心天気

part40-674&part41-45に投下された◆I6QqpqKJmg氏の作品です

逃げて、逃げて、それでも逃げられなくて。泣いて、泣いて、それでも何も解決しなくて。……もし神様がいるなら――全てを戻して……お願い
――心、曇天に似て――土曜日
あの頃の私達は何も分かっていなかった。大切な人を愛するという事、傷つける事。全て
かがみ『こなたまたアンタチョココロネ?よく飽きないわね』
こなた『ふっふっふ…真に好きなものとはそう簡単に飽きないのだよ。かがみん』
キョン『栄養偏りまくりだな』
 あの時私達は凄く仲が良くて、昼ごはんの時も、登下校も、ううん、もしかしたら殆ど――一日中一緒にいたかもしれない。つかさやみゆきはそんな私達を見て、『兄妹みたい』だとか『三人で一人だね』とか言ってたっけ
 だけど……内心は穏やかではなかった。当時私とこなたはお互いキョン君の事が好きだった――いや、今でもこの気持は変わらない。おそらく……こなたも
二人とも一目ぼれだったわけではない。互いに、キョン君の優しさに触れて好きになった。
私の場合は単純、曲がり角でキョン君とぶつかってケガをしたところをおぶわれて保健室に連れていってもらった。
――その時のたくましい背中と、キョン君の本気で心配してくれていた顔は今でも思い出せる
こなたの場合は、街で知らない男に絡まれているところをキョン君に助けられたから。こなた曰く
こなた『いやぁ、あの時は本当にヤバいと思ったよ。いくら格闘技やってても風邪の時は勝てないからね』
何で風邪だったにも関わらず外に出てたかというと、その日発売のマンガがどうしても欲しいものだったから…らしい。その時は呆れた、けど次のこなたの言葉を聞いて私は叫びそうになった
こなた『あの時キョン君かっこよかったな……何か、言いづらいけど……私…キョン君の事好き……かな?』
その時は適当に相槌を打ったけど、凄く不安で仕方なかった。友達の好きな人、自分の好きな人どちらも一緒なんて……
こなたは私の一番の友達だ――あんな事件の後でも、それだけは変わらない――そんな友達の好きな人を取るわけにも行かない、だけど私だって譲るわけにはいかなかった
かがみ『キョン君』
キョン『どうしたかがみ』
かがみ『あの、さ。今日良かったら昼ごはん一緒にどうかと思って』
恥ずかしかった。男の子にあんな誘いをするのは初めてだったから。断られるんじゃないかとも思った。

――それだけは避けたかった、だけど
キョン『いいぜ、毎日毎日男ばっかりで飯を食ってても味気なくてかなわん』
返答はOKだった。あぁ、あの時は凄く嬉しかったな。だけど
こなた『お~とお二人さん、熱々ですなぁ。キョンキョン!私を裏切るのっ!悲しいっ!』
こなたが割り込んできた。ちょっと悔しかった、こんなに簡単にキョン君に話せるなんて
キョン『誰がいつお前と付き合った!……まあ、いい。こなた、お前も昼飯一緒にどうだ?』
こなた『有りがたくご一緒させていただきます~』
こうして三人で昼ごはんを食べる日々が始まった。毎日他愛もない話、だけどそれだけでも私の心は埋まっていくようだった。キョン君に会うだけで満たされる心――こんな心があの事件を起こしたのかもしれない
かがみ「キョン君……」
深い夢の回想から醒める、今日は土曜日――か
――心、暗雲に似て――木曜日
キョン「ふざけんなっ!お前のせいで…俺とかがみがどんな気持だったか……考えてみろ!もう…二度とかけてくんな。顔も見たくない」
信じたくなかった。かがみに避けられていた理由を、あんな事が起こった事を、俺自身の不甲斐なさを。……何であんな事になったんだ?やっぱり俺のせいなのか?
キョン「かがみ……」
ふいに言葉が漏れた。心には穴が空いたように感じていた、かがみに避けられ初めてから――そして訳も分からずかがみにビンタされた時から――ずっと。
『誰かが幸せになると、その反面不幸になる人もいる』
まさにその通り、と言いたいところだったが……この場合誰が幸せになったんだ?誰もが不幸になった。得をしたのは……アイツだけか?
ベッドに横たわって、目を閉じ――あの頃の俺達を思い出す。どの場面を思い出しても三人しかいなかった
キョン「クソ………」
後悔の波が押し寄せて来た。――今日は木曜日、か……明日、かがみに全てを話そう。話せたら、だが
――心、雷鳴にも似て――同日木曜日
凄く泣きたかった……あんな事になってしまうなんて、バカな事をした、私自身を呪う。ごめんなさい…キョンキョン…ごめんなさい…かがみん…
こなた「これから…どうすれば良いの?」
誰に尋ねるというわけもなく呟いた。全てをキョンキョンに話した――結果、拒絶。もう……二度と……電話をするな、顔も見たくない……当然だ。親友の好きな人を奪うようなマネをして、だけどその好きな人には何も言ってなくて


