「世の中の普通さにも慣れてきた」
かつて俺が高校入学前に持ち合わせた退屈への免疫は、涼宮ハルヒという人型台風に吹き飛ばされた。
より強い「超常」というワクチンを打ち込まれた俺は、無防備なまま高校から放り出されたわけだ。
おかげで、平凡にまみれた大学生活のなんとつまらなかったことか。
SOS団員中で唯一の普通人であり続けた俺が非日常に溺れた最大の被害者ってのは、皮肉な話だな。
しかしまあ、大学での四年間はいいリハビリになった。
凡人たる俺が生きるべきは、やはり普通で埋め尽くされた日常の世界なのだ。
そんな社会の歯車としてそれなりに頑張って働こう。
――そう思っていた矢先に。
「世界を大いに盛り上げるためのそうじろうの娘の団にようこそ!」
部屋は、沈黙に包まれていた。
バンザイしたままの泉こなた、のほほんと首を傾げる柊つかさ、俺に会釈して笑いかける高良みゆき。
「……おい、こなた」
めちゃくちゃ不機嫌そうな柊かがみ。
「どうしてもって頼むから来てみれば、何よ、そのトンチキな団体は」
「略してSOS団。これから私たちのチーム名になるのだよ、かがみ」
「そんなの嫌よッ!」
反対は当然だろう。俺も当時、抵抗があった。あの組織名に異議を申し立てる者がいなかったのがおかしいんだ。
「まあまあ……かがみは、私のこと嫌い?」
「何でそういう話になるんだ!」
などなど、いろいろもめていたようだが、最終的に泉が屁理屈と話題のすり替えを駆使して柊姉を制圧した。
一時は浮かした腰をどっかりとイスに落とし、腕と脚を組んで不本意さを強調するポーズをとる柊姉。
「すごい音……かがみんケツでかい」
「おっ……男の人の前でそういうこと言うなー!」
「男の人の前で脚を組むのはいいの?」
泉に切り返され、柊姉は赤面する。スカートの裾を押さえて恨めしげに俺を睨むが、とんだとばっちりだ。
なんだか、この二人の力関係をだいたい把握できたような気がした。
「で、さ」
仕切りなおし、といわんばかりの間を置いて、泉が俺に視線を戻す。
「とりあえず集めてみたけど、あとはどうすればいいの?」
「……は?」
「私は、作れって言われただけだから。あとはキョンキョンが何とかしてくれるって」
丸投げかよ。泉の親玉は、俺に恨みでもあるのか。
しかし……赴任した学校にSOS団があったからって、俺は何をすればいいんだ?
OBだといってでかいツラをするか……論外だな。
俺が言うべきことはひとつだ。「SOS団なんてろくなもんじゃ――」
「思い出しました」
ぱちん、と顔の前で両手を合わせるみゆき。
「SOS団とは、キョンさんとGWに会ったときに一度、私に話してくれた人たちのことですよね?」
「なに、知っているのかみゆきさん?」
そりゃ雷電だろ――というツッコミはこの場合、野暮というものなのかね。
「はい。私が小学六年生、キョンさんがまだ高校二年生のころに初めてお聞きしまして――」
俺の名誉のために言っておくが、先に吹聴したのは妹だ。みゆきと同い年だから、話す機会も多かったに違いない。
そして当然の如くSOS団のことを口にして、俺がみゆきに詳細をせがまれるはめになった。
そもそも俺は自慢話が好きでない。ましてや、自慢にもならんトンデモ体験を嘯くなど。
モノローグで誰に宛てるでもない弁明をしている間に、みゆきの話も佳境に入ったようだ。
「――そして、団長の涼宮さんという方と交際されている、と」
「してない!」
つい、大声を出してしまった。自然な流れで俺に注目が集まる。
「あ、いや……何でもない。とにかくだな、みゆき。そのような事実は一切ない」
「……そうなんですか?」
きょとんとした表情を見せたのち、瞳が微かな輝きを帯びた気がするが、それを追及する暇はなかった。
「ゆきちゃんの言うとおりなら、おもしろそうな部活の気がするね~」
流れに取り残されていた柊妹が、ここにきて同調の兆しを見せ始めたのだ。
「そうね。こなたじゃアレだけど、みゆきが言うんだったら」
最後の砦こと柊姉も崩壊し、戦局はずっと泉のターンに傾きつつある。
みゆきがここまで信頼されているのを、兄貴分として喜ぶべきか悔やむべきか。
そんな俺の腰を肘でつつき、泉は、
「みんな乗り気になってくれたみたいだから、これからよろしくね。キョンキョン先生」
