-Delete and change future-

私は今、何故か2週間前の自分の体に戻っている。
もちろん、記憶は2週間後まである。
何故かは分からない。だって、突然タイムスリップしたんだもの。
タイムスリップしたのは分かってる。何故か分からないけど分かってしまうから。
感覚よ、感覚。
何時、タイムスリップしてるのかも分かるわ。
もう冷たくなってしまったキョンを見たら―――唐突に。

 

-Delete and change future-


 -7日目


話は一週間前に遡る。
私は風呂上りの体でベットに寝転がりつつ携帯電話を握り、キョンからのメールの返信を待っている。
丁度明日は日曜日。だから、デートに行くことになったの。
久し振りに家族もそろって出かけるという好都合。
このチャンスを利用して、キョンと2回目のデートに行こうと思うの。
1回目は、こなたやつかさに見られて大変だったんだから。
明日はつかさもいないしね。こなたは知らないけど・・・。

ピピピ。
メールが届いたことを知らせる電子音が鳴った。
多分、キョンからだと思う。
私は返事にドキドキしつつ、メールを開いた。

-from キョン
-件名 Re.明日のこと
-本文 あー明日のことだが、午前9時に駅前でいいか?

やった!OKしてくれたんだ!
返信しなきゃね・・・。

-件名 Re.Re:明日のこと
-本文 もちろんよ!待ってるんだからね!

これでいいわよね。
べ、別にそっけなくしてるわけじゃあないのよ。
もうっ・・・。


 -6日目


ふうっ。
私は着替え終えて、鏡をのぞく。
これでいいかしらね。
今日はデートだから、いつもより気合いを入れちゃった。
キョン、気がつくかしらね。
いや、あの鈍感王・・・は多分、気がつかないわね。

家からバスで約10分で駅前につく。
近所のバス停では8時35分の便しかなかったので、私はそれに乗った。
そして駅前に定刻通りについて、待つこと15分。
やっとキョンが来てくれた。
「よお、かがみ。待ったか?」
「ううん、全然待ってないわよ。私も今来たばっかりだし。」
「そうか。それなら良かった。・・・・・さて、行こうか。」
「うん、行き先はキョンに任せるわよ?」
「ああ。一応ふらふらするのは不思議探索で慣れてるんでな。」
(ふふっ。キョンも大変ね。)
と、思っていたらキョンの手が私の手を握っていた。
「良かったか?」
もちろんよ。
私の顔、赤かったかな。

さて、私達はキョンに連れられてあちこちに行ったのだけど。
現在時刻は午後3時34分。これだけで私達がどこにいるか想像できるかしら?
「さすがにこれ以上はきつい・・・。」
「調子に乗って取りすぎたわね・・・。」
「かがみ、これどうする?」
「食べるしかないでしょ!」
そう、またケーキバイキングに来ていた。
あのときのこなたたちと行った時の教訓が生かされて無いわね・・・。
また私はとりすぎていた。そこっ!太るなんて言わないで!怖いから!
「かがみ、お前食べられないのあったら俺食べるぞ?」
「いいや、平気よ。ほら、キョンも人の心配せずに食べなさいよ!」
「へいへい。食べるとするよ。」
「もう、しっかりしてよね。」
他愛もない会話を続けながら食べていた私達。
悲劇は突然起こった。
「お客様、お時間となりました。」
私達は忘れていた。
この店は時間制だったことを。
「・・・」
「・・・ごめん。」
「いや、俺も取りすぎてたからな。かがみが悪いことじゃあないさ。」
「でもさ。」
「いいからいいから。気にしなくて良いって。」
「・・・そう、ありがとう。」
「どういたしまして。」
結局、代金(食べられなかった3つ分)はキョンが払ってくれた。
ごめんね、キョン。
心の中でもう一度、呟いた。

この季節はそんなに日が早いわけでもなく、遅いわけでもない。
のんびりと過ごしていて、夕日で町や空、全てが紅に染まるころ。
私とキョンは、季節と同じようにのんびりと公園の中を歩く。
私の方には、春の象徴ともいえるような、立派な桜で満ちていた。
キョンのほうには、小川。
そんなに大きなものでもないけれど、桜の花びらが水に浮いて、綺麗な模様を描いていた。
「本当、綺麗だな・・・」
以心伝心したかのように、キョンが囁くような小さな声で呟いた。
「そうね・・・春、って感じね。」
「ああ。本当に長かったよな、俺ら。」
「そうね。こなたには”ツンデレカップルは大変だねぇ”って冷かされるし。」
「はは、まぁ今ここで一緒にいられるから良いじゃないか。」
「それもそうね。私、今幸せよ。」
「俺もだよ。」
お互い顔を見合わせる。
にっこり笑って、どちらとも無く顔を近づけた。
―――ファーストキス。
私にとってのそれは、とても幼稚なものだった。
でも、相手がキョンだったから私はそれだけですごく幸せを感じた。
「ふふ、これがファーストキスね・・・・。」
「俺もだよ。かがみで良かったと思ってるさ。」
私は顔が熱くなるのを感じた。
「ありがとね。」
お互い、顔は夕焼けの紅で、頬は赤く染まっていた。

そして、お別れの時。
名残惜しいけど、また明日も会えるもんね。
「じゃあ、ここでな。」
「うん、今日はありがとうね。」
「ああ、こちらこそ。またメールするよ。」
「ん、分かった。それじゃあね。」

これが最期の別れの言葉になるとは、私は毛頭思っていなかった。


-5日目


結局昨日は、キョンからメールはこなかった。
どうしたのかしら。
まあ、学校で話せるからいいと思うんだけど。
寝ぼけた頭でのんびりと考えながら、私は学校に行く準備を完了した。
さて、今日も頑張りましょう。

・・・・・え?
学校に着いた私は、驚いた。
キョンの席が、ホームルームが開始寸前になっても空席だったから。
(昨日のせいで風邪ひいちゃったのかな・・・。)
私はそう思い、不安になった。
(もしそうだったら、明日お見舞いに行くからね。)

結局、この日はキョンと連絡を取れなかった。
このときの私は、「明日、きっと会えるよね。」と思っていた。

しかし、現実は冷酷で、私が事態を甘く見ていたことを痛感させられた。
それは、次の日の朝のショートホームルームで知ることとなる。


-4日目


昨日と同じように寝ぼけ眼を擦りながら、私は目を覚ました。
今日こそ、キョンに会えるわね。
そう考えながら制服に着替えてたら、時間が大変なことになっていた。
「お姉ちゃん、おはよう~・・・。何だか今日も眠いね~ってもうこんな時間!?」
相変わらず、のんびりとつかさが起きてきた。
「おはようじゃあ無いわよ!もうこんな時間よ?!私がいえた話じゃあないけど・・・。」
「そうだよねっ!急いで着替えてくるからお姉ちゃん、玄関で待ってて~」
「はぁ!?ただでさえ間に合いそうに無いのに、あんた待ってたら余計遅れるわよ!」
「お願いお姉ちゃん・・・」
お願いされたとき、もうつかさは自分の部屋に入って着替えていた。
どうでも良いけど、教科書とか忘れるんじゃあないわよ?
私は時計を再確認した。・・・・これはホームルームに間に合うか瀬戸際ね。
キョンに笑われちゃうかもね。
「おねえ・・・ちゃ・・・お待たせ・・・。」
「急ぐわよ!」
「息が・・・バルサ・・・ミコ酢・・・」
私達は家を飛び出し、最寄のバス停に全力疾走していった。

