あなたがいない日

part52-428氏の作品

今朝は寒いわね。
そんなことを考えながら教室に入ると、少し早く来てしまったせいかまだ生徒は2、3人くらいしかいない。
日下部達もいないし、つかさのクラスにでも行くか、
しばらくボーっとしていたが、そう思い教室を出ようとしてドアに手をかけたとき、ひとりでにドアが開いた。

「「あ。」」

これは2人分の声だ。1人は私でもう1人はキョン。
私はちょっと驚き動けなくなっていると、

「おい、どうしたかがみ。なに止まってんだ。」

その声を聞き私は意識を取り戻した。

「なっ、あんたがいきなりドア開けるからでしょうが!」
私はキョンが相手だとなぜかいつも喧嘩腰になってしまう。
キョンは、やれやれ、と言って教室の中に入った。
それに倣って私も教室の中に戻った。

「何か用事あったんじゃないのか?」

「別に、大した用じゃないしね。」

私は自分の席に着きながらそう言った。
キョンは私の前の席に座っている。
1ヶ月前、この席順になってからキョンとはよく話すようになった。それまでキョンは私の中でよく知らないただのクラスメイトである。
初めて話したとき、私はどこかキョンとは似ているような気がしてならなかった。
一度そのことをこなたに話したら、お互いツンデレだからねえ、と言われたのを覚えている。
こなたの言ったことはよく解らなかったが、とにかく私とキョンには共通点があるらしい、ちょっと嬉しいな。
私達は話していくうちにお互いのことを名前で呼ぶようになっていた、キョンっていうのが名前かはよく解らないけどね。
そんな私達を見て付き合ってるんじゃないかという噂も流れるようになった。
不思議と悪い気はしなかったのを覚えている。
しばらくキョンと他愛のない会話をしていると、担任が入ってきて朝のホームルームが始まった。
何も変わらない日常。


しかし、その日の昼休み事件は起きた。
いつも通り日下部達とお弁当を食べていると、いきなり教室に担任が入ってきた。
「キョン、ちょっと来い。」

私はキョンのいる方を見ると、しぶしぶ立ち上がっているのが見えた。

「また何かやらかしたの?」

「何もやってない。それに、またってなんだ、またって。俺はそんなに呼び出し常習犯ではない。」

そう言いながらキョンは教室を出て行った。
昼休みも終わり次の授業が始まろうとしていたが、私の前の席は開いたままだった。
私はモヤモヤした気持ちのまま授業を受けた。何だろうこの気持ち?
結局その日、キョンが教室に戻ってくることはなかった。
放課後、私が帰ろうと準備をしていると、日下部が話しかけてきた。

「キョンのやつ何やらかしたんだろうなー?まさか犯罪とか──

「キョンはそんなことするやつじゃないわよっ!!」

私は日下部が言い終わる前に、そう叫ぶように言った。
まだ教室には多くの生徒が残っていたので、多少ざわついていたが、それを静めるには充分なこえの大きさだった。
私は教室の異常に気づいて逃げるように教室を出た。

「はあ、キョンのやつなにやってるのよ。」

独り言のようにそう呟いていると、自分の電話に着信があることに気付いた。

キョンからだ──

「もしもし!?何やってんのよ!?あんたのせいで私まで恥かいたのよ!!」

違う。言いたいことはこんなことじゃない。
一言心配だったと言いたい。
そんなことを考えていると明らかに落ち込んでいるキョンの声が聞こえた。
「すまん、俺もいろいろあってな……、なぁかがみ、今から会えないか?」

「わかった。今どこにいるの?」

私は場所を聞いた後走ってそこに向かった。
キョンの声からして何かがあった、ということが伝わってくる。

「キョン!!」

指定された公園に着くとキョンはベンチに座って待っていた。

「すまんな、わざわざきてもらって。」

「細かいことは気にしないでいいから。何があったの?」

キョンは話し始めた。
キョンが言うところによると妹が事故にあって、命が危ないらしく、耐えきれずになっていたらしい。
私はキョンの話を聞くとふぅ、と息を吐いて、

「それで、何で私を呼んだの?」

「いや、お前に叱ってほしくてさ…、うじうじしてちゃダメじゃないとか言ってくれy──
キョンが何かを言い終わる前に抱きしめた。

「強がらなくていいわよ……、私に……甘えてよ…。」

そうすると、キョンは私を抱きしめ返して泣き始めた。


「ほら、病院に行こう。もう大丈夫でしょう。」

私とキョンは30分くらい抱きしめあってただろうか。
少し体が痛くなってきている。

「ああ、もう大丈夫だ。ありがとな、かがみ。」

私達が病院に向かおうとしたときキョンの携帯が鳴り、キョンの妹が意識を取り戻したと言うことがわかった。
私は胸を撫で下ろし、じゃあ帰るわねと言って、帰ろうとしたとき、キョンが後ろから抱きついてきた。

「ちょ、ちょっと、もう大丈夫なんでしょ。」

「いや、すまん。妹は大丈夫そうだが、代わりに今度は俺が危なそうだ。」

何が言いたい─、そう言って振り向こうとしたときキョンがつぶやいた。
「俺、お前がいないとどうもダメらしい。というかな……うん、ほらあれだ…お前のこと……好きみたいだ…。」
そう言った後、キョンは一層強い力で抱きしめた。
私はそのとき何でキョンがいないときにモヤモヤしていたのか、そして何で日下部にあんなこと言ったのかわかった。

「私も…キョンがいないとダメみたい…。」

キョンの顔が私の顔に近付いてきた。
私は目をつぶりそれを受け入れようとした、そのとき、

「おーい柊ー、さっきはごめ………」

日下部は最後まで喋らずナニモミテナイカラーっといって走り去っていった。
私は笑って、キョンも笑った。
そして私は改めて口付けを交わし、言った。

「ずっと一緒にいないと許さないんだから。」




fin.

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最終更新:2007年10月05日 16:04
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