲んで!」 「いえ私は……」
「なんだー!? 私の酒が飲めないってのかー!?」
「ゆかり!」
「じゃ、じゃあ、一杯だけ」
「流石糸色先生は話がわかる! どっかの頭の軽い体く教師違って~」
「ゆ・か・り?」 たちの悪い酔っ払いと化した谷埼。それをたしなめる黒澤。犠牲になる糸色。それを可笑しそうに傍観する黒井。 はたから見ればまあ、ほほえましい光景であった。その時、居酒屋の引き戸が音を立てて開いたのである。
「先生!」 そこには、黒い髪を真ん中で分けた少女が立っていた。
「ひぃ! 木津さん!」
「先生! 昼間からお酒なんか飲んで、女の人をはべらせて! きっちりしてください!」
「き、木津さん。これは大人の付き合いというものです。 大体はべらせているなんてとんでもない。ですよね? 谷埼先生」
「うふ~ん。私は糸色先生のもう虜~」
「え、ちょ、これは違うんです。この先生酔ってまして……」
「問答無用!」
「ギャーーーーー!」 かくして、糸色は鬼のごとき形相の少女に連れ去られていった。 さて、木村と岡部のほうはと言うと。
「だから、やはり生徒と言うのは親しく接してあげなければならんのですよ」
「うう……」
「どうしました。岡部先生」
「この学年の教師でまともなのは木村先生だけですよ」
「……」 「ところで、木村先生はなぜ教師を目指したのですか?」
一瞬の、間。そして。
「女子高生とか! 好きだから!」
「……」
「……」
まともなのはやはり自分だけかと自棄酒をあおる岡部であった。
「糸色と岡部の受難」完。
最終更新:2007年09月13日 13:42