かがみん~summer
days:episode1~より
かがみん~summer
days:episode2~より
かがみん~summer days:episode3~
part37-139◆ugIb3.rlZc氏の作品です。
終わってから言える事なのかもしれないけど、この不可解な現象に遭遇したからこそ、私の人生は楽しい物となったのだろう。
不謹慎だけどね…
でも、キョンくんと共に悩みを抱える事が出来る様になったのは、私にとって何よりも嬉しい事だった。
共有した時間や心境が、私の大事な思い出に変わったから…
それじゃ、夏の夜に初めて皆と同じ位置、同じ居場所に存在出来る様になれた時の事を振り返ろう。
ー初めての不思議体験をー
私の目の前に現れたのは、青白い光を放つ、人の形をしたナニか…
全く状況を把握出来ない私の声は震えていた。
かがみ「何…?なんなの…アレ?」
あの奇妙な物体を前に、何故あの4人は冷静でいられるのか……
朝比奈先輩だけはキョンくんにすがりついて、肩を震わせてたけどね。
しばらくあの巨人とキョンくん達は対峙したまま動かなかったが、唐突に巨人が手を振り上げ、キョンくん達を叩き潰そうとした…!
かがみ「キョンく…!」
私はとっさに4人の元へ駆け寄ろうとした…何も出来ないのは分かっているのに…
彼を呼ばすにいられなかった……
かがみ「キョンくん!!」
私の声に反応して、ハッとキョンくんが振り返るその刹那、辺りの景色が一変していたーー
ー閉鎖空間ー
目に映ったのは、灰色の空と黒い海。
そして、物音一つ聴こえなくなっている海辺の町。
私が呆然としていると、いつの間にか隣に移動していたキョンくんが話し掛けてきた。
キョン「かがみ…何でここに…?」
十秒か一分か…連続的に起こった異常事態に、しばらく声が出ず、ただただキョンくんの顔を見ていた私は、途切れ途切れに説明する。
かがみ「トイレに行こうとしたら朝比奈先輩が階段を降りていって……ついていってみたらキョンくん達が旅館を出ていくのが見えたから……それで…」
キョンくんの隣に居る朝比奈先輩が、申し訳無さそうな表情を浮かべている。
キョンくんは「そうか…」と一言だけ言って、長門さんの方へと振り向いた。
キョン「長門…アレはどういう事だ?何故『神人』が現実の世界に現れたりした?」
キョンくんはアレの事を知っている?
他の皆も?
キョンくんに説明を求められた長門さんが、無機質に質問に答える。
長門「涼宮ハルヒが憤りを感じ、その感情をぶつけた対象が海。身体を動かす事により、憤慨した心を鎮めようとした為に、力の影響があの場の空間を歪ませた結果」
キョン「それが何故、アレがこっちに出てくる事になる」
長門「涼宮ハルヒの情報改変に伴い、彼女の内に存在する空間……閉鎖空間と、通常空間がリンクした為」
古泉「つまり、涼宮さんは元々、異常事態が起こる事を望んでいた…と解釈して宜しいでしょうか?」
長門「いい」
全く意味が分からず、完全に置いてけぼりになっている私…
この異常を、当たり前の様に受け止めている彼らは、私の知っている団員のそれとは違った……
キョン「それで本人は夢の中…か。迷惑な話しだなおい」
キョンくんが肩をすくめ、両手を上に挙げる。いつもの「やれやれ」の口癖と共に…
アレはまだ海の上に佇んでいるのに、何故冷静でいられるのか?
その理由を、私は実際に理解する事となる。
長門「空間を対象の本来存在する場へと戻す情報操作を行った。これで通常空間に被害が出る事はない」
古泉「なるほど、既に閉鎖空間へ移行されていたんですね」
いつもの笑顔で古泉くんが納得したかの様な発言をする…
何を納得しているのか…?
