「おーい、キョンく~ん♪」
小学生じゃないんだから、でっかい声出すなこなた。歩いてる人がこっち見てるだろ。
「おっすこなた、かがみ、つかさ・・・高良と黒井先生とゆいさんはまだなのか?」
「みゆきさんはもうすぐ来るはずだヨ。さっき携帯に連絡来たし」
むしろ心配なのは大人2人か。今日は車じゃないからねぇ。
「それにしてもさ・・・なんで今回は電車なんだ。ゆいさんは交通課の警官だし、黒井先生も車持ってるし、
車の方が安上がりじゃないのか。お前ら去年、夏に海に行ったときは、2人に車で連れてって貰ったんだろ」
- イヤなこと思い出しちゃった。つかさを見ると、やっばり同じことを考えたのか、ちょっと震えている。
「ちっちっちっ、キョンや。旅情をたっぷり味わうには、鉄道が一番なのだヨ」
「こなた、おまえついに鉄道にまで触手を伸ばしたのか・・・ま、最近は女の鉄道マニアってのもいるらしいが」
- 違うのよキョン君。それは表向きの理由で、黒井先生とゆいさん、車の運転が凄いのよ。ゆいさんはスピード狂だし、黒井先生は地図が読めないし、それで去年私ら、えらい目に遭ったのよ。
「ホント、よく命を落とさずに無事に帰ってこれたよね、お姉ちゃん」
「つまり、昨年の教訓ってわけか・・・ま、本人に面と向かってそんなことは言えんよな。了解した。でも黒井先生はともかく、ゆいさん、スピード狂で交通課の警官が務まるのかね」
さあ・・・でも意外といるかもしれないわよ。そういう人。
「そうか・・・お、どうやら引率者2名のお出ましのようだ」
「姐さん方、お控えなすって」
なにやってんのよこなた。2人を極妻扱いなんかしたらぶっ飛ばされるわよ。
「よ・・・高良以外はもう集まってるみたいやな。泉もこういうときだけは、時間前に来るんやな」
「あ~、ゆきちゃん来たー! おーい、ゆきちゃーん、こっちこっち!」
「皆さん、遅くなりまして済みません」
いやいや、まだ時間前だから大丈夫よみゆき。上等上等。
楽しい旅行になるといいわね。そして・・・キョン君との仲が縮まるといいな。
「いや、新幹線での旅路ってのも悪くないもんやな。泉もたまにはええこと言うの」
「そうですよねー。長丁場の運転って疲れますし、それに、移動中にこうやって飲んだり出来ませんしね」
缶ビールを傾けながらご満悦の大人2人。こなたグッジョブ。安全はお金を払ってでも買わないとね。
「あの2人はもう、現地に就く前に愉しんでるよなぁ」
ホント、引率者ってことを忘れてそうだよね。ま、引率者然と振舞われると、こっちもやりにくいけど。
ちなみに席の配置は、2席にキョン君と私、通路をはさんだ3席に黒井先生とゆいさんとみゆき、私たちの後ろの2席がこなたとつかさで、座席を回転させて私たちと向かい合わせにしている。
「いやいや、あの2人に限ってはそんなことないヨ」
「こなたさん、かがみさん、キョン君、UNOでもやりませんか」
「・・・うにょーん」
お酒臭い2人と同じ列ってのもイヤでしょみゆき。酔っ払いはほっておいて、こっちにおいで。
あとつかさ、悪いけど面白くないわよ。キョン君なんてポカーンとしてるじゃない。
「外しちゃった・・・ショボーン」
「つかさもまだまだだネ。一人前の芸人への道は険しいよ・・・って、みゆきさんがこっちに来たら5人・・・4人掛けの席に座れるかな」
こなた、あんたちっこいんだから、精一杯つめればここに私も入るんじゃない。
「う~ん・・・無理だヨ。かがみんのお尻がおっきくて入らないよ~、いててててて・・・」
なんだとこの野郎。詰めてみろ・・・う~ん、なんとか入ったじゃない。やれば出来る。
「お姉ちゃ~ん、すっごくキツくてなんか痛いよ~。骨盤と股関節がギシギシいうよ」
「だずげで~、きつくて死にそうだヨ。かがみん胸小さいくせにケツデカイよ~」
この野郎。大声出すんじゃない。周りの乗客の人たちがこっち見ているでしょうが。それと笑うなキョン君。
「すまんかがみ・・・ローテーションしよう。1人は休みで、1ラウンド勝負が付くまでは酔っ払いの列で待機ってことで」
そうね。せっかく席、とってあるんだし有効利用しなきゃね。じゃ、そういうことにしましょ。
なんやかんやで、新幹線から普通電車に乗り換え、そこからバスを乗り継ぐという、公共交通機関を存分に有効活用するルートを経て、目的の旅館に着いた。思いっきり純和風の典型的な温泉宿、いい感じ。
温泉街も鄙びていて、とても雰囲気がいい。事前にある程度、周囲のことは調べていたけど、こうして目で見るとなおのこと・・・
「私たちくらいの年齢だと良いですけど、若いコたちには、遊ぶ場所がなくて刺激が少ないかもしれませんね」
「ま、こういうトコの良さが分かるには、こいつらは若すぎるかもしれんわな。でも、今のうちこういうところでの愉しみ方を勉強しとき」
余計なものがあまりないってことは、それだけキョン君自身と向かい合う時間が多く取れるってことだよね。そう思えば悪くはない。
「こういうところ、わたし大好きですよ」
「そか。気に入ってくれたみたいでなによりや」
旅館の玄関に、年恰好20代後半くらいの和装の女性が立っている。こっちをみてにっこり笑うと、頭を下げた。旅館の人ね。
「みなも先輩、今日は大勢で押しかけてすんません。お世話になります」
あ、この人が黒井先生が言っていた、大学のときの先輩か。ご実家で働いてるのね。仲居さん?