ちなみに私達の学校は、8時55分~9時00分までがホームルームである。
なんとか無事に遅刻ぎりぎり・・・って!チャイムが鳴ってる!
私は勢いよく教室のドアに手をかけた。
ガラガラッ!
「キョンは事故に遭って、意識不明の重態だそうだ」
「先生、遅れてすいませ・・・」
がたっ。
・・・・・・・・え?
先生、今なんて?
「柊、席につきなさい・・・。」
見ると岡部先生の顔は青くなっていた。
「先生、今、」
「・・・・キョンが一昨日事故に遭って、意識不明の重態なんだ。」
「柊。信じとうないかもしれへんけど、事実や・・・。」
副担任の黒井先生も顔が暗い。
「そん・・・な。嘘ですよね、先生・・・?」
まって、落ち着いて、私。
「残念やけど、ほんまや・・・。」
・・・・待って先生。仮に信じたとして。
・・・・・・・一昨日・・・?私とキョンがデートした日よね?
「先生・・・一昨日って、一昨日の何時ですか?」
「・・・午後7時くらいやって。」
「外出先から帰っている途中に、車に跳ねられたそうだ。」
そんな・・・。私の・・・せいで・・・。
私は、そのまま泣きつづけた。
そして、気がつくと保健室にいた。
後から聞いた話だけど。
クラスメート・・・つまり、谷口君や国木田君、涼宮さんにこなたたちもすごく泣いていたそうだ。

―Side : Yuki Nagato―

・・・・情報統合思念体からの緊急通信。
涼宮ハルヒの情報操作能力の発動を感知。
このままの姿勢で観測を続けるが、何かアクションがあれば即急に報告。
もしかすると、通称”キョン”が交通事故に遭ったことに原因がある可能性がある。
現時点では何も断定できない。しかし、この説が有力。

・・・私というインターフェース内に、バクを検知。
消去・・・不可能。
システム内に入り込んでいるため消去が困難。
・・・情報は不確定だが、なんなのだろう。
未知の考えが、私の中に姿をあらわし始めていた。
これが、人間の感情?
気がつくと私の足は、保健室へと向かっていた。
柊かがみが、後1時間15分14秒で眼を覚ますはず。

―Side : Yuki Nagato Close―

「ううん・・・・」
私は、今自分がどこで何をしているのか分からなかった。
「かがみ・・・・目が覚めた?」
私が目を向けたそこには、こなたがいた。
眼を赤く腫らして。
「こなた・・・?ここ、どこ?」
「保健室。かがみが朝のホームルームで気を失っちゃったから。」
「・・・っ!」
「思い出させてごめんね。でも、かがみは早くキョンキョンのところに行くべきだよ。」
「私もそれを推奨する。」
そこには、こなただけではなくてクラスメートの長門さんもいた。
「・・・長門さん、あなた、私を心配してくれて・・・?」
「そう。だから私は、貴方が出来るだけ即急に病院へ行くことを推奨する。」
「そうだよかがみ!」
「うぅ・・・キョン・・・あたしのせいで事故に・・・」
私は、また泣き出してしまった。
「かがみが悪いんじゃあないよ!!」
珍しく、こなたが大声を出していた。
「悪いのはかがみじゃない!キョンキョンを跳ねた車なんだよ!」
「そう。彼を跳ねたのは、酒気帯び運転をしていたドライバー。貴方は悪くない。」
「ありがとう・・・で、も・・・」
「とにかく今は、こんなこと行ってる場合じゃあない。早くかがみは、キョンキョンのところに!」
「タクシーは手配しておいた。彼の病院まで連れて行ってくれる。」
「ありがとう・・・二人とも・・・。」
「あたしだって、キョンキョンには無事にいて欲しい。だから、かがみ。よろしくね・・・。」
「私からも。彼には無事にいて欲しい。貴方に賭ける。」
そのとき、保健室の前に一台の黒いタクシーが止まった。

「ここから病院までは、12キロ程度有ります。ですので、最高速度を出しますので、お気をつけください。」
年配のドライバーの方が声をかけてくれた。名前は新川さんというらしい。
「ありがとうございます・・・。」
私の声は、沈んだ声がしていた。当たり前なんだけどね・・・。
「では、行きます。」
そう新川さんが行った瞬間、あの夏のチョメチョメDのような走りをしているタクシーだった。
・・・。

「彼の病室は、973号室でございます。」
「あの・・・代金は・・・」
「何、何時も長門様や泉様にはお世話になっております。彼女達からは、出来るだけ早く。と頼まれておりました。
 ・・・ですから、早く973号室へ。貴方の彼が、待っておられます。」
「ありがとう、新川さん。」
そういって私は、病院の中へ走っていった。
キョン、待っててよね。

やっと、9階についた。
後、100メートルくらいでキョンの病室のはず。
後50メートル。
後30メートル。
後15メートル。
後5メートル。
後・・・少しで。
「キョン!!」
私は病院内であることすらも忘れて、大声でキョンを呼んでいた。
しかし、返事は無く。
そこにいたのは、色々な機械に繋がれて、何とか命を繋ぎとめている、キョンだった。
「・・・キョン。」
「キョンくんね、一昨日から寝てるの。」
キョンの妹であろう、とても可愛い女の子が話し掛けてきてくれた。
その子の目は、とても悲しそうで。
何時になれば兄は起きてくれるのか、思っているようだった。
「そう・・・なの・・・」
「お姉ちゃんが、かがみちゃん?」
「え・・・。」
私は、何故この子が私の名前を知っているのか疑問に思った。
「キョンくんがね、救急車の中でかがみ・・・って呼んでたの。
 誰か分からなかったんだけど、お姉ちゃん来たときに分かったよ。
 これほどキョンくんのこと、大事に思ってくれてるから。」
キョン・・・救急車の中でまで・・・私のこと・・・。
「だからね、かがみちゃんっていう人が来てくれるの待ってたの。
 キョンくん、きっと目を覚ましてくれると思って。」
私は、私は。
私のせいで、キョンの妹さんまで苦しめていたのね・・・。
なら、キョンが早く元気になってくれるように。
私も、キョンを応援しよう。
「・・・キョン。よく寝たでしょ?そろそろ眼、覚まして。」
私は、そっとキョンに話し掛けた。
「キョン、私よ。そろそろおきてよ。妹さんも待ってるのよ。」
・・・ねえ、キョン・・・起きてよ・・・。
私は、また涙を流していた。

「今日はありがとね、かがみちゃん!」
妹さんが、屈託の無い笑顔で笑いかけていてくれた。
「かがみちゃんが来てくれたから、キョンくんも明日は目を覚ましてると思うよ!」
「ありがとう。それじゃあね。また、明日も来るから。」
私は、妹さんの笑顔に励まされた。そして、心に決めた。
もう、泣かない。と・・・。

 -3日目


私は眠れないまま、朝を迎えた。
ずっと、布団の中で考えていた。
どうして、キョンが。そればかりしか頭に浮かんでこなかったけど。
・・・。
さて、そろそろ学校の準備しなきゃね・・・。
でも、私はキョンのことばかり考えてた。
きっと、今日行けば目を覚ましてるわよね。
そう思って、私は学校へ向かった。


昼休み。いつもと同じように、こなたやつかさたちとお弁当を食べていた。
今日はいつもと違うところが一つ。
長門さんも一緒だったということ。
でも、私はすごく嬉しかった。
みんなが気を使ってくれて、キョンの話題は避けられた。
でも。ちょっと、寂しかった。

