ジャッカル
◆JACKALz.7M 氏の作品
『貫通ハートマン』
※キャラ微崩壊注意
藤原「僕は何時まで歩けばいい・・・。誰か僕の知らないところで決められ、抗う術すらないこの規定という道を・・・」
俺はたまたま見た。ベンチに座って絶望している男を。これが女の子だったらナンパしていただろうな。
もっともひと昔前の話だが。
俺はひよりとの待ち合わせ場所に向かうべく、キックボードに乗っていた。だから男・・・絶望男とでも呼ぶか。そいつの人相はよく見ていない。
ただ、何か共感できそうな感じはしたんだ。わかっちまうから仕方ない。
ひより「遅刻!罰金!」
谷口「集合時間には間に合ったろ?」
ひより「冗談です。さぁ、行きましょう」
今日はひよりに付き合って、画材屋に来た。懐かしいクレヨンから本格的な2インチの筆、キャンパス、絵の具・・・なんでも揃っている。
ここにはまだ二回しか来た事が無いが、この独特の落ち着いた雰囲気が好きだ。
ひよりはA4のケント紙とスクリーントーンを買ったようだ。
俺は迷わずコピックを買った。ひよりの創作活動の手伝いがあるからな。
そして飯。とくに気障ったらしい事はせず、レストランに入る。
イタリアンは美味い。理由はそれだけだった。だが出会いは唐突だ、いつの時代もな。
みさお「あれー?かがみの後輩の・・・」
あやの「大声出さないの」
みさお「てへへー」
どうやらひよりの知り合いらしいな。俺は当たり障りの無い挨拶をする。
谷口「乳酸菌採ってるぅ?」
あやの・みさお「・・・?」
ひより「何故に銀様なんですか・・・はぁ」
当たり障りがあったようだ。だが気にもされず会話は続けられる。
ひより「この人は谷口さんっていう腹黒い人ッス」
みさお「腹黒ー」
あやの「あらあら」
ひより「こちらは日下部みさおさんと峰岸あやのさんです。素敵な人達です・・・人達ッスよ」
みさお「じゃあたにぐっちー、なんか面白い話ない?最近、なんかお決まりのパターンでさー」
あやの「学生なんだから仕方ないでしょ」
面白い話か・・・。
うちのクラスにいるキョンって奴が涼宮っていう奴と波瀾万丈な学校生活を送ってる様は見てて面白いと思うけどな。
ひより「日下部先輩も同人を・・・」
みさお「どーじんか・・・絵が描けないよ」
俺も最初は描けなかったな。だが優れた道具によって俺は進化した。
ニインチの筆と三ミリの筆で背景は任せろっていうまでにだ。
みさお「そこまで続かないんだよなー」
根気が肝心だぞ、何事も。なぁ?
ひより「そうですよ、何事も。何事もね。」
俺達は二人と別れ、その辺をぶらぶらすることにした。
ある意味、若者の特権である。
夕涼みにちょっと夜風に当たる、っていうのが似合うのはまだ先だろうな。
ちょっと落ち着いた時間に公園に行く。パターン?そんなもんさ
谷口「その服、やっぱり似合うな」
ひより「褒めても何も出ませんよーだ」
谷口「じゃあ俺から出してやるよ・・・HOI」
ひより「イヤリング・・・?」
谷口「たいして高いもんじゃないけどな。」
ひより「・・・付けてもいいですか?」
谷口「あぁ」
ひよりの耳に、日の光に当たって煌々と煌めくシルバーイヤリング。
確かに高くはない。俺の手づくりだからだ。
贈る物には心を込める。それがハートに火を付ける必須条件だと俺は思ってる。
谷口「似合ってるぞ」
ひより「ふふ・・・さて、どうでしょうね?」
谷口「どうも何もない。俺が保証する。最高だ。」
ひより「・・・もう、離しませんから。返してなんて言っても離しませんから。」
谷口「離させやしない。」
ひより「・・・バカ」
ひよりは俺の胸で泣いた。珍しい。
いつもは照れ隠しか本心かはわからないが、大体ははぐらかすのに。
俺はほんの少しだけ戸惑いを覚えたが、こうしているのが何よりも心地よかったから、そんな戸惑いはすぐに消えた。
