ななこ「ほな、気ぃつけて帰りや~」
今日も一日の授業が終わり、
生徒たちは嫌々ながらも帰りのホームルームを受け
今のウチの号令で一斉に机から立ち上がり
それぞれの友人と、帰りにどこに寄っていくかなんて話をしている
えーなー学生は・・・ウチら教師の仕事はまだ終わっとらんってのに
放課後・・・生徒たちが帰る中、職員室の机に向かい
次回の授業の進め方を自分なりにまとめたり
提出率の低ぅ~い提出物をチェックしたり、とにかくやる事は沢山ある
それが一息ついて、さて我が家へ帰ろうかという頃には
ほとんどの生徒は学校を出ており、残っているのは、
なにか部活に入っている生徒だけ・・・
その部活生でさえ、もうほとんどが帰宅してる
部活かぁー 教師という立場の人間が言うのもなんやけど、
よく学校に残ってまで運動をしたり、何かを創作したりできるもんやなぁ
正直、めんどいんとちゃう? 早う帰った方がええんちゃうかな?
夜遅なったら家の人も心配するやろうし・・・
ま、本人たちがやりたくてやってることやから、それにケチつけるつもりはないし
こういう時期に何かに一生懸命に取り組む事はとてもいいことやと思う
でも、ウチはまっすぐ家に帰らせてもらうわ
“青春”なんて、とうの昔に青からセピアに変わってもうてるしなぁ
そんな寂しい事を一人考えていると、ある生徒を見かけた
んーと、あの子は確か・・・?
岡部「それじゃ、気をつけて帰るんだぞ」
今日も一日の授業が終わり
俺達は嫌々ながら掃除をし、そしてホームルームを受け
この手球バカの岡部先生の号令で一斉に机から立ち上がり
それぞれ仲の良い友人たちと、教室を後にしていくわけだが
俺はそういうわけはいかないわけである
なぜかっていうと・・・
ハルヒ「先行ってて!!」
ということなのだ
ガチャッ!!
キョン「ちわーっス」
我がSOS団のアジトには、すでに宇宙人・未来人・超能力者が集まっていた
みくる「涼宮さんはまだ来てないんですかぁ?」
キョン「えぇ、ちょっと遅れるんじゃないですか?」
みくる「そうなんだ」
キョン「なにか用事でもあったんですか?」
みくる「うぅん、別に・・・はい、お茶です」
キョン「あ、どうも・・・」
みくる「・・・」
そんなに心配そうに見なくても・・・
キョン「とってもおいしいですよ、朝比奈さん」
みくる「よかったぁ」
貴方の淹れてくれたお茶がマズイわけないじゃないですか
たとえマズかったとしても、俺はそんなのを感じさせないくらい
とびっきりの笑顔を見せる事でしょうよ
ガチャッ!!
ハルヒ「ごめーん、遅れちゃって・・・もうみんな来てたのね」
キョン「何してたんだ?」
ハルヒ「別に、ちょっとね」
キョン「そうか」
ハルヒ「それよりみくるちゃ~ん、ちょっとこっちおいで」
みくる「ふぇ!?な、なんですかぁ・・・」
ハルヒ「別に取って食おうってんじゃないから、そんな瞳をしないの!」
そういってハルヒは朝比奈さんを捕まえ、なにやら髪を弄くって遊んでいる
若干うらやましく思いながらも、俺は古泉といつものようにボードゲームを勤しむ
そして、思念体の偏った趣味丸出しのヒューマノイドインターフェイスである長門は
これまたいつものように分厚い本のページをただひたすら捲っている
それにしても・・・結果の分かりきった勝負事ほどつまんないものはない
しかし古泉は俺に何度敗れようと、懲りずに勝負を仕掛けてくる
この根気強さのおかげで、これまで閉鎖空間での神人との戦いに
何度も何度も、どんなに辛くとも、挑んでいけたのだろう・・・
多少申し訳なさを感じるが、それが古泉に与えられた使命なのだ
そうやって自分の使命を、古泉はこれからも果たし続けていくんだろうな
さて、ワープでループなこの集まりではあるが、当初はSOS・・・すなわち
S(世界を)
O(大いに盛り上げる為の)
S(涼宮ハルヒの)
団
ということで、いろいろと如何わしい事をやってきた我々であるが
最近はやる事が無くなったというか・・・
S(世界が)
O(大いに盛り上がらないので)
S(しょーがなく暇を潰している人達の)
団
ってな感じだな
まぁ、実際その通りなんだが・・・
どうせ家に帰ったところで、飯食って風呂入って寝るだけだし
ここでこうやって団員みんなで過ごすのも悪かない・・・厄介ごとが無ければの話だがな
そういえば最近ハルヒも落ち着いたというかなんというか
ここ数日はあまり大規模な閉鎖空間は発生していないようだ
古泉曰く、「おそらく彼女は今のこの生活をそれなりに気に入っているのでしょう」
だそうだ・・・
古泉「それでも定期的に閉鎖空間は発生しています」
キョン「俺が原因だなんて言うんじゃないだろうな?」
古泉「いえ、これは女性特有のものが原因ですよ」
キョン「あぁ、そういうことか・・・ってそれを知っているのは何だかマズくないか!?」
古泉「もちろん僕も知りたくて知っているわけではありません」
キョン「それもそうだな」
まっ、ガンバーレ
いつから長門が本を閉じたら本日の活動は終了ってことになったんだろうな
暗黙の了解というか、気が付いたらそういうことになっていた
パタリと本の閉じる音がするやいなや・・・
ハルヒ「今日は先に帰るから、ちゃんと戸締りしとくのよ、キョン」
団長様はまた何か良からぬ事でも思いついたのか?
その計画かなんかで、いろいろ忙しいってんじゃないだろうな?
