1つの穴から広がる亀裂

part26-462◆G8Jw4.nqFk さんの作品です。



『バス内』
こなた「ふわぁ…眠……」
キョン「お前…また徹夜でネットか?」
こなた「んー…だって今回は分岐ルートが凄くてね!」
キョン「はいはい。とりあえず肩貸してやるからもたれてろ。」
こなた「わー、んじゃあおやすみー。ちゃんと起こしてねー。」(ポテッ
キョン「はいおやすみ。」

『街(バスが通り過ぎる』
ハルヒ「……あれ、キョン?誰あの子。なんか既視感が…みたこと無いのに…。もう!明日問いただして見ましょう!」

『どっか』
Trrrrrrrrrr......
古泉「今日はせっかく暇でしたのに…撤去作業ですか…」

『次の日、登校直後』
キョン「うぃーす。」
ハルヒ「キョン!あんた今日部活サボるの禁止よ!わかった!?」
キョン「…へ?あ、ああ。わかった。というか当然だろ?」
ハルヒ「わ、わかってるならいいけど…」


『放課後』
ハルヒ「ちょっと先生に呼ばれてるから先に行ってて。」
キョン「? ああ。」
ハルヒ「いいわね?」
キョン「………なんかおかしいよなぁ。アイツ。」

『部室前』
コンコン、
みくる「はぁーい、どうぞー。」
キョン「ども。…古泉いないんですか?」
みくる「そうみたいです。」
キョン「…まさかバイトじゃないよな。俺何かした覚えねーし。」(クイッ←服の裾を引かれる
長門「昨日あなたは青髪の女子と一緒にバスにいたところを涼宮ハルヒに見られた。」
キョン「なッ!? あ、あれはだな……」

長門「私に言うより涼宮ハルヒに言うべき。私に言っても何も変わらない。」
キョン「~~~~!!ああ、くそっ。ややこしいな!長門はそいつについて何も言うなよ?」
長門「勿論。ついでに言うと古泉一樹は例のバイトで重傷。だから学校にいない。」
キョン「……やっぱり俺のせいなんだよな……神人も俺のせいで強くなってるんだよな…」
長門「そう。早く誤解を解くべき。誤解なら。」

バァンッ!!

ハルヒ「キョン!ちゃんといるでしょうね!!?」
キョン「ああ、いるぞ。んで、朝から何の用なんだよ。」
ハルヒ「まずは座りなさい。みくるちゃん、私とキョンにお茶頂戴。」
みくる「あ、はい。ただいま~」(パタパタ


ハルヒ「で、よ。」
キョン「何がだ。」
ハルヒ「私は昨日見たのよ。アンタが知らない子と一緒にバスに乗ってるのを!」
キョン「ああ、それはだな。従妹だ。従妹。」
ハルヒ「従妹?」
キョン「ああ、久々に遊びに来てな。んでこの辺りを一緒に廻ってたってワケだ。」                           「?……・……」
ハルヒ「なんだそうだったの…。ならいいわ。古泉くんは?」
キョン「なんか病欠だそうだ。珍しいよな。」
ハルヒ「古泉くんにも部員の自覚を持って欲しいわね…"健康第一"は当然なのに!」
キョン「はは…」

『自宅前』
キョン「ふぅ…ただいまー。」
妹「キョンくんおかーえりー。お友達が来てるよー。」
キョン「おう、さんきゅー。」
こなた「キョンくんお帰りー」

キョン「おう。こなた。今日はお前の家じゃなかったか?」
こなた「だってキョンくんは部活でしょ?時間勿体ないよ。時間は戻って来ないんだよ?」
キョン「…すまん;」
こなた「いいよいいよー。 あ、お義母さん、手伝いますよー。キョンくんも帰って来ましたし。」


『ハルヒ家』
ハルヒ「うー…今日は朝からキョンに強く当たっちゃってたわ……キョン怒ってるかしら……」
                                          (機関A「神人の数が増えていきます!」B「なんだと!?」)
ハルヒ「明日謝らないと…今日謝るの忘れてたし……」
                                          (機関B「くっこれ以上は……」C「一時撤退だ!」)
ハルヒ「明日の朝にキョンの家に行って謝ろう……うん……zzz」

『次の日、キョンの家に向かう途中』
ハルヒ「"昨日はごめん"って言えばいいのよ…それだけ…それだけ…うん。」

『キョン家前付近』
ガチャッ
ハルヒ「あっ!」(ササッ

キョン「んじゃあ行って来るわ…眠…」
妹「キョンくーんねぶそくー」
キョン「うるせー」
こなた「キョンくんにオール寸前は厳しかったかな~?」

ハルヒ(なっ、あの子…この家の辺りなの?でも昨日は"一緒に回ってた"って…どういうこと?)