その後はゲーセンでひたすらQMAをやった後、お開きとなった。
そう。夜である。時刻は8時十四分。
ひよりの家を目指し、並び歩いていると、俺には見慣れた人物が現れた。
谷口「国木田」
国木田「・・・可愛い」
ひより「こんばんはー」
国木田「谷口、誘拐は犯罪だよ?」
谷口「ふざけるな!?」
ひより「二人とも仲がいいッスね、うっしっし」
国木田「ねぇ君、彼の何処に惚れたんだい?君は人生に最大の汚点を残す事になるかもよ?」
谷口「ゴホンゴホン」
ひより「えーと・・・禁則事項です☆」
やれやれ、なんだか今日のひよりは絶好調のようだな。さっき泣いた鴉がもう笑ってやがる。まぁ、いい事だけどな。
しつこく言い寄る国木田に「通報しますた」と言い残し、ひより家に着いた。
谷口「疲れたか?」
ひより「うぅん・・・とても楽しかったし、嬉しかった・・・」
谷口「ははっ、俺もだ」
ひよりは背伸びをして、ゆっくりと近づいてくる。
ひより「瞳を閉じて」
ヒライケンか?俺はあまり詳しくない―――――
そんな照れ隠しを告げようとしたが失敗した。
唇にある、初めて味わう柔らかい感触。
ミントの味なんてしないさ。
ひよりの好きな、あんみつの味がした――――――
ひより「ありがとっ!じゃあまた!!」
全力疾走のようなていでひよりは家へと帰還した。
恥ずかしい話だが、俺は見惚れていて動けなかった。
翌日。
目覚めは抜群だ。ガスガンは必要ない。
そして昨日の出来事とは関係なく、この通学路というハイキングコースは存在する。
いつもはキョンと『忌ま忌ましい川柳』を詠み合ったりしているんだが、今日はそんな気分じゃなかった。
心踊る、ダンスダンス、レボリューションって奴だ。
今なら涼宮あたりと『ハッピー短歌合戦』でも出来る。そして勝つ。
そして教室だ。ひよりはいないがあれだ。時間は穿いて被る程ある。
机に鞄を置き、クラス委員の朝倉涼子にすれ違いながら挨拶する。
朝倉「・・・彼、変わった?」
下級生のクラスに突撃。ひよりはいるだろうか。
―――――いた。
谷口「よ、よぉ」
ひより「あら谷口さん、珍しく早いんですね。」
谷口「昼、一緒に食わないか?」
ひより「私も誘おうと思ってた所です。ふふ」
ゆたか「田村さん・・・可愛い・・・」
ひより「それを言うなら、みなみさんやゆたかちゃんのが可愛いと思うよ?」
・・・恋する少女は美しく、か。
キョーンコーンカーンコーン
昼。
俺は自前の弁当・・・とはいえ作成はオカンだが・・・を持って、待ち合わせ場所の屋上へ。
カップルも少なくは無い。
ほら、あそこに涼宮とキョンが・・・いや、やっぱり俺には見えないがな。
ひより「私、お弁当作ってきたんですよ♪」
谷口「二人で食おうぜ」
俺達は語り合う。
日常の事。
将来の不安。
これからの希望。
こんな楽しい毎日が続けばいいのに。
この日常が壊れてしまいそうで。
そうならないように気をつけた。
だが不安は無くならない。俺は思い切って相談することにした。
朝倉「そーだんだ。」
3点。1000点満点中。繰り返す。3点。
朝倉「ちょっとしたギャグじゃない・・・」
谷口「いや、まぁ、聞いてくれたからな。ありがとう。」
朝倉「ねぇ谷口君、今幸せ?その不安も含めて」
谷口「不安もってなんだよ?だよ?」
朝倉「居ない人にはいらん心配だからね」
谷口「そういう事か。俺は今、幸せ街道真っ最中だ。好きな人と居られる・・・これ以上の幸福があるだろうか」
朝倉「答えは自分で出してるんじゃない。突き進め!谷口君!」
谷口「おぉよ!すまん、ごゆっくりぃ!」
朝倉「はぁ・・・私も誰か探そうかしらね・・・」
俺はやっぱりあいつが好きだ。
だから、伝えたい。
谷口「あのな、ひより―――――」
ひより「私もですよ」
谷口「え?」
ひより「・・・その先はわかりますよ・・・」
愛してる。
ende...