高良みゆきの通院Ⅱ 2

なぜ、みゆきさんは元気が無いのだろう
治療が終わってしまうからか?普通逆だろ
イヤな事が終わるのに喜ばないなんて・・・
治療が終わることによって、なにか別のことまで終わってしまうのか?
だから、あんなに落ち込んでいるのだろうか・・・?

歯医者さんの通院はあと2回
私はそれまでに、キョンさんに想いを伝えなければなりません
でも、怖いんです・・・
あのドリルの音なんかより、ずっと
キョンさんの気持ちを知るのが・・・怖い
想いが通じ合うのなら、それはとても喜ばしいことですが
でも、もしこの想いが一方通行だったら・・・
そう考えると、とっても怖いんです
このままではいけない、そうわかってはいるのですが
あと一歩が踏み出せないでいるんです


キョン妹「キョンく~ん、起きてぇー」
ボフッ!!
キョン「おぅぶ!!!!」
妹よ、手加減というのをしらんのか?
キョン妹「てへっ☆」
何がてへっ☆だ・・・って今何時?
キョン妹「もう10時だよぉ」
なにー!!!
やばい、完全に遅刻だ・・・


キョンさんが、来ない・・・
きっと急な用事が入ったんでしょう
しかたないですね・・・今日は1人で行きます・・・

いつもならキョンさんとお話しながら歯科医院へ向かうので
緊張なんか忘れているのですが・・・
キョンさんがいないと、足取りがとても重くなります
でも、いくら重くなったといっても
一歩一歩、確実に目的地に近づいていきます
それにともなって、恐怖心も一歩一歩
私へと近づいてくるのです

そしてついに、歯科医院の扉の前までやってきました
ですが・・・中へ入る勇気が無いんです
キョンさんがいないと怖くてたまらないんです
キョンさんがいないと・・・

キョンさん・・・どうして来てくれないの?
どうして、手をつないでくれないの?
どうして、抱きしめてくれないの?
キョンさん・・・キョンさん・・・
怖い!!キョンさんがいないと
怖くてたまらないんです!!
キョンさん・・・キョンさん!!

人目を憚らず、まるで子供のように泣く私の姿は
周りを歩く通行人の目に、どう映ったのでしょう・・・

みゆき「ぐすっ・・・キョン・・さん」
この涙は怖いからという理由だけではありません

『どうして?どうして私の気持ちに気付いてくれないの?』

待ち合わせ場所にはもうみゆきさんはいなかった
当たり前だよな・・・俺は急いで歯医者へと向かう
この道を歩くとき、みゆきさんは怖くてたまらなかったはずだ
俺がその恐怖心を和らげてあげてたんだからな
ちくしょー、今日ほど自分の寝起きの悪さを呪う日は無いな

もう行きなれた歯医者さんの前に、その女性はいた
扉の前に立ち、1人静かに泣いていた・・・
まるで何か悪さをして家を追い出され、
玄関の前で泣きながら許しを請う、小さな女の子のように

キョン「みゆきさん!!」

みゆき「・・・キョンさん・・・キョンさん!!」
そういってみゆきさんは俺に抱きついてきた
その体の出せる精一杯の力で・・・
キョン「みゆきさん、すいません」
みゆき「キョンさん・・・キョンさん・・・」
キョン「大丈夫です、俺がいますから」
みゆき「チガウ・・・違うんです」
キョン「え?」
みゆき「違うんです・・・」
キョン「何が、違うんです?」
みゆき「・・・キョンさんは、本当に鈍感さんですね」
キョン「??・・・と、とにかく診察を」

なんとか落ち着いてくれたようで、
今日も無事、診察を終えたみゆきさんはまた、いつもの顔に戻っていた
でもやはり、どこか暗い感じがする・・・

   「チガウ・・・違うんです」

一体何が言いたかったんだ?何が違うんだ?

   「鈍感さんですね」

鈍感だと言ったな・・・よく言われるが、俺はそんなつもりはないんだよな
ってそれにさえ気付かないから鈍感だと言われるのか・・・
ま、そんなこと今はどうでもいい
これから楽しい楽しいティータイムなんだからな

みゆき「すみません、キョンさん・・・今日はもう帰ってもらえますか?」
キョン「え?・・・あ、はい・・・」
みゆき「すみません」
キョン「そ、そんな謝んなくてもいいですよ そう何度もお邪魔するわけに行かないし・・・」
みゆき「邪魔なんかじゃありません・・・ただ、今日は・・・」
キョン「じゃ次の、最後の診察のときに」
みゆき「はい、今日はありがとうございました」

ちょっと残念だったが、今日あんなことがあったんだ
俺にも責任があるんだし、しょうがないよな
次で最後か・・・なんだかあの紅茶が飲めなくなるのは寂しいな
それに、ゆかr・・・なんでもない

みゆき「ただいま・・・」
ゆかり「おかえりみゆき、あら?キョン君は?」
みゆき「今日は帰ってもらいました」
ゆかり「あら、ざんねん、用事があったのかしら?」
みゆき「・・・」
ゆかり「・・・違うようね」
みゆき「・・・」
ゆかり「みゆき、何事もやらなくて後悔するよりも・・・って誰かが言ってたわよね
     今のみゆきにピッタリの言葉なんじゃないかしら?」
みゆき「・・・」
ゆかり「もう次で診察は最後なんでしょ?
     でもこの関係を最後にするかしないかは
     みゆき自身にかかっているの、たとえその結果がダメだったとしても、
     それでも、想いを伝えるってことはとっても大切な事なのよ」
みゆき「お母さん・・・」
ゆかり「口で上手く伝えられなくても大丈夫・・・
     心が通じれば、貴方の思いは必ずキョン君に届くはずよ」
みゆき「・・・はい」

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2007年08月05日 17:56
ツールボックス

下から選んでください:

新しいページを作成する
ヘルプ / FAQ もご覧ください。