妹「んじゃあ私も行って来るねー。おかーさーん。」
ハルヒ「ねぇちょっと。妹ちゃん。」
妹「あ、ハルちゃん~おはよ~」
ハルヒ「あの子誰?キョンと一緒に家を出た子。」
妹「なんかねーカノジョって言ってたよー」
ハルヒ「…は?従妹とかじゃないの?」
妹「イトコじゃないよー。カノジョだってー。私はハルちゃんだと思ってたのにねー」

ハルヒ「キョン……?」

『授業の最中』
キョン(今日はハルヒ…何も動かないな…?)

『人気の無い廊下の端』
キョン「…で、何だ。部活は無しじゃないのか。
ハルヒ「妹ちゃんに昨日言った子の事聞いたわ。カノジョらしいじゃないの。」
キョン「! …あーうん。そうだが。」

ハルヒ「…なんで…」
キョン「ハルヒ…?」
ハルヒ「なんで正直に言って…くれな…の…」
キョン「なんで、と言われてもな… おわっ」   ハルヒがキョンのネクタイを引っ張る。

そして―――

キョン「――ッ!」
ハルヒ「~~~~~////」 涙ながらハルヒは赤面する。


キョン「ぷはっ」
ハルヒ「……ぐずっ……私も…あんたが…す………なのに…」  ハルヒはキョンの元を去っていく。

キョン「ハル…ヒ…?」 (トクン...

『帰路』
キョン「ふわぁ~…授業で寝てたとはいえやっぱりもたんな…
       今日は泉に少し早めに寝かせて貰うか…?」
コッコッコッコッコッ

キョン(…?なんだ、ストーカーか?)  後ろを振り向く
かがみ「あ、こんばんは。」
つかさ「こんばんは~」
キョン「あ、ども。」
かがみ「そういや、キョンくんはこなたと付き合ってるんだっけ。どう?ウチのこなたは。」 (ニィッ
キョン「いやぁ、いつもあいつのせいで寝不足ですよ…ふわぁ。」
つかさ「あらら…こなちゃん相変わらずなのね」
かがみ「ったく…カレシにまで迷惑掛けんじゃないっていうの」
キョン「はは…。まぁ俺としては別にいいんですけどね。当人が楽しんでくれれば。 あ、それじゃあ俺ココなんで。」
柊姉妹「あ、バイバイ~」


『夕方・キョン家』
キョン(なんか胸が痛いな…)「ただいまーっと」
妹「キョンくんお帰りー。あっ今日朝にハルちゃんが来てたよー」
キョン「ん、ああ。知ってる。」
こなた「キョンくんお帰りっ。ハルちゃんってあのSOS団とやらの団長サンだっけ?」
キョン「そうそう。…にしてもお前いつも家にいるな。両親とか大丈夫なのか?」
こなた「心配する事はないよ。私は"口先の魔術師"の異名が…」
キョン「またアニメか何かの台詞か?」
こなた「まぁねぃ。さぁー今日もゲームするぞー!」
キョン「…俺は寝t「問答無用っ!」

Trrrrr....
こなたキョン「あ(お)、電話か」

キョン「はいもしもし…あ、古泉か。何の用だ。」
古泉{話は聞かせて貰いました。泉こなたさんと付き合ってるそうで。}
キョン「それがどうした」
古泉{そのせいで涼宮さんの思いは負の方向へ進み、我々『機関』は限りなく深刻な戦闘に追い込まれています。}
キョン「お前達の事など知ったこたぁないぞ。」
古泉{ご尤も。これは僕の仕事ですし、今の発言は僕なりの独り言を受け取ってください。}
キョン「で、改めて何の用だ。切るぞ。」
古泉{いやいや、電話をした用というのは"後悔しないように"という発言をしたかっただけです。}
キョン「? どういうことだ。」
古泉{そのままの意味です。これであなたのSOS団の部活動がどうなってもそれはあなたの運命ですよ。ということで。
     我々『機関』や朝比奈さんのような未来人が復讐という旗を掲げ
     あなたを攻撃する事は有り得ないでしょうから深く受け取らなくていいです。
     では、また明日学校で。}
プッ

キョン「なんなんだ?」

―――――――――――――――――

こなた「あいもしもーし」
かがみ{あんたねぇ…、カレシ寝不足にさせてどうすんのよ}
こなた「あちゃー、バレた?」
かがみ{本人から聞いたわよ。あんたしっかりしなさいよ?}
こなた「わかってるよー。とりあえず今日は寝かして…あー今日もオールみたいなこともう言っちゃったっけ…」
かがみ{はぁ…あんたねぇ…まあこなたが先に寝れば良いと思うからそうしなさい。}
こなた「おお!その手があったか!さっすがかがみん。」
かがみ{センセイも心配してるからちゃんとしろよ?}
こなた「イエッサー!」
かがみ{…それ男性に使う言葉…}
こなた「いいじゃないかがみんは男勝r{ガチャップープープー}

