作品番号002「まつり橋理論!?」

泉どなた ◆Hc5WLMHH4E 氏の作品。

こな×キョン

「まつり橋理論!?」

「夏・・・といえば?」
そう聞かれると、人それぞれ浮かんでくるものは違うから
聞けば聞くほどいろいろ出てきそうだが
「夏といえばお祭りだ!」って人も多いのではないだろうか

こなた「ねぇキョンキョン」
キョン「なんだ?」
こなた「近々お祭りがあるんだけど」
キョン「もうそんな季節だったな」
こなた「でさ、一緒に行かないかなぁなんて・・・」
キョン「そうだな、ハルヒが知ったら目を輝かせて喜ぶだろうよ
    それにかがみやつかさに、みゆきさ・・・」
こなた「ち、違うよ!!」
キョン「??」
こなた「キョンキョンと二人で行きたいんだヨ」
キョン「でも大勢で行ったほうが・・・」
こなた「いーからいーから」

ということで・・・こなたと夏祭りに行くことになった
ハルヒが聞いたら「みんなで行くわよ!!」ってことになるのだろうが
今日祭りに行くことは俺とこなたしか知らない・・・
こなた切っての希望により、二人きりで行くことになったので
団長様はもとより、その他の人にも内緒にしているのである
祭りに行った先でばったり・・・なんてこともあるかもしれんが
まぁこなたとは別にやましいことがあるわけじゃない
こなたは他の子とは違って、なんの気兼ねもいらず
肩の力を抜いて接する事のできる女友達だからな
その気兼ねのいらなさが、俺は好きだ
何だか居心地がいいと言うか、気を遣わなくていいというか

それにしても俺と二人で行ったってつまんないんじゃないだろうか
多人数で行ったほうがにぎやかで楽しいんじゃないか?
ま、俺としては余計な気疲れをしないですむわけだから
そっちのほうが都合がいいんだがな

それに実は、別の意味でも都合がいいこともあるんだよな
何のことかって?禁則事項だ!! 夏といえばコミケでしょ!!
・・・と言いたいところだけど、今回は違うヨ

夏っていうとやっぱりお祭りだヨ!フェスティバルだヨ!!
ヲタクっ気たっぷりのあたしだけど、別にインドアな訳じゃない
こういう催し物は大好きなんだー
しかも今日はキョンキョンと二人きりで・・・これなんてエロゲ?

実はこの祭りのドサクサにまぎれて
キョンキョンとの仲を深めようと密かに計画を立てている
題して「お祭り気分でキョンキョンに告白大作戦」

たしか・・・
高い吊り橋の上で男女が出会うと、恐怖心による心のドキドキを
恋のドキドキと勘違いして・・・っていうのがあったよね?
その吊り橋理論を応用して、キョンキョンに愛の告白をしようと思う
今日は花火が上がるみたいだから・・・
花火を見たキョンキョンは、それを見たことによる心のドキドキを
私に対する恋心によるドキドキと勘違いするはず
そのタイミングで告白すると、成功率がぐぅんと上がるんだよ
よーし!今日は頑張んないとね!!



いろんな虫の鳴き声や、誰かの家にぶら下げられ
風の音を奏でる風鈴・・・そして少し生ぬる~い感じの空気
そのどれもが、風情ある日本の夏を演出している
俺はというと、ペタペタとサンダルの音を鳴らしながら
祭りの会場である柊家の神社へと足を運んでいる
って待てよ・・・こなたは二人きりで行きたいと言ったが
かがみやつかさにしたら、自分んちの庭で開催される祭りだ
見つかる可能性は十分にある、ありすぎるぐらいだ
別に見つかってもどうということはないが
何かいらぬ誤解をされたりするんじゃないのか?

