兔の歌8

773 :兔の歌:2007/07/26(木) 01:32:09.45 ID:aCcjloPC0
771
「だから、壁をぶち壊して進めって言っただろう?」

 キョン君……
 でもそれは、そんな簡単な事じゃないわ。
 いや……簡単な事なのかもしれないけど……今の私には絶望的なまでに無理じゃないかしら?

「明けない夜は無いわ」

 柊さん……
 そうね。どれだけ長い夜が来ようとも明けない夜は無い。
 昔の映画みたいに……でも、今の私はその夜で迷っている。

「貴様は、何故泣いているか分らない赤ん坊だ」

 その通りだと思う。
 造られた人格。詰め込まれた知識。与えられた身体能力。
 どれ一つとっても私のモノではないもの。

「それって逃げてるって言わないかナ?」

 泉さん……
 逃げてる? 何から? 逃げるモノなど何も無いのに?

774 :兔の歌:2007/07/26(木) 01:33:22.56 ID:aCcjloPC0

「自分自身から逃げてるのさ。でも、それは朝倉さんだけじゃぁないヨ。
 私も、キョンキョンもハルハルも気づいてないけど逃げてるのさ」

 自分自身から逃げている? 泉さんもキョン君も涼宮さんも?

『そう。生きとし生けるもの総ては逃げている。
 自由を羨望するがその自由から逃げている。
 つまり……現実を生きる為に総ては逃げているのだ』

 現実を生きる為に逃げている? 理解できない。
 逃げたら何も出来ないじゃない?
 自由から逃げたら何も残らないじゃない?
 おかしい。矛盾してるわ。

「朝倉。今お前は自由か?」

 わからない。自由の使い方すら知らない。自由の概念が分らない。

「アンタ、優等生の割りにはヌケてるのねぇ?」

 涼宮さん……
 私は、優等生なんかじゃないのよ?
 そうプログラムされて造られた存在なのだから。

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最終更新:2007年07月26日 02:32
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