いつものように特に授業を真面目に受け、いつものように部活へ行く。そして時々閉鎖空間へ
それが僕に与えられた使命であり、それが僕の全てだった。他には、とくにいりませんね
他人から見れば「面白いの?」と言われるような生活ですが、まあ面白いと言えば答えかねますね
でも僕はそれでいいと思ってました。このままこの生活が続けばそれでいいと。彼女に会うまでは
僕がこの生活をし始めてそろそろ1年が経とうとしています。あの世界が崩壊の危機にあった時から
もう1年ですか、時が経つのは実に早いものです。いつのまにか桜も散り、5月の生暖かい空気が僕を包み込みます。
5月病などというものにかかる理由が少しわかる気もしますね、確かにこれは僕でもついつい気が抜けてしまいます。
今日の部活はミーティングということでしたが、また市内散策でしょうか。あれならば特に成果が出なくとも
そんなに涼宮さんの機嫌は損ねませんから、僕にとっては嬉しいのですが。
「あの、すみません」
本日の授業も終わり、いつものように部室へ向かう途中、一人の女性に声をかけられました。
「はい、なんでしょう」
「コンタクトを落としてしまったんですけど、一緒に探すの手伝ってもらえないでしょうか」
廊下に膝をついて少し泣きそうになりながら、その女性は言いました。
「ええ、いいですよ」
ここで断る理由はありません。僕はよく彼に嫌なやつだと言われますが、人間的には出来ている方だと思いますよ
自分でいうのもなんですが
「もしかして、これでしょうか?」
ちょうど僕が探し始めた場所付近に光るものが落ちていて、まさにそれがコンタクトだったわけです
「あ、それです。ありがとうございました。あの、何とお礼をいっていいか・・・・・・」
膝をゆっくりと伸ばしながら立った女性は、ながい髪におっとりとした表情。どこか朝比奈みくるを
思い出させるような女性でした。
「いえ、礼にはおよびません。これからは気をつけてください」
「すみません。私今日初めてコンタクトを使用したもので、つい落としてしまいました」
恥ずかしそうに顔を赤らめるその姿はとても女性的で、そうですね、綺麗だと思いました
「目が悪いのでしたら、ブルーベリーを勧めますよ。目によいアントシアニン色素を多く含んでいますから」
ついこんな事を口走ってしまいました。初対面の方に言うべき事ではない、余計なお世話ですね。
「そうですね。アントシアニン色素は網膜で光に反応し、変化することで光の信号を伝える
ロドプシンという色素の再生産を助けるんですね」
これには驚きました。今まで僕がこんな事を言えば、大抵の方は聞き流すか、スゴイの一言で終わりですが、
さらに深い知識で答えてくる方は初めてです。
「これはこれは、僕より博識なようで」
「い、いえそんな事ありません。ただ調べるのが好きなだけでして・・・・・・あ、あなたもよく知っているんですね」
「僕も知識をつけるのが好きなだけですよ。失礼ですが、あなたお名前は?」
僕はなぜ名前を聞いているのでしょうか。僕はこれからSOS団の部室に行かなければいけないのに
「高良みゆきです。あなたは?」
「古泉一樹です。そうですか高良さん、覚えておきましょう。すみません、行かなければいけないので」
そう。僕の使命は部室に行くこと、それ以外は必要のないことです。それが僕にとっての全てだからです
「あ、はい。お手を煩わせてしまってすみません。あ、あの」
「何でしょうか」
「また、お話してくれますか?」
高良みゆきさんは、さっきまでの不安そうな顔とは違う、全てを包み込むような笑顔を浮かべ、そう言いました。
「はい、もちろんです」
考える前に答えていました。まぁ一般的な答え方です。別段理由なんてありません。
高良みゆきさんに一礼をし、僕は向かうべき所に向かいました。どうやら大分時間をとったようですね。
これでは涼宮さんを怒らせてしまっているかもしてませんね。何も起こってなければいいのですが・・・・・・
最終更新:2007年09月07日 23:51