私が引金になって、二人の関係を狂わせて……そんな事しても何にもならないのに――只好きな人に振り向いてもらいたくって、好きな人をとられたくなくて――ウソをついた。二人には……いくら謝っても……謝り足りない
――金曜日――キョン
 学校への道中、昨日の電話の内容が俺の心から消える事は無かった。……やっぱりかがみに話すべきだな……それと同時にアイツへのこれからの振る舞い方をどうするか、考える
 そう思ったが……やつは来てなかった
ななこ「え~と、泉は今日は休みか……柊、何か聞いとらんか?」
かがみ「いえ…聞いていません」
ななこ「…そっか」
 心の中で舌うちをする。いますぐにでも、怒鳴りつけてやりたかった。俺とかがみにはあんな事をしておいて自分は家に閉じ籠る――傷つきたくないから?悲しみたくないから?
 ……ふざけんなよ。
 はやる気持を抑えてかがみに話しかけようとする、がかがみに逃げられる
キョン「ちょっと…かがみ!待て!」
 毎時間こうだ。これじゃあ……かがみは、本当に俺とこなたが付き合ってると思っているようだな。あれは……アイツの……こなたのついた嘘だ
――同日、かがみ――
 キョン君をビンタした時、物凄く悲しかった。そして……惨めだった。こなたと付き合っている癖に――何でそんなに優しくするの?私は……私は……君の事で悩んで、苦しいのに……!何で――何も知らないように、笑ってるの?
 自分自身のわがままだったとはいえ、キョン君を傷つけた。その事は一生――私の心を晴らしはしないだろう。謝りたかったけど、顔を合わせづらかった
 そんな時、キョン君が話しかけてきた――だけど、顔を合わせられなかった。そして逃げるように帰ってきた、我ながら卑怯だ……キョン君が『話したい事がある』って言ってたけど、ごめんね。
 それから――私は――逃げて、逃げて、それでも逃げられなくて。泣いて、泣いて、それでも何も解決しなくて。……もし神様がいるなら――全てを戻して……お願い
――土曜日、キョン――
 かがみにはどうしても伝えないといけないだろう……これからの為、俺達の為に――そう決意して携帯をとる。幸いにもかがみとアイツの電話番号は登録してある。――一時は消そうと思ったが。
 時間は現在十時、さすがにこの時間までかがみは寝てないだろう。数回の呼び出し音の後
かがみ「……もしもし」