こなたは神社の入り口で待っているそうだが・・・お、居た居た
浴衣を着ているが、その身長と彼女のトレードマークである
青くピンと跳ねた髪ですぐにわかった

キョン「こなたー」
こなた「あっキョンキョン」
キョン「ごめんな、待っただろ?」
こなた「ううん、そんなに待ってないよ」
キョン「そうか」
こなた「ねぇキョンキョン・・・浴衣、どうかな?」

そういって俺の目の前でクルリと回ったこなただが
浴衣姿のこなたは普段見慣れないということもあり
とても新鮮で、正直とても魅力的だった
やはりこの浴衣というものは女性の魅力を何倍にも引き上げるものなんだな
決して普段のこなたに魅力が無いと言っているわけじゃないが
いつもはラフ~な格好をしているため、余計に効果がある気がするぞ
それに加え、今日のこなたの髪型はポニーテールときたもんだ
綺麗なうなじが、俺の目を釘付けにする・・・あぁ、生きててよかった
それにしても・・・

キョン「とても似合ってるが、浴衣って着付けるの結構大変だろ?帯とか」
こなた「まぁ大変だね」
キョン「そういうのはやっぱりお店で着付けてもらうのか?」
こなた「いや、おとーさんに結んでもらった」
キョン「そ、そうか・・・」
こなた「さぁ、行こ~」
キョン(どーしておとーさんが結べるんだ?)
焼きそばにイカ焼き、それにカキ氷・・・
そのほかには金魚すくいやクジ引きがあったりと
えらくベタな出店がズラリと並んでいる
へぇ、まだお面屋さんなんてもんがあるんだな
某仮面ライダーや、某ウルトラマン
それに某ドラえもんなんかのお面がたくさん飾ってある


ゆい「おーい、こなたちゃん☆」

そう言ってニンマリとした顔で腕をブンブン振りながら
こちらに近づいてくる、一人の女性警察官がいた
頭の横には、なんのキャラクターかは知らないが
帽子を被った熊さんのようなお面が付けられている

こなた「おー」
キョン「け、警察の人!?知り合いなのか?」
こなた「親戚のゆい姉さんだヨ」
ゆい「よろしく~☆」
キョン「は、はぁ・・・よろしくお願いします」

ゆいさんか、綺麗な人だなー
それにこのホンワカとした雰囲気は人を和ませる
俺にはメガネ属性は無いと言ったことがあるが
メガネを掛け、しかも婦警さん・・・つまり「制服」という
こなたの言葉を借りるなら、萌え要素が詰まった人だ

ゆい「そうかそうか、こなたちゃんにもついに
    彼氏ができたんだね、びっくりだ☆」
キョン「いやいやいや、俺達同級生ですから」
こなた「・・・ム」
ゆい「なんと!?ごめんごめん、お姉さんびっくりだ
    祭りの日に男の子と二人っきりで居るからついね」
キョン「いえいえ」
ゆい「それじゃ、お姉さんは仕事にもどるよ」
こなた「・・・・・・」
キョン「なんだかマイペースな人だな」
こなた「・・・」
キョン「あれ?ど、どうしたんだ?」
こなた「人の気も知らないで・・・」
キョン「え?」
こなた「・・・」
キョン「??」

いくら付き合ってないからって
あんなに強く否定しなくてもいいジャン!しかも即答!!
やっぱりそうか・・・いつも気兼ねなく接しているけど
きっと私を異性として、女として意識してないんだ・・・
無理もないか、私女っ気無いもんなぁ・・・胸と身長も
すでに今日の計画の成功が危ぶまれた感があるネ
でもしょうがない、当たって砕けろだ!ごーふぉーぶろっくだ!!
「危ぶむなかれ、危ぶめば道は無し」って誰かが言ってたよね?


ゆいさんと会ってから、ちょっとこなたの様子がおかしい
もしかして怒ってる?俺何かマズイこと言ったかな?
これじゃ今日の計画が・・・っと、なんでもないぞ
まったく・・・乙女心ってのはわからんな
もっともこなたは乙女って言うより、じゃりン子って感じか?
・・・「じゃりン子」ってどういう意味なんだっけ?
まぁいいや、それより機嫌をなおしてもらわないといけないな

キョン「こなた、わた飴でも食べないか?」
こなた「うん!!食べよ食べよ」
キョン「早っ!!」
こなた「なにが?」
キョン「なんでもない」
こなた「?」
キョン「二人でひとつでいいだろ?」
こなた「うん!そのくらいがちょうどいいよ」
こういった祭りなんかで、たまに食べるわた飴は
なんだかとても美味しく感じるな・・・
雲のように白く柔らかなわたを手でちぎり、口に運ぶ
その雲は口の中ですぅーっと溶け、口全体に甘さが広がっていく
やがてその甘さが体中に広がり、体内に溜まった疲れを溶かしていく

こなたも嬉しそうに食べてるし、機嫌がなおってよかった
なんてったって今日俺は・・・

こなた「おいひぃね」
おいこなた、鼻に付いてるぞ!