「お、ななこも元気そうでなにより・・・で、その子たちがななこの教え子で、キミがキョン君か。ほほう・・・」
みなもさんは私たちを一瞥したあと、キョン君を見て目を細め、改まった表情に戻すと丁寧にお辞儀をして、ご挨拶。
「・・・いらっしゃいませ。本日はようこそおいでくださいました。当神楽崎旅館の若女将、神楽崎みなもと申します。至らぬ点は多々あるとは思いますが、よろしくお願いいたします。滞在中は、ごゆっくりおくつろぎくださいませ」
うわ、挨拶も板についてるよこの人。黒井先生とはたぶん2~3歳違いくらいなんだろうけど、すごく大人の女性に見える。
「ご丁寧なご挨拶、痛み入ります。色々とご面倒をおかけすると思いますが、こちらこそどうぞよろしくお願い致します」
黒井先生。本来ならいまのみゆきの台詞、引率者の貴女が速先して言うべきでしょうが。
「大人の女としての格の違いを感じますナ。ま、ななこ先生はみゆきさんにも負けてるかもね、アハ♪」
こなた、余計なこと言わないの。黒井先生に聞かれたら厄介よ。
「ま、そんなにかしこまらんこっちゃ。先輩のご両親とも面識はあるし、親戚の家に遊びに来たと思えばええ」
「・・・こんな立派なおうち持ってる親戚欲しいね。お姉ちゃん」
黒井先生の先輩のお母さん、つまりここの女将さんや、仲居さんたちからもご挨拶を受け、若女将みなもさんに案内されたのは床の間つきで20畳敷きの広い和室。うわぁ・・・広っ・・・って、ちょ、まさかこの一部屋に全員泊まるの?
「そうやけど、それが何か?」
「あ・・・俺も一緒ってのはちょっとまずいかもしれないですよね。俺以外、みんな女性ですし・・・」
そうだよね。やっぱり気まずいよね・・・私は別にいいんだけどな、キョン君と同じ部屋で寝るの。
「かがみん・・・寝相悪そうだし、キョン君を蹴り殺したり、寝言とかいびきとか聞かれたら嫌われちゃうネ」
誰がキョン君を蹴り殺すって? それより先に、アンタを一階まで蹴り落としてやるわ!
