七誌◆7SHIicilOU氏による作品です。
熱い、暑いではなく熱い
百獣の王ライオンも自分自身の象徴たる立派な鬣をうっとうしく思うこと
請け合いの熱さだ
冬場にはありがたい、自立型暖房の我らが団長様も
今は寝る間際の蝿のような存在に成り下がっている
しかも、その蝿を蝿叩きで叩こうものなら
蝿叩きは一瞬で粉砕すること間違いなしである
どうしたものかね
朝、まだHRも始まらない時間だというのに
湿度の高いこの国の気候と、休むことなく活動し続ける
大きな核融合炉が手を組んだおかげでクラスの半数以上が
自らの机に伏せっていた
太陽だけでも旅人の服を脱がすには十分だったのに
風まで手助けをしているんだ、のほほんとした一般高校生には辛かろう
かく言う俺も例に違わず、机と一体化を図るかのようにして
下敷きで生ぬるい風を自分に送っていた
視界の端にはだれてるかがみや日下部もいたが
立ち上がって話しかける余裕も無い
身体を動かしたりする授業が無くて助かった
なんて、異常加熱した脳みそでトロトロ考えていると
太陽に負けず劣らずのエネルギー器官を持ってるに違いない
団長殿が教室に入ってくるなりクラスの全員の鼓膜を破くに違いない声量で叫んだ
「SOS団緊急収集!HRなんてすっぽかしてついてきなさい!」
ハルヒに半ば引きずられて俺とかがみがSOS団本部こと、文芸部部室に到着すると
既に他のメンバーは集まっていた
全員の顔を見渡し、いつもの団長席のいすに仁王立ちになったハルヒは高らかに言った
「では!SOS団緊急会議を行います!」
はじめるのはいいが、この中には授業をすっぽかすと進級に響く輩が二名いることを
わかってもらいたいね
古泉や朝比奈さんに長門、ハルヒにかがみに高良このあたりは成績的に問題は
無いだろうが、こと俺とこなたに関してはそこそこ重要なんだよ
と、言ったところで
くさい物に蓋をしろ的な耳を持つ団長閣下に俺の思いは1ビット足りとて届かず
1,2時間目を犠牲にして緊急会議に当てる運びとなった
勝手にしろよもう
ハルヒの提案はこうだ
「めちゃくちゃ暑いからSOS団主催で校内でカキ氷の出店でもやろうぜ!」
って事らしい
どうやら古泉はすでにこのハルヒの提案を前日に聞いていたらしく
大量の氷やらシロップやら、業務用の機械まで用意してあるらしく
後は実行に移すだけというところまで実はきてるらしい
つまり俺が反論する材料など無く
ここで下手にこねると俺が空気読めないみたいになってしまう
現につかさやこなた、朝比奈さんに高良までもが楽しそうにはしゃいでらっしゃる
俺はあきらめのため息をつき、ハルヒに同意の意思を見せようとしたが、
そこにかがみがいた、そうだった今この部室にはもう一人常識人がいたんだった
がんばれかがみ俺はお前の味方だ、と心の中で応援しておく
「ちょ、ちょっとまってよ、機械とかがそろってても学校側の許可は!?」
そうだった、すっかり失念していたが
あの、いかつい生徒会長が黙ったままとは思えない
ハルヒは、少しひるんだ様子だったが
「あぁ、それなら大丈夫です僕が許可をとっておきましたから」
と古泉が言ったため結局中止には至らなかった
これで完全に反撃のための武器は尽きたわけだしかし、古泉許可なんて本当にとったのかよ?