こなた「かがみんは卒業しても相変わらずだねぇ」
キョン「…は?卒業?お前ら高校生で同級生なんだろ?」
こなた「あっ…言ってないっけ?ごめん、私大学生。」
キョン「はっ……え?」
こなた「ごめんねー。私こんなナリだから高校生でも通ると思ってさー」
キョン「…ああそう。」
こなた「……もしかして嫌いになった?」
キョン「ん、別に。嘘ついてたのはイラっときたけど別に秘密なんてあるもんだし。」
こなた「それはよかったー。…でもごめんね。」
キョン「いや、もういいよ。謝らなくて。飯食おうぜ飯。」
妹「キョンくーん、こなちゃーん。早く早くー」

『深夜』
キョン「チッ、やりこなしてるハズの格ゲーでもお前に勝てないっ、とはっ、なっ!」
こなた「このテのは操作が楽だからねーほいほいっと。」
キョン「だぁーくそっ。 あ、そうだ。泉。俺クリア出来ないゲームがあるんだよ。見て攻略法教えてくれよ。」
こなた「んーいいよー。」

キョン「ほっやっ、っと。ほら泉。ここだここ……」
こなた「zzzzz………」
キョン「珍しいな…ふわぁ…泉も寝たし俺もそろそろ寝るか… 」 (パチッ

『消灯1時間後』
むくっ
こなた「やっぱり体が長時間睡眠受けつけないな…ぁあ~
       キョンくんはー寝てる、よね。うん。んじゃあやるべきことを…」

こなた「…キョンくん凄い汗だ……これは……」

こなた「センセイ、あのですね

『次の日キョン家』
こなた「おーい起きなよー」
キョン「ん、もう朝か……」 トクン
こなた「先にご飯食べてるから着替えてきなよー」
キョン「うぃー  ……ん、なんだこのアザ… 昨日どっかにぶつけたっけか?まぁいいや」

『キョン家前』
キョン「うぃーんじゃいってくるわー」
こなた「私も行って来まーす」

『教室』
キョン「うぃーっす……ってハルヒはいないのか。」

≪……ぐずっ……私も…あんたが…す………なのに…≫

キョン「…俺も…お前が好きだ…けどな…遅かったんだよ…」  (トクン...

先生「おーっす早く座れーHR始めるぞ。 あー因みに涼宮は今日欠席だ。具合悪いらしい。」
キョン(なっ……もしかして俺のせい…?)
先生「つーわけでだ。今日は何故かプリントが多くてな。いつも通り前の席の奴が欠席者の家に持って行ってくれ。いいかー?」
キョン「あ…はい。」

『休み時間』
Prrrrr.....
キョン「メールしても返ってこねぇし、電話掛けても繋がらねぇ…むぅ…」
谷口「wawa~♪お、どうしたキョン。愛しのカノジョが休んでるからラブコールかー? うごわっ」 ドゴッ
国木田「相変わらず良い殴りっぷりで。でも珍しいよね。涼宮さんが休むなんてさ。」
キョン「全くだ。まぁプリント渡さないとならねぇし、その時にでも様子見るか。」
谷口「ぐ…いいパンチぶち込みやがる……ぐはっ」 ゴッ
国木田「谷口は無視しておいてね。最近キョンへの妬みが激しいみたいだから。」
谷口「国木田ァ!お前いつからそんな奴に かッ」 トスッ
キョン「ん、国木田サンキュ。」
国木田「んじゃあね。次は選択授業だから。」

『放課後』
キョン「んー、ハルヒが休みっつーことは部活も無い…んだよな。一応顔出しておくか。」

コンコン、
みくる「はぁーい。」
キョン「ども。今日も古泉はいないのか」
みくる「こんにちはぁ。でも今日は涼宮さんがいないんで…」
キョン「あ、やっぱりそうですか。それじゃ、俺はハルヒにプリント渡しに行くんで。それじゃ」 パタン。