部活動発足申請の書類を突きつけてきたのだった。
まったく、わからないことが多すぎる。
新居となったアパートに帰宅した俺は、盛大な溜息と共に床にへたりこんだ。
いくら疲れているとはいえ一人暮らしだ。夕飯ができるのを待っていればよかったあの頃とは違う。
まだ五月病には早いと自分を叱責しながら、キッチンへ向かう。得意料理はカップラーメンです。
「やれやれ……」
あのあと、泉に突然連れて来られたと主張する三人(内一人はある程度の予備知識があった)に、
SOS団についての概要とこれからのことを尋ねられ、トンデモ現象に関する部分だけ伏せて説明した。
まあ、そこを除外すると放課後の暇潰しや土曜探索といった魚の骨しか残らないのだが。
「受験で忙しいから普通の部活は無理だけど、その程度なら……」
意外にも否定的な意見を出さなかった柊姉である。あの剣幕はどこへやら。
「つかさとこなたの勉強会と思えば効率もいいしね」――そう続けたとき、他でもない泉が解散を宣言しかけた。
「いい加減なやつだ」
そうは思いながらも、自分の意思で立てた団ではないのだから仕方のないことだと肩を竦める。
そうだ、泉は結成するように言われただけ、と語った。
柊姉妹やみゆきだって、たまたま泉と仲が良かったから連れて来られただけで特殊な属性など皆無だろう。
――ハルヒは自分とまるで無関係な人間をひっぱってきて、それがドンピシャだったんだよな。
名前こそSOS団ではあるが、結成に至るまでのプロセスがまったくの別物だ。
それこそ「原作」ありきの模倣のように。
「…………」
泉の親玉は、何の目的でSOS団などという傍目に怪しいことこの上ない団体を作らせたのだろうか。
自意識過剰だが――俺のためにお膳立てされているとしか思えない。
ホワイ、なぜ? 懐かしき名を称する団体があれば、俺が尻尾をふってホイホイ動き出すとでも思ったのか。
冗談じゃない。俺にとってのSOS団は、後にも先にもあいつらだけだ。
お前にとっても同じだろう、ハルヒ?
「じゃ、ここで本当に解散ね」
卒業の際の二次会終了後、さらにSOS団正式メンバーのみでカラオケ大会が催された。
アルコールが入っていたわけでもないのに大いに盛り上がったのは、ハルヒのナチュラルハイに加えて、
これが最後ということで俺たちも羽目を外したことが原因だろう。結局、夜中まで騒いでしまった。
「あ……団を解散って意味じゃないわよ。今日のところは、ってことで」
わかってるよ、と苦笑を交えて返す。でもな、団は残っても、もう五人で集まれることはないんだぜ?
この時点でハルヒは都内の大学への進学が決まっていた。
地元に残ると公言していた俺たちと会う機会が減るのはもとより覚悟の上だったようだが……。
「涼宮さんを送って差し上げてはいかがですか?」
古泉の提案を断る理由はなかった。夜更けに女を一人で帰らせたくはないし、
長門や朝比奈さんや古泉とは、お別れの挨拶を事前に済ませている。
「ああ、そうさせてもらうさ」
「別にひとりで帰れるのに……まあいいわ。じゃあみんな、またね」
冬は過ぎたとはいえ、春のテンションはまだまだ上がらないらしく、夜道は肌寒い。
「さっむいわねー。お酒でも呑んで火照っといた方がよかったかしら」
「やめとけ。卒業早々、豚箱送りは御免被る。第一禁酒令を敷いたのはお前だろ」
「あれは在学中の話。それに私なら通報されるようなヘマはしないわ」
「……末恐ろしいな」
四方山話を交わしながら、ハルヒと俺はさくさく歩く。絶えず喋っているのに、不思議と静寂を感じた。
あの三人がいないせいだな――自分で言うのも何だが、素直にそう思った。
加えて、俺がハルヒの知らないことを知っているせいでもある。
長門は統合思念体に戻り、朝比奈さんはもとの時間に帰る。そして、二度と会うことはない。
任期を終えた古泉もここを離れるらしく、しばらく顔を見せることはできないと言っていた。
ハルヒだけがそれを知らない。知らないまま上京し、彼女らを思い出にしてしまうのだろうか。
「ハルヒ――」
唐突に、胸の奥からこみ上げるものがあった。
ハルヒにすべてを隠したままでいいのか。
彼女らの正体を知らないハルヒは、これが今生の別れであることすら理解できないのだ。