「えぇ、先日直接話しておきました、近々SOS団でイベントを起こすようですが
どうか目をつぶっていただきたい、と」
そういえば、あの生徒会長はお前のやらせだったな
という訳で昼休みからSOS団印のカキ氷(50円練乳+10円)が売られる運びとなった
今なら美少女たちからの手渡しつきだ
さて、午前中のあれやこれやの諸々の出来事を有耶無耶にして昼休みである
午前中に働いてもらった脳みそに栄養を運んでやる貴重な時間であり
F1で言うピットイン相当するもんだと思うね、つまりこれを欠かすとマシンである俺達の肉体はそのまま夕食まで
働き続けになってしまい、下手するとクラッシュしかねない決して疎かに出来ないものだ
しかし、我々SOS団の面々はその補給タイムもそこそこに中庭に集まっていた
そこで何が行われてるか、これはもう想像に難しくはないであろう
ここに、期間限定SOS団中庭支部の誕生である
どこから手に入れたのか運動会などでよく見かけるテント
その中に複数の長机、その上に鎮座するかき氷機械
後ろには大量の氷の入ったフリーザーボックスが自らの出番を待っている
ついでに、今回の設営のさい機械の電力供給のための配線をSOS団準団員ことコンピ研の面々がやってくれた
彼らはいま裏手でハルヒ閣下直々に渡された試運転がてら作ったかき氷を食べている
ついに、SOS団印のかき氷が販売されるわけだ
設営に借り出された俺と古泉は多少のハーフタイムを頂きたいのだがな
諦め半分に団長様に休憩の許可を貰いに行くと
「いいわよ、あんた達は裏の椅子に座って氷の見張りでもやってなさい」
なんと、あっさり許可されたのだったしかもかき氷のオマケつきである
俺が作った奴でなく、朝比奈さんやかがみとかに作ってもらった奴ならもっとありがたみもますのにな
「いえ、あなたの作ったかき氷もなかなか美味しいですよ」
ふん、お前にほめられても嬉かないね
「それは残念ですね」
にやけた面がかき氷と中途半端に合っててむかつくぜ
こいつと下らない話をしてるなら、SOS団の誇る美少女達の後姿を眺めてる方が有意義だ
視線を前方にもどすと、そこはいつだったかこなたにつれてかれた東京の行列を思い出させる
列が出来ていた、男子生徒が多いのはまぁ予想通りだな
なるほど俺と古泉を後ろに下がらせたのはこういう意図があったわけか
新しい氷が必要になるのは意外と早いかもな、などと考えるが早いか
前線から補給を受け取りに来た美少女戦士がこちらに向かってくるではないか
ふむ、どうやら俺の休憩時間はそろそろ終了のようだな
立ち上がり、やってきた美少女戦士ことみゆきさんに氷を渡すが、……ふらふらしていらっしゃる
しまったこの方はしっかりしてはいるけど、朝比奈さんと同じくドジな方でもあった
「やっぱり俺がもちますよ、古泉ここは頼んだ」
と、氷を受け取り俺が運ぶことにした
しかし、近くに行くとやはりなかなかの列だ、昼休み中にはなくならんだろこれは
機械もフル稼働中だというのに、宣伝もせずにここまで集まるあたり
SOS団と言うかハルヒの知名度の高さが伺える
結局、昼休み終了の鐘が鳴り列は消え去った
ハルヒは売り上げの計算中、安いとはいえ元値はタダだからな
大儲けであろう事を想像するのは容易いことだ
そういや、今日は3,4時間目しか顔をだしてないにことなるな
この様子じゃあ午後も片付けに翻弄されることは間違いないだろう
それにしても、学校の教諭は誰一人として注意をすること無かったし
他の生徒もすっかりSOS団にかんしては順応しちまってるな
確実にハルヒに都合のいい学校になっていってるな
これも、お前の力が多少なりとも働いてるのかね?