長門「………朝比奈みくる。」  みくる「ひゃいっ!」

みくる「な…なんでしょう…」 ブルブル…
長門「言わなくても解る筈。」
みくる「…涼宮さんが休んでる事ですか?」
長門「そう。」
みくる「私達には従妹と言っていた女の子がカノジョだったからですよね。」
長門「そう。それにより涼宮ハルヒの精神状態が何時に無く不安定になっている。」
みくる「古泉くんもそれでお仕事が増えてるんですよね。」
長門「そう。」
みくる「でも…長門さん。貴女は真相を知ってるんじゃないですか?」
長門「大半は。けれど、ヒトの気持ちを理解する事は出来ない。その点では貴女の方が長けている。未来人とは言えこの世のヒトだから」
みくる「はい…」
長門「これは当人達の問題になる。私達には関与出来ない。」
みくる「それは解ってます。けど…」
長門「私が言いたかったのはそれだけ。」 長門が立ち上がりギシッとパイプ椅子が軋む音がする。
みくる「! 待って下さい!長門有希、貴女が知ってる限りの今回の件の内容を教えて下さい!」
長門「……これは喜劇とは言わない。運命的な悲劇。最悪、終末を迎える。」
みくる「それでも…知る事が出来るなら…」
長門「そう…今回もまた軸は彼。彼を中心に物語は動き、そして――――――」

≪『ハルヒ家進行中』≫
≪キョン「なんか腹いてぇな……出頭で買い食いしたのがヤバかったか?」 トクン...≫

長門「―――この運命は変えられない。運命を廻してるのはやはり涼宮ハルヒ――」

≪キョン「えーっと…ここらへん似たような家が多いんだよな…3本目を右にっと…」≫

みくる「そんな………じゃあキョンくんも……彼女も……」

≪キョン「あーやばいな…失礼だがハルヒん所でトイレ借りるか…」 トクン..トクン...≫

『ハルヒ家前』

キョン「なんだ、やっぱり普通なのか。」  ピンポーン
ハルヒ{ザザッ…はい、涼宮ですけど……}
キョン「あ、ハルヒか。俺だ。」
ハルヒ{…………………}
キョン「プリント渡しに来た。今日は多くてな。しんどかったぜ。」
ハルヒ{あー、欠席者への連絡は1つ前の奴だったわね……}
キョン「そういうこった。すまん、お茶くれないか。」
ハルヒ{………プリントなら郵便受けに入れておいて。ごめん、帰って。}
キョン「おいおい、そんな冷たくすんなよ…」
ハルヒ{うっさい!あんたにはあの子がいるんでしょ!泉サンだっけ!?可愛いじゃない!}
キョン「……お前もしかして嫉妬して休んだのか?」
ハルヒ{べっ、違うわよ!フられたとかそんなんじゃなくて本当に風邪よ! うっ、ゴホゴホ…}
キョン「ぁあそうかい。んじゃあ、コイツは命令通りに郵便受けに入れとくぜ。んじゃあな。明日は来いよ。」
ハルヒ{言われなくても行くわよ! ありがとっ!}  プッ

キョン「あー喉渇いたな…自販で買って帰るかー?」

ハルヒ「キョンときたら……そりゃあフられたというかキョンにカノジョがいたのはショックだけど……
       …ああもう!怒鳴ったら喉渇いたわ。お水飲んでからプリント取りに行こ。その頃にはキョンもいないでしょ。」


数分後。

ガチャッ。
ハルヒ「えーっと、右回しで3で、左回しで7で………(ガチャ)って、今日は多いわね…よいしょっと。


       …ん?北高の鞄?もしかしてまだキョンがいるのかしら―――――――」

―――――キョンはいた。

―――――――何でだろう。体の中で。頭の中で。 何かが切れた。

―――――理由は至極単純。

――――――――キョンはうつ伏せに倒れていた。

―――――――――――――――――――口から血を吐いて―――――― 



『SOS団(旧文芸)部室』

ざわっ……
長門「始まった―」
みくる「凄い時空震……いや、世界が乱れてるの……?」
長門「一般人に悟られない程度に、だが確実に大きくブれている。」
みくる「これは今までに無い傾向の歪み方です…」
長門「朝比奈みくる。貴女にはやるべき事がある。それをさっき伝えた。」
みくる「ふえっ? ぅあ、ああはい。電話ですね…でも古泉くん怪我してるんじゃ?」
長門「古泉一樹は怪我なんかしていない。」
みくる「え、でもキョンくんがいた時には重傷とかなんとか…」
長門「運命を円滑に動かす為の嘘。」
みくる「…長門さんも嘘をつくんですね。」
長門「それはいい。早く電話して。」
みくる「あ!はい、わかりました。  ―――あ、もしもし。朝比奈みくるです。古泉くん?実は―――」

『戻ってハルヒ家前』

ハルヒ「………え?キョン?」
キョン「…………………」
ハルヒ「ねぇ、なんで寝てるのよ。起きてよ。」  キョンを仰向けにする。
キョン「………」
ハルヒ「どうせ、派手にすっ転んだんでしょう?凄い血じゃないの。仕方ないわね。家に来なさいよ。お茶くらい出して上げるわ。血も拭かなきゃ。」
キョン「……」
ハルヒ「ねぇ…起きてよ……キョン……暑いから汗出てきたじゃないの…ねぇ…」

