ななこ「さ、女たちの狂宴、夜の部がはじまるザマスよ!」
ゆい「い・・・イッちゃうのかな私たち」
こなた「キョンの貞操断固死守! 主人公が最後に勝たなくてどうするのサ←結論」
みゆき「メインでの出番を要求します! 必要なら身体張ります、脱ぎます、処女も捨てます!」
つかさ「私は本編でキョン君と絡めるみたいだから、他の事なんかどうでもいいや・・・」
かがみ「・・・普通に旅行楽しみなさいよ!」
「いや~、歩いて片道20分って結構遠いですなぁ、買い物の時間入れると1時間かかるよ」
確かに。しかも帰りは荷物付きや。みなも先輩に車貸してもらうちゅうテもあったんやけど、風呂上りにビール一本飲んでしもうたからなぁ。先輩は仕事中やから運転も頼めんし、飲酒運転はきょうびご法度やしの。
こういうときに限って飲酒検問に引っかかったりする可能性もないとは言えん、しゃあないわ。
「それに私、一応交通課の警官ですからねぇ」
「交通課の警官が飲酒検問にひっかかったら、そりゃまずいですよ、ゆいさん」
さて、とりあえず厨房の冷蔵庫1つ、使用許可取ってるんで、飲み物はそこに入れといてや。
その他諸々は部屋に追いときゃええよ。
- あ、それはウチらがやっとくさかい、キョンは早く、愛しの彼女たちのところに行ってやり。多分まだ卓球してるはずや。男がいた方が盛り上がるやろ。さっき入った風呂場の前通ってさらに奥、左に会議室だか研修室だか、そんな名前の部屋があるはずや、そこにいると思うで。
そういってキョンを追い出して、ゆいさんと最後の打ち合わせや。段取り間違えんようにな。
「眠らせる順番は、みゆきちゃん、つかさちゃん、かがみちゃん、そして最後はこなたってことで良いですかね」
いや、1番最初は柊妹にしようや。ウチにちいっと考えがあってな。
「なんです、その考えってのは?」
それはなゆいさん、明日のキョンと柊のご褒美ミッションに係ることなんやけど、つまりな・・・ゴニョゴニョ。
「・・・ななこさん、策士ですねぇ。あえてつかさちゃんの反感を煽るつもりなんですか」
そや、そのくらいせえへんと、柊みたいな奥手で引っ込み思案なヤツを、誘い出すことは出来へん。
「でもそうなると、残りの3人がちょっと可哀想ですね。お楽しみから外された上に、そんなことのダシに使われるなんて」
ゆいさん、情けなんかいらへんよ。あいつらは女としてのウチらを侮辱したんやで、ああ、今思い出しても腹立つわ。
本来ならもっと強烈なしっぺ返しをくれてやるところけど、ま、直接物理的なお返しをせんだけ、有難いと思ってもらわな。
「・・・(なんか、この人が男と縁遠い理由、分かった気がするよ。趣味や生活スタイルだけが問題じゃないんだね)」
「お、キョンが戻ってきたヨ」
お疲れ様キョン君。往復で40分くらいかかったんでしょ。少し休んだ方がいいんじゃない。
「いや、大したことない。3人で手分けして持てば、荷物もそんなに重くないしな」
今、卓球台をはさんで、つかさとみゆきが戦っている・・・んだけど、この2人、卓球が苦手と公言するだけあって、試合になってない。卓球というよりピンポンだし、ラリーだって3回続けば良い方。本人たちは愉しんでるみたいだから別にいいけどね。
「いけ~っ、スマ~ッシュ!」
浮き上がったボールを引っぱたこうとしたつかさ、見事に空振って、くるくる回って尻餅ついてる。マンガかっての!
ちょ・・・ちょっとつかさ、浴衣の裾気をつけなさいっ! まくれ上がってる、見えてる、パンツ見えてるから!
「えへへ、ごめ~ん」
ちょっとキョン君、何凝視してるのよエッチ。第一つかさのなんか見たって面白くないでしょ!
