part37-347◆ugIb3.rlZc氏の作品です。
突然の雨の日に出来た、大切な思い出の1ページ…
私にとって印象に残るシーンとなるだろう…
…いや、私には彼と居る時間こそが大事な記憶の数々なのだ……
彼の優しさが感じられる…
彼の温もりが感じられる…
彼と同じ場所に居る…
彼と同じ方向を向いている…
その事実が私の心の日記帳を埋め尽くす…
大好きだよ…
ーいつまでも大切な貴方ー
ザー…ザー…
ああ、もう!帰る間際になって急に降り出すんだから!
学校に戻るより、私は目の前にあった雑貨店の軒下に入った方が良いだろうと、そこで雨が止むのを待ちながら愚痴る。
この勢いなら通り雨かな?
しかし、ここに逃げ込む前に随分と濡らされてしまった…
風邪を引かなければ良いけど……
などと、無駄な思考を巡らせている私の前に、傘を刺した男子が歩いてきた。
そう、よく見知った顔…
私の…想い人だ。
キョン「ん?かがみ、何してるんだ?」
かがみ「見りゃ分かるでしょ?雨宿りよ、雨宿り」
…キョンくんはちゃんと傘持ってるのね。
私が傘に傾注していた為か、どうやらキョンくんは気づいた様子。
キョン「これか?置き傘ぐらいは持っておくべきだろう」
ぐっ…その通りだ…
普段なら私も置き傘は用意しているんだが、この前こなたに貸したままなのだ。
私だって、傘があるなら多少濡れても学校まで戻るわよ…
ここにきて、こなたのせいで失態を晒す羽目になるとは…
キョンくんは傘をたたみ、何故か軒下へ入ってきた…
黙って私の隣に立ち、降り止む気配の無い雨を共に観察し始める。
かがみ「どうしたのよ?帰らないの?」
私と違い、傘で雨を避けられるのだ。わざわざ此処で雨宿りする必要は無い…
キョンくんは雨を眺めたまま、私の質問に答えた。
キョン「お前を放置して先に帰れるか。1人で突っ立っているより、話し相手が居た方が良いだろ」
優しいね…貴方にとっては何気ない行動だろうけど、私にこの上ない安らぎを与えてくれる…
やはり私が好きになったのは間違いじゃない…
かがみ「あ、ありがと…」
少し照れくさくて、雨音にかき消されそうな声で礼を述べる。
2人だけの空間…この雨が、周りの日常から切り離してくれた様な幸せ…
だが、私の幸せは止まらない。
キョン「…しかし、まったく止みそうにないな……」
キョンくんが顔を空に向けて呟く。
私はそれに応えようと思ったが、肯定の言葉を発せられずに、一つのアクションで答えた…
かがみ「…っくしゅ!」
アクションというよりハクション…誰が上手いことry
寒さからか、私は小さなくしゃみを応えとして返してしまった…
キョンくんは一転、不安そうな表情に変わり、心配そうに尋ねてくる。
キョン「大丈夫か?濡れたままで放置してたから冷えたみたいだな…このままじゃ風邪を引いちまう」
急にわたわたと落ち着かなくなるキョンくん…
焦っている様に私と空を交互に見やり、うーんと唸る彼の横顔が、なんだか可愛く見えてしまった…
私の為に思考を回してくれている事が、とてつもなく嬉しくて…
一瞬、彼の言葉が聞き取れなかった。
かがみ「…え?」
キョン「雨が降り止みそうにないから、俺の傘に入れと言ったんだ。風邪を引かれたら困るからな、家まで送るよ」
雨に降られた時はこなたを恨んだが、今は感謝している…
だって、こうしてキョンくんと小さな2人だけの空間で、肩を並べて歩けるんだから…
かがみ「……」
大きめの傘とは言え、2人も入れば自然と肩が触れ合う事になる。
私は嬉しさと恥ずかしさで顔を伏せたままだ…
キョン「……」
この沈黙が心地いい…話す必要は無い。
私は今、彼と一緒に居られる幸せを噛み締めているから…
しかし、無情にもその時間は終わりを告げる。
気づけば雨が上がり、私の家のすぐ近くまで来たからだ。
名残惜しいが、私と彼の空間は消え失せる……
でも、このまま別れるわけにはいかないーー
キョン「ん、雨が上がったか。それじゃかがみ、ここで…」
キョンくんが傘をたたむ直前…私達だけの時間が終わりを告げる前に、私はキョンくんの肩に手を回したーー
キョン「かが…っ」
かがみ「……っ」
驚き、私の名前を呼ぼうとする彼の唇に自分の唇で蓋をする…
私は傘から出て、一言だけ彼に伝えた。
かがみ「送ってくれた…お礼…」
顔が沸騰するのを抑え、呆然とする彼を残しそのまま家へと逃げる様に走る。
うぅ、お礼なんて無理がありすぎたかも……
キョン「……くぁw背drftgyふじこlp;@:」
ー柊家ー
玄関の扉を閉め、私は動悸を抑える為に、手を胸に当てて深呼吸する。
…ふと気づいた。
つかさの靴がある…私の方が先に学校を出た筈なのに……何故?
つかさ「あ、お姉ちゃんお帰りなさい」
奥から本人が出てきて、私は率直に尋ねた。
かがみ「いつの間に帰ったの?学校下の雑貨店の前に居たのに、見なかったなんて…」
そして、妹の口から出た言葉に私は再び赤面する羽目になる…
つかさ「お姉ちゃん、キョン君と一緒に居たでしょ?声を掛けようとしたら、こなちゃんが『邪魔しちゃ悪いヨ~。お若い2人だけにしましょうや』って言ってね~」
あんの野郎…意図的に声を掛けなかったのかっ!
明日はニヤニヤ顔で質問責めをしてきそうだな…
でも…まぁ良いか。
こなたのお陰で2人きりになれたんだし…ね?
無理矢理にでも納得させよう…うん。
ーかがみ部屋ー
今日は良い日だった。
好きな人と2人きりの空間に居られたし…
それに、勢いでキスもしたからね…
そっか…キス、したんだよね?
……
………
あああっ!何でキスなんてしたんだ!?明日からどんな顔で会えば良いのよ!?
うぅ…何であんなに大胆になれたんだろ…
後悔しても遅いか…堂々と会えばいい。
あれで、少しでも彼が意識してくれてたら良いな…
うん、ポジティブに行かなくちゃ!
似たようなシチュエーションが、自分の意志で作れる様にーー
ーまた2人だけの空間をー
ーENDー
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最終更新:2007年09月10日 18:40