「キョン君。かがみってこういうヒトなのですよ。キョン君の前ではおとなしいけど、いつも私のこと苛めるんですの、シクシク」
ちっ・・・またやっちゃった。こいつは私をからかって、反応を見たいだけか。無視無視。
「そんならキョン、おまえだけ廊下で寝るか? 今の時期なら凍え死ぬこともないやろうしな」
「先生、酷いよ~、仲間はずれは良くないです。私一緒で構いません。キョン君・・・不束者ですがよろしくお願いします」
なに頭下げてんだつかさ。まだ婚約もしてないだろ。抜け駆けするな。キョン君、目を真ん丸くしてるぞ。
「冗談や冗談。なにも2人っきりで寝るわけじゃなし、みんなで一緒に寝るなら心配ないやろ、キョン。ウチや成実さんも一緒だしな」
「そ、お姉さん達もいるから、安心したまへ~。キョン君、おいたはダメにょろよ」
そ・・・そうよね。別にふっ、ふっ、2人っきりで寝るわけじゃないし、人目があれば何も出来ないわよね。
「そやキョン。旨そうな餌が目の前にあってもここは我慢や。どうしても我慢出来へんかったら、夜中、ウチの布団にこっそり来い。
きっちり搾り出して、手取り足取り大人のマナー教えたるで」
「ゆい姉さんっ、ここに教え子をたぶらかす淫行高校教師がいますよ。はやく逮捕して連れてってヨ」
「黒井先生っ、え、え、え・・・えっちなのはいけないと思いますっ! 懲戒免職になっちゃいますよ!」
「お姉ちゃんっ! 文部科学省か埼玉県の教育委員会の電話番号知ってる? 通報した方がいいよね」
こなた、みゆき、つかさ・・・はっきり言って怖いぞお前ら。ムキになるな・・・あ、黒井先生は今夜、廊下で寝てくださいね。
「おいおい、冗談に決まってるやろが。間に受けるなや・・・」
「ゆいさん、黒井先生がもし俺を襲ってきたら、遠慮なく逮捕してください」
「おいおまえら・・・成実さんも、ジョークの分からんこいつらに、なんか言ってやってや」
変なこと言うからですよ。ことキョン君のことに関しては私たちみんな、真剣なんですから自重してください、黒井先生。
「ままキミたち・・・もし黒井先生がなにかしでかしたら、ちゃんとブチのめすから心配しなくていいよ~。私柔道、一応黒帯だから」
「さすがゆい姉さん! 腐っても警察官だネ。ま、私も一応格闘技経験あるから、いざとなったら2人がかりで殺っちゃうね♪」
「もう堪忍してや。ウチが悪かった・・・」
へこむ黒井先生を見て、みんなで大笑い。ちょっと際どいやり取りだったけど、こういうのもなんかドキドキして面白い。
「・・・でも黒井先生、私も混ぜてくれるなら、大目に見てもいいですよ」
ゆいさん。警察官の貴女が、こういう悪乗りに乗っちゃダメでしょうが。せっかくオチがついたのに!
「ダメだよこの警官と教師。かがみん、すぐ110番してヨ。2人とも連れてってもらおう」
そんなやりとりを見つめながら、苦笑いするキョン君。ぼつりと一言。
「はは・・・俺、無事に帰れるのかな」
そんなこんなで一騒動やらかした後、とりあえず温泉に入ることにした。ここに来るまで汗かいたしね。
「ここの温泉は美肌効果あるで・・・あ、あと混浴やないからな。残念だったなキョン」
「・・・いや、別に残念じゃないです」
混浴か・・・まあ、流石にそういうところに行くのは無理よね。カップルじゃなきゃ。将来の楽しみにとっておこう。
「キョン、私らの裸覗いて、興奮してお湯の中に鼻血撒き散らすなヨ」
「いやいやいや、キョン君の場合は、鼻血じゃなくて別の白いモノを・・・」
やややややめいっ。そこの従姉妹コンビ。
「がはははは、泉の裸なんぞみて、チンポおっ勃てるヤツがおるかいな・・・って、キョンがロリコンならありえなくもないか」
可哀想キョン君。こんな奴らになぶられて。でもこれで、こいつらに幻滅してくれれば私にチャンスが・・・
「ねえゆきちゃん。ゆいさんが言ってた、別の白いモノって何?」
「それはですねぇ・・・つかささんも保健の時間に習った覚えがあるかと思いますが・・・」
こらっみwiki、エロpediaなんか検索しないの。つかさも変なこと聞いてないで、はやくイクわよ!
「俺も温泉に入って旅の疲れを取るわ。いろいろと・・・」
既に前哨戦で、キョン君のMPは切れ掛かっているみたいね。やれやれ、この先どうなることやら。
「広いお風呂っていいね・・・うわ~、露天風呂が日本庭園だ~、すごいよ~、川が流れてるよー」
「せっけん~、せっけんはどこですかぁ」
「くそっ、流石にあの3人には敵わないよ。かがみんも意外とあるしな。やっぱり私と哀しみを共有できるのはつかさだけだネ」
「かなたさんもあまりなかったからねぇ」
めいめい、自分らしく楽しんでるわね。私も身体を洗って、いまはお湯の中に身体を遊ばせている。う~ん、このお湯って美肌に効くらしいけど、胸とか大きくならないのかな。あと・・・ダイエット効果とか。
「柊、なに胸揉んでるん。お湯の中でオナニーは湯が汚れるからあかんよ。我慢出来んなら上がってからしいや」