私の声で気づいたのか、つかさは慌てて立ち上がると、裾を直して恥ずかしそうに俯く。こういうところ可愛いわね。
「ちょいと、今のかがみの台詞は、つるぺた仲間として聞き捨てならないネ。つかさって肌綺麗だし、脚も細いし、かがみんみたいなぶっとい大根足や、バカでっかいお尻見せられるより、よっぽど萌えるでしょ、キョン?」
誰が大根足だ! 脚とヒップラインにはちょっと自信あるんたから。ひがむなよ、色気の欠片もない鶏ガラ足女め。
「お姉ちゃ~ん、こなちゃ~ん、ね、喧嘩やめようよ。私別に、キョン君に足やパンツ見られても構わないからさあ」
「・・・な、高良、この2人ってなんか、事あるごとにすぐ喧嘩するんだな」
「心配ないと思いますよキョン君。こなたさんとかがみさんは、喧嘩するほど仲が良いの典型です(それよりも・・・気づいてますかキョン君、喧嘩の原因って、だいたいキョン君に関係あることを)」
「ま、それならいいんだけど・・・こなた、かがみ、そのくらいでやめないか。つかさが泣きそうな顔してるぞ」
「ま、今日はこのくらいで勘弁してやる。次はないと思えヨかがみん!」
分かったわよ。キョン君に免じてここは一旦、矛を収めるわ。けどこなた、次キョン君の前で余計なこと言ったら、本気でぶっ飛ばすわよ!
黒井先生からさっき、この4人がみな、俺に好意を持っているという話を聞いたが、そういう前提で今のやりとりなんぞ見ていると、こなたとかがみが、お互い俺の気を惹くために牽制し合っていると見えなくもないし、つかさがああやって、わざと転んで足と下着を見せたのも、策略の1つに見えなくもない(いや、つかさのこれは素だな・・・)
高良がどうなのかはイマイチ良く分からんが、見方を変えると、自分がラブコメの主人公と多少、重ならなくはない。
しかしまあ、今は楽しい旅行中だし、俺自身、自分の気持ちがまだよく分からん。今はとりあえず、こいつらも女の子なんだときちんと意識して、然るべき日が来たときには、誠実に対応すればいいだろ。黒井先生の言ってたように。
さて、俺もそろそろラケットを握りたいのだが、こなた、かがみ、いずれかにお相手願えるかな?
キョン君は卓球得意? こなたのヤツ、経験者でもないくせに上手いのよ。さっきやったら手もなく捻られてね。
「俺も経験者じゃないが、けっこういけると思うぜ。これ、ラケットの角度にコツがあるんだよな・・・なら、かがみの仇!いざ参らん、こなた、覚悟!」
「なにを猪口才な若造、返り討ちにしてくれるワ」
この2人、こうやってたまに、ふざけた掛け合いして遊んでるし、一見するとそう見えないけど、キャラ的にけっこう波長が合うのかもしれないわね。
羨ましいな。キョン君はこなたのことはたまにからかうけど、私には、そういうこと出来る雰囲気じゃないって思われているのか、ふざけて絡んでくることってまずない。ただ、結構真面目に話してくれるから、それはそれでいいんだけど・・・ないものねだりって言うんだろうな、こういうの。
「あ、キョン君上手~い。こなちゃんのスマッシュ打ち返したよ」
「球にスピードがあってすごいですね。お上手な人が羨ましいです」
前半は、なかなか拮抗したいい勝負をしていたけど、キョン君は持ち前の正直さがあだになったのか、緩急つけたこなたの変則戦法に手を焼いて、結局こなたに負けちゃった。
「キョンは素人のくせになかなかやるネ。そこにいる下手くそかがみんとは雲泥の差だヨ」
悪かったわね下手くそで。もういちいち、アンタの挑発には乗らないわよ。
「おまえが経験者じゃないのは、フォームがおかしいのをみても分かるが、素人芸にしちゃ相当なモンだな。俺も相手が卓球部員や卓球経験者じゃなけりゃ、めったに負けないんだがな」
「キョン、どうかネもう一回?」
「後でな。俺はかがみともやってみたい。そこそこはいけるんだろ?」
「キョンは私だけじゃなく、かがみんともやりたいのかい。二股は良くないヨ」
「柊姉と一発済ましたら、次はウチの相手してやキョン。さっきからうずいて我慢出来んのや・・・腕が」
いつの間に来たんですか黒井先生。あと、こなたに便乗して、聞く人が聞いたら誤解するようなことを言わないで下さいっ!