キョン「子供じゃないんだから、落ち着いて食べろよ・・・あむっ」
鼻に付いたわた飴を取ってやり、口に入れる

こなた「・・・ぃぃ」
キョン「??」
こなた「これがギャルゲーだと、次はイベントシーンだね」
キョン「イベント?」
こなた「浴衣で野外だよ?」
キョン「そりゃ室内で祭りはできないよな」
こなた「わかってないなぁキョンキョンは」
キョン「・・・わからないほうがいいのかもしれないな」
こなた「まぁね」

あれ?今まで結構人がいたのに・・・何だか少なくなってないか?
こなた「きっともうすぐ近くの川岸で花火が上がるから
     みんな見やすい場所に移動してるんだよ」
キョン「それなら俺達もいいとこ探そうぜ」
こなた「そだね」

キョン「あそこなんかどうだ?よく見えそうだし、ちょうど座れる」
こなた「うん、そこでいいよ」
ついに花火が始まるのか・・・
いよいよ作戦開始の時も近くなってきたネ
う~、緊張するなぁ・・・

なんだかまたこなたの様子がおかしいな
妙におとなしくなったぞ?
もしかして・・・

キョン「こなた」
こなた「な、なに?」
キョン「もしかして、花火怖いのか?」
こなた「え?全然怖くないよ 大好きだよ」
キョン「いや、あんまりおとなしかったからさ」
こなた「ち、ちょっと考え事してたから・・・」
キョン「考え事?」
こなた「うん、どうやって切り出そうかなぁ、って・・・」
キョン「なにが?」
こなた「い゛っ!?な、なんでもないよ!!」

ふぅ・・・あぶないあぶない
危うくキョンキョンにばれるところだった
まぁこのあと私の気持ちを伝えるわけだから
ばれるといったらばれるんだけど

・・・それにしても花火まだかなぁ
なんだか結果がどうであれ早く言ってすっきりしたいよ
どうしようかな・・・もう言っちゃおうかな・・・
思い立ったが吉日って言うしなぁ

よしっ!!頑張れ、私!!

こなた「キョ、キョンキョン」
キョン「なんだ?」
こなた「あのね、あたしね・・・」
キョン「?」
こなた「あの・・・」

頑張れ!頑張れこなちゃん!!

こなた「キョ、キョンキョンの事が・・・すk」
ピュ~・・・ドーン!!

うがぁぁぁ!!いいところでー!!!
私が一番肝心なフレーズを言うと同時に花火が上がった
これは神の見えざる手が働いたに違いない・・・
まるで戦争でも始まったかのようにドドドドー!!っと
花火が鳴り響く・・・見た目は綺麗だけど、この音が厄介だね



こなたが何か言おうとしていたが、花火の音でかき消されてしまった・・・
俺のことがどうとか言ってたが、どうかしたのだろうか?
まさか!?・・・いや、まさかな・・・

それにしても、この音がウルサイのは厄介だが・・・それを抜きにすると
花火というのはとても幻想的で、美しいな・・・
火の玉が龍のように天に昇って行き、そこから一気に破裂する
たくさんの光の粒が、球状に広がってゆく・・・
その情景は、宇宙が始まったとされる大爆発「ビッグバン」をイメージさせる
まぁ実際に見たことがあるわけじゃないから
ビッグバンがどういうやつだったかは知らんがな
いやーでも上手く丸い球の形にするのは相当難しいんだろうな
まさに熟練の技といったところだな

「・・・ョン!!」

しかし花火職人っていつも何やってんだ?
夏のシーズンじゃないと仕事しないってわけじゃないよな?