古泉「涼宮さん!!」   ブォォォォォォッ キィッ
ハルヒ「えっ、古泉くん?どうしたの救急車で!?」
古泉「事情は後で話します! すいません、早く後ろに乗せて下さい!」
看護師A「わかりました! ほらどいて!」
ハルヒ「えっ、あ、はい。すいません。」
看護師B「ほら、貴女も!」
ハルヒ「あっはいっ」
古泉「それと…高良さん、あなたもすいませんが席は無いですが後ろに乗って下さい。」
高良「ええっ…はい……」
ハルヒ「タカラ?……っていうと5組の委員長の人だっけ?」    ブォォォォォォ……ウーウーウーウー…

古泉「そうです。彼女が通報者です。  この運転手の人――私の叔父にあたる方です。この人がその会話を傍受しまして。」
ハルヒ「…そう。 ねぇ、キョンは助かると思う?」
古泉「僕はその道の人間では無いので何とも。」
看護師B「大丈夫です。吐いた血は胃潰瘍です。」
ハルヒ「胃潰瘍?ということは治療すれば……」
看護師B「ええ、治るでしょう。けれど、胃癌を伴ってます。正確に言うと、胃癌に伴って胃潰瘍が発生しているのですが。」

ハルヒ「…癌…?」
高良「胃癌は早期には発見され難いといいますが…」
ハルヒ「まさか、重いの…?」
看護師A「いや、大丈夫です。我々がエキスパートで良かった。早期での発見ですから大丈夫ですよ。」
ハルヒ「はぁ…良かった……」
古泉「ふぅ…それでも急ぐ事に越した事はありません。特急でお願いしますね。」
運転手「承知しています。」

ハルヒ「あ、そうだ……キョンの携帯……えっと…電話帳で…ア行の……青鹿…朝倉……懐かしいわね…」
古泉「何をしているんです?」
ハルヒ「先に言っておくけど古泉くん。これはプライバシーの侵害にはならないわよ。善行だもの。…あ、あった。伊島…衣櫻…あ、あった。」
古泉「別に通報とかしませんよw 誰に電話を?」
ハルヒ「泉…こなたっていうのね。彼女によ。」
古泉「フフ…その方はどなたですか?というかキョンくんの携帯からでよろしいので?」
ハルヒ「キョンのカノジョよ。私とか古泉くんとかの携帯から電話しても意味無いでしょう?」
古泉「ほぅ、彼にカノジョですか。 …でも貴女はキョンくんの事が好きじゃないのですか?」
ハルヒ「愚問よ。古泉くん。 当然に決まってるでしょっ!」
古泉「なら、何故電話を? その――泉…さんには伝えなければ、"あいつは俺の事を想って無かった"とでもキョンくんが思うのでは?」
ハルヒ「知る権利は誰にでもあるのよ。私はどの勝負も常に平等に闘う主義なの。正面から彼女と闘って―――」

――――勝つのよ。

Prrrr.....
ハルヒ「キョンからの携帯ですいません。涼宮ハルヒと言います。彼女の泉さんですか?今私の家の前でキョンが倒れて―――はい。」
古泉「あ、病院名は『ヴェルイタス病院』です。」
ハルヒ「ありがと古泉くん。―――はい、ヴェルイタス病院に今向かってます。はい。わかりました。…それじゃよろしく。」
古泉「着きましたよ。」

看護師A「急げ!胃癌の処置を手早く行い、患者の覚醒に処置を施せ!」
医者「手術室Dへ向かえ!1分で準備を終えろ!!」

ハルヒ「ねぇ待って!私も…」
古泉「流石にダメです。我々には祈るのみです。」

シュィン…

みくる「涼宮さん!古泉くん!!」
長門「………」
ハルヒ「みくるちゃん、有希。」
みくる「キョンくん…キョンくんは…?」
古泉「今は何とも。胃潰瘍と胃癌です。」
みくる「キョンくんに何かあったら……私……」

シュィン…

こなた「はぁ……はぁ……」
ハルヒ「初めまして、泉さん。」
こなた「えっと、あなたが涼宮さん…かな?」
ハルヒ「あ、そうです。こっちが左から、長門有希、朝比奈みくる、古泉一樹です。」
こなた「あ、タメ口でいいよいいよ。こっちもタメ口で話させて貰うけど。」
ハルヒ「あ、そう? …キョンは今手術室よ。」
こなた「…その様だね。」