はぁ・・・また俺の神経をすり減らすような事じゃなかったらいいが
俺は朝比奈さんが着替え終わり、帰っていくのを見送って
戸締りをして、一人部室を後にしようとトボトボと歩き出した
「えっと・・・キ、キョンキョン!!」
ん?俺をあだ名で呼ぶ人は結構いる、というかほとんどだが
俺のことを「キョンキョン」なんて呼ぶのはこなただけだ
声と時間的にこなたが呼んだとは考えにくいし
一体誰が俺を呼んだんだ?
振り返ると、そこにいたのは・・・
いくら名前が出てけーへんつっても
さすがにあだ名はマズかったかもなぁ
よく泉なんかが「キョンキョン」って呼んでたし
ついウチもそのあだ名で呼んでもーた
キョン「黒井先生?どうしたんですか?」
ななこ「ど、どーしたって 今帰るところや」
キョン「先生のことですから、もう帰ってネットゲームでもやってるのかと」
ななこ「なっ!?・・・泉やな?」
キョン「えぇ、その泉から聞きました」
ななこ「はぁ、やっぱりなぁ・・・」
キョン「あまりやり過ぎないで、ゆっくり身体を休めたほうがいいですよ」
ななこ「お気遣いどーも」
キョン「では、帰ります」
ななこ「な、なぁ・・・キョンキョン」
キョン「なんですか?」
ななこ「いい歳して、ネトゲなんかやって・・・って思てるか?」
キョン「え?」
ななこ「家で引きこもって、パソコンの前でじっとして・・・」
キョン「・・・」
ななこ「現実でなんの役にも立たんレベルなんかをひたすら上げて
寂しい女やなーって・・・そう思てるか?」
キョン「えっと・・・どうしたんですか?急に」
ななこ「どーなんや?」
何でウチこんなこと聞いとんのやろ?
自分でも急にどうしたんや?って思う
キョン「・・・そんなことを気にするなんて先生らしくないですよ」
ななこ「悪かったな」
キョン「俺は先生が寂しい女だなんて思っていませんよ
俺ら生徒達と友達のように接してくれますし、
それでいて・・・大人として、教師として、俺達にたくさんのことを教えてくれます」
ななこ「そ、そうか・・・」
キョン「それに、それが何であれ・・・たとえ現実に役に立たないことでも、
何かに一生懸命に取り組む事はとても大切な事なんじゃないですか?」
ななこ(どっちが教師かわからんようなってきた・・・)
キョン「先生が担任のこなたが羨ましいくらいですよ」
ななこ「??」
キョン「うちの岡部先生なんて脳みそがハンドボールで出来てるみたいなもんです
それに、俺の後ろの席には世界を大いに盛り上げようと
虎視眈々と計画を練る、あの団長様がいますからね」
ななこ「そういえば、涼宮とは付きおーてるんかいな?」
キョン「断じて違います!!」
ななこ「そーなんや、安心した」ボソッ
キョン「へ?」
ななこ「いや、なんでもない・・・ほんなら気ぃー付けて帰りや~」
キョン「は、はい」
ホンマに何であんなこと聞いたんやろーな・・・
それに、何でちょっぴりドキドキしてるんや?
まぁえぇわ、今日はもう帰って寝よう
なんだかネトゲも乗り気じゃないしな
黒井先生も案外ああいうの気にしたりするんだな
いつも元気で、お気楽な感じで、
あんな悩みとは無縁の人だと思ってたんだが
以外というかなんというか、結構子供っぽいところがあるんだな
普段とはちょっと違った一面を見れた気がする
たまたまや・・・そう、たまたまなんや
たまたま、うちが帰るときにキョンも部活が終わり
たまたま、帰ろうとするキョンを見かけ、そして声を掛け
たまたま、あんな話になって
たまたま、ネトゲの事、涼宮の事を聞いたんや
別になにか理由があったわけじゃない
それに誰になんと思われようと、ウチはウチのやりたい事をやるし
生徒の恋愛事情がどうであろうと、ウチには関係ないことなんや
でも、何だか今の気持ちは弥次郎兵衛のように
ふらふらと、倒れそうで倒れない・・・
そんな不安定な心が転んでしまうのは、そう難しい事ではなかった
しかもそれはかなりベタ~な出来事で・・・
次の日・・・
ななこ「んじゃ、また明日な~」
白石「起立・・・礼」
「あじゅじゅした~」
今日は5・6限目が自分のクラスでの授業だったので
職員室には戻らずに、集めた世界史の宿題を置いたまま
帰りのホームルームをした
いやー今回は久しぶりに全員宿題を提出できたようで
やっぱり・・・
『忘れてきた奴は400字詰めの作文用紙5枚に、鬱という字を書きまくるの刑』
が効いたんやろーなぁー
こういうときは脅しが一番効果があるんや
しっかし提出率が高いのは喜ばしいことなんやけど、
他の荷物も一緒に持ってるのもあって、結構重い
ちょっと宿題出しすぎたみたいやな
ま、職員室まではそう遠くはないし、なんとかなるやろ
よっこらショット!!・・・うっ・・・こ、腰が・・・
でも・・・
NANAKKO「めげない、めげない、めげちゃダメ!!」
こんなときは努力と根性やーッ!!
それさえあれば、たとえ宇宙怪獣が出てきたってなんの心配もあらへん
必殺サンダー蹴りをかましてやればええんや
と、ななこ姉さん百八つの教えの内の一つを説いたところで
このプリントの山が重いことには変わりないわけで
それこそ弥次郎兵衛のようにふらふらと歩いていた
よし、この階段を降りたらゴールは目前や
いま目の前は提出物の山しか見えへんけどな
一段一段、ゆっくり確かめるように降りて行く・・・
最終更新:2007年09月04日 00:36