キョン君と長々ラリーを楽しんだり、なぜかこれまた上手な黒井先生にキョン君が力負けしたり、つかさと異常にボールの滞空時間が長いピンポンをするゆいさんを眺めたりしながら、夕飯までのひとときを過ごした。キョン君ともいっばいお話が出来たし、たまに
ちょっと肩や指の先が触れてドキッとしたし、なんか
お約束満点で、いろんな意味で楽しかった。
高校3年の夏休みに、こんな楽しい思い出が出来て良かった。出来ればキョン君との関係、この機会に進展させたいな・・・
「・・・ほなおまえら、そろそろ部屋に戻ろうか。飯の支度が出来ているころや。適度に身体動かすと飯がうまいで」
「だからといってかがみん、食べすぎるなヨ」
うっさいぞこなた。ここは日本旅館だから食事は和食でしょ。和食はカロリー低いから、少しくらい量が多くてもいいのよ!
「夜の宴会でジュースがぶ飲みして、お菓子を貪れば意味ないけどネ」
「どんなお料理が出てくるのかな、楽しみだねゆきちゃん」
「そうですね。こういう時のお約束といえば・・・」
「やはり小鍋は外せないな。ここは山だから、イノシシか豚肉を使っていると見た」
「旅館のお夕食だと鍋は必ず出てくるよね、キョン君。あとお刺身かなあ」
「・・・ここだと川魚の焼き物あたりかと」
めいめい、話をしながら部屋に着くと、既に仲居さんたちの手で、食事の準備がされていた。
「これはイワナやな。それも天然モノやないか」
「キョン君、お鍋あるね」
「ん・・・豚肉にタマネギにエノキにニンジン・・・これは鍋ってより焼き物だな」
「お蕎麦もありますね・・・山菜が入っているみたい」
賑やかな食事がはじまった。つかさはみゆきと和気藹々と何かを話しながら食べているし、大人2人はビール片手にご機嫌。仕事の愚痴を言い合っているみたい。そして私はというと、右をキョン君、左をこなたに挟まれながら、キョン君の話に相槌をうちつつ、こなたのバカ話に突っ込みを入れ、笑い、呆れ、あれを食べ、これを食べ、キョン君のコップにウーロン茶を継ぎ足し、こなたには勝手に手酌をさせ、せわしく動いている。やっばり世話焼きの突っ込み体質なのかな私。
出てきたものをあらかたやっつけて、仲居さんたちがお膳を下げに来ると、ようやくまったりタイム。でも、夜はこれからやで。
あいつらはというと、めいめいテレビを見たり、携帯をチェックしたり、寝転がって夜の宴会に備えたり、それぞれのやり方で来る決戦に備えとる。ゆいさん、ウチらもこっから本腰入れていくでー
「ほな、9時くらいを目処に始めようかいな。そん前に、一風呂浴びてしまおうや」
風呂は疲れを取るためやなくて、疲れを出す効果があるんやで。事前に風呂に入ってもらった方が、お薬の効きも良うなるってもんや。
「身体綺麗にしとかんと、イザって時に困るで。気合入れて洗い」
側にいた柊姉に耳打ちしたったら、顔真っ赤にして走っていきよった。はは、普段ツンケンしてるくせに可愛ええな。
「私たちは、軽く汗流す程度にしておきましょう。後でまた入るわけですし」
そう耳打ちしてふふっと笑うゆいさん。アンタ、ウチに本当にやる気ですかなんて言うといて、楽しそうやないか。
いや、それにしても進んで悪事を働くちゅうのが、こんなに心躍るもんやとは知らなんだ。世の快楽犯罪者の気持ちが少しは分かるで。
風呂場では、さっきからかった柊姉は当然として、なんか全員、粛々と身体のメンテナンスをしとった。あの泉でさえもな。
ご苦労なこっちゃ。お前らがいくら気合入れようが、今夜、その成果を披露する機会はないで。
「あの子たちも女の子ですよねー・・・今回の件、少し可哀想だと思いません?」
なんや、また仏心出すのかいな、ダメやでゆいさん。自分で言ったことの報いは、きっちり取らせるのも教育のうちやで。
「・・・ななこさんってやっぱり、怖い人ですよね」
何か言うたか?
