吊り橋 -3-

土曜日。俺達9人は駅前の喫茶店にいた。
火曜日のミーティングで発表された市内探索内容。
午前中は全員で市内を見て回り、宇宙人などの不思議人物、及びそれに準ずる特別な『何か』を見つける……という、俺達が最初にやってた市内探索そのものだ。
「ほうほう…不思議人物か…レバ剣より探すのは大変そうだ」
泉、マニアックすぎるぞ。
「本当にいるの?見つかるわけないでしょ。こんな街中にいたら、それこそビッグニュースよ」
かがみ、俺はそれに半分だけ同意する。
「宇宙人って怖いのかなぁー…。いきなり食べられたりしないかなぁ…。」
つかさ、心配ごとがずれてないか?
「私でもお役に立てますか?すみませんが、宇宙人などにはあまり詳しくなくて…。土曜日までには調べておきますね」
高良さん、そんなマジにならなくても。
NASAの特別調査員にでもなるんですか?

今回はいつもと違い、午後はピクニックをするそうだ。
秋の寒空の下のピクニックもいかがなものかと思うが、ハルヒは
「バカねぇ。我がSOS団は風流さも大切にするのよ。秋の寂しさも満喫しなくちゃ」
と軽くあしらった。

ということでつかさと朝比奈さんは弁当係、俺と古泉は雑用係を言い渡された。
俺は紙を渡され、そこにあるものを買っておけという、団長直々の命令を授かった。
紙に筆に硯…?何に使うんだ?

かくして、ピクニック場所も告げないまま、何に使うか分からない道具を持ちながら、今この喫茶店にいるわけである。

「まずは市内探索ね」
注文したアイスティーを30秒で飲み干し、全員を見渡した。
「良い?とりあえず不思議なものを見つけるの。不思議だったら何でも良いわ。」
「例えばどんなもの?」
かがみがもっともらしい質問をした。
「私が不思議だと思ったら不思議よ」
「何それ?そんなのわかりっこないじゃない」
「団員ならそれぐらい分かりなさいよ。良い?皆、目を皿よりも薄くして探すのよ」
「皿より薄くしたら見えないじゃない」
かがみのツッコミはなかなか毒がある。
「う、うるさいわね!とにかく行くわよ!」

そう言ってハルヒは、俺に伝票を渡して一番に店を出た。

 

午前中は市内探索という名のウィンドウショッピングだった。
ハルヒは朝比奈さんとつかさを引っ張り回しては雑貨屋やら洋服屋をひっかき回す。それをかがみと泉が追っかけながらも店内で楽しみ、他の俺含む4人は後ろでめいめいに楽しんでいた。
古泉は終始、『機関』やハルヒに関係する話はせず、長門は長門で珍しく、高良さんの会話に『そう』とか『うん』とか相づちを打っていた。

11時を過ぎた頃、ハルヒからピクニック宣言が出た。
向かった先は今年2月に登った山、そう、ハルヒがくだらないながらも、壮大なバレンタインイベントを行ったあの山だ。
バスで移動する最中、朝比奈さんはその話を事情の知らない4人に話し、楽しそうにしていた。

そう、平和だったのだ。この時までは。





作品の感想はこちらへどうぞ

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2007年12月30日 00:45
ツールボックス

下から選んでください:

新しいページを作成する
ヘルプ / FAQ もご覧ください。