かがみん~廻り始めた世界~の続編
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私がSOS団に入ってから二ヶ月余りが経った頃、暑い季節が巡ってきた時まで話は流れる…
ー夏ー
一年で最も暑く、もっとも楽しい季節…
それは学生であり、青春を謳歌している私だからこそ言えるのかもしれない。
SOS団が常に何かしらのイベントを催す事は短い付き合いながらも承知しているつもりだ。
だからこそ、今年のこの夏は私が一番待ち望んでいた季節とも言える。
ー夏休みは明日からー
ー教室ー
岡部「各自、学生としての節度を持って、有意義に過ごすように。夏休みだからと言って、羽目を外すなよ」
先生の短い挨拶で、今学期最後のHRが終了した。
それと同時に教室の皆もワラワラと動きだす。
友達同士で今後の予定を確認しあったり、この暑さから解放されたいと言わんばかりに、とっとと帰り支度を開始する者も居る。
後者の中にキョンくんも含まれる様だったが、そこは問屋が卸す訳もなく、あっさりハルヒに捕獲されていた。
キョンくんは「分かっていたさ…あわよくばと思っただけさ…そうだろ俺?」と、何やらブツブツ呟いている…
ハルヒ「ほら、かがみも来なさい!SOS団集合よっ!!」
やれやれ、キョンくんの心境がよく分かるわ……
ー廊下ー
教室を出ると、予め呼んでおいたのか他の団員が待っていた。
古泉「どうも。おや?キョン君、今日もご機嫌のようですね」
キョン「どこをどう見たらご機嫌なのか、是非とも御教授してほしいね」
この皮肉とも取れる発言をし、キョンくんのボルテージを無駄に上げている彼の名は、古泉一樹くん。
常に笑顔を絶やさず、通称『イエスマン』とキョンくんに呼ばれてる彼は、私が入ってすぐに団員に招かれた転校生だ。
招いたのはもちろん団長であるハルヒ。
その容姿と笑顔から女子になかなかの人気を誇るが、私にはどうにもSOS団以外には壁を作っている様にも見える。
なんというか、自身を偽っている様な…そんな気位を感じてしまう。
長門「……」
キョン「長門さん!」
この無表情で背がこなたと変わらない女の子は、ハルヒに乗っ取られた文芸部の唯一の部員、長門有希さん。
何故かSOS団の団員に数えられているにも関わらず、文句も言わずに共に行動している、まさに不思議という言葉の似合う子。
この子が団員に選ばれた理由は、私やこなたと同じで、個性的なキャラであるというだけだ。
いや、私自身は自分を個性的とは思わないんだけど……こなたのせいで、すっかりツンデレキャラで認識されてしまっている。
忌々しい限りね…
そして、残るもう1人の団員である、朝比奈みくる先輩。
みくる「こんにちは、柊さん。明日から夏休みですね~」
年上には見えないけど間違いなく先輩な、のんびりした女性。
彼女はハルヒに巨乳でロリというだけで無理矢理連れて来られた哀れな経歴を持っている。
私も何度か立ち会っているが、ハルヒに着せ替え人形の如く扱われたり、いつの間にかお茶汲みが日課となってしまった。
そんな扱いを受けているにも関わらず、この人も団を離れようとはしない…
何故だろう?
…それは私にも言える事ね。
ハルヒに振り回されてウンザリする時もある…でも、その非常識な振る舞いこそが、ハルヒの魅力とも感じられる。
まぁ、キョンくんが居るからこそなのかもしれないけどね?
こなた「んでハルにゃん、用件はなんでしょか?」
意外にも、こなたが真っ先に質問をした。
そうよね。SOS団が集められたという事は、ちょっとしたイベントが始まる合図…
ハルヒ「明日から夏休みです!長い休みとはいえ、決して無限ではない…つまり、限られた時間でいかに遊び尽くせるかが重要なのよ!!」
いや、廊下でそんな演説をされてもね。
まさか、夏休み初日から遊び始めるつもりかしら?