なんてこの学校の現状を一瞬心配するが何はともあれ
片付けに精を出すことにする
やれやれだ
・・・
朝、流石に何年も通ってれば直射日光の中の
坂道ハイキングコースにもなれるもんで
多少はHRまでの余裕がある状態でのんびりと歩いていた
校門前まで歩くと、ふと見慣れた、でもいつもと違う後姿が見えてきた
「あら、キョンさんおはようございます、昨日は大変そうでしたね」
俺に気付いて声をかけてきたのは、同じクラスの峰岸で
かがみ繋がりで話すようになった女子だ
「あぁ、ハルヒのおかげでただでさえ危ない単位が減って、留年が近づいてくる」
俺は普段どおりに話したつもりだが、少々自信が無いね
なぜなら俺の意識の大半は峰岸の髪、そのポニーテールに持ってかれてるからだ
普段とは違う峰岸の姿に俺は動揺を禁じえなかった
その俺の挙動不審さに気付いたのか峰岸は
「これですか?最近暑いですからね、少しあげてみたんですけど…似合ってませんか?」
そう少し不安げに見られて、あぁ全然似合ってないよなんて言えるわけがなく
そもそも、似合っているのにわざわざ嘘をついてまで嫌われるようなまねをする必要も無く俺の口を出たのは素直な賛辞の言葉だった
「いやすげー似合ってる、たまにポニーにしたらもっともてるんじゃないか?」
後半の方には若干俺の希望も入ってるが嘘はついてない
俺の言葉を聞いた峰岸は少し照れたようにはにかみながら
ありがとう、と言って学校に向かった
俺も話していて時間を食った、急がなくちゃいかんな
今日はハルヒが変なこと思いつかなきゃいいんだけどな……
・・・
秋、と言っても立秋を迎えただけで
気温は上がる一方、周りを見ても半そでの涼しげなファッションの人ばかり
しかし、この時期だけのありがたいことが一つ
それは……長髪の女性がその暑さゆえにポニーでいることが多いのだ
これはこの暑さの中の俺だけのオアシスなどと一人
公園の木陰のベンチに座って悦に入っていると
俺のオアシスに侵入する不届き者がいた
よく見ると、その不届き物はよく知る顔であり
それもそのはず、三人いた不届き者のうち二人は同じ高校に通う友人であり
もう一人もそれなりの縁がある人物だった
知ってるものとなると、下手に心の中で毒づくこともしづらく
この憤りをどうしたものかと考えていると
向こうがこちらに気付いたらしく俺の名を、といっても奇々怪々な愛称だが
呼びながら近づいてきた
それにしても、珍しい組み合わせだなかがみと小早川と橘か
「あ、珍しい組み合わせっておもってるでしょ?」
なんてこった、心を読みやがったな
しかし、お前が超能力者らしいところを始めてみたな
と一瞬言い返してやろうかと思ったが、いかんせんここには
小早川とかがみがいるので、しかたなく話を合わせる
「あぁ、かがみと小早川はともかく、橘がここに加わってるのは予想外もいいとこだな
何で一緒になったんだ?」
聞くと、小早川がおずおずと話し始めた
要約すると、
こなたになんかプレゼントしようと思ってる
どんなの送ればいいかわからない
こなたに近しい友人をあたろう
つかさは頼りないので、かがみに助けてもらおう
駅前をうろちょろしてると橘にばったり
かがみとは面識のあった橘が興味をもって一緒に行動
そしていまに至るらしい
なるほど理解できたが、俺はお前達に一言いいたい事がある
そういうと、三者三様の反応を見せた、小早川はなにやら俯き
橘は照れたように頬をかき、かがみは何に対してか言い訳をはじめた
ただ、三人とも少し紅くなってるのは同じだった
俺は、一拍おいてから言った
「なんで、お前達は揃いもそろってツインテールなんだ!」
と
いや、特に変なことを言ったつもりは無いんだが三人ともやはり三者三様に怒り始めた
何を言うのかと思えば!とか期待させといて!とかせっかく返事を考えてたのにとか
なにやら怒りのベクトルが変な方向にいってる気がしたが