かがみがでた
キョン「あぁ…おはよう、かがみ」
かがみ「……何?」
キョン「かがみ……いきなりこんな事言い出すのもアレだし……こんな事言いたくないが、俺達は――こなたに――騙された」
!?そんな気持が携帯の向こうからも伝わってきた。全て、ありのままをかがみに話した。感情を一切排除して…事実だけを
かがみ「キョン君……ごめんね……」
全てを話し終えた後、かがみは泣きながら言った。嗚咽する様子が――明確に伝わる。謝るのは俺の方だ、優柔不断で、どっちつかず、二人の心をもて遊んでいたようなもんだ
かがみ「キョン君……その後こなたとは話した?…」
答えはもちろんNOだ。あんなやつとは――喋りたくもなかった
かがみ「バカッ!あの子は…変に意地っ張りなところがあるのよ……だから…今回の事も……私達を傷つけようと思ってやった事じゃないわよ!」
かがみがここまで怒った声を出すのは初めて聞いた
かがみ「だから……明日……みんなで話しましょ…?これからの事…こなたも絶対謝りたいと思ってるよ……」
かがみの優しさを再認識して…俺は…かがみの優しさに…涙を流していた。――俺も変に意地を張って、自分から歩み始められなかった事を……後悔した
キョン「ああ……分かった……かがみ」
かがみ「泣かないでよ……バカ……こなたには、私から連絡するわ……」
キョン「ありがとう……かがみ」
――冒頭、土曜日、かがみ――
深い夢から醒めて、今日一日どうしようかと思っていた時携帯が鳴った。……着信、キョン君から……出たくは無かった、けど――声が聞きたかった。エゴだっていうのは分かっている、それでも、聞きたかった……
かがみ「もしもし…」
キョン「あぁ…おはよう、かがみ」
かがみ「……何?」
キョン「かがみ……いきなりこんな事言い出すのもアレだし……こんな事言いたくないが、俺達は――こなたに――騙された」
いきなり何言ってるの――?キョン君、ドッキリは止めてよ。ねぇ、こなたが私にウソをついて――私がキョン君を避けて――キョン君はこなたを避けてるって――
かがみ「ごめんね…キョン君…」
話が終わった後……自然に言葉が出てきた、塩辛い、涙も溢れてきた。キョン君の気持も分からずに……あんな事までして。こなたの気持も痛い程分かったし、キョン君の怒る理由も分かった。

だけど、このままじゃ二人ともすれ違いを続けるだけだ……
かがみ「キョン君……その後こなたとは話した?…」
キョン「いいや、話していない。というより話したくもない」
またっ……意地張って……!
かがみ「バカッ!あの子は…変に意地っ張りなところがあるのよ……だから…今回の事も……私達を傷つけようと思ってやった事じゃないわよ!」
私に出来る事は――二人に話し合わせて、これ以上溝が深まらないように、願わくば……その溝が埋まるように
かがみ「だから……明日……みんなで話しましょ…?これからの事…こなたも絶対謝りたいと思ってるよ……」
そこまで言うと、向こうから泣いている……ような音が聞こえた
キョン「ああ……分かった……かがみ」
かがみ「泣かないでよ……バカ……こなたには、私から連絡するわ……」
キョン「ありがとう……かがみ」
そこまで言うと、携帯を切った。早く――こなたに連絡をしないと
――日曜日、晴天、キョン――
心とは裏腹に晴れ上がった天気、どしゃぶりにでもなりやがれと毒付きながら待ち合わせ場所の喫茶店へと向かう。かがみと……泉は来ているんだろうか、一抹の不安を抱えながら喫茶店のドアを開ける――そこには
――同日、かがみ、こなた――
こなたに連絡をとって、家まで迎えに行く事にした。久しぶりに見るこなたは……元気が無さそうだった……
こなた「かがみん……本当にゴメン……」
第一声が謝罪の言葉だった。なんというか、いつものこなたとは想像もつかない程――疲れていた
かがみ「私は…アンタがした事を完全に悪いって責める事は出来ない。私だって、見栄を張ってそのうちそんな嘘をついたかもしれないし。だけど……キョン君には謝ろう」
キョン君って言葉が出るとこなたの体はビクッ!と動いた。電話で怒鳴られた事が怖かったのだろうか、だけど
かがみ「私も一緒に謝ってあげるわ。…だから、そんな目をしないで。悲しくなるよ…」
こなたの体を抱きしめて、言葉をかける。今は――これぐらいしか出来ないから
こなた「かがみん……私……かがみんが友達で…良かった」
泣きながら、二人で、喫茶店へ向かった。これからどうなるか…全ては神のみぞ知る