「キョ・・・・・・ン!!」

きっと何かしらあるんだろう・・・
そうしないと、それだけじゃ食っていけないだろうし

こなた「キョンキョン!!」

キョン「ん?あぁスマン、音がうるさくてさー」
こなた「キョンキョン・・・好きだヨ 大好きだヨ」
キョン「え、えー?なにー??」
こなた「もぅ!!聞こえてないし・・・」
キョン(聞こえてるんだけどな・・・)


ドドドーン!!
最後の花火が打ち終わり、また静寂が戻ってきた
あ~まだ耳がキーンって言ってるぜ・・・
さて、そろそろか・・・
今までは落ち着いていたが、さすがに緊張するな


さっき言おうとして失敗しちゃったけど
邪魔する花火も終わったし、ちゃんと伝わるよネ
・・・き、緊張するなぁ

キョン「こなt・・・」
こなた「キョンキョン!!」
キョン「な、何だ?こなた」
こなた「あの・・・その・・・」
キョン「・・・」
こなた「えっと・・・」
キョン「・・・」
こなた「あたしね・・・あたし・・・」

えぇい!突撃あるのみ!!

こなた「キョンキョン!!」
キョン「は、はい!?」
こなた「い、今までロマンスとは無縁だったあたしだけど、
    キョンキョンに出会ってから自分でも驚くくらい恋してた
    たまにキョンキョンをからかったりしてたけど
    あの時は冗談半分本気半分って感じだった
    実は今日二人きりで行こうって言ったのは
    こうやってキョンキョンに想いを伝える為だったんだ」

キョン「こなた・・・」
こなた「つまり、何が言いたいかっていうと・・・」

    「私、キョンキョンのことが好き、大好き!!」

キョン「・・・・・・」

い、言っちゃったよぉ・・・
どうしよう・・・ってもうどうしようもないよね
もう私のするべきことは終わった・・・
後はキョンキョンの答えを聞くだけ

キョン「こなた・・・スマン、俺は・・・」
こなた「え・・・」

そっか、ダメか・・・やっぱり私を女としては見てはいないんだね
私はただの・・・ただの友達なんだよね・・・

こうなるかもしれないってのは分かってたけど
根拠もなく「うまくいくんじゃないかなぁ?」なんて思ってたんだ
でも、世の中そんなに甘かー無いネ・・・
はぁ・・・何だか悲しくなってきちゃったな
ただキョンキョンのことが好きなだけなのに
なんでこんなに悲しくなっちゃうの?なんで?
私はこんなにキョンキョンのことを想っているのに
どうしてキョンキョンは私のことを好きになってくれないの?

こなた「うぅ・・・ぐすっ・・・」
キョン「ちょ、ちょっと待てって!最後まで聞け」
こなた「もういいよ!!ギョンギョンの・・・気持ぢはわがっだがら・・・」
キョン「だから聞けって!!」
こなた「・・・」
キョン「ごめんな・・・その言葉は、俺が言わなきゃいけなかった」
こなた「え?」
キョン「実はな、俺は今日ある計画を立ててこの祭りへやってきたんだ」
こなた「計画?それって・・・」
キョン「題して・・・“吊り橋大作戦”だ」
こなた「つ、吊り橋!?」
キョン「吊り橋理論って知ってるよな?たとえば揺れる吊り橋に男女がいるとする
     するとその揺れることや、高い所にいるってことへの恐怖心による
     心拍数の上昇を、恋における心拍数の上昇と錯覚してしまう」
こなた「そしてその男女は恋に落ちやすい・・・」
キョン「それを応用してだな、この花火を見た後、
     興奮冷めやらぬうちに、こなたに告白しようと考えていたんだよ」
こなた「キョンキョン・・・」
キョン「ということで改めて俺から・・・」
キョン「こなた・・・俺はこなたのことが好きだ
    自分で吊り橋理論なんか言ったが、俺が今ドキドキしてるのは
    花火による興奮を、それと錯覚してるわけじゃない
    これは思い違いなんかじゃないだ!!
    俺には吊り橋なんて、花火なんていらない・・・そんなの無くたって
    こなたといると、それだけでずっとドキドキしてたんだからな・・・俺は・・・」

