『男』の信念。

part40-256(後の小泉の人)氏の作品です

「さァキョンキョン上がって上がって」
おじゃまします。
「あ、お兄さん。こんにちは」
あぁ、ゆたかちゃん。こんにちは。
この子は俺をお兄さんと呼んでくれる数少ない子だ。
「…ゆーちゃん?」
「な、何かなお姉ちゃん?」
「キョンキョンはアタシのものだからあげないヨ?」
「お、お姉ちゃん!!」
変な惚けをするな。
それにまるで俺が『お兄さん』と呼ばれると喜ぶ変態みたいじゃないか。
「違うの?」
違う。
「お兄ちゃん♪」
ブッ!!!ゴハッ!!ゴフッ!!
気道に入ったろうが!!
「やぁ、キョン君か。お久しぶり」
あ、そうじろうさんこんにちは。
「是非ゆっくりしていってくれ」
と、言い残して部屋に戻っていった。

「キョンキョン~」
なんだ?
ぐいぐいと服の裾を引っ張られた。
「早く遊ぼうZE☆」
はいはい、わかりましたよお姫様。
「お姫様…///」
あぁ、しまった。ゆたかちゃんの前だった。
「ゆーちゃん?キョンキョンで妄想もいいけど程々にネ?」
「お姉ちゃん!!!」
「さぁ、キョンキョン行こうZE!」
そう。今日、俺はこなたの家に遊びに来たのだ。

「いやあ、今日は遊んだねぇ」
お前はテスト前以外遊びっぱなしだろ。
「今日は キョンキョンが居るから特別」
そうか。
「…ずいぶん彼女に冷たいネ」
ぶすっと頬を膨らましてふてくされたポーズをした。
その頬を指でつついた。ぷう、と間の抜けた音がした。
再び膨らんだ頬をまたつついた。ぷう。
「怒るヨ?」
ごめんなさい。拗ねたこなたが可愛すぎました。惚れました。
「え…///キョンキョンっ!?」
すすっとこなたの両頬に手を添え、視線をそらせないように顔を上向きに固定した。

「んっ…」
ほんの少し、背伸びをしながら、キスをするように目を閉じるこなた。
俺はそんなこなたを愛おしげに見つめ、
「んあーっ!!!!????」
いじくり回した。
ははは。
「キ、ョン!?」
ほーれほーれ。
ぐにぐにと顔全体をマッサージするようにこねくり回す。くしゅくしゅと表情が変わる。
「んぶーッ!!!」
多分怒ってらっしゃる。
俺はいじくり回すのを止め、じっとこなたの目を見つめる。
「キョンキョン!!空気読んでよ!!あの場面は…キ…ス…」
怒ったこなたはじっと見続けるだけの俺にたじろいだように視線を逸らす。こなたの白磁の肌が朱く色づけされる。
数秒の間隙を置き、そっと互いの唇を近づけ
「ンフッ。」
廊下に咳払いが響き渡った。
…そ、そうじろうさん。
「キョン君。若さにまかせていちゃつくのはいいが、せめて外で頼む」
あ、はい…。
とても気まずい空気のなかこなたの両頬の手を外してこなたと玄関に向かった。

「じゃあ、また明日だネ」
おう、と返事をして踵を翻そうとしたが服の裾を掴んだ小さな手がそれを阻んだ。
「今なら誰も邪魔無いヨ?」
そうか。
「ちょ、何さその反応!?」
驚いたこなたを引き寄せ、抱きしめる。
「っ!?///」
おーおー照れとる照れとる。
まぁ、かくいう俺も少し照れて心臓が普段より頑張ってはいるが。
さっきの続きをしようか?と意地悪く聞く。
「……うん」
三度、こなたが俺と視線を合わせ、近づく。
「ん、…」
距離はゼロになり二人の唇が重なった。
このときあくまで目は閉じるのがマナーだ。
「んっ………」
名残惜しい心情を表すかのように2人の間に橋がかかり、少しして切れた。
「…また明日」
ああ。また明日な。
無意識のうちに被せていた手と手が別れる。互いに手にすごい汗をかいていたのがバレた。
おやすみ、こなた。
「キョンキョンおやすみ~」

キーンコーンカーンコーン、と終業のチャイムが鳴ってから約三時間。長門が本を閉じたことによって今日のsos団の終了を告げた。
カバンを手に持ち、校門をでる。基本的にsos団は毎日あるのでこなたと一緒に帰ることは少ない。
携帯を少しいじくり回しながら下校していると不審な人影を発見した。
何故不審かって?
そいつは半纏をまといながら(おそらく)下校中の女子中学生を見ている男だったからだ。
見るからに怪しい。

今俺は警察に連絡を取るべきかどうか迷っていた。が、あれが実はサラリーマンなお父さんならどうだろうか?
おそらくなにかしら罪状が与えられて前科者だの犯罪者だの呼ばれるだろう。それが女子の謎の諜報ネットワークにより課長→部長→社長の三段コンボをくらい、栄転と言う名の単身赴任、妻に見限られて自棄になって…
と言うこともあり得無くはない。さすがに俺も一人の人生は背負えない。
チキンと呼ぶが良いさ。俺にはただの正義感で破滅に追いやるなんてできない。
かくして俺は口頭での注意に留めることにした。
もしもし、失礼ですが何をしてるのですか?。
はっ!?と気づいたようにその男はこちらに素早く振り返った。
「キョン君?」
そうじろうさん?
変質者は恋人の父だった。