ちっちっ・・・違います。その・・・マッサージすれば大きくならないかと思って・・・つい・・・指はつかってませんよ。
「乙女やなぁ柊も。でもな、キョンはあまり胸の大小は気にしてへんと思うで」
でも・・・一緒に集まってお話しているときとか、キョン君時々、朝比奈先輩やみゆきの胸見てるし・・・だから・・・
「一喜一憂したくなるんも分かるけど、そりゃ男の本能やから、しゃあないわ」
ななこ先生、けっこう大きいですよね。いつくらいまで成長しましたか。カップはどのくらい・・・
「高校出るくらいまでは成長してた気がするで。ちなみにDカップや、85や」
「おー、奇遇。私もDですよ」
大人2人はDかい。となると・・・みゆき、アンタは? そういや聞いたことなかったけど、いくつよ・・・
「えっと、Eです」
- 見栄っ張りCで、メーカーによっちゃBでも大丈夫な私とは違うな。この勝ち組野郎め。
「あのね・・・私はね・・・」
さっきまで外の露天にいたつかさが、もじもじしながら立っている。知ってるし、一目瞭然だから別に言わなくていいわよ。
「それはそうとしてや、おまえら・・・いまさら聞くんも野暮やけど、みんなキョンの事、好きなんやよな?」
ニヤリと笑いながら、黒井先生が言う。ま、話の流れ的に、結局こういう話題に行き着くだろうとは思っていたけど。
「ということは、今回、みんなそれなりに期待するものがあるってことか~、いいね若いって」
茶々を入れるゆいさん。人妻の余裕なのか。
「最初に言っとくけどな、ウチらに隠れて、乱交とかアオカンなんかするんじゃないで」
「男のいない20代後半女ってのは、えげつないネ」
「ほえ? らんこう? あおかん?」
「あの・・・」
「とはいえ、小学生じゃあるまいし、お手々繋いで仲良く程度で満足せいなんて、野暮なことは言わん。ま、キスやペッティング程度ならええんやないか。あと、中に出さなきゃ大丈夫やろうなんて、素股の時に、性器の周辺や下着のクロッチの部分に精液がかからんように用心せえよ。なんかの表紙にそこから、精子が膣内に侵入して、妊娠することもあるらしいで」
ちょ・・・物分りがいいって言うのか、捌けているってのか・・・黒井先生の話を、みんな顔を真っ赤にして固唾を呑みながら聞いている。ゆいさんも、ぽかんと口を開けて、呆然としていたのは面白かったけど。
- ふふん、ウブな餓鬼どもめ。目ん玉丸くしてやがるで。まさかウチが、こんな物分りのええこと言うとは思わなんだやろ。
これでも一応教育者の端くれやし、なんかやらかしたら確実に停職、事と次第によっちゃ免職って可能性もあるからな。
しかし危ない橋なんは、餓鬼どもも、成実ちゃんも同じやで。進学控えた不祥事はこいつらの将来に響くし、警察官なんて、昨今の綱紀粛正を考えたら、厳しい処置は免れんやろ。
実は成実ちゃんは、最悪の場合、この一件を握りつぶすための保険ちゅう意味合いもあるんやがな。本人にもそれは話してある。
「死者が出ない限りはなんとか出来る」なんて言ってたけど、本当に大丈夫やろか。成実ちゃんも日本の警察も。
ま、みんなそれぞれ立場的に、事が起きるとヤバいからこそ、それが抑止力になっておのずから節度が生まれるっちゅうこった。
あとでキョンにも話しておかな。こいつらも、今の学業成績の良し悪しは個人差があるけど、うちのガッコに入ってくるくらいやから、基本的には賢くて、今時の高校生にしては倫理や常識もある。阿呆やないから、ウチの発言の真意は理解できるやろ。
けどな・・・ぷぷ、おまえらにこう言うと、かえって意識して牽制し合うから、なかなか大胆にキョンには迫れへんやろ。
ま、お前らのぎこちない3流ラブコメ、たっぷり見させてもらうわ。枯れ木呼ばわりしてくれたホンのお礼やで。
ウチらはウチらで・・・ふふ・・・大人のお楽しみがあるんや。悪口に加担せえへなんかった、キョンと柊妹へのプレゼントの用意もせなあかんしな。
「黒井先生・・・これはなかなか面白いことになりそうですねー」
あんな、もう他人行儀な呼び方は止めにせえへんか? うちらは共に三十路手前、男日照りの同士やろ。
ウチはあんたをゆいと呼ぶから、ウチの事もななこでええよ。
「名前で呼ぶのは良いですけど、呼び捨てってのはちょっと・・・あと・・・」
あ、ウチが悪かった。男日照りの三十路前なんて、事実でも口に出されると、あんまり気持ちええもんやないな。堪忍ナ、ゆいさん。そんな不満そうなモノ言いたげな顔、しとかんといてや。
嗚呼、また言えなかったよ・・・私は既婚者なんだよー、旦那いるんだよー、ななこさん、少しは人の話を聞いてヨー。
こなたやゆたかの話を聞く限りでは、けっこう生徒には人気のある先生みたいだけど、こんなんで教員としての職務に
支障をきたさないのだろうか。進路指導とかでも、この人、ちゃんと生徒や親御さんのお話を聞いているのかね。
こなた「・・・ゆい姉さん、わたしゃ姉さんが警官やってる方がずっと心配だよ。人のこと言えないヨ」
最終更新:2007年07月31日 00:45