こなた「えっとね…涼宮さん…」
ハルヒ「ハルヒでいいわよ。」
こなた「んじゃあ、ハルヒ。ちょっと2人っきりになりたいんだけど…いいかな?」
ハルヒ「え?…構わないけど。」
こなた「んじゃあこっち来て。  あ、えっと、長門さんに朝比奈さん、それと古泉くんだったっけ?ごめんね、借りてくね。」
みくる「え、ああはい…」


こなた「ここならいいかな…」
ハルヒ「何で私だけを連れてきたの?泉さん」
こなた「あ、私もこなたでいいよ。堅苦しいのは嫌いでサ。」
ハルヒ「あ、んじゃあこなたって呼ぶわね。私も嫌いでね。」
こなた「あのね、私がカノジョっていうのは…知ってるよね?」
ハルヒ「…あ、はい。」

こなた「いやぁ、実はね。私さぁ。」
ハルヒ「キョンは―――私のものですから。」
こなた「へっ、ああww いやいやちょっと待」
ハルヒ「幾ら形の上での"カノジョ"でも―――私はあなたから奪い返すから。」
こなた「ふむむ…言いたいのはそれだけかな?」
ハルヒ「そうね。あなたから誘ってくれて良かったわ。」
こなた「いや―あのねw 実を言うと私さぁ。キョンくんの観察してただけなんだよねー」

ハルヒ「…へ?」
こなた「いやぁさぁ。古泉くんいるじゃん?彼から私の職場に連絡があってね。」
ハルヒ「古泉くんが?」
こなた「そうそう。んでね、なんかキョンくんの様子がおかしいから、っていう連絡があってね。あ、実際は違うよ?今だからこんな呼び方だけど。
       んーなんていうのかな。私達って似てると思わない?」
ハルヒ「あ、それは会った時から私も思ってたわ。」
こなた「でしょ?それで、私なら親近感持って行ける~みたいなこと言われて。」
ハルヒ「んで、今まで一緒に居たってこと?」
こなた「まぁね。いやぁキョンくんとは楽しませて貰ったよ。」
ハルヒ「…なんか無理矢理じゃない?」
こなた「気にしない気にしない。んでずっと観察するにはカノジョになればいいと思ってね。
       まさかあなたみたいな人がいるとは思わなかったけど。」
ハルヒ「あなたみたいな って?」
こなた「いやぁ、本気で想ってるみたいじゃないの。"奪い返す"っていってるし。」
ハルヒ「……え?」
こなた「"奪い返す"って一度手にして、奪われたから奪い返す。ってことじゃんかー」 ニヤニヤ
ハルヒ「ばっ……バカ……」

こなた「大事にしなよ?しばらく一緒にいて分かったけど彼はよく人の気持ちを理解してるよ。」
ハルヒ「でも…私冷たく当たったしなぁ。」
こなた「気にするな気にするな!ほら、戻ろう。」
ハルヒ「……ありがと…」
こなた「いえいえ、こちらこそごめんね。」


みくる「あ、お帰りなさい…」
古泉「まだ手術中ですよ。」

シュイン…

かがみ「聞いたわ。キョンが運ばれたって。」
つかさ「はぁはぁ……バス停遠いよぅ……」

パシュッ…ウィィィィン…

看護師A「あの、すいませんが…。どなたかA型の血液の人はいますか?」
みくる「ふぇ?一体どういう事ですか?」
看護師A「吐血した分血液が急激に減少している上で派手な手術を行うと、血が足りなくなるのですよ。」
かがみ「それならここにA型が…こなた、あんたそうでしょ?」
こなた「いやいや~、私は最近貧血気味でねぇ」
看護師A「それじゃあダメですね。」
かがみ「ったく、あんた役に立ちなさいよ…」
こなた「たはは~、キョンくんの妹ちゃんもA型っぽいからそれ待つのもアリだけど…ねぇ?」

ハルヒ「…ぁりがと……  私もA型ですけど。いけますか?」
看護師A「有難い。それじゃあ手術室に!」

看護師A「それじゃあ、念の為にこの白衣を着て置いてください。」
ハルヒ「わかりました、あの…1つお願いが…」
看護師A「それくらい構いませんが…」
ハルヒ「ありがとうございます。」



ピッピッピッピッ……

ハルヒはキョンの寝る台の右側の台に寝た。

ハルヒ(キョン……やっぱり私、あんたが好き…)

[輸血準備完了。今から本格的なオペに入る。]
[心拍数徐々に低下。気を付けろ]

(だから……もう1度言わせてよね。)

[胃の切開開始。確実に行け。]

("好き"って)