――一時間前、こなた――
かがみが私の事を大事に思ってくれているのは、凄く……嬉しかった。あんなヒドイ事をしたのに今まで通り――ううん、今まで以上に優しくしてくれたのには……ただただ、感謝するしかなかった。ごめんね……かがみ……
家から出た私達はお互いに泣いて、それこそ目が赤く腫れ上がるまで泣いて――重い足取りを待ち合わせの喫茶店へと向けた。キョン君と直接会って話すなんて、本当は凄く怖い……その時ギュッと握ったかがみの手は、暖かくて――心地良かった
かがみ「大丈夫?気分悪くなったら直ぐに言いなさいよ」
大丈夫だよかがみ――今度は逃げない、キョン君が私を何と思ってようが――私は、逃げないよ
――日曜日、喫茶店、晴天――
俺が喫茶店に着いた時、すでにかがみと泉はコーヒーを注文して、俺を待っていた。店の奥――外からも見えず、店内でもそれほど目立たない場所に、座っていた
俺はその姿を見かけたが、何も話しかけられなかった――いや、かがみとは目があったが、会釈をしただけだ。泉に至っては顔を上げすらしない。……その態度がまた俺をいらつかせた
キョン「……何から話そうか…」
元々こんな沈黙は苦手だ、ましてや今の三人の状況……普通の沈黙でも息苦しいのにまた余計に苦しい。……どうにかしてくれ
かがみ「あのね、キョン君…こなた…今までの事凄く反省して、謝りたいんだって…聞いてくれる?」
自分では喋らずにかがみに喋らせて自分はごめんなさいだけってか?虫がいいにも程がある
キョン「それは…本来ならかがみではなく泉が言わなきゃいけないんじゃないか?俺だって、出来ればこんな話し合いもしたくなかったよ」
俺が何か喋る度に泉の体が反応する……はっきり言ってイライラする、お前のせいでこうなったんだぞ…!お前が話さなくてどうするんだ!
――同日、かがみ――
キョン君がこんなにいらついているのは初めて見た。こなたを見る目が、軽蔑と嫌悪に満ちている。こなたは……キョン君から逃げないって言ってたけど、この調子ではまともに話せるかどうかも怪しい
かがみ「こなた…」
その時こなたが重い口を開いた
こなた「キョ、キョン君……今まで……ごめんなさい…」
謝罪の言葉――これでキョン君が許してくれるかどうか、私には分からない。だけどこなたがこの言葉一つにどれだけ勇気を振り絞ったかは――痛い程分かる

キョン「……今までお前が俺達に対してやった行為は……裏切りだ。自分だけの都合で周りを振り回す――いや、振り回すでは済まされないな。お前はそんな事を平気でやったのか?とりあえずは、そこを聞きたい」
そんな事は絶対に無い。あんな事を平気でやれる程――こなたも無神経じゃない!思わず大声で叫びそうになったが、私はこなたの言葉を待つ事にした。今は……私がとやかく言うよりこなたがキョン君に何か言った方が良いだろうと思った……から
こなた「私は……迷惑をかけようと思った訳じゃなくて……」
その時キョン君がテーブルをバンッ!と叩いた。溜まっていた怒りが――爆発した
キョン「ふざけんなっ!だったら何の為に嘘をついた?!お前自身のエゴのためか?!俺は……今までお前を良いやつだと思ってた。嘘をつくまではな……だが、こんなやつだったとは………」
その時私も、声を荒げた
かがみ「ちょっと!さっきから聞いてたらキョン君こなたの話なんて全然聞いていないじゃない!自分の言いたい事を一気に撒くし立てて……卑怯だよ……」
キョン「違う!コイツの話は信用出来ないんだよ!今まで俺達に嘘をついていたんだ、そんなやつの話を聞こうなんて……」
その時隣に座っていたこなたの方から――ヒュウ……ヒュウ……とかすれた呼吸が聞こえた
かがみ「こなた…?どうしたの?」
こなた「かがみ……ごめんね……」
そこで、言葉を、切った
ドッ……
だって…こなたが、テーブルに糸が切れたように、伏したのだから
かがみ「こなた?!こなた!」
見ると呼吸が荒くなっている。顔色も悪いし、何より凄く…苦しそうだ
キョン「おい、こなた!」
こなた「ごめんね…キョン君…迷惑かけて……私……かがみにキョン君が彼氏って嘘をついた時――優越感に浸ってた……こんな…バカな…私を……キョン君は…許してくれる?」
キョン「許す許さないの問題じゃないだろ…!俺も……変なプライドが邪魔して…直ぐにお前を許してやれなくて…ごめんな……」
このままじゃ……こなた……死んじゃう?………イヤ、絶対に嫌だ!パニックになった私に――キョン君は
キョン「かがみ!救急車呼んでくれ!」
自分の今やるべき事を教えてくれた。そうだ、早く呼ばなきゃ……携帯を取り出し、119を押そうとする――焦れば焦る程指は空回りするだけだった。深呼吸をして、冷静にボタンを押す…
かがみ「すいません!大至急××喫茶に救急車一台お願いします!」