そんにしても20畳もあるとええな。布団敷いた上に、机並べても十分余裕がある。狭い部屋やと、夜通し飲むヤツ、さっさと潰れるヤツ、入り乱れてエライことになるもんや。今回は薬でぶっ潰した先から、布団の中に収容せなあかんからの。湯冷めして風邪なんぞひいたら可哀想や。
「・・・そういう仏心はあるのに、個人的な恨みからの復讐は諦めないんですね」
いやに絡むやないか、大人気ない言いたいんか? これは大人げあるないの問題やない。女としての誇りを守るための戦いや。
「いえ、ななこさんって人がよく分からなくて(正直、理解するのも怖いですけど)」
まあええ、とりあえずブッ潰れん程度に飲み。作戦開始時間までは、ウチらもふつーに楽しもうやないか。
楽しいねこういうの。去年の夏、みんなで海に行ったときも良かったけど(行きの車とかはちょっと大変だったけど)、今回は男の子が・・・キョン君がいるからね。男の子が1人いるだけで、なんかみんなの雰囲気が違う。もちろん、私も。
「ほれほれキョ~ン、こっち見て~ん・・・もう、ちょっとだけよ~、アンタも好きねぇ~」
「お~い泉、おまえ年幾つや。なんでそんなネタ知っとるん?」
「あの子、そうじろう伯父さん・・・お父さんの影響で、古くて変なネタいっばい知ってるんだよね・・・ゆたかも影響されなきゃいいけど」
いっつもハイテンションなこなちゃん、今日はいつにも増してすごい感じ。え・・・ちょっとこなちゃん、裾めくり過ぎだよ、パンツ見えちゃうよ~
「なんだヨつかさ~、つかさだって卓球の時、キョンにパンツ見せて誘惑しただろ。抜け駆けは許さーん、私も負けてられるかーっ!」
違うよこなちゃ~ん。私そんなエッチな子じゃないよ。あれはワザとじゃなくてホントに転んじゃったの!
- ってキョン君、なにボーッとこなちゃんのパンツ見てるんだよ。見ちゃダメッ・・・とキョン君の目を塞ごうとしたその時!
「なんやキョーン! せっかく泉がサービスしてくれるんやから、見たいならもっと近くで見い」
そういってキョン君の頭を掴むと・・・こここなちゃんの股の間に押し付けちゃった。ちょっと先生何してるんですか!