    「俺は心の底から、こなたのことが好きだ」

こなた「キョンキョン・・・うわぁぁぁん!!」
キョン「ごめんな・・・こなた」
こなた「うぅ・・・チガウよ・・・うれしくて、泣いてるんだヨ・・・」



作戦成功・・・でいいのかな?
ただ、一つだけ問題があるんだよねぇ

こなた「そういえばさー、キョンキョン」
キョン「ん?」
こなた「吊り橋理論で恋愛が発展した場合、その恋は長続きしないんだって」
キョン「しょせん作られた恋愛感情だからな・・・偽りの」
こなた「うん・・・」
キョン「でも、大丈夫だ 俺は違う・・・
    俺がこなたを思う気持ちは偽りなんかじゃないからな」
こなた「あたしだってそうだヨ!ニセモノなんかじゃないヨ!!」
キョン「俺達に吊り橋は要らなかったようだな」
こなた「二人の心の吊り橋は、最初から掛かってたんだね」
キョン「うわぁ・・・さぶっ」
こなた「あぁー!ひっど~いキョンキョン!!」
キョン「冗談だって」
こなた「は、恥ずかしいじゃないか////」

にぎやかだった祭りも終わり
・・・よいしょ
ぞろぞろとみんな帰っていく
俺達もそれにつられて帰路へとついたわけであるが
・・・・・・よっと
俺は今ある荷物を抱えている・・・その荷物はというと
何を隠そう、こなたお嬢様である
きっといろいろ疲れたんだろうな・・・
今俺におんぶされて、気持ちよさそうに寝息を立てている
・・・・・・よいしょっと
それはいいのだが・・・こなた、俺の肩がびしょびしょになるほど
ヨダレを垂らしてくれなくてもいいんじゃないか?
仮にも・・・というと失礼だが、こなたも女の子だろ?
それなのに惜しげもなくヨダレをお垂らしになられるとはな
・・・・・・どっこいしょ
まっそこがこなたの可愛いところなんだろう・・・俺はそう思う
これがもしおんぶしてるのがこなたじゃなかったら、
俺は今すぐにでもたたき起こして、クリーニング代を請求するね
・・・・・・よっと

それにしても決して重たいわけじゃないのに、なぜこうもズリ落ちてくるんだ?
恐らくこなたがリラックスしすぎで、力を完全に抜いているからだ
こんな調子じゃ、背中までびしょびしょになっちゃうぞ
・・・・・・よいしょ!!
あぁーもう!!いっそのこと前から抱きついてくれたほうが楽だな
どうせ当たるものは無いんだし・・・・・・ぐぇ!!
く、首を絞めるな!!・・・ホントに寝てんだろうな!?

こなた「すぅー・・・すぅー」

眠ってても反応するとは・・・
あまり表には出さないが、よほど気にしてるのだろうか?
希少価値だとか言って開き直ってたくせに
それから何度も何度もこなたを担ぎなおしながら
今やっと泉家の前までやってきた
もう肩とはいわず、背中全体がこなたの唾液でビショビショだ

・・・流石に唾液だけじゃこんなにビショビショにはならないだろうから
密着してたことにより汗をかいたのも、関係しているんだろう・・・


キョン「おい、こなた 起きろー着いたぞ」
こなた「うぅ~ん・・・キョンキョン、そこはまだはやいよぉ」
キョン「こなた?」
こなた「まだ前戯が・・・ムニャムニャ」
キョン「おい!こなた、起きろ!なんて夢見てんだッ!!」
こなた「んぁ?キョンキョン、おはよー」
キョン「ふぅ・・・」
こなた「なんだかとっても気持ちいい夢をみたような・・・」
キョン「き、気のせいだろ?」
こなた「そっか・・・ごめんねキョンキョン、重かったでしょ?」
キョン「軽い軽い、これで重いなんて言ってたら、俺は自分の腕がすでに重いだろうよ」
こなた「うれしいけど、それは言いすぎじゃない?」
キョン「そうだな、重かったぞ」
こなた「ウソ!?」
キョン「あぁウソだ、こなたも気にするんだな」
こなた「あたしも一応女の子だし」
キョン「でもそんなこと言ってると成長しなきゃいけない所も、成長しないぞ」
こなた「あーッ!言ったなぁキョンキョン!!こうしてやるーッ」