待っててね……こなた。もう少しで救急車来るから…
――同日、キョン――
かがみ「こなた?!こなた!」
アイツが――いや、意地を張っている場合じゃないな、こなたがテーブルに倒れるように伏したのに…意地を張っていつまでも『アイツ』だとか『コイツ』なんて言ってられない
キョン「おい、こなた!」
こなた「ごめんね…キョン君…迷惑かけて……私……かがみにキョン君が彼氏って嘘をついた時――優越感に浸ってた……こんな…バカな…私を……キョン君は…許してくれる?」
こんな時に……何言ってんだ!
キョン「許す許さないの問題じゃないだろ…!俺も……変なプライドが邪魔して…直ぐにお前を許してやれなくて…ごめんな……」
俺も…それぐらいしか言えない……かがみはそんなこなたを見て取り乱している、早く…救急車を呼ばなければ…いや、こなたを安静にする為に床に寝かせるのが先か?迷っても仕方ない
キョン「かがみ!救急車を呼んでくれ!」
いつの間にか周りは騒ぎを聞き付けた喫茶店の客ばかりだった。人が苦しんでるのに……アンタらは見てるだけかよ!怒鳴り散らしてやりたかった。だけど、今は…
キョン「こなた、頑張れよ!もう少しで救急車来るからな!」
その時――遠くからサイレンの音が――聞こえた
――病院、かがみ――
かがみ「過呼吸症候群…」
救急車に乗ってる最中、救急隊員の人に教えてもらった。過呼吸症候群というのは目まい、胸部の圧迫、痛みを引き起こすものらしい……極度の緊張でこうなってしまったって事も。無事で良かった……
だけど、本当に怖かったのはそれが引金で心臓発作を起こして……死んでいたかもしれないって事だ
そして、病院に着いた時真っ先にこなたのお父さんに連絡を入れた。まだ眠そうな声だったけど、こなたが倒れたって言った時は凄く取り乱してた。病院の場所を教えると、電話を切る音が乱暴に鳴った
キョン「……こなた」
その時病室のドアがガラッ!と勢いよく開いた
そうじろう「こなたっ!こなたは無事か?!」
かがみ「こなたのお父さん……こなたはこっちで寝てます」
そうじろう「そうか…無事で良かった……俺は一人、取り残されるのかと……思って…心配だった…」
目に涙を浮かべながらこなたのお父さんは、言葉を漏らした
キョン「……はじめまして」
キョン君は凄くバツが悪そうだった。自分が原因でこなたが倒れた…って思ってるから