やっと今日の授業、ホームルームが全て終わり放課後となった。
正直、一日がこれほど長く感じる日はなかった。
これから、すぐにキョンのところに行かなくちゃ。
「・・・柊。」
私を呼ぶ声がしたので振り返った。
そこに立っていたのは。
「・・・涼宮、さん。」
「あんた、これからキョンのところ行くんでしょ?」
「そうよ。」
「・・・そう。お大事にって伝えといて。あんたキョンと付き合っているんでしょ?」
「知ってたの?」
「昨日のあんた見れば誰でも分かるわよ。とにかく、そういう事だから。」
「ありがとう、涼宮さん。」
「ハルヒで良いわ。」
「・・・ありがとう。ハルヒ。」
「じゃあ、気をつけるのよ。」
そういって、涼宮・・・いや、ハルヒは走っていった。
私も、キョンのいる病院へ向かった。
でも。
そこには、最悪の事態が待ち構えていた。

―Side : Yuki Nagato―

昨日から、断続的に涼宮ハルヒから小規模な情報爆発も起こっている。
情報統合思念体からは、観測しろとの決定が下された。
そして、小規模ながら情報操作が起こっている。
それにより、涼宮ハルヒの情報操作能力が少しずつ、正確には秒速0.0002642%で能力が失われている。
この能力は、どこに消えているのだろうか。
もしかすると―――。

―Side : Yuki Nagato Close―

キョンのいる総合病院について、9階に上る。
そして、昨日と同じように病室に向かったのだ――が。
キョンのいる病室が慌しい。
私は不安に駆られ、病室に勢いよく入った。
そこには、昨日見た機械以外に、白衣の医師や看護士に囲まれたキョンがいた。
「キョンっ!!」
しかし、返答は無い。
キョン?どうして医者に囲まれてるの?
「かがみちゃん・・・」
キョンの妹さんが涙を流している。
どうして?
どうして?
私の頭の中はそればかりだった。
どうしてキョンが医者に囲まれてるの?
どうして妹さんが泣いているの?
どうして、どうして。
私はいてもたってもいられず、キョンのに駆け寄った。
「キョン・・・」
キョンの顔色は、真っ白。
血液が通っているのかさえも分からないくらいに。
辛うじて、肌の暖かさ、そして無機質な電子音がキョンが生きていることを知らせる。
それでも、これがキョンだとは思いたくなかった。
そして、私は何時の間にか昨日心に決めた、
”もう泣かない”という言葉を、もう破っていた。
「お嬢さん・・・」
医者の中の1人が話し掛けてきた。
「何で・・・しょう?」
私は、涙が止まらない目を擦りながら答えた。
「彼は、もって一時間でしょう・・・。我々も最善を尽くしたのですが・・・。」
「嘘・・・嘘よ・・・。」
私はもう、正常な思考を保てていなかった。
「脳の中で、大量出血が起きているのです・・・。もう、止められないんです・・・。」
「キョン・・・っ・・・。」
私は、泣きながらキョンの手を握りつづけることしか出来なかった。

そして――。
ピ―――・・・
無機質な電子音が室内に響いた。
「午後5時24分・・・。ご臨終です・・・。」
私は、泣くことしか出来なかった。
キョンがいなくなるなんて、考えられなかった。
それほどに、キョンが好きだった。
でも、もうキョンは居ない。
現実は、あまりにも無常だった。


 -2日目


「彼は、本当に優秀な模範的生徒だった・・・・。」
朝のショートホームルーム。
岡部先生がキョンの死をみんなに伝えた。
黒井先生も、岡部先生も。
みんな、泣いていた。
国木田くんも、谷口くんも、ハルヒも、こなたも、長門さんも。
キョンは、みんなに愛されていた。
私は、その日一日中泣きつづけた。
泣いてキョンが帰ってくるはずもないのに、泣き続けた。

 『よお、かがみ。待ったか?』

 『本当、綺麗だな・・・』

 『俺もだよ。かがみで良かったと思ってるさ。』

 『ああ、こちらこそ。またメールするよ。』

キョンの言葉が思い出される。
そこにある思い出。
二度と帰って来ることの無い思い出。
私は・・・私は・・・。


 -1日目


キョンがいないという現実に全く現実味が無い。
いや、認めたくないのよ。
きっとキョンは生きている。
そう思いたくて。

「明日、キョンの葬式があるらしい。みな、きてくれとキョンのお母さん言われとった。」
嫌でも現実を思い出させる。
駄目、私はキョンがいないと駄目。
でもキョンは戻らない。
私の頭の中はずっとループしていた。

―Side : Yuki Nagato―

涼宮ハルヒの情報操作能力の回復を確認。
しかし、移動した力とは違う力が彼女の中にある。
彼女の持っていた力はどこに行ったのだろうか。
情報統合思念体に問い合わせても、「近日中に分かる」という返答しかない。
そう、私は単なるインターフェース。
それでも、知りたいと感じることはある。
彼の死、それは私にとっても悲しい事だった。
しかし、これは規定事項。
未来からでも、情報操作でも変えられない。
私は、何も出来なかった。

―Side : Yuki Nagato Close―


 1日目


私は、重い体を引きずりながらキョンの葬式に向かう。
体が重い理由。それは心の問題でもある気がする。
キョンの葬式、それがキョンが死んだことを決定づけることになるから。
認めたくないことを認めざるを得ないことになるから。
だから。
頭では分かっている。
キョンにはもう会えない・・・と思う。
でも感情が、キョンは生きててどこかに隠れている。
そう訴えるから。

そう考えているうちに、キョンの葬式会場についた。
私は入り口でハルヒに出会った。
「あんた・・・無理してたのね・・・。」
ハルヒは私を気遣ってくれた。
「ありがとう・・・。」
私は単調な答えしか出来ない。
「キョンが死んでるわけないんだから、あんたも元気・・・出しなさい・・・。」
見るとハルヒは泣いていた。
「SOS団団員その1が死ぬわけないのよ・・・。こんな可愛い子まで泣かせて・・・。」
「バカキョン!!!」
ハルヒはそう叫んだ。
「ハルヒ・・・私だって認めたくない・・・でも・・・。」
「デモもストも無いわよ・・・。キョンは絶対生きてるのよ・・・。私を・・・信じなさい・・・。」
私はまた涙がこぼれて来た。
もう、あれほど、枯れてしまうほど泣いたのに。
まだまだ涙が残っていた。
「泣かないでよ・・・。私だって・・・。」
お葬式が始まる、5分前のこと。
私達はずっと泣きながら会場に入った。

勿論、その時の私はカウントダウンが始まっていることに気がつかなかった。
後、3分。
「気をつけて。」
長門さんがそう呟いた。
後、2分。

ついに、キョンに会うときとなってしまった。
認めたくない現実を認めざるを得なくなる。
それが、私には恐怖だった。
キョンが本当にいなくなる気がして。
後2人で私がキョンに会うことになる。
・・・・・・・・・後1人。
駄目・・・涙が止まらない。キョンが見えない。
辛うじて・・・キョンを見た。
顔は綺麗に微笑んでいた。
私はそこまでしか分からなかった。
突然、目の前が真っ暗になり。
気を失った――――――――。


―Side : Yuki Nagato―

涼宮ハルヒの情報操作能力にて現在の時空平面からの柊かがみの消失を確認。
Select serialcode from memory search time plane ..... complete.
完全に彼女はこの世界には存在していない。
彼女は、一番の思い出の日へ戻った。
恐らく、彼との始めてのデートの日近辺。
私のいる未来を消して、現在を変えて欲しい。
何もできなかった私の変わりに。
それが・・・あなたがここにいた理由。私がここにいる理由。
彼女に、賭ける。