こなちゃんもキョン君もいきなりで、されるがままびっくりして固まっちゃってた。
「風呂入ったばかりやから別に匂わへんやろ、泉も気合入れて洗ってたし、問題ないで、あははは」
「ちょ・・・ちょっと黒井先生、いきなり何すんですか? こなた、大丈夫か・・・あの・・・スマン」
「キョン・・・酷いよいきなり。私まだ心の準備出来てなかったのに・・・私もうお嫁にいけないヨ」
- こなちゃん、いきなりのことに動揺しないであっさり切り返しちゃった。逆にキョン君は真っ赤になってる。
「ちょっと黒井先生っ! その・・・あの・・・そういうのって・・・」
お姉ちゃんが声を荒げて黒井先生に迫ったけど、言葉が続かず尻つぼみになっちゃった。なんて言ったらいいのか分からないのかな。
「ほ~、かがみんは何をお怒りかな。それはともかくちょっとこっちに来て~ん」
こなちゃんがお姉ちゃんを手招きする。そして自分のとなりに座らせる。こなちゃん何かする気~
「もちょっと膝を開いてみてヨ」
「ん、こう・・・・・・きゃーっ!」
こなちゃん、いきなりキョン君の手を取ると、そのままお姉ちゃんの膝の間に自分の手ごとキョン君の手を入れちゃった。
びっくりして後ろにひっくり返ったお姉ちゃんを見て、キョン君が流石に手を引く。お姉ちゃんはおろおろ。
「これでおアイコだねかがみん・・・ね、キョン君、かがみんの太もも柔らかかったね」
「こなたっ、今のは幾らなんでもやりすぎたろ。かがみ泣いてるじゃないか・・・大丈夫か、ごめんな」
「大丈夫・・・ね、キョン君・・・私の足、どうだった?」
あれあれ、お姉ちゃんもなんかおかしいよ。いつもなら真っ先にこなちゃんを引っぱたくのに・・・あれあれ?
こなたのヤツ、自分が黒井先生にいきなりやられたから、照れ隠しに私を引っ張りこんだな。策士め。
こなたが私を手招きしたとき、あ、こいつ何か企んでやがるな、と直ぐに気づいたわよ。
まさかキョン君の手を使ってくるとは思わなかったから、思わずキャーッって言っちゃったけどね。キョン君があまりに心配そうな顔をするから、私もキョン君をちょっとからかってみた。
でも流石に足を触られるのは恥ずかしいわね。自分の体の中じゃ密かに自信はあるし、キョン君ならイヤじゃないんだけど。
「まー、酒の席で、男1人に女がこれだけいりゃ、そんなアクシデントも肴のうちや」
「キョンく~ん、試しにお姉さんのも触ってみるかーい」
酒の席って・・・酒飲んでるのはあんたたちだけだろ。このエロ酔っ払いめ。
で、キョン君、私の足を触った感想はどうなのー。乙女の柔肌に手を触れたんだから、感想くらい聞かせなさいー
「お、かがみんもキョンに絡み始めたヨ。こりゃ私も負けてはいられないネ」
「ちょっとー、負けるとか勝つとか、なんか違うでしょー」
「あらあら・・・私もキョン君に、何かお見せした方がよろしいのでしょうか」
「みゆきさんは反則だよ。みんな素手で戦っているところに、核ミサイル持ち込まないでヨ」
あはは、確かにアンタやつかさが竹槍なら、みゆきは核兵器ね。勝負にならないわ。
「いや、愚地克己はそう言って、烈海王に一撃で負けたゾ! 竹槍最高っ!」
何のネタか分からないから、変な例え話するのはやめてよこなた。
「泉、おまえバキ読んどるのか。ホンマ守備範囲広いな」
「・・・私はあの絵柄はパスだな~」
「確かに板垣のあの絵柄は好き嫌いが分かれるけど、話自体は悪くないですよ。あんまり女性受けはしないだろうけど」
ねえ、この集団ってなにげにオタ比率高くない? いや、言っとくけど私は違うわよ私は。
ええ感じに乱れて来よったな。やっぱりこういう場は、こうやないとあかん。そんなこんなでもうすぐ11時や。
ゆいさん、作戦開始や。第一のターゲット、柊つかさ。ゆいさんは側の高良を引き付けてや。それに柊が気い取られているうちに、ウチが柊のコップの中にポチャン、と行こうや。前と後ろ塞いで、奴らの視線を遮断するのも忘れんといてや。
よ。柊、楽しんどるみたいで何よりや。
「なんかこういう雰囲気ってあんまり経験ないから、いいですね。ちょっとドキドキしてます」
そか、それは良かった。でもキョンが泉や姉さんにばっかり構ってて、ちょっと悔しいやろ。
「おーいみゆきちゃん。一体キミは何カップなのかなー、お姉さんに正直に教えるにょろー」
「ちょ・・・ちょっとゆいさんー」
お、高良の声を聞いた瞬間に、柊の視線が逸れたで。はい、ポチャっとな、任務終了!
