『背伸びの恋。』

part29-78ららっく◆Q3Rf0rNBGYさんの作品です。

 

「ゆーちゃんもちゃんと青春してるんだねぇ。おねーさんはすごい嬉しいヨ」

こなたお姉ちゃんに相談したらそう言われた。

「それで、お相手は誰なのかな?」
「えっと……一つ上の学年のキョン先輩って人なんだけど……」
「キョン? ……あぁ、うちのクラスのみくるんとよく一緒にいる人だネ」
「………そ、そうなの?」

みくるん……朝比奈先輩の事は知ってる。私みたいに年相応の胸を持たない先輩だ。………良い意味で。

「ゆーちゃん、別にやましい間柄じゃないみたいだから安心していーよ。部活動絡みらしいしネ」


部活動か……。確か、SOS団だったっけ。
……私も入りたいけど体弱いから無理だよね……。

「それでそれで? どんな馴れ初めなのサ?
暴漢に襲われそうになったところ助けてくれた――とか、子供の頃に一緒に東大に行く約束した――とか、貴方が私のマスターか――とか?」
「そ、そんなんじゃないよ、こなたお姉ちゃん。
えっとね、具合悪くて保健室に行こうと廊下歩いてたら―――

『うー……』
『……具合悪そうだが大丈夫か?』
『!! あっ、はい。大丈夫です……』
『とてもそうは見えないがな……』
『その……いつもの事なので……』
『そうか』

 


『あの……』
『いや、たまたま俺も保健室に用事があってだな。まぁ、嘘だが。
……なんだ、たちの悪いお節介に捕まったと思って諦めてくれ』

―――って事があって………それで……その……」
「………事実はギャルゲより奇なりとはこのことだネ」
「え?」
「いやいや、こっちの話。
それで、ゆーちゃんはどうするの? 告白するの?」
「うん………。できればその……告白したいなって思ってるんだけど……」
「まぁ、学年違うとそういうの大変そうだよネ」

こなたお姉ちゃんは最後に

「ま、役に立たないだろうけど応援はするからネ。さて、ネトゲでもやろっかな」

って言って自分の部屋に戻っていった。

「はぁ………」

一人になった部屋でキョン先輩の事を想う。
最近は一人になるといつもキョン先輩の事を考えている。
―――キョン先輩の横顔。
―――キョン先輩の背中。
―――キョン先輩の手。
浮かんでは消えて、消えては浮かんでくるキョン先輩。

………やっぱり、大好きだよ。だって胸の奥がトクントクンって疼くんだもん。

「………キョン先輩…」

 


――翌日

「……はぁ」
「ゆたか、大丈夫?」
「うん、平気だよ、みなみちゃん」

最近の体の調子はどちらかといえば良い方だ。
それは、学校に来ればキョン先輩に会えるかもしれないから。……これも病は気から、って言うのかな?
でも、私とキョン先輩との接点は保健室しかないから、私が保健室に行かないと会うことはほとんどできない。

「……はぁ」

体調が良いのは嬉しいのに、淋しい。

「……ゆたか?」
「平気だと思うよ、岩崎さん。小早川さんのアレはおそらく……」
「おそらく?」
「―――恋だね」
「――ふぇ?」
「あぁ、いや、ほら、その。世間一般的に女の子が悩む理由なんて――って、もしかして?」

私は、ひよりちゃんの言葉に静かに首を縦に振る。

「……でも、」

親友二人に簡単に説明をする。私が好きになったキョン先輩の事を。どうすればいいか分からないという事を。

「………ゆたかなら大丈夫」
「そうそう、岩崎さんの言う通りだよ。
かのエライ人はこう言った。『かわいいは正義』って」

二人とも、応援するって。頑張ってって言ってくれた。

「―――うん、私、頑張ってみる」


―――5時間目

私は保健室のベッドで横になっている。
具合が悪くて、じゃない。……見る人から見れば体調不良なのかもしれないけど、単純に寝不足でした。
なんで寝不足なのかって聞かれたらその……困りますけど……え? べ、べべ別に寝不足になるまで《自主規制》なんてしてませんっ!(////)

…………でも、夢の中のキョン先輩かっこ良かったなぁ。(////)

「……」

あ、目が冴えてきちゃった。それに……その……体も……。(////)

「……」

保健室の先生は……いないよね?

