part38-332に投下された◆Z7XOOXPuOk氏の作品です。
「う~ん」
机のゴリゴリとした感触で俺は目が覚めた…。机の上にはよだれで湿った書きかけの原稿が置いてある。
「寝てしまっていたのか…」
何だろう…長い長い夢を見ていた気がする…。もう内容は殆ど覚えていないけれど、何故か鮮明に頭に残る映像…。「こなた」と名付けられた娘の誕生。そして、かなたの死…。
「ううっ…」
夢なのに、夢のはずなのに…涙が…止まらない…。
ガラッ
「YAYAYA夜食ですよ~って、そう君どうしたの!?」
涙でぐしゃぐしゃになった俺を見て、かなたが駆け寄って来た。
「どうしたの?大丈夫?」
「かなた…」
「えっ」
俺はかなたを抱きしめた…
「そう君…」
体が震えているのが分かる。涙が止まらない。こうしてかなたは、俺の腕の中で元気に生きているというのに…。
「大丈夫?悪い夢でも見たの?あと、少し痛いわ…」
「ああ。悪い…」
そっとかなたを離す。そう、あれは悪い夢だ。ただリアリティのある悪い夢…。
「今日はもう寝ましょ。悪い夢を見ないように一緒に寝てあげるから。」
「え?それは合体のお誘(ry
「違うわよ!(///)」
しばらくして
ー病院ー
子供が産まれた。泣き黒子意外はかなたと瓜二つ。とても可愛いらしい。
「名前は決めてあるのかしら?」
「ああ。この子はこなたと命名するッ!」
そう。あの時見た夢と同じ娘の名前…俺と二人ぼっちで暮らす娘…
「お大事に~」
「「お世話になりました~」」
今日で退院だ。家に帰って三人でゆっくりしよう。三人で…
「どうかした?そう君」
「何でもない。三人で楽しく暮らそうな」
「そうね」
かなたが笑顔で答える。こなたも笑っている。今、俺はとても幸せだ。
ー泉家ー
その夜。俺は眠れなかった。こなたが泣いてるわけじゃない。こなたは大人しく眠っている。かなたもすやすやと眠っている。
不安なんだ…かなたが…かなたが逝ってしまうんじゃないかって…
翌日の朝、俺はかなたに相談した。
「かなた。もう一度病院に行って、今度はお前が見てもらおう」
「え?どうして?私別にどこも悪く…」
「今は悪くないと思ってるかもしれないけど、今じゃなきゃ駄目なんだ!」
つい怒鳴ってしまった。静かにしないとこなたが目を覚ましてしまうな。
「そう君…」
「すまん。でも、病院には行ってくれ。頼む」
「…分かったわ。病院には行きます」
「でも、そこまで頼みこむのには何か理由が有るの?」
「それは…」
俺はあの時の夢の事を話した。普通の人なら馬鹿げているとでも言うだろう。しかし、かなたは真剣に聞いていてくれた…
「という事なんだ。俺はかなたの事が心配なんだよ」
「…ゲームのし過ぎでそんな夢を見たにせよ、心配してくれて、ありがとう…」
その日、俺とかなたとこなたは病院に行った。やはり、と言えば不思議な話しになるが、かなたは体に悪いところがあったそうだ。医者が言うには早期に発見出来たため、問題なく治せるとの事。
「そう君の言ったとおり、病院に来て良かったわ。あなた達と別れるなんて辛すぎるもの…」
「俺もだよ。早く治して元気になれよ…」
その後、無事かなたが退院して、幸せな日々を三人でおくってきた…。こなたはかなたそっくりに育ち、少々マニアックな点は俺そっくりになった。そういえば、最近彼氏が出来たらしい。確か…名前はジョンとか言ってたな。外国人だろうか…
「おかーさんおとーさん。行ってきまーす!」
「行ってらっしゃーい」
「早く帰って来て三人でゲームしようなー」
「またそう君たら」
「はははは」
あの時の夢のおかげでかなたは生きている。三人で幸せに生きている…。不思議な夢だった…。
「痛ててっ!」
自分の頬を抓る。これは夢じゃない。幸せな現実だ。
END
最終更新:2007年09月07日 00:11