part29-388さんの作品です。
「カードゲームをやるわよ!」
全ては団長のこの一言が原因だったといえよう
ハルヒが机に叩きつけるようにしておいたのは、泉こなたによってもたらされた25冊の漫画(外伝含む)
学校に漫画持ってきていいのかというツッコミは封印しておこう
本のタイトルは俺も良く知っている。デュエルマスターズだ
カードゲームで人が死んだり世界を支配しようとしたり………まぁ、遊戯王っぽいもんだな
傍で泉がニヤニヤしてるのを見るとどうやら確信犯だろう
「おぉ~やる気だねぇ、ハルハル」
さて、全ての面倒は俺に回ってくるんだろうなどーせ
ま、カードゲームぐらいならいいか。いつかの野球大会よりは疲れまい
というか泉、昨日の忠告はこのためにあったのか
『前の席の人、明日はデュエマのカード持ってきたほうがいいよ~』
コイツは俺をキョンとは呼ばない希少な人種だ。名前も呼んでないがな。席替えで俺が前の席だからってその名前はどうかと
団長の発起に伴い、面白そうだという理由で入団してきた。物好きな奴だ
まぁそれは別の話だ
実を言えば俺は結構乗り気だったりする
かくいう俺も泉の手によってあの漫画に嵌ってしまった者であり、MYデッキを作り泉と対戦する様な奴なのだ
「………カードはどうするつもりだ」
外面ではやれやれといった感じで反応しておく。何だ、何を笑っている泉
「あ、カードについてはツテがあるよー」
等と言って泉は、普段は家においてある携帯電話(意味有るのか?)を取り出し、電話を掛け出した
「…………うん、じゃあ、持ってきてねー」
泉は数十秒の会話で電話を切った
………矢張り、何らかの手回しをしていたという事か
「やっほー!呼ばれて飛び出て、只今参上っさー!」
扉を蹴破らん勢いで我が団の名誉顧問に勝手に任命された鶴屋さんが部室に入ってくる
何個ものジュラルミンケース…………というのか?ドラマなんかで取引に使われるような銀色のケースだ
それを持ってくる
「鶴屋さんじゃない。何か用?」
せっかく来てくれたのに「何か用?」はないだろ
等と思っているうちにSOS団専属メイドである朝比奈さんが鶴屋さんへとお茶を渡していた
かなりの温度である事は確かなのだが、それを笑顔で一気飲みする様にはこの人も何かしら特別な能力でもあるのかと疑ってしまう
「やふー☆」
「やぁやぁいずみん。頼まれてた物持ってきたっさ!」
等と言ってケースの蓋を開ける。其処にはまるで身代金を払う時の札束の如く、所狭しとカードが並んでいる
世の子供達がお年玉を全て使っても手に入れることの出来ないほど希少なカードもあり、正直金持ちに生まれてみたかった
その場合気苦労の方もそれ相応についてくるのでやはり今のままで良いや
「こなた!これどうやるの?説明しなさい!」
「いいよー」
団長様は早速目を光らせていた。だが俺は見たぞ
泉が某新世界の神の如く、「計画通り!」って顔をしたのは
「いずみんのせつ☆めいコーナー!!」
何だこのセットは。教卓なんぞどっから持ってきた
「それじゃあ説明するよ。まぁ、基本は遊戯王みたいなものだと思ってね」
D・Mはデュエル・マスターズの略な。以下ずっと泉のターン
「まず、D・Mのデッキは40枚のカードで出来上がって、同じカードは4枚まで
なお、絵柄が違うバージョンとかがあるけど、この場合は同じカード扱いだから気をつけて」
泉は「不死身男爵ボーグ」と呼ばれるカードの絵柄が違う物と普通の物を取り出す
鶴屋さんはあんな物まで持ってたか
「それで、ルールの説明。プレイヤーはまず、デュエルの初めに、カードを山札の一番上から5枚、裏向きに並べてシールドにする」
いつの間にかMYデッキを取り出し、山札とする
その上から5枚だけ裏向きそろえて並べ、もう5枚山札から引いて手札とした
「で、これが手札。普通は毎ターンの最初に一枚引けるんだけど、先攻の人の一番初めのターンは引けないから覚えておいて
ちなみに、カードの中には山札からカードを引いたり、相手がカードを引けなくする効果の物もある」
………まぁ、基本遊戯王みたいなものだと思えばいい。泉も言っていたがな
「デュエルの目的は、このシールド5枚を破壊してプレイヤーに直接攻撃を与えると勝ち。
ライフポイントとかは無いから、一回攻撃したら終了だよー」
シールドを壊すのに攻撃力は関係ないから、力の弱い雑魚でも充分切り札になるということだな
