七誌◆7SHIicilOU氏による作品です。
夜、ちょっとした思いで散歩に出かけようとした俺は
厚めの上着を着て、外に出た
散歩に行くんだからと、自転車に乗るのは止めて
ちょっと遠くの公園にでも行こうかと歩き始めた
雲が多少かかっているものの、このあたりは街灯の整備がされているので
結構明るい、その為俺は特に回りに注意をするわけでもなく
ボケッとポケットに手を突っ込んで歩いていた
…ポケットに手を入れたまま歩くなとあれほどアイツに言われたのにな
俺はこういうときに煙草の一つでも吸っていたら格好でもつくのだろうかと考えつつ
ちょうどあった販売機の前で足を止めた
ポケットに入ってる指先は、俺に硬貨の中でもっとも価値のある物の存在を確認している
俺は好奇心と背徳感とそれともう一つ、何かに押されて硬貨を販売機に投入した
公園のベンチに座り込み
俺は早くも先ほどの行動を後悔していた
なんとなく散歩のために出た俺にライターなんて文明の利器を持っているはずも無く
足元の石ころを蹴るつもりで足を動かすと
本当に何かが足に当たって前方に飛んでいった、街灯に照らされたそれは
四角いひしゃげた箱の形をしていた、出来すぎている気もしたが
俺は立ち上がり蹴っ飛ばしたそのひしゃげたマッチ箱を手に取った
軽く振ってみると中身は一応入ってるみたいだった
俺はまたベンチに戻り、箱を開けてみると
三本のマッチがカラリとちいさく音を立てて転がった
その一本を手にとって、街灯のしたなんとなく眺めてみた
俺の小指ほどの細い棒は、儚げに俺の指の間に納まっていて
それにどこか満足した俺はマッチ箱の横についている紙やすりのようなものに
赤い火薬のついた頭を押し付けた
俺は一瞬の躊躇の後手を小さく動かして、マッチに小さな火を灯した
ここでやっと気がついたが、俺は問題の煙草を取り出していない
火のついたマッチを一瞬眺めてから、それを足元に落とし踏んで消す
煙草をとりだして、口にくわえてから
もう一度マッチに火を灯す、今度は躊躇無く火を灯した
火を口に近づけて煙草を通して息を吸うとゆっくり口の中に煙が入ってきた
俺はそれをそとの普通の空気と一緒に肺に落として、文字通り一息ついた
ベンチと一体化するんじゃなかろうかというほど、俺はベンチに全体重を預けきった
時計を見るともう少しで10時を回るというころだった
しばらくベンチに座って煙草を銜えていると、自転車の軍団が
この公園にやってきた、この時間帯にやってくる団体なんてろくなもんじゃないだろう
俺は下手に声をかけられたくは無いので、原因になりそうな煙草を吐き捨て踏んづけた
ただ、どんな奴らなのか多少興味があり、ベンチからは移動しないでいた
すると、なんてことは無い
顔見知りもいいところだ、俺の高校であの一団を知らない奴がいたら
それはきっと痴呆か転校生だな、残念なことに俺はそのどちらでもなく
あの集団、通称SOS団の面々をボケッと見ていた
態度はベンチに寝そべったままだが、内心結構動揺している
あいつらのやることはいつも珍妙で、奇々怪々なものばかりだからだ
俺はこんな時間にこんな公園で何をするつもりかと多少見つからないように
街灯から逃げながら、眺めていた
別段特別なことじゃなかったさ
中学のころからなりたくも無いのに、ずっと同じクラスのあの女は
時間を考えないほどの大きな声で喋るもんだから、俺も大体の状況が飲み込めた
曰く、花火だそうだ
まぁ季節的には間違っちゃいないが、あの面子でやるには多少インパクト不足のように感じた
どうやら俺の感性もそれなりに図太くなったもんだと感心しつつ
あの場にいる唯一の男である、俺の親友の苦労が垣間見えた
まったく三年間もほぼ毎日ご苦労なこった、感心するね
しばらく見ていると、個々人々で持ち寄った花火を始めてその周囲だけやけに眩しく
また楽しそうに笑うあいつらは、別の意味でも俺には眩しかった
俺はもう少し見ていたかったのだが、そろそろ散歩にしては時間も遅い
ゆっくりと立ち上がり、出口に向かった
すると、突然大きな風が吹き目に砂が入った
目を擦りながら、また歩き出そうとすると
また騒がしい声が聞こえた
「ちょっと!火が消えちゃったじゃない!だれか蝋燭に火をつけなさいよ!」
見ていると、先ほどまで明るかった地点も今は明かりは街灯だけになっていた
しばらくしても火がつかないあたり、誰も火を持ってないのだろうか
残念だが、俺も何も持ってないさ
そういってポケットに手を入れて立ち去ろうとしたが
指先には先ほどのマッチ箱が触れていた
そういえば、まだ一本残ってたな
振り向くといまだに喧々轟々、うるさい奴はうるさいままだ
このままだと近所に迷惑だろう、俺は自分にそう言い訳をして
歩む方向を切り替えた
隣のクラスのちっこいのがいち早く俺に気がついて
「セバスちゃんだ!」
などと呼びかけてきた
ついでに俺の名前はそんな珍妙な執事のようなもんではない
神社が実家の姉妹の妹につけられたなぞのあだ名だが
奇妙なあだ名は今俺の方を向いて想定外の人物に驚いている俺の親友だけで十分だ
俺は何しに来たのかと、さっきまでの雰囲気はどこへやらで睨んでくる
腐れ縁の女を無言で制してポケットから最後のマッチを取り出して
蝋燭に火をつけた