―Side : Yuki Nagato Close―

・・・・・・・
・・・・・・
・・・・・
・・・・
・・・
・・


・・・・・・ここはどこかしら。
私は?柊かがみ。
何をしてるの?分からない。
何をしてたの?キョンの・・・顔。
顔が何?見てた・・・。
私は、目を開ける。
そこには、見慣れた天井。
私は部屋で横になっていた。
・・・・?
私は混乱している。
何時の間にか、いつものパジャマに着替えていた。
・・・・・??
このままでは、何も分からない。
夢の中かもしれない。
私は部屋をでて、リビングへ向かった。
とりあえずテレビを見て。
私は唖然とした。
そこに書いてある日付。
それは、キョンとの始めてのデートの日の前日だった――――。

ここで冒頭に戻る。
部屋で私は考えていた。
・・・そんなはずはない。
でも、ほっぺたをつねった痛みは本物だ。
もう一度・・・・痛い。
これは、何?
とりあえず状況を整理してみる。
・私はタイムスリップした?
これしか分からない。
何故か、これだけは感覚として分かる。
何故かしら・・・。
時間を確認した。
小さい時計は、AM5:58と表示されている。

時計・・・。
そう!携帯のメール履歴を確認すればいいのよ!

-from キョンくん
-件名 Re.明後日
-本文 えっと、あさっては駅前で良いのか?

-件名 Re.Re:明後日
-本文 分かったわ。待ってるわよ。

・・・・間違いないわね。
私は前日に戻っている。
・・・・・・・!!
キョンも生きている。
このメールがあるから間違いないわ。
私は嬉しさのあまり、大声で・・・
「やったあ!!!」
と叫んでしまった。
・・・・・・この事を脳の記憶する部分から抽出して、消去したくなるまで時間は掛からなかった。

「お姉ちゃん、どうして朝叫んでたの?」
「いや・・・その、寝ぼけてたみたい。」
とりあえず、つかさだからこの言い訳でどうにかなる。
「そうなんだ~」
ほら、どうにかなった。
「おやおやかがみんや、朝叫ぶとは何かあったのかな?」
・・・・五月蝿いわ、こなため。

とりあえず、私は考えた。
どうして過去に戻っているのかは分からないけど、キョンは生きている。
この頃はまだキョンって呼んでないから、キョンくんと呼ばなくてはいけない。
じゃあないと、怪しまれるしね。
それと、私がタイムスリップしたことは誰にも話さないことにした。
話しても信じてもらえないだろうし、誤って精神科には行きたくない。
いや、長門さんにだけは話そうかしら。
彼女なら口堅いし、アドバイスをくれるかもしれない。
後は・・・考えようかしら。
ああ、学校でキョン・・・くんに会って、泣かないようにしないとね。
感激で泣いちゃうなんて・・・恥ずかしいにもほどがあるわ。
特にこなたには察しられないようにしないと。

「おはようございます、かがみさん。」
「おー、おはようみゆき!」
「いやあ、絶好のアニソン日和だね~」
「意味がわからないし笑えない!」
「お、かがみん・・・それは・・・。」
っ!!不味い・・・キョンくんの口癖だ・・・。
「朝倉さんに襲われたのか?!いや、ポジション的には委員長だから逆かな?うーん・・・。」
「このアホはほっといて、私達だけでも行きましょ。」
「待ってよかがみん!」
・・・、そういえばこういう日常もなくしてたわね・・・・。

「と、言うわけで。白石、日直挨拶せえ。」
「きりーつ、気をつけ、礼!」
「ありがとうございました(あじゅじゅしたー)」
ふう、一日が終わった。
ちなみに、長門さんには放課後屋上に来てくれるよう頼んでおいた。
「さて、かがみん。」
「何よ?」
「美しい友情で」
「ごめん、今日だけは本当に無理。」
「まだ何も」
「ゲーマーズでしょ?」
「うむぅ。アニメイトでも」
「無理ね。また今度なら良いわよ。」
「分かったよかがみん・・・じゃあね~」
「おう、じゃあ。」
さて、私はこなたとの変な会話を終了させ、屋上に向かった。

「・・・待っていた。話とは何?」
「待たせてごめん。話って言うのは・・・。変な人って思うかもしれないけど・・・いい?」
「私は構わない。」
「ありがとう。後、ここでの話は内緒にしておいて欲しいの。」
「分かった。」
「ありがとう。じゃあ話すけど―――。」
私はとりあえず、
・未来から来てしまったかもしれないこと
・このままではキョンくんが死んでしまうこと
・未来の?あなたに気をつけてと言われたこと
この3つを話した。
「――――なのよ。」
「・・・・異時間同位体へ同期許可申請・・・可逆性越境ダウンロード中・・・。」
「?」
「貴方の話は概ね理解した。あなたは未来を変えるチャンスを得た。でもそれは難しいこと。
 局地的な時間平面情報(STC理論)、及び環境情報の改ざんは、この世界に大規模な時空震を発生させる可能性がある。」
「ごめん、さっぱり分からないわ・・・。」
「端的に説明すると、情報生命体、未来へ大きな影響を与える可能性がある。」
「・・・それはどのくらいの可能性?」
「約13^3123光年の範囲内の情報生命体。及び約40000年後までの未来へ、99.37126473%の確立。」
「・・・大丈夫かしら?」
「未来の私は、貴方に賭けている。貴方の選択であり、自由。」
「じゃあ・・・キョンが死ぬ未来を変える、っていうこと?」
「そう考えて構わない。」
「でも、どうやって変えるの?」
「・・・それは禁則事項。貴方に言えば、未来を変えるチャンスは3.72%に減少する。」
「じゃあ、辞めた方が良いわね・・・。」
「いい。しかし、ヒントなら構わない。」
「教えてくれるの?」
「・・・鍵を集めて。その鍵を使って扉を開いて。そこに分岐点はある。
 期限は、最低で2回目のデート前日・・・つまり、一週間。
 そして・・・彼女の手助けで変えるが出来る。」
「・・・?ありがとう。頑張ってみるわ。」
「・・・最後に。・・・・2回目のsleeping beauty.」
「・・・・ありがとう。しっかりと覚えておくわ。」
「そう。」
そういって、長門さんと別れた。
ふと思ったんだけど・・・長門さん・・・・何者なの?
「・・・・貴方の疑問に答えるならば、私は対有機生命体コンタクト用ヒュ―マノイドインターフェース。」
・・・・・・。心まで読まれてるの・・・?