「さて、じゃあ次は戦闘についてかな」
泉は手札の中から一枚、シールドの手前に上下逆にして置く
「これは“マナ”って呼ばれる物。呪文とかモンスターとか出すのに必要なんだよ
ほら、カードの左上に“2”って書いてある所あるでしょ?」
といって、不死身男爵ボーグを渡してくる
俺は前に同じような説明を受けたので、主に聞いているのはハルヒ、古泉、朝比奈さん
そして何故か招集されている柊姉妹に高良さん
長門は聞いてるのかどうか解らん。鶴屋さんは聞かずとも知っているだろう
…………そう言えば谷口辺りも知っていた気がするな。此処にはいないが
さて、此処で時間を飛ばして俺が箇条書きで説明させていただく
泉がこの後何故か暴走し、何十分もの感情を込めたプレイング兼説明をそのまま書き出すと時間がいくらあっても足りやしない
・まず、デッキは40枚のカードで作り、それを山札とする
・一番初めに山札の一番上の5枚を、プレイヤーを守る盾とする
・その後、各プレイヤーは山札から5枚カードを引き、それが手札になる
・自分のターンの最初に一枚だけ、山札からカードを引ける
・1ターンに付き一つ、“マナ”を増やす事が出来る(増やさなくても良い)
・マナはシールドの手前に上下逆に置き、1枚に付き“1マナ”が発生する
・マナにするカードはどんな物でもよい
・指定されたマナを払えば、クリーチャー(モンスターの事)や、呪文を使う事が出来る
・マナさえあれば、1ターンにクリーチャーは何体でも出せる。呪文は何枚でも使える
・クリーチャーは、召喚したターンは攻撃出来ない(召喚酔い)
・クリーチャーが一回の攻撃で破壊できるシールドは、原則一つである
・破壊されたシールドは、持ち主の手札へ行く
こんな所だな。箇条書きでも結構長いな………
次は、クリーチャーについての説明だな
「じゃ、クリーチャーを召喚」
泉は、マナを2枚タップして…………おっと、これの説明はまだだったな
タップというのは、カードを横向きにする事だ
戦闘の時や、今みたいにマナを使う時にタップ、つまり横向きにする。横向きの状態を『タップ状態』という訳だ
『タップ』は使った事を示すサインみたいな物だと考えてくれ
そして、自分のターンに山札からカードを引く前に『タップ状態』のカードを縦向きに治す動作をする
この縦向きにする動作を、『アンタップ』と言う。以上、説明終わり
とにかく泉は2枚マナをタップして、「不死身男爵ボーグ」をバトルゾーンに置いた
「この時気をつけなきゃいけない事は、タップするマナの内に一つは召喚、または使用する呪文と『同じ文明』のカードを入れること」
『文明』………というのは、所謂『属性』みたいなものだ
火・水・自然・光・闇の文明がある。まぁ、赤・青・緑・黄色・黒見たいな感じで覚えててくれ
この場合、泉は『火』文明の『不死身男爵ボーグ』を出した
火文明のカードを出すのだから、使うマナの中に一つは『火』文明のカードが無いといけないって訳だ
自然・自然ではなく、火・自然、火・火の様にな
「さ、前の席の人のターンだよ」
と、ハルヒが泉の手札を覗く
同時に、疑問を感じている顔になる
「こなた、これも2マナじゃない。出せないの?」
「それがダメなのだよ~」
今泉のマナゾーンには3枚あるが、その内2枚はタップされている
前提として、マナゾーンのカードがタップされる事でマナが発生するという仕組みだ
今タップできる状態なのは1枚だけ。つまり、2マナのカードは出す事が出来ないわけだ
…………えーと、6枚マナがあったとする
そして、2マナの(A)と4マナ(B)と6マナ(C)のカードが手札にある
この時2マナのカード『A』を出すと、残りマナは4マナとなる
そうなると4マナの『B』は出せるが、6マナ使う『C』は出せなくなる
6マナの『C』を出そうとしたら、次のターンの初めにマナをアンタップするまで待つしかないというわけだ
理解したか?出来ないか?いいから理解しろ
「じゃ、俺は『予言者ジェス』と『日輪の守護者ソル・ガーラ』を召喚」
予言者ジェスは1マナでパワーが2000
日輪の守護者ソル・ガーラは2マナでパワーが1000のクリーチャーだ
特殊能力で、『ブロッカー』という能力を持っている
「…………失礼、ブロッカーとは何でしょうか?」
古泉がニヤケ面を絶やさず聞く。こいつ、知ってて聞いてるんじゃないのか?
