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原点(かがキョン)1

161 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[sage] 投稿日:2007/07/16(月) 18:16:20.34 ID:rrGLfGJB0
原点に立ち戻りたいんだ・・・。


「あれ?点かなくなっちまったな」
100円ショップのミニ懐中電灯のキーホルダーは、
お世辞にも都会とは言えない我が家の周辺では必需品だ。
特に妹の奴が間違えて玄関の電灯を消してしまった時には、
こいつで照らし出さないと鍵穴も見えやしない。
 まあ、携帯のフォトライトを使ってもいいんだが、取り出す
のは面倒この上ないからな。
それにしてもずいぶん手垢で汚れてるし、替えの電池はこの
本体+電池と同価格の105円だ。よってこやつはお役ご免とする。
俺の華麗なるフリースローは、ミニ懐中電灯を音も無く教室の
ゴミ箱へと吸い込ませたと言いたいところだったが、懐中電灯は
むなしく空を切り、床に転がった。
「こら!めんどくさがらないでちゃんと捨てなさいよね!」
「ああ、ワリい柊」
「さて、(朝比奈さんに癒されに)部活へと行きますかね。
柊もうちの部室遊びに来るのか?」
「え?え、ええと、つかさ達とあとで行くから」

162 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[sage] 投稿日:2007/07/16(月) 18:17:31.56 ID:rrGLfGJB0
数日後の事。
いや、まずは先に断っておこう。俺は生まれてこの方、高校に
上がった今でさえ、色ボケ谷口のように彼女が欲しいと思った
ことも何度かはあったが、それは俺の下半身の欲望を満たしたい
という生理的欲求から来る物で、女の子とデートしたいだの
いちゃつきたいだのと思ったことは一度としてなかった。
異性の姿や仕草を見てどきっとしたことすらない。
朝比奈さんの着替えシーンは・・・まあこれは意味が違うだろう。
話を戻そう。休日だったその日、俺は長門の奴が進めてきた
本を購入し、いつもの喫茶店に入った。
「あれ?柊?」
そこには、なにやら難しい顔で金属のパーツめいた物をいじくり
回す柊かがみの姿があった。
「げ!キョン!じゃなくて、じゃなくてええとキョン君?」
お前まで俺をキョンと呼ぶか。
「い、いや、ええと谷口が本名で呼ぶのは気持ち悪いから
辞めてくれっていうから・・・その、ごめん」
そんなしょぼくれなくたっていいんだが。俺を本名で呼んで
くれるチームの手勢がまた一人減っただけのことだ。
それにしてもなんだコイツの態度は。教室じゃ妙にトゲトゲしい
というか、休み時間中は隣の妹がいるクラスに行ってしまって
会話のチャンスなど皆無に等しい。

166 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[sage] 投稿日:2007/07/16(月) 18:24:49.84 ID:rrGLfGJB0
だが、最近になって隣のクラスで泉というちんまいキャラが
長門に妙に懐いてしまい、泉に柊姉妹、そしてたまにだが高良さん
という眼鏡美人が文芸部室に入り浸るようになったのだ。
ハルヒの奴もコイツらがなかなか気に入ったらしく、既に名誉団員
の地位を得ている。つまり唯一の平団員である俺よりも立場は上と
いう事になるのではないか。なんて可哀そうなんだ俺は。
他の席も空いてはいたが、声をかけてしまった手前、俺は柊の前に
座った。
柊はびくっと反応して手でいじっていたものを両手で隠したが、
俺はしっかりとその物体が何であるかを認識できた。
「そこをひねってもランプがむき出しになるだけだぞ?電池を
替えるならそこのケツの所をひねるんだ」
「え?ええと・・・どこ?」
それは俺が愛用しているミニ懐中電灯と同型のシロモノだった。
しかし律儀に電池交換とは。すぐ隣に同価格の新品があるという
のに。成績優秀なこいつとは思えん。
俺は柊の手から懐中電灯を受け取ってケツの部分を力をこめて
ひねった。随分硬いな。100円ショップの品物はハズレを引くと
ロクな事が無い。
「よし、点いた」
「あ、ありがとう」
俺から懐中電灯を受け取ると、やたら大事そうに点けたり消したり
してから、携帯のストラップに紐を通した。

175 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[sage] 投稿日:2007/07/16(月) 18:41:00.53 ID:rrGLfGJB0
「なあそれ・・・大事な物なのか?」
「う、うん・・・」
「そ、そうか。良かったな」
それから他愛の無い会話をし、俺と柊は店を出た。
柊が視線を合わせてくれないのが少々敬遠されているようにも
思えたが、それはそれで妙に可愛く見えるのだから不思議だ。
おかしい。俺は色々な可能性を探りに探ったが、どう考えても
あの懐中電灯は俺が捨てたものだ。
なんであいつがあれを大事そうにしてるんだ。
いや、まさかな。だが、一つの可能性に気づいた時、俺の心臓は
古い表現だが早鐘を打ち始めた。
いや、うぬぼれるなよ俺。考えても見ろ、きっかけも何もない
じゃないか。恋愛って奴はこう、きっかけがあって始まるもの
なんじゃないか。俺はあいつになにかしたような記憶もないぞ。
やべえ。あいつの顔ばっかり浮かぶ。勘違いするんじゃない。
俺はそんな女子に気に入られるようなキャラじゃないはずだ。
おかしい。何かがおかしい。月並みな表現だが、俺の中で何かが
変わっていることだけは確かだった。


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最終更新:2007年07月24日 00:19
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