ハルヒの左手とキョンの右手は繋がれていた。指は交互に。
ハルヒは眠った。

鳥の囀りが聞こえる。

日が眩しい。

覚醒を拒ませる。

頭がポーッとしている。

腕が軽い。浮いてるようだ。





右手が温かい。

しかしいい加減眠るのにも飽きた。

寝たいと思うと寝れるが、なんとなく俺は目を覚ました。


古泉「おや、おはようございます。」
キョン「お前か。」
古泉「つれないですねぇ。」
キョン「そりゃあ目を覚ましたらウチでは普通初めに妹の顔かシャミの顔を見るからな。」
古泉「へぇ、兄想いの妹さんですね。」

キョン「で、だ。何でお前は薄着なんだ。普段から暑くてもそれなりの格好をしているだろう。」

古泉「あなたは動けない。この状況を利用しない手はありませんよ?」

キョン「…は?  いや、何故にお前は上を脱ぐ。」

古泉「暑いじゃないですか。  事後は特に。」

キョン「事後って何だ、うわ待てやめr」

古泉「あなたを…愛してます」

キョン「宇和あああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」

がばっ!

古泉「 おや、おはようございます。」
キョン「はぁ…はぁ……なんだ今の…  ってうわ!古泉っ!?」
古泉「おや、つれないですね。せっかくお見舞いに来ているというのに。点滴取れますよ?」
キョン「…普通の格好だよな?……夢か…?」
古泉「おや、またいつぞやの3日間昏睡状態のような感じですか?」
キョン「いや、普通の夢だろう。一瞬だったしな。」
古泉「一睡の夢でも何日分の体験することもありますよ。」
キョン「いや、夢だな。うん。古泉、お前は寝てる最中に何もしてないな。」
古泉「あなたには何もしてませんよ。10分前に来たところですし。」
キョン「"あなたには"?つーことは何したんだ?」
古泉「とりあえずあなたは立場分かってます?」
キョン「いや、病院だろ?とりあえず夢か何かしらんがその話から続いてるんだから続けろ。」
古泉「僕の反対側のお方には少し非道い真似をさせて頂きました。申し訳なく思ってます。」

キョン「反対側?」
古泉「いつぞやと同じ光景ですが…ごらんになられては?」

反対側――俺の右手か。――にはハルヒがいた。
熟睡してるな。ただ、俺の右手を握りながら酔っ払って倒れた様に。

古泉「申し訳無いですが、睡眠薬を混ぜた水を飲ませました。害はありません。」
キョン「何の為にだ。」
古泉「事情を総まとめにして話す為にです。」

古泉「まず、あなたの現カノジョ。泉こなたさんは『機関』の人間です。」
キョン「……唐突だな。」
古泉「おや、驚いてなさそうですね。」
キョン「いや、そういう事は普通は驚愕するんだろうが。俺は慣れた。」
古泉「そうですか。 まぁ彼女はあなたの病気……ああ言い忘れました。
       あなた涼宮さんの家の前で吐血して倒れてたんですよ。胃潰瘍と胃癌です。
       彼女にあなたに接触する様にお願いしました。いつ発病してもすぐ対応出来るように。」
キョン「ほぅ…俺がそんな病気にねぇ。よく気付いたな古泉。」
古泉「お褒めに与り光栄です。続けます。
       すると、あなたはどうやら泉さんのいない時に発病してくれまして。」
キョン「それは悪かったな。俺は知らなかったんだ」
古泉「いえいえ、長門さんが教えてくれました。 それと、北高の5組の委員長、高良みゆきさんも病院に連絡してましたよ。
       後でお礼でも言うべきですね。」
キョン「わかった。」
古泉「簡単に言うと、泉さんにはフられたってことにでもしといてください。
       いや、涼宮さんも簡単な事情は知ってるみたいですからしなくても結構かも知れませんが。」
キョン「ハルヒがか?」
古泉「ええ、泉さんが話したそうです。きっちり言いたかったそうで。
       ………そろそろ涼宮さんは起きる頃ですね。それでは、その事情を理解していてくださいね。」

キョン「…ああ。」

ガララララ……ピシャッ

キョン「…ふぅ。」

久しぶりだな。こいつの寝顔を見るのは。
今回は落書きでもしようか。
それともこの寝顔を写真にして売り捌く……

なんて事を考えていると

ハルヒ「ふが…」

起きやがった。

キョン「ハルヒ、おはよう。」
ハルヒ「………キョン?」
キョン「ああ、キョンだ。」
ハルヒ「…………おわっ!キョン!?」
キョン「寝惚けてたのか…」

ハルヒ「あ…そのね…えっとね……あの……」
キョン「ハルヒ。」
ハルヒ「ちょっと待って!あのね。」

俺は確実に。それでいてはっきりと。ハルヒを見て。温かい右手を離さずに。所詮言葉の羅列、だがそれでいて重い言葉を詠んだ。

―――――お前が、好きだ。

『部屋の外』

みくる「ちゃんといえましたかね…」
こなた「言えるでしょー、私から奪い返すって言ってたくらいだし」
長門「……これは予想外。彼が言った。」
古泉「ふふ、キョンくんも負けず嫌いですからね。」