探偵物とか漫画での「い……一体どういうことなんだ!?○○!」見たいな奴だ。○○には説明してる奴の名前が入るぞ
つまり、読者を置いてけぼりにしないためのキャラだな。コイツの役目じゃない気もするが、思い出せば長門相手だとそんな役目だったな
「ブロッカーっていうのはね、名前の通り攻撃を防御できる能力だヨ」
泉が予言者ジェスを古泉に見せる。俺のカードだぞ
「あたしが前の席の人のシールドとかクリーチャーに攻撃宣言した時、代わりにそのジェスが攻撃を受ける事が出来るんだよ」
古泉は納得した風を見せてるようで、いつもどおりにも見える。やっぱこいつ知ってるんじゃないのか?
「ん?それじゃあクリーチャーって全部ブロッカーにしたほうがいいんじゃないの?」
柊(姉)が意見を言う。うん、最もな意見だ
ブロッカーが居ない場合、いくらクリーチャーを並べてもシールドは無防備になるからな
だがしかし………
「そういう訳にもいかないんだよ、かがみん」
そういって泉はジェスを柊(姉)に渡した。だから俺のだっつーに
「ほら、其処に『相手プレイヤーを攻撃できない』って書いてあるでしょ?」
「書いてあるわね」
「殆どのブロッカーは『このクリーチャーは攻撃できない』とか『相手プレイヤーを~』とかで、シールドに攻撃できないんだよ
まぁ、その効果を無くす呪文とかもあるんだけどね」
因みに、クリーチャーに攻撃できるのはタップ状態の物に対してだけだ
後、攻撃や防御を選択する時にクリーチャーをタップする
まぁ、バトル後にアンタップ出来る奴とか、タップ状態じゃなくても攻撃できる能力を持った奴もいるがな
「ブロッカーの中にも、攻撃できるのは居るんだけどね」
といって、日輪の守護者ソル・ガーラを渡す。だから俺のカードだって
このクリーチャーはブロッカーで有りながら攻撃できるクリーチャーだ
代償として、2マナ使うがパワー1000という、貧弱ではあるがな
基本的にクリーチャーのパワーはマナ×1000だと思っててくれ(2マナ2000、3マナ3000等)
ブロッカーの場合はマナ×1000+1000が相場みたいな物だ(1マナ2000、2マナ3000)
これに当てはまらない場合、大抵特殊な能力を持っていたりする
まぁ、何事も例外はあるんだがな
「さて、続きしようか」
そして、泉と俺は無駄に白熱のデュエルを繰り広げた
泉曰く「百聞は一見にしかず、実際に見た方がいいんだヨ」なんて言っていたが………
断言してやろう。コイツは本気で戦いたかっただけだろう
もはや説明するつもりがなかったもんな
結果から言えば俺の負けだった。いや、惜しい勝負だったな
その後、泉先生監修によるデッキ作りが始まった
鶴屋さんの持ってきたカードを使わせてもらい、俺もそれなりにデッキを改良する事にした
まぁ、高校生の財力じゃ金に物を言わすということが出来ないし、欲しいカードはくれるらしいからな
泉なんか狩人の目だったからな
「ねぇ、こなた。サバイバーって何?」
「ターボラッシュって何かなぁ~?」
「あの……進化クリーチャーってどう使うのでしょうか……?」
「サイレントスキルって何なんですかぁ?」
あぁ、やっぱり説明不足だよなアレじゃ
古泉は矢張り既に知っているのかもくもくとデッキを造っている
長門はデュエルマスターズの漫画を読みふけっている
ハルヒは漫画を読んで理解したのか、先程から火文明を漁っているが………見事にドラゴンばっかりだな
教える立場の泉に至っては、鶴屋さんとマジバトルだ
何か赤いオーラが見える気がする
というか泉、質問にぐらい答えてやれ
「初心者はスターターパックとかについてるルールブックを読みなさいってこった」
そりゃあ無いぜ泉さん
end
『泉こなキョンのデュエル・マスターズ ~激闘編~』に、いつか続く!
最終更新:2007年08月21日 20:26