先ほどよりも紅くなってる三人の顔を見ると流石にそんなことは言えやしなかった
だがしかし、一通りぼろくそに言われた後ぷりぷりしながら帰る三人の姿を見ながら
俺は、なるほどツインテールのよさはこういうところか、と
俺を怒鳴りつけてた三人の顔を思い出しながら一人納得していた
・・・
「チョコバナナ」と「チーズケーキ」
ケーキバイキング、それは女の子の心を揺り動かす一つの魔法
多種多様な小さめのケーキ、お盆に並ぶ色とりどりのケーキ
女の子ならず男の俺でも、純粋に美味そうと思ってついつい手を出してしまう
ただ、この場の支払いが俺の財布から落とされることになってなければ
もっと素直に喜べたのにな、机に並んだ大量のケーキを見渡してから
それを吟味しているクラスメート達を見つめる
こなた、かがみ、つかさ、高良、日下部、峰岸、長門、ハルヒ、朝比奈さんに俺
なんと数えたところ10人もいる事になる
諭吉さん一名とおさらばする羽目になるであろう事は火を見るより明らかである
だが、楽しそうにしているみんなを見ると文句の一つでも言ってやろうという気持ちはどこかにすっ飛び
結局払うなら一つでも多く喰ってやるといった、若干ポジティブな気持ちに切り替えられる
さて、喰うとしますか
結果から言おう、無理だった
調子に乗ってとりすぎたケーキは今もなお圧倒的な存在感を机の上で放っている
確か、記憶が正しければ入ったときに店員のおばさんに
非常識な残し方をした場合は、別途料金のお支払いをしていただくと言われたはずだ
しかし、この面子であまりが出るとは……俺は一人一人の様子を確認してみた
ハルヒ…
「私はもういらないわよ、無理に食べたら美味しくなくなっちゃうから」
そりゃ結構な心がけで、普段からそうしていただけるとありがたいね
長門は…
「……胸焼け」
…そうかい、お前も胸焼けするんだな、まぁあれだけバクバク食ってればな
他の奴らの二倍近く一人で食ってたからな
朝比奈さん…
「えっとぉ…ごめんなさい…もう食べれません」
大丈夫です…量を食べることであなたには期待していませんし
むしろ頑張りましたよ。
こなた…
「…もだめ」
でしょうね
かがみ
「……なによ、キョンもさっさと食べなさいよね」
かがみは現在進行形で頑張ってるな
後は…
つかさも、もうだめそうだし
日下部は…あぁ死んでいらっしゃる
峰岸は…あの日以降たまにするようになったポニテが似合ってます
…いかんこのままだと、大量残し=俺の財布がすっからかん
くそっ月初めだって言うのに無一文はいかん
男として食わなくちゃいかん、俺はそれから一心不乱に食い続けたね
アメリカのホットドック選手権でたら、優勝は出来ないまでも
いいところまでは行くんじゃないかな?と靄がかかった頭でふと考えたほど食ったさ
だが、しかし時は無常なり後2つと言うところで時間切れになってしまった
制限時間があることもすっかり忘れてた俺は、結局その二つの金をプラスで払ったさ
俺の財布からは諭吉先生と樋口さんが一名づつ昇天なされた
かわりに小銭で重くなったがな
その後、もたれた胃を抱えながらいつもの公園で解散
残った二つのケーキはせっかく金を払ったんだからテイクアウトして
俺の冷蔵庫に入っている、小さめのチーズケーキとチョコバナナがな
金を無駄に使った上に最終的に散々な結果に終わったが
こういうのも俺達らしいのかもしれんなと思っていると
少しニヤついている俺がいた、まったく他人に見られたら俺の男としての品格が著しく落ちるところだった
俺は冷蔵庫からお茶を取り出して、一気に飲むと部屋に戻り床に就いた
ケーキは明日妹にでもやることにしようと思う
俺はしばらくケーキはご遠慮願いたいものだ
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最終更新:2008年01月25日 14:00