少し気まずい雰囲気の中、俺とお義父さん(ただの便宜上であり他意は無い)は二人並んで歩いた。
これほど自分の行動を後悔したことはない。まさかの展開だ。
ただでさえ父親と娘の彼氏は仲が悪いという通例があるのに。
「なぁキョン君」
はい。
「女子中学生はいいねぇ。大人っぽさと少女が1:2の黄金比だよ」
!?な、何を言っているんだ?自分の性癖を暴露する気か!?俺をどうする気なんだ!?
「まぁ、それはどうでもいいんだ」
いいのか?
「実はキョン君を待っていたんだ。時間とれるかい?」
そう言ってそうじろうさんは公園を指差した。

「いいのかい?俺にホイホイついてきちゃって」
え?ついてこいと言ったのはそうじろうさんだったと覚えてますが?
「……オタクではないのか?」
一般人です。
「はっはっはっ。君は良い奴そうだな」
全く意味が解らない。オタクにしか通じない何かがあったのだろうか?
それで話と言うのは?
「あぁ、それなんだが…」
ポリポリ、と頬を掻いた。
「どうも年を取ると説教じみた事ばかり言いそうになる。
率直に聞くが、こなたとどこまで進んでるんだい?」
細目の奥は真剣な光を宿し、俺を射抜くように見つめている。
冗談は求められていない。
…まだキスまでです。
「なる程。素直だね。
じゃあ、それより進む気はあるかい?」
はい。
「即答か。まぁそうだろな。
君は少女趣味はあるかい?」
いいえ。
「?よくこなたとつきあう気になったね」
外見は問題じゃないですから。
「ふぅん…。じゃあ、最後の質問だ。
こなたと別れてくれないか?」

………何を言いたいか理解できません。
「ウチの娘と、別れろ」
…………なんでですか。
疑問符はつかない。ただ問いただした。
「答えは?」
嫌です。
俺は奥歯を必死で噛み締めて今にも飛びかかりそうなのをこらえた。
「そうか。まだ手も出していないんだろう?別れるなら今のうちだ」
いくら親でも立ち入るべき事柄では無いですよ。
多少語気が強まった。さすがに怒りを全ては隠しきれなかった。
「手も出せない腑抜けに娘を汚させないさ」
なら手を出してやろうか?お前に!!
と、言い出そうとしたが気づいた。
そうじろうさんの目は未だに俺を値踏みするような目だった。
BR>俺の怒気が消えていくのが分かったのか、そうじろうさんの目は平素のそれだった。
「うーん、漫画なら上手くいくんだがなぁ」
そうじろうさん。あなた俺を試しましたね?
「ほらやっぱバレてた」
あちゃー、と言いながら頭を抱えた。
なんでですか?
「君は……かなたの事を知ってるかな?」

「かなたは…こなたに瓜二つでな、たまに見間違えるくらいだ」
そんな似てたんですか?
「激似。マナとカナくらい。
…だからたまに思い出してしまうんだ」
俺は黙って聞いている。
これはきっと、そうじろうさんの根幹に関わる部分だ。
「まぁ、こなたに彼氏ができたことにショックを受けてな。
あれとつき合えるのはオタクかロリコンか物好きか、と考えてたのさ」
いやあなた瓜二つのヒトと結婚したんでしょ?
「それがオタクでもなくロリコンでもなく物好きだったわけだが」
余計なお世話です。
「なぁ……キョン君。俺はこなたを本当に大事に思っている。妻に瓜二つの娘だ。
娘に手を出したらぶちのめそうか、とさえ考えていた」
…俺、ぶちのめされるかもしれなかったのか。

「キョン君。君はこなたを幸せにできるか?」
できる限り努力します。いや、してみせます。
「口だけならなんともいえるが……俺は、中途半端な奴にこなたはやりたく無いんだ。かなたまで汚される気がしてな」
はい。
「……こなたを大事にしてやってくれ」
これは…認められたのか?
「かなたがいたら君に惚れたかな?」
答えづらい質問ですね。
「キョンキョーン!お父さんとなにやってんの?」
見ると公園の入り口にこなたが立っていた。
「おお、こなた!!」
たったったっと足取り軽く走ってくる。
それをそうじろうさんが腕を広げて迎え
「キョンキョーン!!」
俺に飛びついた。
そうじろうさん。目が怖いです。
「で、なにしてたの?」
ゴロゴロと猫がするように俺に体をなすりつけるこなた。
「急いでるところに俺の誘いをうけてホイホイ公園についてきてしまったのさ」
バッ!!とこなたが身を離した。
「キョンキョン…不潔……」
ちょ、まて!!なにが!?そうじろうさ…ってこなたと既に入り口まで!!?
こなたぁー!!

ホイホイ~の下りはホモ漫画の有名な一文だったらしい。
というか俺はそんな目で見られたのか…。
「ゴメンよキョンキョン」
でもお父さんならやりそうだからサ~。って。それはちょっと勘弁してくれ。
「ホントは何喋ってたの?」
ちょいちょい、と近くに来るように指示。
こなたを抱きしめる。
お母さんに幸せな姿を見せて欲しいってさ。
「お父さん……」
こなたは『お母さん』と聞いて少し涙ぐんだ。
こなた。
「うん?」
俺が幸せにしてやる。
「うん」

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最終更新:2008年01月11日 18:24
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