オセロとはなんとも単純なゲームだ。
相手の色の石を挟んで自分の色の石に変える、この単純なゲームで
さっきから暇を潰しているのは俺と元超能力少年の古泉だ。
「また俺の勝ちみたいだな」
「そのようですね」
古泉は俺に賭け金の100円を渡した後、部室を見渡す。
「それにしても、平和ですねぇ……」
「全くだ」
季節は秋、俺がSOS団というわけの分からない組織に入団してから、
2年半の歳月が流れていた。
「俺達もあと半年で卒業か、早いもんだな」
「そうですね、時が流れるのは早いものです。SOS団が結成されてから
2年半、本当に色々な事がありましたね」
閉鎖空間に神人、野球大会、孤島での殺人事件、ループする8月、消失事件、
佐々木との再会……挙げたらキリがないほどに俺達は色んな事を経験してきた。
だが、あと半年の学校生活の中で俺が閉鎖空間の中に閉じ込められたり、
映画の撮影中に猫が喋ったり、9月に桜が咲いたり、8月がループしたり
することはないだろう。
なぜかって? 説明すると長くなるが、簡潔にまとめるとこうだ、
今年の3月、ハルヒの不思議な能力は失われた。
なぜそうなったかって?今述べたように説明すると長くなるから、
説明はしないぜ。
これにより、長門は無口な本好きの普通(?)の女子高生になり、
古泉も紅玉になって閉鎖空間で神人と戦うこともなくなった。
朝比奈さんは、ハルヒの能力が失われた直後、卒業と同時に未来に
帰っちまった。
もう部室で朝比奈さんのメイド姿を拝みながら、彼女の淹れたお茶を
飲めないのは非常に残念なことだ。
「長門」
俺は部室の隅で本を読んでいる長門に声をかける。
「その……なんだ、お前んとこの組織はあれから何か
変わった事、あったか?」
「特にない」
長門は一言呟いた後、言葉を続けた。
「情報統合思念体が私に下した指示は今まで通り涼宮ハルヒの観察」
「そうか」
「そう」
長門は俺との会話を終えた後、再び自分の読んでいた本に視線を戻した。
その直後、部室のドアが勢いよく開かれ、
我らが団長涼宮ハルヒが部室に勢いよく入ってきた。
両腕にはなにやら難しい横文字のタイトルのゲームを数本抱えている。
「そのゲームはなんだ」
俺はハルヒに問いただしてみる。
「ああ、これ? コンピ研が作ったゲームよ。
面白そうだったから貸してもらったのよ」
かっぱらってきたの間違いだろ。
「まぁ、そうとも言うわね」
そう言うとハルヒは早速パソコンを起動し、コンピ研から借りてきたもとい
かっぱらってきたゲームをプレイし始めた。
最初の30分間は、ハルヒも上機嫌でプレイしていたが、
やがて詰まったのか、周りに(主に俺に)当たり散らすようになった。
「ちょっとキョン! ここのボス、全然倒せないんだけど、
どうなってるのよ?」
「俺に聞くな」
「全く、とんだ糞ゲーだわ……」
その直後、長門が本をパタンと閉じた。
それとほぼ同時に下校のチャイムが鳴った。
「どうやら下校の時間みたいね……明日も放課後ここに集合すること!
遅れたら、罰金だからね!」
そう言うや否やハルヒは一目散に部室をあとにした。
「さて、俺達も帰るか」
「そうですね」
俺と長門、古泉も帰路に着くことにした。
「あら、長門さんにキョンくんに古泉くんじゃない、これから帰るところ?」
不意に俺達を呼ぶ声がしたので、振り返ってみる。
そこにいたのは、
「何だ、朝倉か」
「クラスメイトに対して『何だ』はないんじゃない?