ちょいとコップの中の飲み物の量が少ないか。柊が飲んでいたアップルジュースを、すこしコップに継ぎ足してやる。
「あ、すみません先生」
おっ、飲んどる飲んどる。わざわさ礼を言うなんてエエ子やな。ぐっすりお休み。
- おーいゆいさん、高良のヤツを苛めんといてや。あんま激しく責めて、変な道に目覚めたら可哀想や。
「みゆきさんが百合路線か・・・う~ん、あまりに嵌りすぎててなんとも。かがみんはどう思う・・・って、かがみはBL専門だから分かんないか?」
「なんで私がボーイズラブ専門なのよ。そんなのに興味ないし、キョン君に変に思われるからやめてよね」
ふ、泉や柊姉も気づいてないみたいやな。作戦成功。それじゃ戦線を離脱しまーす。
柊はその後、真っ赤な顔をした高良と少し何か話していたけど、いきなり話し声が止まったかと思うと、上体が左右にふらふら揺れ始め、パターンと横になって、すぐに寝息を立て始めた。おいゆいさん、ちょいとこれ、効き目強すぎないか?
「この睡眠薬、すごく効くんですよ。だから犯罪に多用されるんです」
「あの~、つかささん、眠ってしまわれたうですけど、どうします・・・」
「おいつかさ、もうダウンしたのか。ホントに夜弱いわね」
「お子様には、さっきのは刺激が強すぎたかもネ」
あ~、疲れてるみたいやから、起こさないでもう寝かしてやり。悪いが高良、柊を布団まで運んでやってや。
「は~い、わかりました」
そういって柊を抱きかかえて、布団まで運んでいく高良。よし、今や。高良にも薬盛ってやるで。ゆいさんに目配せ。
「おーい、こなたー、かがみちゃーん・・・」
せやせや、適当に話しかけて注意を引いといてや。そーれポチャっとな。慣れればちょろいもんやで。
- お、高良ご苦労さん。悪いな柊の面倒見させちまって。ちょっとええか、お前に話があるで。
高良相手に、ちいと真面目に進路の話なんかをする。医師志望の高良に、近年の医療問題やら、医師の資質についての話やら。
どうも高校の教師は、やみくもに理数系の成績優秀な学生に、適性を無視して医学部を勧める傾向がある。昨今は実学志向やからな。
お前はそこんところどうやねん、なんて突っ込んでみる。
いや、これは時間引き延ばしの策でもあるのやけど、真面目な話やで。高良も真剣に答えている。飲み物飲む暇もないくらいな。
そろそろ飲ませよか。高良のコップに、飲んでいるウーロン茶を継ぎ足してやる。少し喉を潤しい。
「あ。ありがとうございます」
悪いな高良、それでハイ、おやすみなさいや。悪意はないで。ゆっくり休んで明日に備えや。
高良が柊のように、くにゃっとダウンするまで約5分。今度はウチが抱きかかえて布団まで運んでやる。
こいつやっばり胸デカイな。ちょっとムカつくので布団に入れるとき、少し揉んでやった。お、すごい感触や!