今、それを知らせることができるのは、俺しかいない。
「……早く言いなさいよ。なんでもないっていうのは無しだからね」
だが――頭ではわかっているのだ。知らない方が幸せであるということも。
何年か経ちふと高校時代を思い返すとき、仲間たちはどこで何をしているのかと夢想し、
どこかで邂逅できるだろうかとその日を楽しみ待つ。そんな日々の方が幸せに違いない。
それでも、そんな日々を送れるという誘いが俺に来ても、答えは「NO」一択だ。
「ずっと隠してたことがある。お前の知らないところで、世界は随分面白い方向に回ってたんだ」
優しさと残酷さは紙一重だ。
「まず――宇宙人未来人超能力者について話そうか」
俺が話したことは、高校時代に体験した内容の十分の一程度に過ぎなかった。
あるいは、「俺はジョン・スミスだ」と名乗るだけに留まったような気もする。
それでもハルヒは駆け出した。もしかすると、以前から無意識の領域で感づいていたのかもしれなかった。
ハルヒの速度は、その妄想が確信へと変わったことを表している。
在学中、あらゆる運動部から引く手数多だった脚力だ。受験勉強で体が鈍りきった俺が追いつけるはずもない。
大きくリードを離され、視界からハルヒが消えた。途中で何度か息を切らしながらも、俺は全力で突っ走った。
解散した場所に戻ったとき、そこには誰もいなかった。
「……ハルヒ……ッ」
膝を押さえ、肩を大きく上下させながら言葉を搾り出す。
「長門、朝比奈さん、古泉!」
もういないとわかっている連中の名前まで呼ぶ。当然、誰からの返事もない。
前に――ハルヒと閉鎖空間に閉じ込められたときのことを思い出す。
あのとき俺とハルヒは現在時空から消失していたらしい。今度はあいつらを連れて、どこかへ消えてしまったのか。
取り返しのつかないことをしてしまったとか、そんなことより俺がそのとき考えていたのは、
「置いていかれた」――それだけだった。
結論から言えば、ハルヒは帰ってきた。
「大丈夫」と笑顔すら見せてくれたが、その件についてははぐらかしたまま引越していっちまった。
俺の独断専行のせいであの三人がどうなったのかは分からない。何せ、会っていないからな。
唯一古泉とは連絡を取り合い何度か顔も合わせているが、その件についてお互いに切り出すことは未だにない。
あの出来事だけは、俺の輝かしい非日常ライフで唯一「やらなきゃよかった」感が強い一件として君臨している。
さて、昔のことのここまでにして、現在直面している問題に向き合うことにした。
「……ラーメンのびてる」
翌朝の職員室にて。
「ほう、部活動の申請書か」
一応の指導係であるところの桜庭教諭に相談してみることにした。
「三年だというのに余裕があるというか、バイタリティ溢れるというか……しかし、無理な話だな」
「というと?」
「部員は最低五人だ。あと一人足りん」
日本という国は、どうして五人で一組という制度を神格化したがるのだろうか。日曜朝七時半といい。
とにかく、これで泉及びその黒幕の野望は潰えたというわけだ。やけにあっさりと。
そのことを黒井教諭の席でゲーム談義で盛り上がっていた泉に伝えると、
「私もそれに気がついてね。ちゃんと対策はしておいたよ」
「対策?」
「つかさがね、連れて来たい人がいるんだって」
ふむ、柊姉妹のショートカットの方か。人となりを知るわけはないが、やはり女子の友達だろうか。
だとしたら、新生SOS団は女の園と化してしまうことになる。
「ハーレムだね、キョンキョン」
「キョン先生、くれぐれも世間様に顔向けできない騒動はアカンで?」
「社会に出て早々職を失うような真似はしませんよ」
教え子である柊姉妹はもちろん、見た目小学生や親戚が面子にいるんだ。手なぞ出せるか。
そろそろ教室に戻るという泉に「SOS団なんてやめとく、って選択肢はないのか?」と提案してみた。
「昨日のアレは言葉のあやですよ。かがみが意地悪するからさー」
いや、真剣にお前の成績を慮ってのことだと思う。黒井教諭からネタは上がってるぞ。
「ワクワクしたいってのは本当だから。私、キョンキョンには結構期待してますぜ?」
それに、と悪戯っぽく泉は微笑む。
「それ抜きにしたって、新任教師は攻略対象だからね。じゃ、また放課後にねー」