「……」

………おやすみなさい。
 

 


6時間目の体育が終わり、いつもならSOS団へと向かう足が、今日は保健室前で止まっている。
なんてことは無い。谷口のボレーシュートを顔面ブロックしてしまった結果、目の上が若干腫れてしまっただけだ。
まぁ、ボールは友達じゃない事が分かっただけでも御の字というものだ。

「先生、体育で――」

っていないな、何処にも。
仕方がない。薬棚から湿布を拝借して事を済ませるとしよう。

がさごそと薬棚を物色していると、

「―――すぅ」

と、聞き慣れた寝息が聞こえた。別に性的な意味は無いぞ?

「………また、体調を崩したのか」

ベッドを覗いてみると案の定、小早川ゆたかがそれはもう天使のような寝顔で眠っていた。

「……っと」

やばいやばい。女の子が寝ているをベッドを覗いてみるだなんて他人から見たら変態以外の何者でも無いな。

「……」

……まぁ、放課後に保健室を訪ねてくる奴はいないだろうからもう少しぐらい見ていても……

「……キョン先輩」
「!!」
「ん……ムニャ……」

ね、寝言か……。
……良かった。
しかし、寝言で名前を呼ばれるとはゆたかの夢の中で俺は何をしてるんだ?


―――

キョン先輩が日の暮れた教室で私を待っていた。

『キョン先輩……』
『ゆたか……』

私がキョン先輩の名前を呼ぶと、キョン先輩も私の名前を呼んでくれた。

『大事な話があるって聞いたんだが』
『はい……。大事な話です』

トクントクンと心臓の鼓動が大きくなる。

『私、キョン先輩の事が―――』

―――


「ムニャ……キョン先輩の事が、好きです……」

「……え!?」
「……ふぇ?」

キョン先輩が驚いてる……。そうだよね……告白されたら驚くよ……ね?

……あれ?
……教室じゃ…ない?

 

 

「……」
「……」

キョン先輩が顔を朱に染めてそっぽを向いている。

「………あの……キョン先輩?」
「……スマン、聞くつもりは無かったんだが、」
「………私、寝言……言ってましたか?」
「………あぁ、その……俺の聞き間違いじゃ無ければ……その……俺の事を……」
「………」
「好きだって……。い、いや、聞き間違いだよな?」
「……き、聞き間違いじゃないと……思います(////)」

……は、恥ずかしい。それにかっこ悪いよぅ……。寝言で告白するなんて……。

「えーっと、それじゃあ、つまり?」
「わ、私は……キョン先輩の事が好き、です」

い、言っちゃった。ど、どうしよう。
キョン先輩は、黙ったままだよ……。
あ、あはは。め、迷惑だったよね。

「ゆたか……俺もだ」

キョン先輩が強く、私を抱きしめた。

「……え?」
「俺も、お前の事が好きだよ、ゆたか」
「ふぇ? キョン……先輩?」

くしゃり、とキョン先輩が私の頭を撫でる。

その手はとても温かくて、心地良かった。

「………ゆたか」

キョン先輩が身を屈めて顔を近づけてくる。

私は少し背伸びをして唇を重ねて―――。

 

 

~Epilogue~

サンタクロースの存在をいつまで信じていたかって……今の俺は信じ込ませる立場にあるわけで。
つまり、そういうことだ。

「お父さん、僕これ欲しー」
「あー、僕も僕もー」
「こら、走っちゃダメだよ?」

そして今日は家族で二人の息子の誕生日プレゼントを買いに来たというわけである。

「あー、なんでも買ってやるとは言ったが母さんの言う事を聞かない子には無しだからな?」
「はーい!」
「うん!」

息子二人は良い返事をしたもののゲーム売場へと駆けていく。

「………ったく。何も聞いていないな、あいつら」
「元気なのは良いことだよ、あなた」
「まぁ……な」

元気に走り去った息子達を見ながら、妻と二人で笑い合う。
幸せなひと時。

「お父さん、僕、アンバーにするー」
「僕はこっちのジェイドがいいー」

息子達がゲームソフトを片手に戻ってくる。

「それじゃ、レジに並ぼうか?」
「うん!」
「うん!」

妻と息子達がレジに並ぶ。

………っと、

「――ゆたか」
「ん?」
「俺も仲間に入れてくれ」
「もちろんだよ」


―――余談だが息子達が『岩崎』や『谷口』やらの友達を連れてくるのは少し先の話―――

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最終更新:2007年09月10日 22:24
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