- そして泉、柊姉、キョン3人の相手をしているゆいさんの所に向かう。おーい、高良のヤツもダウンしたで。
「みゆきさんも夜は弱いからネ」
「ま、あんま無理すると明日に響くからね」
お前らも早うくたばりぃ。こいつら2人は、個別撃破するのも面倒や。直接飲み物に仕込んで、それを飲ませたるで。
500ミリのペットボトルに睡眠薬を仕込んで、バカ話に興じる最中に、泉、そしてしばらく時間をおいて柊姉のコップに中身を注いでやる。キョンにはゆいさんに話し相手と給仕役をさせて、睡眠薬仕込んだモノを飲まさんようにする。
実はキョンの飲み物には、ちょいと別のモンを仕込んでおいてあるんや。どの程度効くかは個人差があるみたいやけど。
午前1時半、先に口にした柊がダウン、間をおかずに、夜更かしの帝王、泉こなたも夢の世界へ・・・ふ、ついに邪魔モン4人、予定通り午前2時になるまでにぶっ潰したで。
さて、あとはキョンの飲み物に仕込んだヤツが、どの程度効くかな。
こなたとかがみが、黒井先生となにやらバカ話に興じているので、俺はゆいさんと話をしていた。ゆいさんは、買出しのときに話した
中学時代の彼女 ― 佐々木のこととか、SOS団のこととかをいろいろ聞いてきたり、警察官の職務の話をしたり、かと思うと、こなたとつかさとかがみと高良の4人のうち、誰が好みのタイプなのかこっそり教えろとか、いろんなネタを際限なくふってくる。
丸顔の綺麗なお姉さんと話をする機会もなかなかないので、俺も大いにゆいさんとの会話を楽しんでいたのだが、ふと、気づくと俺の視線は、ゆいさんの胸の谷間とか、浴衣から覗く太ももに引っかかって、スムーズに動かなくなってしまった。
なんか身体が熱いし、身体の奥からなにやら妖しい衝動が沸き起こってくる。おい俺、なにゆいさんに劣情をもよおしているんだ。
そのうち、こなたとかがみもダウンしたらしく、各々、黒井先生に抱えられて布団の中に収容されていった。
そして戻ってきた黒井先生も話に加わってきたのだが・・・うわ、なんか黒井先生も妙に色っぽいぞ、目に毒だ。
平静を装おうとする俺の様子が変なのに、さすがに2人も気づいたのだろう、相次いで俺を詰問にかかる。
「キョンくーん、さっきから私の胸とか太ももばっかり見てるねー。お姉さんなんか恥ずかしいよ」
「ま、あの面子で鑑賞に堪えるのは高良くらいやからな。ええよ、あいつらも寝たし、サービスや」
そういって胸をくつろげたり、裾をまくったりして見せてくれる。いや、とても嬉しいのですが、このままだと俺・・・
「なんや照れて・・・可愛ええなキョン。やっぱ男の子やね。そんな顔されるとウチも我慢出来なくなりそうや」
「ちょっとー、私のキョン君を誘惑しないでくださいよー」
いかん、いかんぞこれは。なにやら大変なことをしでかすまえに、困った息子の方を処理しないと。
「キョン、すごい汗やな。ウチらがちいっとからかい過ぎたからか。ここ、24時間風呂入れるで。寝る前にもう1回汗流しとき」
済みません。そうさせてもらいます。俺はタオルを引っつかむと、そそくさと2人から逃れて、浴場へと向かった。
偉いぞ俺、挑発に耐え抜いてよくぞ我慢した、感動した、おめでとう!
なんや、てっきりここで襲い掛かってくると思ったんやけどな。ま、あの媚薬はさほど強力いうわけやないからの。
ゆいさん、これは作戦成功やで。さ、うちらも早くキョンを追いかけんとな。
「そうですね。さ、ここからが私たち、大人の時間ですね」
そこで寝ているお前たち。悪いな。肝心なこと黙ってて。
ここの浴場な、午前2時から翌朝6時まで、男湯か女湯のどちらかは止められてな、混浴なんよ。
本当は、サプライズイベントで、夜中の温泉で7人全員裸の付き合い・・・と行きたいところだったんやけどな、とある事情でウチらとキョンだけで楽しむことにした。口は災いの元言うてな、ま、悪く思うなや。
キョンは、昼間はおまえらに貸してやるけど、夜はウチらに付き合ってもらうことにしたんで、そこんとこよろしくな。
あかん、久々になんか興奮してきたで。そういや、あっちの方は随分ご無沙汰してたからな。
「なんか私も興奮してきました」
じゃ、しっかり寝とるんやで。ここからは大人の時間や!
最終更新:2011年03月15日 18:23