謎の台詞を残し、いってしまった。
「攻略って……なんですか?」
「知らんのなら、そのままでいた方がええ。というか、忘れとき」
ポニーテールエンジェルの仰せとあらば、なんなりと。
さて、三学年の副担任という肩書きではあるが、俺だって授業くらいする。担当は世界史だ。
私立校は人手不足の場合が多いからな。新米だからといってのうのうとはしていられないってことだ。
「えーと、授業初回ということもあるので、軽く自己紹介から……」
担任という生徒のまとめ役なら、すでにある程度のチームワークが出来上がっている三学年の方が新任向きだが、
授業をするならまだ初々しさが抜けていない新入生の方が気楽でいい。
「俺も君たちと同じく教師一年生なので、お手柔らかによろしく」
スタンディングオベーションどころか生暖かい拍手すら起きないところが、堅さを象徴している。
まあ俺も高校一年のころはこんな感じだったしなあ。思えば、先生には申し訳ないことをした。
だが、この雰囲気のまま授業を始めてしまっては俺にも生徒同士にもよろしくない。
せめて、もっと打ち解けられないものか――。
「あー……じゃ、俺に質問とかあるか?」
かなり捨て身の作戦だが、俺の乏しい脳味噌はこの程度のアイデアしか生産してくれない。
もっと真面目に教育実習を受けていれば……。
「あのぅ……ひとつ、いいですか?」
新米教師の急な注文に戸惑う生徒たちの中、挙手したのは――俺はどうも小人と縁があるらしいな、
小さくツインテールにしている点は桜庭教諭と同じだが、彼女にないピュアさを持つであろう女生徒だった。
どうぞ、と指すと「えと、小早川ゆたかっていいます」と若干舌足らずな声が返ってきた。
「キョン先生って呼んでもいいですか?」
幼女――小早川ゆたかは、ザ・ワールドを発動させた。
それも一瞬のことで、あちこちでくすくす笑いが起き、やがて爆笑に変わっていった。
「ちょっと小早川……それ、誰から……?」
「お姉ちゃん――あ、私、泉こなたの従姉妹なんです」
なんと。
「で、こなたお姉ちゃんが、キョン先生ガチガチだろうからこの仇名で和ませてあげてって」
余計なことを。しかし……現に緊張はほぐれちまったわけだ。不本意だが、礼を言わねばなるまい。
その後、「キョン先生」なる通称は瞬く間に広がり、俺はいわゆる有名人の仲間入りを果たすことになる。
忌々しい、ああ忌々しい、忌々しい。
「泉、やってくれたな」
「ええ、やってやりましたとも」
放課後、新生SOS団の部室(仮)として呼び出された空き部屋で俺は泉と対峙していた。
礼は言う。しかし、それ以上に文句がある。人のトラウマに近い仇名を持ち出すのは感心せんぞ。
「でもさ、キョンって単語は笑いのネタにすると凶器レベルの面白さだよ。利用しない手はないって」
それが嫌だったんだよ。なーんて言っても、覆水は盆に帰らず。諦めるしかないか。
現在ここには、泉と柊姉、みゆきが集結している。どうやら、勉強会とやらを本気でやるつもりらしい。
「ほらこなた、さっさと続きやるわよ」
「キョンキョン、かがみに教えてやってよ! SOS団は勉強みたくつまんないことするとこじゃないって!」
「いや、俺も団長直々に学習の手ほどきを受けたこともあるしな」
三年の終わりなぞ、俺がなりふり構っていられない状況に陥ったせいか、
「部室に勉強は持ち込まない」と公言していたハルヒが折れる形になって俺に受験勉強をさせた。
とりあえず、感謝はしておく。教師たるもの、義理を忘れたらおしまいだ。
泉よ、お前だっていつか厳しくしてくれた柊姉に感謝する日が来るんだぞ。
「私は今が楽しければそれでいいよ」
「思いっきりダメ人間の思考じゃねーか!」
「かがみー、男の人の前でそんな言葉使いでいいのー?」
「うっ……そ、そんなの関係ねぇ……ないじゃないのよ」
だから柊姉よ、俺を障害物のような目で見るな。とばっちりだっての。
「あの、キョンさん」
「どうした、みゆき」
「今日のお弁当、いかがでしたでしょうか?」
「ああ、美味かった。特にあのから揚げ、また食べたくなる味だったな」
「本当ですか? よかった、あれを作るのは結構な手間だったんですよ」
「へえ。わざわざありがとうな。みゆきは良い嫁になるぞ」
――おい、泉と柊。その視線は何だ?