キョン「俺にとっちゃ、山の様に出された課題の方が…」
ハルヒ「とゆう訳でっ!明日は準備の為の1日とし、明後日から海に繰り出すわよ!!」
台詞を被せられたキョンくんが唖然としているのを無視し、ハルヒは今後の予定を語っていく。
なんという傍若無人。
なんという団長様。
苦笑する古泉くん。
オドオドしている朝比奈先輩。
いつもの無表情な長門さん。
悟りを開いたキョンくん…
そんな彼らを尻目に、1人のチビっ子が目の端で諸手を挙げて喜んでる姿がチラつく。
こなた「ヤター!海だよ海!うーみーはー広いーなー大きいーなー♪」
お前は子供かっ!
そりゃ私だって期待してなかった訳じゃないけど…いきなり明後日って急過ぎでしょ!
ハルヒ「あ、そうだ。かがみ、妹も呼んであげたら?後、高良さんも」
…つかさとみゆき?
ハルヒがあの2人を知ってたなんて意外ね…あ!
かがみ「こなた、もしかしてハルヒに会わせた?」
こなた「いんや、話し聞かせただけだヨ?みゆきさんもつかさも、アレなら入団出来そうだモン」
ああ確かに、キャラで選ぶハルヒなら入れそうだな…
私が言うのもなんだけど、あの2人にはこの団の活動は厳しいと思うのよね……
ハルヒは「そんじゃ明後日、駅前でね!」と笑顔で言い残し、十秒後にはその場から消え失せていた。
キョン「やれやれ…まぁ、ハルヒが決めちまった以上、従うしかないんだろうな」
肩をすくめるキョンくんの表情は、諦めと言うより苦笑に近いものだ。
慣れって凄いわね?キョンくん。
各々が帰宅に向かう中、私とこなたは、つかさとみゆきを海に誘う為に、こなた達の教室に入る。
ー教室ー
とりあえず、教室で私達を待っていた2人に先程の話しをした。
つかさ「海かぁ~、良いね~♪」
みゆき「私も行きたいですね」
渋る様子は微塵も無く、2人は乗り気の様だ。
そりゃ、単純に遊びに行くだけだと思ってるのなら、これが当然の反応なのかもしれない。
ハルヒのことだ…わざわざ2人を誘うという事は、何かしらの思惑があるはず……それが心配でしょうがない。
ー柊家ー
家に帰ってすぐ、学校で聞きそびれた事項と、つかさ達が行くと意思表明してくれた事をハルヒにメールする。
集合時間を言わずにとっとと帰るなよな…
つかさは自分の部屋で、早速海に行く為の準備を始めているし、私も水着を引っ張り出さなければなるまい…
メルメル♪メルメル♪
数分もしない内にハルヒからの返信が届き、私はその内容に目を疑った。
ハルヒ
『集合時間は午前7時!泊まりがけだから、十分なお金を所持してくること!妹さんにもちゃんと伝えてよ!』
ちょ、おま…一番大事なことを何で言わないのよ!?
泊まりがけ?今更、宿なんて取れるのか?
というより、キョンくんとお泊まり…?
予想外ここに極まれりっ!!
ーデパートー
次の日、私は去年の水着が小さくなっていた為、どうせならと思いつかさと新しい水着を買いにデパートまで来た。
かがみ「つかさ、子供っぽい柄のはやめときなさい。もう高校生なんだから」
つかさが手に取っているのは、フリルの付いたワンピースの水着。
それだけなら普通だが、柄が問題だ。
胸元にアヒルの顔が描かれた可愛らしい物…流石にそれは無いでしょ。
つかさ「えー、可愛いのにな…」
渋々棚に戻して水色のワンピースを選ぶのを確認し、私も水着を選ぶことにした。
かがみ「……これでいっか」
悩んだ挙げ句、私がチョイスしたのは赤いビキニ…まぁ、このぐらいは冒険しないとね……
キョンくん、反応してくれると良いな……
ー柊家ー
明日はいよいよ海へと出向く日。
つかさにも早く寝るように言った手前、私も眠らなければならないんだけど…
ベッドに入っても、遠足前日の子供の様にワクワクしてなかなか寝付けなかった。
かがみ「思いきり楽しもう…」
せっかくのキョンくんと…もとい、友人達と思い出を作るチャンスなんだ!
事故なんてないようにしなくちゃね!
次第に意識がまどろみ、瞼が自然と落ちてゆく…
明日は晴れると良いな…
ーこの夏の思い出の為にもー
ーepisode1完ー