まぁ、別にいいけど……長門さん、帰りましょ」
長門はコクりと頷き、朝倉と一緒に帰っていった。
俺は長門と朝倉を見送ったあと、思わず呟いた。
「しかし、分からんな。何だって長門の奴、朝倉を復活させたりしたんだ?」
そう、今年の4月に長門は自らの手で消滅させた朝倉涼子を復活させたのだ。
そして朝倉は1年の時同様、俺やハルヒと同じクラスになった。
アホの谷口は、「AAランク+の朝倉が帰ってきた、俺の高校生活も
まだまだ捨てたもんじゃないぜ」とか言ってアホみたいに喜んでたな。
長門曰く「前みたいにあなたに手を出すことはないから、安心して」
とのことらしいが、何故復活させたのか、
問いただしても答えてくれなかった。
「これはあくまで僕の推測ですがね、」
おっと、古泉がお得意の解説モードに入りやがった。
まぁせっかくだし、聞いといてやるか。
「長門さんは、寂しかったんじゃないでしょうか」
「どういう事だ」
「朝比奈さんが未来に帰ってしまった後、僕もあなたもそして涼宮さんも、
寂寥感というものを覚えたことでしょう」
確かにな。俺も朝比奈さんがいなくなったのはとても寂しかったし、
ハルヒに至ってはしばらくの間、誰とも口を利かなかったしな。
「長門さんも朝比奈さんがいなくなって、
少なからずその寂寥感というものを覚えたことでしょう」
「……つまり、長門は朝比奈さんがいなくなって、寂しくなったから、
代わりに朝倉を復活させたって事か?」
「ええ、もっともこれは先ほど述べたように僕の推測ですがね、
真意は不明です。それではまた明日、部室で会いましょう」
俺は古泉と別れ、1人帰路に着いた。
やれやれ、卒業まであと半年か。
残り半年の学校生活、できれば何の問題もなく平和に終わってほしいね。
しかし、俺の願いはあっさりと切り捨てられることになる。
ハルヒとあいつらの登場によってな……
☆
「それでさー、実はそのネトゲ仲間がこの学校のOBで、
元コンピューター研究部の部長さんだったんだよ」
「へぇ~、そんな偶然もあるのね」
「それでこなちゃん、そのコンピ研に行ったの?」
「うん、ちょっと覗いてみたんだけど、中々本格的だったよ。
何だか面白そうなゲームを作ってたから、私もちょっと手伝っちゃったよ」
朝のショートホームルーム前、私はかがみやつかさやみゆきさんと
いつものようにくだらない話で盛り上がっていた。
すると私はここである事に気づく。
「あっ!」
「どうしたんですか、泉さん?」
「ねぇみゆきさん、今日の1時間めの授業ってなんだっけ?」
「世界史ですよ」
「あっちゃー、どうしよう……世界史の教科書、
家に置いてきちゃった……昨日は珍しく家で勉強したのに……」
「全く、相変わらずあんたはだらしないわね……あたしのクラス、
今日世界史の授業ないから教科書、貸せないわよ」
「そんな~……どうしよっかな……」
私はしばらく考えた末、思いついた。
「そうだ! ながもんに貸してもらおう」
「ながもん? 誰よそれ」
「私のバイト仲間だよ。まぁ来てみればわかるよ」
私達は早速ながもんのいる教室に向かった。
「お~い、ながもーん!」
「なに?」
「世界史の教科書、貸してくれないかな?
私、家に忘れてきちゃってさ……」
「そう」
そう言うとながもんは自分のバッグから世界史の教科書を取り出し、
私に手渡してくれた。
「ありがとう、恩にきるよ(=ω=、)」
「いい」
「あっ、紹介が遅れたね。この子が私のバイト仲間のながもん。
ながもん、友達のかがみとつかさとみゆきさんだよ。」
「ああ、思い出したわ。そういえば前にコスプレ喫茶でこなたや
パトリシアさんと一緒に踊ってた人ね、あたしはかがみ、よろしくね」
「つかさです、よろしく……」
「高良みゆきです、よろしくおねがいします」
「よろしく」
とまぁ、簡単な自己紹介も済ましたところで私達は
自分の教室に戻ることにした。
ほんの些細なやり取りだったけど、
これが私達とSOS団とが出会うきっかけになるのであった
最終更新:2007年10月15日 16:57