 2日目(残り7日)


さて、今日はキョン・・・くんとの始めてのデートの日のはず。
確か、駅前・・・だけど、時間・・・決めてなかった・・・。
でも、確か13時ちょうどだったはず。
でも一応、電話したほうがいいわね。
えっと、キョンくん、キョ・・・あった。
-Now calling-
トゥルルル・・・・
「もしもし、柊?今日何時か決めてなかった気がする・・・。」
「そう。私もそれでかけたのよ。」
「すまん・・・。」
「いいのよ。聞いてなかった私も悪いんだし。」
「本当にすまねえ。えっと・・・13:00でいいか?」
(記憶どおりでよかったわ・・・。)
「ん。分かったわ。13時ちょうどに駅前ね?」
「そうだな。すまんかった・・・。」
「いいんだって!それじゃあね。」
「ああ、そのときに。」
ツーツーツー・・・・
えっと・・・、不思議な気分ね・・・。
もう聞けないはずの声を聞いてるんだから。
これからも聞けるかもしれないのね。
頑張って未来を変えなきゃ・・・。
さて、13時までどうやって時間潰そうかしら?
とりあえず、駅前をふらふらしましょうか。

っと。そろそろ13時ね。
駅前に・・・あ、いたいた!
「キョンくん!」
「柊!」
「ふう・・・待たせてごめんね?」
「いや、全然待ってないぞ。むしろこっちが謝らなきゃならん。」
「だから、いいのよ!」
「そうか・・・ならいいんだが。」
「じゃあ、行きましょうか。」
「ああ、行き先は任せてくれ。」
「任せるわよ。」
こんな風に、キョンくんと久し振りの再会。
キョンくんと会えた奇跡、私はそれに感謝しようと思う。
もう一度、チャンスを与えてくれたのだから。


 3日目(残り6日)


昨日のデートは無事に終わった。
でも、それは未来が変わっていないことと同じ。
前もそうだったから・・・。
じゃあ今度は、未来を変える方法を考えなくちゃね。
一昨日長門さんに聞いた話では、鍵を集めなくてはならないみたい。
鍵・・・。
アイテムかしら?それともキーワード?それとも・・・分からない。
「どうしたのかがみん?そんな難しい顔をして。」
「いや、ちょっと考えて・・・いや、うーん。」
「言ってごらん~。このこなた様が解いて進ぜよう~。」
「あんたには無理よ。」
「そんなことないよかがみん!クイズやゲームならあたしに任せたまへ!」
あんたが得意なのは、クイズだけでしょ・・・。
でも、一応聞いてみようかしら?ヒントが浮かぶかもしれないわ。
「じゃあ言うけど。鍵って言ったら何を思い浮かべる?」
「うーん、あたしは宝箱、ダンジョンかなあ。」
「やっぱり駄目だ・・・。」
「むぅ、酷いよかがみん・・・。でも、どうして突然鍵なの?」
「いや、なんとなくだけど。」
やっぱりこなたじゃあ駄目か・・・。
このままじゃあ、本当に未来が変えられるのか疑わしいわね。
「あ。」
「何よ。」
「どこかで、同じように鍵を探す物語あったなーと思って・・・何だっけなぁ?」
「私が知ってるわけ無いでしょ!?」
「うーん。まぁ、とりあえず考えとくよー。」
「ありがと。なんかあったら教えてくれると嬉しいわ。」
「はいはいかがみん。」
鍵、ね。
もう少し一人で考えてみようかしら。
・・・・。
・・・・キー。樹ー。木ー。key.期ー。
駄目ね。分からないわ・・・。
そういえば、こなたやつかさにデートを見られるのはどうなったのかしら?
未来、変わってるのかなぁ・・・。


 4日目(残り5日)


さて、全く手がかり無しに残り5日。
鍵、集める。
ってことは、集められることだから物体よね?
そうでもないかしら。いや、キーワードを集めることも出来るわね。
うーん・・・。駄目。さっぱりね。
と、考えていたら。
「かがみん、分かったよ~。」
「え?もしかして昨日の物語のことよね?」
「そ。えっとね、涼宮ハルヒの消失。」
「・・・・ラノベ?」
「そそ。かがみん読んでないの?」
「私、憂鬱しか読んでないのよね・・・。」
「そっか・・・。じゃあ、布教の一環としてこの本を貸すよ~。」
「サンキュッ。明日には返すから。」
「まぁ、時間があるんならゆっくり読んだ方が良いよ。参考にするんでしょ?」
「まぁ、そうなんだけどね。」
「かがみんもラノベとか書くことにしたのかな?」
「そんなわけ無いでしょ!取りあえず、ありがと。」
とまあ、とりあえず”涼宮ハルヒの消失”を借りることになった。
これに、鍵?
取りあえず、今日の夜に読むことにするわ。

・・・・ジョン・スミス。世界改変。
鍵・・・は人?
こなた的に言うとそうなるわよね。
でも、あながち間違いでもないように見えるわね。
・・・そんなに簡単に見つかるものでもないのなら、十分鍵だとは思うけど。
明日、長門さんにもう一度ヒントもらいに行こうかしら。
眠いし、そろそろ寝ようかな。
いくらなんでも、PM2時はきついわよ・・・。


 5日目(残り4日)


まだベットに潜っていたい願望を放棄して、私はいやいや起きた。
いくらこの季節暖かいとはいえ、ベットの中ほどの天国も数少ない。
ふう・・・残り4日なのね。
本当に大丈夫なのか心配で仕方ないわ。
取りあえず、今日は長門さんにヒントをもらいに行こうかしら。
ヒントが無いと、解けやしないわよ・・・。
そう考えながら私は学校の準備をしはじめた。

私はまた前回と同じところ、同じ時間に長門さんを呼んだ。
「何?」
「えっと・・・申し訳ないんだけど、何かもう少しヒントをくれないかしら?」
「構わない。しかし、与えられるヒントは後少ししかない。」
「そのヒントを貰えないかしら?ごめんね、頼ってばかりで・・・。」
「構わない。ヒントは、貴方にとっての泉こなた、柊つかさ、高良みゆき。」
「私にとって、の?」
「そう。私は人間の感情を正確に汲み取ることは出来ない。
 そのようにプログラムされているから。
 でも、客観的な立場からすると先のヒントが最も適切と判断した。」
「そう・・・。ありがとう。」
「お礼ならいい。気をつけて。」
「それじゃあ、ね。」
ここで別れようとしたとき。
「有希!」
ハルヒの声が・・・って、このときは涼宮さんって呼んでたのよね。
「涼宮さん?」
「そうよ!あんた、有希と何話してたわけ?」
「・・・・本について。先日貸した本について感想を聞いていた。」
「そ、そうなのよ。」
「本当?ならいいわよ。有希、部室に行くわよ!」
「分かった。それじゃあ・・・。」
「うん、ありがとね。」
そういって、長門さんは屋上から出て行った。
ふう・・・私にとってのこなた、つかさ、みゆき・・・ね。
親友と言ったところかしら。つかさは姉妹だけど・・・。
『あなたにとっての』ということは、他の誰か?
・・・・誰かしら。
分からないわ。
でも、後残り3日しかないのよ・・・。
どうしよう。こなたにもう一度尋ねてみようかしら。
私、他人にたよってばっかりね・・・。
未来を変えられたら、きっとお礼を言おう。
笑顔で。

やはり自分だけでは分からないから、取りあえずこなたに相談してみよう。
なんだかんだ言って、頼りになるときは頼りになるのよね。
「ねえこなた・・・鍵のことなんだけど・・・。」
「なあに?かがみん~。」
取りあえず、さっきの長門さんとの話を端的に伝えた。
未来を変えるとかは隠して。
「・・・なるほど。つまりかがみんは、誰かの親友が鍵って思ってるんだね?」
「長門さんの言葉から察すると、そうなるわね。」
「ふむ・・・・。キョンキョン、じゃあないかな?」
「どうしてよ?」
「だって、かがみんが見つけられそうな鍵って、もうそれくらいしかないでしょ?」
「でも・・・。キョン・・くんの親友は、SOS団でしょ?」
「だから、SOS団が鍵なんじゃあないかなって。」
「・・・・・・・・。」
「かがみん。何かはわからないけど・・・SOS団にたずねてみたら?今日はもういないかも知れないけど・・・。」
「・・・分かったわ。あんたのこと、信じる。」
「おおっと、デレかがみんは照れますなあ・・・。」
「バカッ!そんなんじゃあないわよ!」
「まぁ、たずねてごらん。場所は言わずもがなだよね?」
「まあ、ね。取りあえず、今日はありがとう。」
「いえいえ~」
そういって、こなたと別れた。
そういえば最近、つかさやみゆきと話せてないわね。
私、何か大切なものを見失いそうな気がする。
「気をつけないと・・・。」
思わず声に出てしまった。
タイムトリップをして5日目。
私は、不安に心を支配されそうになっていた。