グリグリグリグリ・・・

キョン「イタタタ・・・じ、冗談だって!!俺はこなたの身体だけが好きなんじゃない
     それも全部ひっくるめた「こなた」が好きなんだよー」
こなた「!!!!」

ピタッ・・・

キョン「ん?どうした?」
こなた「・・・よくそんな恥ずかしいことをシラフで言えるねぇ」
キョン「未成年の飲酒は法律で禁止されてるんだぞ」
そうじろう「そうだぞ、こなた・・・もし酔っ払って
      そこのキョンキョンとやらに襲われたらどうする!!」
こなた「い、いつからいたの!?おとーさん」
キョン「げぇーっ!こなたさんのお父さん!?って俺はそんなことしませんよ!」
そうじろう「いや、いいんだいいんだ・・・そうでもしてくれないと
      こなたを襲うような物好きは他にいないからな」
こなた「何いってんのさ、おとーさん!!あたしと瓜二つの
    お母さんを襲ったから、あたしが生まれたんでしょ?」
そうじろう「ぐっ!!」
キョン「お互い物好きだってことですね」
そうじろう「そうだな・・・どうだ?物好き同士、今度一杯」
キョン「その時が来たら、是非つき合わせてください」
そうじろう「こりゃ楽しみだな」
キョン「それじゃ、俺はこれで・・・失礼します」
こなた「ばいにー☆キョンキョン」
キョン「あぁ、またな」
そうじろう「ばいにー☆キョンキョン」
キョン「ば、ばいにー・・・」


こなた「おとーさん絶対キョンキョンに掴みかかると思ってた」
そうじろう「そのつもりだったんだがな・・・」
こなた「そうだったの!?」
そうじろう「なかなかいい青年じゃないか」
こなた「そりゃそうだよ!キョンキョンだもん」
そうじろう「かなたも・・・喜んでるだろうな、こなたに彼氏ができて・・・」
こなた「??・・・お父さん、泣いてるの?」
そうじろう「あくびだよ!あ・く・び!!」
こなた「キョンキョンもそうだけど、おとーさんも素直じゃないね」
そうじろう「そうかもな・・・ぐすっ」
自宅へ向けてトボトボと、今来た道を戻ってゆく
距離は近いわけじゃないが、俺とこなたの家の間に柊家があるからな

祭りの会場はもう静まり返っており、それぞれの出店していた人達が、
自分達の商売道具をもくもくと片付け始めていた

・・・ん?

俺の目に見知ったパープルヘアーのツインテールと
これまたパープルのショートヘアーにリボンを着けた女の子の姿があった
柊かがみと柊つかさの双子姉妹である
二人も俺に気が付いたようで、こちらを向きニッコリと笑っている

つかさ「キョンくぅーん、おはよー」
キョン「おはよう、つかさ・・・今何時かわかるか?」
つかさ「あっ!ご、ごめぇん間違えちゃった☆えへへ~」
かがみ「キョン君も来てたんだ、一人で?」
キョン「いや・・・こなたと来てたんでな、今送ってきたとこだ」
かがみ「へぇ、珍しいわね」
キョン「ま、まぁな」
つかさ「みんなで来ればよかったのに、その方がにぎやかだし」
キョン「あぁ、そうだな」
かがみ「涼宮さん達は来なかったの?」
キョン「いや、その・・・言ってないんだ」
かがみ「あぁ・・・そう」
キョン「じ、じゃー俺はもう帰るぞ」
つかさ「うん!!お休みぃ☆」
キョン「オヤスミ」

