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日本沈没の5

はてさて、古泉が連れてった場所は小奇麗な感じの居酒屋だった
こんな店あったっけか、俺は小さな駐車場にバイクを止めて聞いた
「最近できたばかりだそうですよ僕も一度きてみたかったんですよ」
おいおいおい、そんなんでいいのかよ、変な店だったら承知しねぇぞ
「いえ、それなりに評判もいい店らしいですし、こういう場所のほうがいいでしょう」
これでこの間の賭けをチャラにするには割に合わんぞ
「この一回で全部返すつもりはありませんよ、僕の財布もそんなに裕福ではないんでね
 それとも高級レストランでも連れて行けばよかったですか?」
ふん、何が悲しくて野郎と二人でそんなところにいかなきゃならんのか
まぁいい、とっとと行くぞお前と話してると涼宮と違い方向で頭痛がするぜ
俺はニヤニヤしている古泉を放置して歩き始めた


「こちらへどうぞ」
そういって通されたのはテーブル席
他人の介入されるのが嫌いな俺にとってこれはありがたかった
カウンターだと隣に座ったおっさんが話しかけてくるときがあるから困る
俺は靴を脱いで席に胡坐をかいて座り、古泉は向かい側に正座で座った
…正座って何だかなあ、まぁどうでもいいけどな
「どうしましょうか?」
古泉は正座のままで品書きを眺めつつ俺に聞いてきた
「さっきも言ったが俺は今日はあまり呑むつもりは無いからな、烏龍茶でいい」
俺がそういうと古泉は適当にビールとつまみも一緒に注文してこっちに向き直った
「最近はどうですか、調子は」
お前はもう少し直接的な表現を覚えるべきだな、お前は遠まわしすぎる
なんだ調子って、俺の体調を聞いてることでないことぐらいか俺には伝わらんぞ
すると古泉は小馬鹿にしたように肩をすくめて
「あなたの豊富な女性関係のことですよ」
とんでもないことを言い出しやがった
それにしてもお前はほんとに両極端だな
過ぎたるは及ばざるが如しっていってだな、直接過ぎるのも問題だと思うぞ俺は
他人が聞いたら俺の評価が著しくマイナス方向に移行すること間違いなしじゃないか
俺はちょうどよくやってきた烏龍茶を一気に半分近く飲んでから古泉を睨んでみた
だがとうの本人はやはり肩をすくめるだけで、のらりくらりとしている
「…で、何が聞きたいって?」
「最近彼女達とはどうしてますか?ということですかね」
最初からそうやってわかりやすく、誤解の無いような表現をしてくれりゃいいんだがな
盛大にため息をついてやり、テーブルに肘をつきながら俺は
「別にたいしたことは無いさ、この間久方ぶりにあって飲んだ位さ…」
肘をついたまま、つい先日あったことをちょっとばかし話してやることにした
きっとそれは古泉にせがまれたという理由だけじゃなくて
俺自身も友人に久しぶりに会った高揚感が残っていた所為だろうと思う
さて、大本の原因はどこだっけかな
あぁ駐車場でつかさに轢かれかけたところからか?
それともこなたが電話してきて押しかけてきたところか?
まぁ涼宮が雨に文句を言ってるところからかな


「ずいぶん楽しそうですね、羨ましいです」
小一時間ほどたった話の途中、古泉は俺にそういった
しかし羨ましい?狭い俺の家に何人も押しかけてきて俺の部屋が惨劇になったことがか?
なんだったら今からお前の部屋にいって散らかしてやるが
なぁに遠慮するな、俺も遠慮なくお前の部屋を目も当てられん状況にしてくれようか
「いえ、そのようなことでない事はわかってるでしょう?
 僕はあなたとその周りの人との信頼関係に羨望を抱いてるのですよ
 数ヶ月会わなくても当然のようにそうやって家を開放して飲み明かすあなたと
 複数人いるとはいえ女性だけで男性の自宅に行ってお酒を飲む彼女達 
 双方ともに強い信頼感があるとはいえませんか?」
俺は男として見られてないだけだと思うがな
そもそもこなたや涼宮が相手じゃ俺にはその気があっても手がだせんさ
あいつらは手加減容赦なく攻撃してくるからな
「あなたはドがつくほどに鈍感ですね」
古泉はあきれた様に、って言うか実際あきれてたのだろう様子で頭を振ってそういった
ってかド鈍感てなんだ、言いにくいことこの上ないぞこの野郎
「それも一種の信頼、愛情表現でしょう
 少なくとも普通の人はそんなことをされれば怒ります
 そして彼女達も他人にそのようなことをしたりはしないでしょう
 あなただから、という信頼がなせるものですよ」
あぁそうかい、ものはいいようだってのがよくわかったよ
俺は不貞腐れたようにそっぽを向いて店員を呼び止めてビールを注文した
こいつと一対一の会話はアルコールがなけりゃやってられん
結局そういう結論に至った俺はどうせ古泉のおごりだしと飲み始めた
といっても本当は古泉の言ってることを理解していたんだ
理解してるからこそ、むかつくんだ
俺は古泉に向かって勢いよく人差し指を突き出して
「もうこの事に関しての話は終了だ、蒸し返しも禁止だ、いいな?」
古泉は一瞬呆けていたがすぐにいつもどおりになり
それ以降はお互いのちょっとしたことなど世間話に華を咲かせることになった