――――――――――――――――――――――――――――――
ハルヒ「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
キョン「………ふふっ………はははははははっ」
ハルヒ「~~~~~~/////  ちょっとキョン!!なんであんたが先に!!」
キョン「はははははっ!   冗談じゃないからな?」
ハルヒ「冗談なら張り倒すわ!  だから……」
キョン「ああ、この右手はその為だろ?」
ハルヒ「…………うん…」




………sleeping beauty…

ハルヒ「ん……」

ガララッ…

妹「キョーンくーん大丈夫ー!?  ってわぁ!」

キ・ハ「!!!!!!」
ハルヒ「きゃぁ!」     ドンッ!

キョン「がっ、ハルヒてめぇ!!」
妹「ご、ごめんなさい……でもこなちゃんにフられた後によく付き合ったねぇ、ハルちゃん?」
ハルヒ「キョンは私が拾ってあげないと貰い手がいないと思ってね。ほら、雨に打たれる捨て猫の様なものよ。」
みくる「こんにちはー。お見舞いですよー」
長門「…………」
古泉「こんにちは。」
こなた「やほー!大丈夫?」
妹「なんかみんな部屋の外で待ってたから何でだろう?って思ってたんだけど…そういうことだったのね。」

キョン「!? てめっ古泉!!」
ハルヒ「みくるちゃんと有希も!?」

古泉「すいませんねぇ…でも空気を読んだってことで。」
ハルヒ「無駄よ!3人には罰を与えるわ!」
古泉「ふぅ、仕方ありませんね。自業自得ですし。罰とはなんでしょう?」

ハルヒ「有希とみくるちゃんは写真集を取る為に色々服を着せて写真を撮らせて貰うわ!
        古泉くんはこの夏にまた合宿を行う為の必要経費やら目的地やらをプランするように!とりあえず山よ!」
みくる「ふぇ…また撮られるんですか…?」
古泉「わかりました。ですが、キョンくんにも心配料とか何か罰を与えるべきでは?」
キョン「古泉…お前は……」
ハルヒ「そうね……それじゃあ明日私と一緒に来なさい!荷物持ちよ。掘り出し物の店まで来て貰うわ。」
古泉「我々は明日はどうすればいいんでしょうか。」
ハルヒ「古泉くん達はいいわ。荷物持ちはキョンさえいれば充分でしょう。 みんな自分のしたい事をしてエンジョイしてなさい。」

キョン「………はぁ、俺は拘束の侭か…」

ハルヒ「それじゃあ解散!明後日、月曜日に学校で会いましょう!」
古泉「承知しました。では、僕はこれで…」
みくる「私も…さようなら。涼宮さんとキョンくんさようなら。」
妹「私ももうすぐ帰らないとー、バイバーイ。」
長門「………………」

ガララララッ…ピシャッ

キョン「……明日って…俺まだ入院中……」
ハルヒ「リハビリってことにすればいいでしょ!」
キョン「むちゃくちゃな奴め……」
ハルヒ「…――なんだからね…」
キョン「え、今何ていった?」
ハルヒ「…もう言わない!明日連れ出しに行くからね!いい!?」
キョン「断っても無駄なんだろ、わかったよ。」

ガララララ……ピシャッ

キョン「ふぅ……まぁ古泉がなんとかしてくれるだろうな。」

キョン「にしても…"デート"、かよ。」

顔がにやける。とぼけてみるのもいいもんだな。



次の日、俺は退院した。流石古泉と言ったところか。まぁ『機関』の病院みたいだしな。身体に変な具合も無かったから俺も良かったんだが。
相変わらず振り回され捲りだったが、あいつは常に笑っていた。
本気で荷物持ちかと思っていたが、今日は小物ばっかだったから案外楽だった。
ラブh(自重させてもらう)に行くことはなかったが誰もいないタイミング見計らって軽くキスをして終わった。…いかん俺はいったい何を期待しているんだ。
ゲーセンとかにも行ったが泉が連戦連勝しているトコロを目撃。ハルヒが意気込んで勝負を仕掛けていた。惨敗だったが。なんだこいつら仲良いな。

明日からはまたあいつに振り回されるんだろうな。

――――怪我が自然治癒する様に、罅割れもいつか修復するもんさ。誰かによってな。

作品の感想はこちらにどうぞ

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2007年09月10日 23:06
ツールボックス

下から選んでください:

新しいページを作成する
ヘルプ / FAQ もご覧ください。