疑問が噴き出す私の頭に、キョンくんの声が聞こえてきた。
キョン「それじゃ古泉、任せたぞ」
古泉「お任せあれ…ふんもっふ!」
キョンくんと短い会話を交わした古泉くんの体が、赤い光に包まれていく…
そのまま赤い球体状になり、あの巨人へと向かって飛んでいった。
赤い球体となった古泉くんが、キョンくんが神人と呼んだものにまとわりついた。
素早い動きで神人を翻弄し、古泉くんの触れた部分が、青く煌めきながら消えていく。
次々に崩壊を起こし、海に落ちていく神人の体……そのたび煌めく青い光が綺麗とも思えた。
そして、トドメとばかりに胴体を真っ二つにし、そのまま神人は崩れ去っていく…
古泉くんが元の姿に戻り「終わりました」と言ったところで、私は地面にへたり込んだ。
一気に緊張が解けたからだ。
キョン「大丈夫か、かがみ?」
キョンくんが心配して声を掛けてくれたから、私は深呼吸をし「大丈夫」とだけ応える。
気づけば辺りの景色は元に戻っており、他の皆に促されてそのまま旅館に戻る事になった…
旅館に戻る道中、私はキョンくんにハルヒや皆の説明を受けた。
ハルヒが望めば、それが現実として現れる力の事。
団の皆が宇宙人、超能力者、未来人だという事……
にわかには信じられない事だったが、この時、私はハルヒと初めて会った日の事を思い出していたーー
ーただの人間には興味ありません。この中に宇宙人、未来人、異世界人、超能力者がいたら、あたしのところに来なさいー
ーー確かにそんな事を言ってたわね…
そんなとんでも能力を持った団長や、そのとんでも能力に導かれた団員と一緒に行動してたなんて……
ただ、キョンくんだけは私と同じ、普遍的な人間だった事は救いかな…
何故なら、キョンくんまで別次元の人間だったら、私はSOS団に入る事はなかっただろうから……
だってそうでしょ?
ハルヒが望んでいるのは特殊な存在なのだーー
ー旅館ー
旅館に戻った私達は、皆を起こさないように気をつけ各部屋に戻り、それぞれ疲れを取るために眠りについた。
ーー
ーーー
次の日、ハルヒに起床を促され、まだ眠い目を擦りながらも帰り支度を始める。
もう一度海に寄ってから帰る為に、早々に旅館を出るんだそうな…
まったく、昨日の今日で何故それほど活力に溢れているんだ?
ー浜辺ー
……
………
今思えば、この夏真っ盛りに私達以外の人間が海に出てなかったのは、ハルヒが望んだからなのかもね。
…そう、今日は朝早くから旅行者が海にはびこっているのだ。
ハルヒが口をアヒルの様に変化させるのを私は見逃さない。
ハルヒ「もう!何でこんな朝っぱらから人が湧いてんのよ!」
キョン「俺達も同じだろうが」
まったくね。
ー電車内ー
来た時と同じように電車にゴトゴト揺られながら、私達は帰還に向かう。
結局、早起きしたにも関わらず、人が多すぎてほとんど海で遊べずに帰る羽目になった。
ハルヒに無理矢理起こされた為、ほとんどが眠りについている。
その起こした張本人も…
かく言う私も、先程まで寝ていたんだけどね?
周りを見渡せば、私と長門さん以外は今だ眠りこけている。
ハルヒに早起きを強制的に執行されたのも一因だろうが、やはり疲れが溜まっていたのだろう。
皆グッスリと夢の中……
私は1人、昨夜の出来事を考える。
キョンくんに皆の秘密を聞いたとは言え、改めて見ても私と何ら変わりのない団員達…
そんな彼らがあんな力を持っていたなんて、今でも信じられない…
不可解で現実離れした現実…
それなのに、私はこれからの事を考えると胸がワクワクした。
どこかの物語に迷い込んだ様な感覚…
その物語の登場人物になれた気がしてーー
ー駅前ー
ハルヒ「それじゃ解散!また予定が決まったら連絡するわね!」
団長のお開きの合図で、私達は別れる。
皆とサヨナラを言い合い、それぞれが帰宅へと向かった。
また今度ね、キョンくん。
ー柊家ー
家に戻った私とつかさは、すぐさま自室で休む事にした。
ようやくゆっくり休めるわね……
私はベッドに倒れ込む様に寝転び、そのまま目を瞑った。
暗転の中で思考が巡る…昨夜の情景が頭の中のスクリーンに映し出され、再び団員達の事を思い描く。
大丈夫、皆との関係が変わる事はない…
特殊な力を持っていようと、大切な仲間なんだから……
そう、彼らは少し個性的なだけで、普段は私となんら変わらない。
これからも仲良くしていきたい…
この気持ちを…大切にしたいーー
こうして、私の夏休み最初の思い出深い出来事が終わりを告げた。
この暑く、長い季節で一番の思い出になったのかもしれない…
…いや、まだまだ夏休みは終わらない。
これから、あの出来事を超す、最高の思い出を作っていこう…
皆と一緒なら大丈夫、いくらでも楽しい事は待っている筈だ!
ハルヒ、頼んだわよ?
不可思議な事でも、単純に遊ぶだけでも構わない。
団長様に、私達はついていくんだから。
この夏休みを有意義に過ごしましょう!
ーそう、夏は始まったばかりー
ーlast episode・完ー
最終更新:2007年09月03日 03:27