 6日目(残り3日)


残り3日。
私の中はそればっかり。
後、3日で未来を変えなくてはいけない。
今日、SOS団をたずねよう。そうすれば、何かヒントが得られるかもしれない。
きっと。
一抹の不安を抱え、私は教室に入った。
教室に入って、いつもの席に座る。ここまでは普段どおりだった。
「なあ・・・柊。」
「どうしたの?」
キョンくんが話し掛けてきた。
これはイレギュラーね・・・。今日は何かあったかしら。
「えっと、だな・・・その・・・」
デートから4日くらい経ってるから・・・
「今日の放課後、時間あるか?」
あぁぁっ!!!!!
「駄目だった、か?」
今日、キョンくんに告白される日よね・・・・。すっかり忘れてたぁっ!
「え?ご、ごめ、ん!もう一回言ってくれる?ぼんやりしてて・・・。」
「えっとー・・・だ。今日の放課後時間あるか?」
「あ、あるわよ!」
「すまないんだが・・・、放課後、屋上にきてくれるか?」
「わ、分かったわよ。放課後屋上ね?」
「ああ、すまないな。」
あわわ・・・。
すっかり忘れてたせいで気が動転してたわ。
クラスを眺めると、こなたや谷口くんは怪しい笑みを浮かべている。
つかさや国木田くんは微笑んでいる。
誰がどう見ても、この時点で感づくわよね・・・・。
本当、恥ずかしいわ・・・・。
しかも、自分の顔が真っ赤なのと、今日何があるか知っているから余計に。
これ、なんて羞恥プレイなの?

そして、放課後。
私は、ドキドキしながら屋上へ向かっていた。
この後どうなるかも分かっているから余計に恥ずかしい。
後、階を一つ上ればそこは屋上。
うー、恥ずかしいわ・・・・。

私は屋上についた。
ゆっくりと屋上のドアのノブに手をかけて、引いた。
夕日の優しい光が私を差す。
そこには前見たときと同じように、キョンくんがフェンスにもたれて待っていた。
「ごめん、待った?」
「いや、俺もきたばっかりだ。」
「そっか・・・。」
あの時・・・二回目のデートのときと同じ、紅い世界にいた。
「それで・・・キョンくん。」
「ああ、それ何だけどな・・・えっと・・・どう説明すればいいのか・・・。」
「ゆっくりで、いいわよ。私は待ってるから。」
「すまん。えっとだな・・・その・・・」
紅い世界で、キョンくんはさらに紅くなる。
私も同じように紅い。
二人だけの世界。
「・・・柊。」
「・・・なに?」
「俺な・・・、えっと・・・その。実は俺、ずっとお前のこと見てた。
 ああ、初めて会ったときからずっとさ。
 始めはこの感情が何かわからなかった。だが・・・今なら分かる。」
「うん・・・。」
「柊。俺は、お前が好きなんだ。」
私は二回目の告白を聞いた。
「ありがとう・・・とっても嬉しいわ。
 でも私、素直じゃあないのよ。
 でも、・・・付き合ってあげるわ。」
「ありがとう、柊・・・いや、かがみ。」
「こちらこそありがとう、キョン・・・。」

「えっと、そろそろ帰るか?」
「そうね。いくら春とはいえ、そろそろ暗くなってくるしね。」
「よし!じゃあ、帰るか。」
「うん。」

そう、私は忘れていた。
”SOS団をたずねる”という鍵を。


 7日目(残り2日)


昨日、キョンに告白されて、OKした。
ここまでは、前をほぼトレースしているわね。
・・・。
とりあえず、今日こそはSOS団をたずねなきゃね。
あ、でもいきなり行くと怪しまれるから・・・。
「あの、涼宮さん。」
「・・・・何よ。」
うっ、今日も不機嫌のようね・・・。
「えっと、突然で悪いんだけど・・・放課後にSOS団をたずねていいかしら?」
「何か不思議なことでもあるわけ?」
「鍵、を探してて。」
「・・・・・放課後、部室に来なさい。」
「ありがと。」
なんとか、涼宮さんの許可は取れてよかったわ。
キョンと一緒に行けば良いのかしらね。

「失礼します・・・。」
「かがみ、硬くなる必要ないぞ。えっと、紹介する。
 こっちのメイドが朝比奈さん。
 読書してるのが長門。
 涼宮は言わなくてもわかるよな。
 今俺がオセロでボコボコにしてるのが古泉。」
「こんにちは。」
「・・・・で、鍵って何よ。」
早速ね、涼宮さん・・・。
「それがわかれば苦労しないわよ。」
「はぁー・・・。まあいいわ。キョンの椅子にでも座ってなさい。」
「はあ・・・やれやれ。」

「どうですか?柊さん、一勝負。」
「いいわよ。本気で行くわよ。」
私は当初の目的を忘れ(達成できず)、古泉君とオセロをすることになった。
「おい、かがみ・・・。こいつはマジで弱いぞ。
 将棋なら飛車角落ち、チェスならキャッサリング・クイーンなしでやっと妥当だ。」
「おや、厳しいお言葉ですね・・・。」
「いいから、行くわよ。古泉君。」

・・・・・・・。
結局勝負は、私の圧勝。
大体、黒が58個あって白が6個って・・・。
キョンのいう事は本当に正解だった見たいね・・・。

「そろそろ帰るわよ。」
涼宮さんがそういった瞬間、最終下校のチャイムが鳴った。
私達は片付けをして、部室を出ようとした瞬間―――。
「・・・・後、3つ。
 忘れないで。鍵は6つ揃っている。」
長門さんにそういわれた。
この部室で6つだったもの・・・・。
やはり、こなたの言っていた事は正解だったようね。
私は、後の3つが誰なのかも瞬時に理解した。
「言い忘れていたが、時空修正には多大なリスクもある。
 もしかしたら、大きな代償を必要とするかもしれない。
 それでも良ければ、後3つの鍵を・・・部室に。」
ありがとう、長門さん。
これで最後の勇気が出たわ。
もちろん、Yesよ。


 8日目(残り1日)


「ねえ、こなた、つかさ、みゆき。」
「んーなんだい?かがみん。」
「どうかされたのですか?」
「えっと、今日の放課後にちょっとついて来て欲しいところがあるのよ。」
「・・・鍵?」
「そう。こなた、いい?」
「分かったよ。かがみんのお願いだしね。」
「何か良く分からないけど、私は大丈夫だよ。」
「私も、大丈夫です。」
「ありがと、みんな。じゃあ、放課後にすこし待っててね。」
「分かりました。」
「・・・・かがみん、頑張ってね。」
「ありがと。」
こうして何とか3人に、昼休みに話をつけた。
後は放課後を待つのみね。

そして放課後。
「じゃあ、みんなついて来て。」
私は3人をSOS団部室に案内する。
この後どうなるのかは分からないけど。
それは長門さんに聞くことよね。
「こんにちは・・・。」
「何?鍵でもあったわけ?」
「そうよ、涼宮さん。鍵なら分かったわ。
 9つの鍵。」
「そう、良かったわね。」
「ありがと。」

そうこうしている内に、最終下校時間。
何故か、つかさと朝比奈さんは二人で
「「バルサミコ酢~」」
と共鳴(?)していた。電波の波長でもあったのかしら?
結局、何も起こらないまま、その日は終わった。
勿論夜には、

-from キョン
-件名 Re.明日のこと
-本文 あー明日のことだが、午前9時に駅前でいいか?

