日下部みさおの純情な恋心

◆ugIb3.rlZc氏の作品

 

ー貴方の声が聞きたくて、私は今日も貴方に呼びかけるー


最初は何とも思ってなかった。友達が話してるのを、ぼんやり眺めてるだけだった。

何度か会話を交わす間に、彼の事が気になってた…彼に会わないと落ち着かなくなっていた…

彼の声が好き。
彼の笑顔が好き。
彼の優しさが好き。

私はすっかり彼に参っていた…おかしいね、こんな気持ちになる日が来るなんて…


そう、私は彼が大好きだ。
でも、彼は見向きもしないだろう。
彼は友達としてしか見てくれないだろう。
私もそれで満足だ。彼に嫌われなければ充分だった。


貴方はズルイよ…本当に…


 

みさお「よう、柊!最近あの男子と仲良いな!」
かがみ「べ、別に特別仲が良い訳じゃないわよ!勘違いされる様な事言わないでよね!」

顔を真っ赤にして否定しても、説得力ないぜ~?
柊をからかうのは面白いなっ!

私がケラケラ笑っていると、例の男子が話しかけてきた。
おぉ、近くで見ると案外背が高いな。

キョン「何を騒いでるんだ?随分と楽しそうだが」
かがみ「な、何でもないわよ!キョン君には関係無いでしょ!」

なんだかな~、ホントに柊は素直じゃないな。
…そういや、こいつの声聞くの初めてかもしれない。

キョン「ま、良いんだけどな。えっと、日下部…だったか?同じクラスなのに、話すのは初めてだな」

 


不意に私に話が振られて戸惑ったけど、なんだか話し易そうな雰囲気がある。
不思議な感覚だ。

みさお「おお、そいやそうかもなっ!ま、今後も柊共々ヨロシクな!」

流石に馴れ馴れし過ぎたかな?

キョン「はは、かがみ、お前の周りには元気の良い奴ばかりだな」
かがみ「どちらかと言えば、キョン君の周りに集まってる気がするけど…」

彼の微笑んだ顔に、少しドキッとした。
この感情が、よく解らなかった。


 

次の日から、柊やあやのと話してると、ちょくちょく彼も交じって話すようになった。
こんな性格だからか、彼とは私が一番話しが合う様な気がして、何故か嬉しかった。
何でだろう?こんな感情初めてで、自分の心が解らなくなっていた。


みさお「なぁなぁ柊、アイツに告白とかしないのか?」
かがみ「ぶほっ!い、いきなり何を口走ってるのよ!?」
みさお「だってさー、アイツのこと好きなんだろ?見ててイライラするんだもんよー」
あやの「心の準備って物があるのよ、みさちゃん」
かがみ「だから、そんなんじゃないんだって!」

柊は否定するけど、端から見れば丸分かりなんだよな~。

焦れったいのに、少し安心している私が居る…どうしたんだよ…本当に……


 

それから数日後、柊が憔悴しきった顔で席に座っていた。

聞けば、キョンに告白したけど、友達のままでいたいと言われたそうだ。

柊のことを、からかいながらも応援していた筈なのに、何故かホッとしている私の心……いつからこんな嫌な奴になっちゃったんだろうな?

答えは分かっていた。
私が彼のことを気になり出して、心のもやもやが消えた時からだ。


そう、彼のことを『好き』なんだと意識した時から……


 

しばらくは彼と話す事を避けていた柊だったけど、私達が何かと2人を誘い、なんとか前までの関係に戻した。
やっぱり、友達がギクシャクしてるのを、黙って見てるなんて出来ないからな!

…それでも、私が彼を好きな気持ちに変わりはなく、なんだか落ち着かない日々を過ごしていた。


そんなある日、彼に放課後待っててほしいと言われ、教室で彼が来るのを待っていた。

少しの期待と、大きな不安…
告白されたらという期待。
告白された後の不安。

彼に告白されたら、私は迷わず了承するだろう。
でも、付き合えば柊を裏切る様な形になる。

告白であって欲しい。
告白でなければ安心出来る。
心の中がグチャグチャだ。

でも…


 

私が決心するのと同時に、彼が教室に入ってきた。

沈み始めてる太陽に、オレンジ色に彩られてる教室で、私と彼は向かい合った。
彼は少し躊躇している様な面持ちで目を泳がせていたが、意を決したのか、はっきりと私にこう言った…

キョン「日下部…いや、みさお!俺はお前が好きだ!俺と付き合ってほしい!」

力強く、好きだと言われて、私は嬉しかった…

でも、それでも…

みさお「わ、私なんかと付き合っても、良い事なんてないぜ?私より良い奴なんて…」

ーそう、告白を断ろうと決めていたー

彼のことは本当に好きだけど、やっぱり今の関係が良いんだ。
柊が居て、あやのが居て、彼が居て…この関係を壊したくなかったんだ…とんだ臆病者だな、私は…


 

キョン「いいや、お前じゃなきゃダメなんだ!」
みさお「……!」
キョン「明るくて、活発で、少しおっちょこちょいだけど優しくて…そんなみさおだから好きになったんだ!」


ズルイよ…本当に…
普段はやる気の無さそうな表情で過ごしてるクセに…
こんな時だけ真剣で、真っ直ぐな目で見つめてくるんだからな…

気付けば、頬を一筋の涙が伝っていた。
嬉しさと不安が押し寄せたからだ。
彼は私の両肩を掴み、そのまま顔と顔、唇と唇を近づける。

彼と唇が重なりあう…
触れるだけの柔らかで、優しいキス…
それだけで、私は安らかな気持ちになれた…

ズルイよ…貴方は…
断ろうと決心したのに…
あっさり崩れちゃったよ…


 

数日後、私はいつもの様に彼に声をかける。

みさお「おっはよー、キョン!」
彼の声が聞きたくて…
キョン「よぉ、みさお」
彼の笑顔が見たくて…


結局のところ、私は告白を断った。
卒業した時、まだ私を好きでいてくれるなら、その時に付き合おうと約束してな。

みさお「柊ぃ~、今日の宿題見せて~」
かがみ「たまには自分の力でなんとかしろ」
みさお「キョン~、柊が冷たいよ~」
キョン「ははは、安心しろ。俺が代わりにかがみに教えて貰うから」
かがみ「あんたもか!」
あやの「それじゃあ私も~」
かがみ「お前もかい!」

やっぱり、私らはこうでなくちゃな!キョン!

ー貴方の声が聞きたくて、私は今日も貴方に呼びかけるー


 

ー峰岸宅ー

あやの「こんな感じなんだけど、どうかな?」
みさお「気色悪ぃー!!こんなの私じゃぬぇーっ!!」
あやの「そうかな?みさちゃん見てると、こうゆう感じにしか見えないよ?」
みさお「う、嘘だ!私はアイツのことなんかー!!」
あやの「うふふ、ライバルが多いし、彼は鈍感だし、大変な人を好きになっちゃったね?」
みさお「うう…確かに多すぎるよなぁ~」
あやの「あら、彼が好きなことは否定しないの?」
みさお「……あやののバーロー!!うわぁ~ん!!」

あやの「行っちゃった…ふふ、みさちゃんも可愛い女の子なのね。えっと、タイトルは…」カタカタ

『日下部みさおの純情な恋心』

ー完ー

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最終更新:2007年09月10日 22:32
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