ピピピッとポケットに入っていた携帯が鳴り出した
話を中断して携帯を取り出すと、ちかちかとライトが点滅して
新着メールの存在をカラフルに演出していた
横のボタンを押すとカチッと音がして二つ折りになっていた携帯が開く
画面下のほうの手紙のマークを選んで新着メールを見ると
送信元は涼宮だった
『ちょっとあんたこんな時間までどこうろついてんのよ!』
…お前はどこの恐妻だよ、俺は一人の時間さえも支配されてるのか
「おや?奥さんからでしたか、これはすみません僕からも謝っときましょうか」
お前はまったく表情も声色も変えずに冗談を言うんじゃない
この年齢で家庭なんか持ちたくないし
そもそもなんで涼宮なんだよ、天地がひっくり返ってもありえんことだ
「…でも、彼女とが一番付き合いが長いじゃないですか」
腐れ縁って言葉知ってるだろう古泉よ
年数が長くてよくなるのは酒と女って言うけれども
どちらも一定の年数を超えれば後は悪くなる一方さ、延々右肩上がりじゃないんだよ
俺はあいつを女としてみたことはほとんど無いからな
「では涼宮さんはあなたにとってなんですか?」
なんだ古泉、やけに喰い付くじゃないか
だから言ったろ?腐れ縁だってそれ以上でも以下でもないさ、終了終了
「おやおや、鈍感を通り越してますねこれは、彼女達には酷ですよまったく」
「なんかいったか?」
「いえ、別になんでもありませんよ、でどうするんです?」
あぁ、そろそろ帰るとするかね
お向かいさんが怒ってらっしゃるようなのでね
「わかりました」
古泉は伝票をもって一足先にレジに向かった
俺は残った烏龍茶を飲み干してから靴を履いてそれに続いた


「ご馳走様」
店を出て歩きながら俺は小さく礼を言った
元は賭けの負け分をこういう形で返してもらったわけだが
一応言うのが礼儀ってもんだろうと思うね、それが俺のジャスティス
短いようで意外と話していたのか日は既に上部三分の一を残して
残りは海に浸かっていて、オレンジから紺へのグラデーションを空に描いていた
周りは静かで足音とカチャカチャという鍵の音が小さく鳴るのみだった
…まて、ちょっとまて俺達はここに何できたのかをよく思い出してもらいたい
そうだ、俺達はバイクという手段でここに来ているのだ
そしていまアルコールを摂取してきたばかりである、これが何を表すか?簡単だ
このまま強行して帰れば飲酒運転となるわけだ
先日こなたやみゆきさんに対してあれだけいっときながらこの体たらく
古泉もすっかり失念していたのか珍しく困ったような顔をしている
やっぱり烏龍茶オンリーにしとけばよかったんだ
そうすれば古泉を嘲笑しつつ気分よく帰れたものの…
「仕方ありませんね、押して帰りますか」
結局そういう結果に収まるか、帰るには当然一時間では足りんだろうな
自宅に到着するころには涼宮の怒りは最骨頂に達してるかも知れん
なんという二段構えの攻撃、しかも回避不可だ
逃げようとすれば回り込まれること必死だ
しかも古泉のように50ならいいが俺のは400だ、八倍だ赤い何とかどころの騒ぎじゃないぞ
これは本気で不味いかも知れん、まだ750とかじゃなくてよかったぜ
とあるバリバリ高校生は750を一日かけて馴染みの修理屋まで押したが
俺にはそんな体力はないのだよ、などといつまでも愚痴を言ってもしょうがない
千里の道も一歩からという位だからな

「はぁ道は遠いなぁ」

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最終更新:2007年12月11日 22:02
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