というメールが届いた。
本当に、変わるの?


 9日目(残り0日)


私は16日前・・・今日と同じ服を着た。
一応、気合いを入れた服。
今日は、2回目・・・。いや、4回目のデートだから。
そして、前回と同じようにバスに乗って駅前に。
やっぱり待つこと15分。
「よお、かがみ。待ったか?」
「ううん、全然待ってないわよ。私も今来たばっかりだし。」
「そうか。それなら良かった。・・・・・さて、行こうか。」
「うん、行き先はキョンに任せるわよ?」
「ああ。一応ふらふらするのは不思議探索で慣れてるんでな。」
そういった瞬間、キョンが私の手を包む。
「良かったか?」
「もちろんよ。」
顔を赤らめつつ、そう答えた。

前回と同じように、ケーキバイキングへ。
今回はあまり取らないようにしないとね・・・・。前回は3個も残しちゃったし。
「結構、小さめのケーキたくさんっても、美味いものなんだな。」
「そうよ。大きいもの少しでも味が変わらなくて途中で飽きちゃうでしょ?」
「そうかもしれないな。かがみ、もっと食べたらどうだ?」
「・・・前ね、友達ときたときに取りすぎて食べるのにすごく苦労したのよ。
 その教訓を生かしてるの。」
これはこなた達と行った時、2回目のデート両方のこと。
「お客様、お時間となりました。」
そのとき、CV.くじらから声が掛かった。
今回は残さずに済んで良かったわ。

今はそろそろ日が落ちようかという時間。
私達は、また公園に来ていた。
紅い世界。
「本当、綺麗だな・・・」
キョンが囁くような小さな声で呟いた。
「そうね・・・春、って感じね。」
「ああ。本当に長かったよな、俺ら。」
「そうね。こなたには”ツンデレカップルは大変だねぇ”って冷かされるし。」
「はは、まぁ今ここで一緒にいられるから良いじゃないか。」
「それもそうね。私、今幸せよ。」
「俺もだよ。」
ここまで会話を覚えているって、すごいのかしら。
そして。
お互い顔を見合わせる。
にっこり笑って、どちらとも無く顔を近づけた。
二回目のファーストキス。
一回目よりは、上手くできた気がする。
それでも、キョンのぬくもりは変わらなかった。
「・・・ありがと。」
私は照れながら言った。
「こちらこそ、な。」
キョンは一回目より赤面していた。

そして、お別れ。
本当に、未来は変わったの?
本当に、キョンは事故に遭わないの?
本当に、私達はずっと幸せでいられるの?
「どうした?かがみ。」
「なんでもないの。そろそろ日が落ちてきたし、今日はここで別れましょう。」
「ああ、分かった。」
「それじゃあ、ね。」
「ああ。今夜にでも、またメールするよ。」
「うん、わかった!」
そして、キョンは歩き去っていく。
その時。私は感じた。
(ここで、未来を変えなきゃいけないんだ。)
今すぐに、キョンを止めなきゃ。
時間が無い!
急いで私は追いかける。
「キョン!!!」
「どうした、かがみ?」
「っ!!あぶな――――――。」
「かがみ、危ない!!!!!」

・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・・・
・・・・・
・・・・
・・・
・・


 -Not time table-


おい、かがみ。起きてくれ。
頼む、かがみ。目を覚ましてくれ。
かがみ――――――。

「・・・・・・・。」
「かがみ!?大丈夫か?!」
えっと・・・・キョン?生きてる?
「大丈夫よ、私は・・・?」
私は絶句した。
空が灰色に染まっていたから。
動くものが何も無い、モノトーンな世界。
私達は、思い出の屋上で倒れていた。
「・・・俺も驚いてる。正直、ここは古泉に連れてこられたことがある。」
「古泉くんに?」
「ああ。ここは、”閉鎖空間”だ。」
「閉鎖、空間・・・・。」
「涼宮のイライラが作り出した空間だ。正直、俺はここのことを好きにはなれん。」
「まって、よく分からない・・・。それ以前に、どうしてこんな所に私達はいるの?」
「わからん。確か・・・かがみが走ってきて、俺がかがみに走っていって。
 そこで事故にあって、気がつくとここにいた。俺はこれくらいしか分からん。」
「私も分からないわよ。」
「とりあえず、ここを出よう。何かあるかもしれない。」
「そうね。」
取りあえず、私達は屋上を離れた。
まず、行ったのは教室。
「何も、無いわね・・・・。」
「参ったな・・・。ここから脱出する方法もわからん。」
「夢、じゃあないわよね?」
「ほっぺたつねって痛かった。夢じゃあないと思う。」
「・・・・困ったわね。」
次に行ったのは、SOS団部室。
鍵の集めた場所。
何かあるとしたらここかもしれない。
「何も、分からないわね・・・・。」
「とりあえず、ここで休もうぜ。ここならお茶もあるしな。」
「私が入れるわよ。」
「あー、すまん。頼むわ。」
「いいのよ。」
その時、窓の外に変化が現れた。
赤い玉、としか形容できないものが現れたの。
「っ!!」
私は唖然としているが、キョンは何かわかったみたい。
「おい、お前は古泉か?」
「その通りです。ご無事で何より。」
「ここは閉鎖空間だな?」
「これも、その通りです。しかし、この空間は違います。
 世界、と位相がすこしずれている空間。閉鎖空間とは少しだけ違うのです。」
「どういう事だ。俺とかがみは事故に遭って、気がつくとここにいたんだぞ。」
「そう、あなた方は事故に遭って今瀕死状態です。
 病院で確認してきました。この閉鎖空間は、天国と世界の間にあるようなものです。」
「・・・・・・。」
「涼宮さんは、友人を失いたくなかったのです。ですからこの空間を作り、あなた方を閉じ込めた。
 それにより、天国に送られなくて済んでいるのです。」
「・・・・・。俺と、かがみは瀕死なのか?」
「そうです。機関の凄腕医師を派遣したのですが・・・どうにもならなかったです。
 長門さんの情報操作も使えないようです。」
「俺たちは。」
「あなた方は、ここから抜け出す方法を知っています。必ず。だから、戻ってきてください。
 僕個人としても、貴重な友人を失いたくないのです。
 ・・・・そろそろ、この空間に存在できなくなりそうです。申し訳ございません。」
「古泉・・・俺らはどうすればいいんだ。」
「それは、貴方と柊さん。あなた方が鍵です。本当に、お願いします。
 後、朝比奈さんと長門さんからメッセージがあります。
 朝比奈さんからは、『運命は規定事項ではありません。』と。
 長門さんからは、『パソコンの電源をつけるように。』と。
 それでは・・・。必ず、戻ってきてくださいね。」
「古泉!!
 ・・・・・・・くそ。どうしろってんだよ・・・。」
私は唖然と、いや硬直していて何も話せなかった。
でも、未来は確かに変わっている。そのことに安堵を覚えた。
「・・・・かがみ、パソコンの電源を入れてくれるか?」
「あ、うん。分かった。」
私はパソコンの電源を入れて、画面を見てみた―――けど。
白いアンダーバーが点滅しているだけで、ほかは真っ黒。
「壊れてるのか?」

_ _ _

YUKI.N> 見えてる?