「かがみ、新婚さんがいるよ」
「みゆきが彼氏つくらなかったのには、こういう理由があったのね」
じと目を維持したまま半笑いに移行する二人の少女。
やはりというか、女子というものはすぐこういう話題に持っていきたがるものらしいな。
だが根も葉もない噂を流されても困るからな。みゆき、びしっと反論してやれ。
「いえ……そ、それは……」
いやに慌ててるな……まあ、彼氏はいないと言っていたし、免疫がないのも仕方ないか。俺が代理を買って出よう。
「みゆきは俺には過ぎた嫁だ。もったいないから、もらう気はない」
俺は務めを果たした……はずなのだが、何だこの空気は。
泉と柊は非難する流し目を俺に送って囁きあっているし、みゆきはみゆきで無言である。俺が何した?
誰か流れを変えてくれ――俺の願いが神に通じたのか、部屋に新たな闖入者が!
「な、なんなんですかここ? 何で俺連れて来られたんですか!?」
闖入者である糸目の男子は、そう叫んだあと、部屋を見渡して。
「……あの、この空気はなんでしょうか?」
俺が聞きたい。いやそれより、君は誰なんだ?
「セバスチャンじゃん」
「いや……白石みのるです」
「私が連れてきたんだー」
えへへ、と笑いながら白石少年の背後から顔を出したのは、柊妹。
「じゃ、つかさの連れてきたい人ってセバスチャンだったんだ。へー……ずいぶん地味なチョイスで」
俺は彼氏彼女らの背景など知らない。しかし、なぜこの少年はここまでぞんざいな扱いを受けているんだ?
「とにかくこれで五人揃ったね――さあ、始まるざますよ♪」
こうして、新生SOS団は動き出した。……マジでか?
おまけ
らっきー☆ちゃんねる
あきら「おは☆らっきー! みんなのアイドル、小神あきらでーす!」
小野「アシスタントの――僕に釣られてみます?――小野だいすけです」
あきら「さてさて! 二回目にして、ようやく白石さんの生存が確認されましたね!」
小野「早くもオチ要員のポジションを得たようですねえ」
あきら「らっきー☆ちゃんねるはこれからも白石さんを応援していきますよ~」
小野「今回の補足ですが……特にありませんね」
あきら様「つまりまったく話が進んでねーってこったな」
あきら「でもでも、次回からは急展開! なヨ・カ・ン?」
小野「そうでも言っておかないと格好がつきませんからね」
あきら「やだもう小野さんったら、シニカルなんだからぁ♪ あ、もうお時間ですね」
小野「それではまた次回お会いしましょう」
あきら・小野「ばいにー☆」
あきら様「で、私の本編進出は?」
小野「え?」
あきら様「白石が出てんだ、私も出れるんだろ? あぁ?」
小野「……き、禁則事項です♪……ぐぁ(ry」
次回予告
つかさです。
サンタクロースをいつまで信じていたかなんて、世間話にするにはちょっと恥ずかしい話なんだけど、
それはきっと、お姉ちゃんがいなかったら私は今でも信じていたんだろうなあ、と思うからなのかなぁ。
これからはお姉ちゃんみたいにしっかりした子になりたいな……そしたら、もっと魅力とか――
あ、えっと、今のナシ! え、ええと次回は……
え、ええ? まだ喋ってないとダメなの?
もう何でこんなときだけ時間が余ってるのー!?
次回は『3年B組キョン八先生』! お、お楽しみにっ。
キョン「人という字は、ふたりが互いに支えあってできている。
……と見せかけて実は小さい方が一方的に支えているまっこと理不尽な文字だ。バカチンがぁ」