・・・別に正直に言ってもよかったな
何も悪い事をしたわけじゃないんだし
タッタッタッタ・・・

かがみ「キョン君!!」
キョン「か、かがみ?もう帰ったんじゃなかったのか?」
かがみ「つかさには先に帰ってもらったわ」
キョン「そうか・・・」
かがみ「それより、キョン君!!」
キョン「はい?」
かがみ「別に隠さなくてもいいわよ・・・こなたと付き合うことになったんでしょ?」
キョン「隠すつもりは無かったんだが、見てたのか?」
かがみ「今日キョン君を見たのは、さっきのが初めてよ」
キョン「女の感ってやつか?」
かがみ「女でなくてもわかるわよ、祭りに男女が二人きりよ?もう間違いないじゃないの」
キョン「言われてみれば、そう思われるのも当たり前だよな」
かがみ「そうよ」
キョン「ホントに隠すつもりじゃなかったんだ」
かがみ「別にいいわよ、悪い事したんじゃないんだし」
キョン「・・・そうだな」
かがみ「それより、涼宮さんが知ったらきっと驚くどころじゃないわよ」
キョン「忘れてた・・・」
かがみ「ま、何とかなるんじゃない?」
キョン「ずいぶん他人事だなぁ」
かがみ「そりゃそうよ、他人事だもん」
キョン「・・・」
かがみ「これはキョン君とこなたの問題よ、第三者のあたしが介入する事じゃないわ」
キョン「・・・なぁ、かがみ」
かがみ「なによ?」
キョン「もしかして、かがみも俺のこと・・・」
かがみ「そ、それ以上言わないで!!」
キョン「かがみ・・・」
かがみ「じゃ、あたし帰るから・・・」
キョン「あぁ・・・」
かがみ「それじゃー・・・ね」
キョン「オヤスミ」

「キョン君!!」

キョン「今度は何だ??」
かがみ「絶対に・・・絶対にこなたを大切にしなさいよ!!
     もし泣かせたりなんかしたら、代わりにあたしがブッ飛ばすからね!!」
キョン「そりゃ痛そうだ、気をつけるよ」
かがみ「もぅ!!本気で言ってんの!!」
キョン「わかってるさ・・・ありがとよ」
かがみ(何でお礼なんか言うのよ・・・)

別に私には関係ないわ・・・他人事だもん
第三者である私の気持ちなんて、関係ないのよ
私の・・・気持ちなんて・・・
とにかくこうなった以上、二人を見守っていかないとね
もし、こなたを悲しませたりしたら
そのときは・・・メッタメタのギッタギタよ!!!



キョンキョンが「友達」から「恋人」になったんだよね
なんだか実感わかないや

あぁ~ぁ・・・いろんなことがあって、疲れちゃったなぁ
でもキョンキョンの背中で眠ってたから、とっても気持ちよかった
今日はちょっと計画通りには行かなかったけど
計画ってのは狂う為にある、そういうものだヨ
とにかく、終わり良ければすべて良しってことにして
今日は・・・もう寝よう


オヤスミ、キョンキョン・・・

ハルヒだけじゃない、とにかくできるだけ早く
俺達を知るみんなに報告しなきゃいけないな・・・
早ければ早いほうがいいだろう・・・そうしないと
「隠している」なんて思われたらイヤだからな


しかし・・・ハルヒに言うと・・・

まず、祭りがあることを知らせなかったこと
さらに、こなたと二人きりで祭りに行ったこと
さらにさらに、そこで俺とこなたの関係が「友達」から「恋人」に変わったこと

この三つのことについて、俺は小一時間といわず一日中問い詰められるだろう
あぁ・・・その時、ハルヒはもとより、長門・古泉・朝比奈さんは
どんな顔をしているんだろうな・・・
きっと酷く驚いた顔をしていることだろうよ
なんてったって世界が崩壊しかねないんだからな・・・

って待てよ・・・あの三人のことだ、もう知ってるんじゃないだろうな?
いや、知っているに違いないぞ!!
それで何も言ってこないってことは、やっぱり大丈夫なのか
それとも本当にまだ知らないかだろう・・・
さて、これからいろいろと疲れそうだ
みんなに報告する事だけじゃない・・・

今後いろんな試練が俺達二人の前に立ちはだかるだろう
その時に、俺はこなたを守っていかなくてはならない
こなたを泣かせるようなことはしてはいけない
だって、かがみにボコボコにされるからな・・・なんつって
ただ単に、誰よりもまずこの俺が
うれし泣きを除いて、こなたの涙を見たくないからな
・・・こなたを、悲しませたくはないからな


よしっ!!今のうちに英気を養っておかないといけないし
今日はもう寝るか・・・

外はまだ虫の声がオーケストラの如く鳴り響き
窓を開けると、生ぬるい風が俺の体を通り抜ける
やれやれ・・・今日もまた、寝苦しい夜になりそうだ
でも、何だかいい夢が見れそうな機がするな

そんなことを考えながら、俺は静かに電気を消した



オヤスミ、こなた・・・



          -fin-

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最終更新:2007年11月04日 23:41
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