作品番号008「ネトゲと私」

スバル◆4J82o0Qvdw氏の作品
※勝手にタイトルをつけました、御了承ください。
キョン×こなた

「暑い……」

そう言いながら普段の学校への通学路を歩いている人がいる。
彼は皆にキョン、と呼ばれている男であった。
何故彼が歩いているかというと学校が普通にあるからである。
季節は夏真っ盛りであり、暑いのも当然ではあるのだが、例年より暑いのでキョンの気が滅入るのも無理なイノかもしれない。
彼がこの学校をどうにかして転居させた方が良いのではないか、と真面目に考え込んだとき、彼女が視界に入った。

「泉」

彼はそう呼びかけて彼女の元へと歩き始めた。
呼びかけられた彼女はくるりと振り返り、それが誰だかを判断すると嬉しそうな顔になった。

「お早う、キョンキョン」
「よう」

そうして二人で長い山道を歩き始めた。
キョンからすればこんな学校へと着きたいはずだが彼女のペースにあわせたのだった。
そんなキョンだったが泉の様子が少しおかしいことに気付いた。
目に隈があるのだ。目をこすったり何度もあくびを噛み殺してもいた。

「泉、もしかしてねてないのか?」
「え?まぁね。ネトゲをちょっとね」

泉は当たり前の様に答えた。
キョンはまたか、と呟き、半ば呆れながら続けた。

「あのな、ネトゲが好きなのは良いけどな。ずっとやってると流石に体をこわすぞ?」
「大丈夫だよキョンキョン。好きなことをしているんだからさ」

そう言いながらこなたは笑っている。
そんなこなたを見ながら、キョンは難しい表情をしていた。

学校が終わる。
泉は授業をずっと半分眠っている状況で受けていた。
キョンはと言うと授業自体は受けているが、泉の方をちらちらと見ていて、結局は授業に集中できてはいなかった。
……ここでハルヒが嫉妬するのは、別のお話であるので明記はしない。
キョンは泉の元へと行くとこう言った。

「泉、帰るぞ」
「へ?」

泉はキョンが言った言葉を聞くと少し惚けた後、驚いた表情をした。

「あれ?キョンキョン、SOS団とやらの活動があるんじゃないの?」
「今は良いから、帰るぞ」

そう言うとキョンは泉の手を握りさっさと教室から出て行った。
……ここでハルヒが嫉妬し発症するのは別のお話であるのでやはり明記はしない。



キョンと泉は学校から家へと帰っていく。
その様子は端から見ればどう見えたのだろう、カップルか、はたまた兄弟と言ったところだろうか。
しかし、実際はキョンは深く考えた様子で全く喋らず、泉もそんなキョンの様子を見て喋りづらかったようだ。
そんなキョンも言いたい事を纏めていたらしく、キョンはよし、と呟き泉に語りかけた。

「なぁ、泉」
「何だい、キョンキョン?」
「泉は知ってるか?ネトゲで死んだ奴の話」
「……それってネトゲで負けたのが悔しくて本人にリアルファイとしたって話のこと?」
「いや、それは後で詳しく聞きたいがそれじゃない。違う話だ」

そう言ってキョンは語り始めた。

「昔な、ネトゲに嵌っている両親がいたんだって。それでその二人はネトゲでとてつもなく有名な人だったんだ」
「ネトゲで強くなるには時間を掛けなきゃいけないからね。とっても時間を掛けたんだと思うよ」
「だろうな。でもよ、そいつは息子がいたんだって、一人息子が」
「……?」
「その息子は別にネトゲは好きじゃなかったんだ。でも親がネトゲにしか興味を持たなかったんだ。
それでその息子はどうにかしようと思ってさ、ネトゲを出来ないようにしちまったらしい。どうやったかは知らんけどな」
「ふぅん、随分無茶なことをしたモンだね」
「それで、その親がネトゲが無くなったら……どうなったと思う?」
「……」
泉はキョンの口から語られる事が薄々感ずいてはいた。しかし、キョンは言い切った。

「自殺したらしい。自分の生きる世界が無くなったから」

そう言ってキョンは泉へと目を向けた。

「泉、お前がネトゲをしても良い。でもな、ネトゲだけがお前の全てにならないようにしろよ?
俺とか、柊姉妹とか、お前の仲間がどうでも良いとかそんな風に思えるようにだけはなるなよ」

そう言うとキョンは言いたい事はそれだけだ、と呟き口をつぐんだ。
泉はキョンの言った言葉を聞き、少し黙り込んで考えた後、こう話した。

「キョンキョン」
「うん?」
「それって、私のことが凄く大事って事で良いんだよね?」
「あぁ、そうだな」

それを聞くと泉は嬉しそうな顔でこう言った。

「じゃあキョンキョンがそう言うならキョンキョンともたまには二人きりで遊んであげるよ」
「いや、そう言うことじゃなくってな……」

泉の言葉を聞きキョンは少し呆れもしたが……それ以上に嬉しそうだった、と見ている人は告げていた。
成長すればそんな日もあったね、と言われるたわいもない日。
しかし今の彼等からすれば、夏にあった青春の一ページに他ならないだろう……。

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最終更新:2007年11月04日 23:42
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