そうじろう「あぁ、そうか…君がこなたの言ってた子か…」
キョン君が不安と疑問の入り交じった顔をする中こなたのお父さんは言葉を続けた
そうじろう「こなたが毎日言ってたんだ。学校にキョン君って名前の子がいて、その子とかがみちゃんで毎日一緒につるんでるんだけど……それが一番楽しいって。俺はその話聞いて君に嫉妬したけどな」
少し照れてこなたのお父さんは話をした。キョン君は――顔をうつ向かせて聞いていた
そうじろう「何せこなたにあんなに大事に思われているからな。親としては本当にそこまでの男なのかどうか心配だったよ。もし一目見てボンクラみたいな男だったら……殴ってやろうとか思ってたけど、君を見る限りその心配は無さそうだな」
そこまで言うとこなたのお父さんはドアまで向かっていって、キョン君の方を振り返り
そうじろう「君は芯の強いしっかりした男だと思うからな」
かがみ「……どこ行くんですか?」
そうじろう「こなたが目を醒ました時飲むジュースでも買ってこようかな、と思って。かがみちゃんとキョン君は何か要るかい?」
私とキョン君は首を横に振り、必要ない事を示した
そうじろう「そうか、じゃあこなたを見ておいてくれ」
そういうと病室から出ていった。取り残された私とキョン君は、こなたを見た。今は落ち着いて寝息を立ててるけど今度またこんな事が起こるか分からない。それが…また不安だ
キョン「俺は……そんな風に思われていたんだな…」
さっきから黙りこくっていたキョン君が口を開いた
――キョン――
俺は……恥ずかしくなった。こなたが嘘をついた事はもちろん許されない事だ――だけど、頭ごなしにこなたばかりを責めて自分の落ち度は認めてなくて……いや、認めたくなかったんだ
自分だけが悲劇の主人公みたいになりたかったんだ……心のどこかで、そう思っていた。だからこなたが俺達をどれだけ思ってくれていたのか、あの嘘をどれだけ後悔していたのか知った時自分が――ひどく恥ずかしかった
キョン「ごめんな、こなた。今までお前の気持を理解できなくて……こなたの気持を傷つけた。――俺こそ、許してもらえないか?」
こなた「……じゃあ、キスして…」
!?不意に起きたこなたが発した一言、俺とかがみは驚いた。――こなたが起きた事にもだが、何より発した一言に
かがみ「バカッ……起きたばっかりで何言ってんのよ……アンタ、心配かけて……」

かがみは泣いて……こなたに抱きついた。今は、こなたは――俺の顔をちゃんと見てくれている
こなた「また二人に迷惑かけちゃったね、かがみん、キョンキョン……ごめんね」
キョン「……もう謝らなくてもいい、俺のせいでこなたをこんな目に合わせたんだ……本当なら俺が謝るべきだからな」
そう言った俺を見てイタズラっぽい顔で
こなた「だったら、ほら、キスして」
そうは言ってもかがみが居るし、ほら、何より親父さんに見つかったら大変な事になるだろ?
かがみ「……今回だけは特別よ。外でこなたのお父さんが来ないか見といてあげるわ」
いつの間にか涙を拭いたかがみはそんな台詞を俺達にかけて出ていった。その後ろ姿は悔しさとか寂しさとか微塵も感じさせなかった――むしろ何故か、嬉しそうだった
こなた「じゃあ……キョンキョン…」
キョン「ああ…」
こなたの近くに立って――お互いに目を閉じて、顔を近づける。静かな呼吸が…感じられる程に。ムードだとか何だとかそんなものは全て吹っ飛んでいた。今はこの甘い時を――感じるだけ、だ。………もう終わりだけどな
こなた「ふふっ…キョンキョンありがとね。キョンキョンの初めて…奪っちゃった」
キョン「そのギリギリの発言は止めろ、かなり…気恥ずかしい」
さて、外で見張りをしてくれているかがみを呼びに行くか
こなた「あー、あとキョンキョン。私にね、まだキョンキョンの事諦めないから」
全くこいつは……
キョン「そういうのは本人の前では言わない事だな」
こなた「キョンキョンのいけず~」
いつものこなたに戻ったな、それでこそ――俺やかがみを良い意味で翻弄してこそ――こなただ。俺は二度とお前のその姿を…奪いはしない
かがみ「ちょっと遅かったんじゃない?!」
キョン「あぁ……悪い…」
かがみ「別に良いわよ…後で私もして貰うわよ…」
キョン「何か言ったか?」
かがみ「何でも無いわよっ!ほ、ほら、早く病室戻るわよ!」
―――素敵な雨上がり、雨なんか降っていなかったけど、それでも雨上がり。そうして―――
『ほらっ、急がないと遅刻よ!』『おいおい朝から走るのか』『いやぁ徹夜明けはキツイですな』
あの頃と同じようにまた笑いあっていける
~心天気~END


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最終更新:2007年09月13日 13:58
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