「長門さん?」
私はそう呟いた。
「ああ・・・流石長門、ここでも助けてくれるか。
 すまんかがみ、返信してくれるか?」
「分かったわ。」

KAGAMI.H> 見えてるわよ

YUKI.N> そっちの時空間はまだ維持されている。
    でも時間の問題。何時その空間が消滅するかわからない。
    貴方達の情報生命は、その空間の貴方達。
    体はこちらに残っている。
    そちらの空間が消えれば、貴方達がこちらの空間に帰還することは不可能になる。
    そうなれば最後。貴方達の生命活動は停止する。

KAGAMI.H> どうすればいいの?

YUKI.N> 私にはどうすることも出来ない。
    しかし、未来は確かに変わった。後は貴方の判断。
    今までのヒントを思い出して欲しい。

KAGAMI.H> ヒントって、屋上の?

YUKI.N> そう。貴方は未来を変えることに成功した。
    このことには情報統合思念体も驚いている。
    私というインターフェースは、貴方を信じていた。
    きっと上手くいくだろうと。

KAGAMI.N> ありがとう、長門さんのおかげよ。

YUKI.N> お礼ならいい。
    私が希望すること、それは貴方達の帰還。
    それが私が望むこと。

YUKI.N> また、本の感想を聞かせて欲しい。

KAGAMI.H> わかった。私からも何か貸すわ。
     必ず、キョンと一緒に戻る。

YUKI.N> 頑張って。
    朝比奈みくるや、古泉一樹、涼宮ハルヒも貴方達の意識が回復することを望んでいる。

YUKI.N> twice sleeping beauty

「長門さん・・・ありがとう。」
「かがみ、分かったのか?」
「うん、これではっきりと!」
その時、ズドンという衝撃音とともに、停電した。
「きゃぁっ!?」
「かがみ!くそっ・・・やっぱり出てくるのか・・・
 取りあえず、俺の手を離すなよ!!」
「うん、分かった。」
私は何が何やら分からないまま、キョンに手を引かれて部室を飛び出した。
その時、激しい衝撃が校舎を襲った。
「きゃああ!!!」
「かがみっ・・・行くぞ!!早く逃げないとやばい!!」
「うん・・・。分かった!」

「何なの、これは?!」
「分からん!取りあえず危険なのは良く分かる!!」
「どこに逃げるの!?」
「分からん!とりあえず、俺についてきてくれ!」
「うん、キョンにならきっとついて行く!いや、ずっとついて行くわ!」
「かがみ?」
ここしか、無いわよね。
first sleeping beauty.
「私ね、ずっと思ってたのよ!初めてキョンに会ったとき、頼れそうだなって!
 実際、今も頼れてる!だから、ずっとキョンにならついていけると思うの!」
「かがみ・・・。」
「だから、今ここで・・・私は誓うわ!
 ずっとキョンについていきます、って!」
「かがみ・・・分かった!
 俺も、今握ってるこの手!この手だけは、一生離さないって誓う!」
「ありがとう、キョン!こんなところでなんて、可笑しいけど!」
「ああ、誓ってやるさ!!」
そうして、私達は、ゆっくりと顔を近づけた。
誓いのキス。
ずっと、一緒にいよう。
私達は、first sleeping beautyで誓った。
そして、私達が唇を合わせた瞬間。
周りの景色が歪む。
私達の周りに、光の渦が出来る。まるで私達を祝福しているかのように。
そして、私達は気を失う。
ただし、手はしっかりと握り合って。

・・・・

・・・・

・・・・ピッ

・・・・ピッ・・・・ピッ・・・・

私は、電子音で目を覚ました。
どうやら、無事にもとの世界に戻れたのかしら?
重たい目を無理やりあけて見る。
あまりの明るさに一瞬だけ目がちかちかとしたが、それはずっと光を見ていなかったせい。
すぐに普通の明るさに戻り、周りの景色が見え出した。
私は、よく分からない機械に繋がれていた。
体のどこも痛くないから、多分事故の時はキョンがすべてかばってくれたのよね。
キョンは、どこ?
私は、首を動かして左右を見た。
・・・・・いた。
右側に、まだ意識が戻らないままのキョンがいた。
意識が戻っていないのは、もう一度残っているから。
これが、最後のヒントよね。
でも・・・・まだ動けない。
機械に繋がれてて。
取りあえず、どうしようかしら・・・。
「心配は要らない。この機械の情報連結を解除する。同時に情報操作も行う。」
「長門さん!?」
「貴方達が戻ってきてくれた事に、私は喜びという感情を覚えた。
 本当に、嬉しい。」
「でも、もう一度残っているでしょ?」
「貴方に繋がれていた機器は全て排除した。
 貴方自身の体にも異常は無い。」
「動いても良い、ってこと?」
「端的に言うと、そう。」
「ありがとう。」
私はゆっくりと立ち上がり、キョンのほうへ向かった。
未来を変えられたことに安堵を覚えつつ。
「キョン・・・・。起きて・・・ね?」
そう。
これが、second sleeping beauty.
眠り姫の目を覚ます、魔法。
愛し合う二人を結びつける、誓い。
私はキョンに唇を重ねた。

「・・・・・・・くっ・・・・・・」
「キョン・・・・・・・。」
私は、本当にキョンが生きていることに安堵をおぼえ、涙が出てきた。
「かが、み?」
「キョン!」
「かがみ、どうして泣いてるんだ?後、どうして髪がそんなに短くなってるんだ?」
「うれし泣きに決まってるじゃない!って、髪の毛・・・?」
そう、気がつかなかった。
髪が、つかさくらいのショートカットになっていた。
「それは、事故のとき、貴方の髪に多大な損害が生じたため、情報操作で貴方の髪を短くした。
 それが大きな代償。髪は、女の命。」
初めて長門さんの微笑を見た。
長門さんが微笑んでいることに、キョンも驚いているみたい。
釣られて、私も微笑む。
勿論、キョンも。
3人で、ずっと微笑み、笑いあった。


 Epilogue


ここからは、後日談。
この世界に戻ってきた後、直ぐに私達は精密検査を受けることになった。
キョンも外傷はなく、医者は皆不思議がっていた。
多分、長門さんのお陰ね。
そして精密検査も終了し、みんなにも意識が戻った報告がされたみたい。
その事で、SOS団のみんなと、こなた、つかさ、みゆき、国木田くん、谷口君。
みんなが来てくれた。
本当に嬉しかったわ。
そして、退院。
久し振りの学校。
黒井先生や岡部先生も大喜びしてくれた。
キョンなんか、胴上げされてたわ。先生も混じって。
ハルヒは、私に髪留めゴムを渡して、
「今のうちにポニーテールにしなさい!キョンが喜ぶわよ!」
といって、私の髪を括ってくれていた。
他の女子も色々話し掛けてきてくれた。
後、一番変わったのは長門さん。
何時の間にかメガネをやめて、コンタクトにしていた。
それに、クラスでも時折微笑を見せるようになった。
谷口くんなんか、ずっと惚けてたわ。
後、古泉君からも、
「貴方が無事に戻ってこれて何よりです。」
と言われた。ありがと、古泉君。

そして、今は3回目のデートの待ち合わせ。
いつもの、駅前。
私は、いつもキョンの来る15分くらい前に到着する。
だから、毎回私が待つことになるんだけど。
今はその時間を有効活用できてるの。
何をしているのかは、キョンが説明しているようなものよ。
顔も、言葉も。

「おーい!かがみ!遅れてすまん!」

「いいのよ。私が毎回早く来てるんだから!」

「そうか・・・。そうだ。」

「そのポニーテール、似合ってるぞ。」

「ありがとう、ね。」

 

Fin

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  • かがみ
  • キョン
  • 長編
最終更新:2007年07月27日 18:29
ツールボックス

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