吊り橋 -7-

話は昨日にさかのぼる。
駅からの帰り道、私はイラつきと戸惑いを覚えていた。
何なのよ、ハルヒのやつ。つかさにいちゃもんつけて、よく分からない言い訳して。つかさは結構繊細だというのに、すっかり傷ついちゃったじゃない。
隣をトボトボと歩くつかさは今にも崩れそうだ。
「ねぇつかさ」
私はゆっくりと話しかけた。
「……なぁに…お姉ちゃん…」
「ハルヒの言った事なんて気にしなきゃ良いじゃない。つかさはつかさなりにがんばってたじゃない」
「うん…でも、私、ハルちゃんに不満を与えてた。ハルちゃんに嫌われるようなことをした」
「つか…」
「私がよかれと思った事もハルちゃんにとっては迷惑だったんだよ…私はそれに気づかなくて…」
そこまで言うとつかさは立ち止まった。そして…ポロポロと涙を流して「ゴメンね…ゴメンね…ゴメンね…」と繰り返しつぶやいた。
私は何も声をかけられず、そっと背中に手をやった。
やっと家に着いた…。いつもの倍はかかったわね。
家族の誰かに今のつかさを見せるわけにはいかないので、「ただいま」と小声で言い、即座に部屋までつかさを連れていく。
とりあえず、未だに泣きやまないつかさを座らせた。

どれぐらいそうしていたのだろう。
私とつかさは何も話さずに向かい合って座っていた。
不意に階下からお母さんの声が聞こえた。
「かがみー。つかさー。もう帰ってきてるの?夕飯よ。降りてらっしゃい」
「あ、はーい。今行くー」
いきなり呼ばれて、ちょっとびっくりしたけど、平静を装って返事をする。
「ほらつかさ、ご飯ってよ」
つかさは首を横に振る。さっきからうつむいて私からは顔がよく見えない。
「……いらないの?」
今度は縦に振る。
「…そう。じゃあお母さんには寝てると言っとくわね」
また縦に振る。
少し一人にした方が良いのかもしれない。
そう思って私は部屋を出た。


「あら、つかさは?」
お母さんが当たり前のことを聞く。
「え、えっと今日、疲れちゃったらしくてさ、今寝てるわ」
「そう、じゃあ後で持っていってちょうだいね」
「はーい」
「そう言ってかがみが食べるんじゃないの~?」
まつり姉さんが言わなくても良いことをいちいち言ってくる。
「そ、そんなわけないでしょ!」
「でも、つかさは大丈夫?ただ遊び疲れただけなら良いけど…」
いのり姉さんが心配そうに答える。
さすが長女というか、まつり姉さんも少しはこういう一面を見せてほしい。
「うーん、大丈夫と思うわよ。今日は市内をいろいろ回ったからいつもより疲れているのよ」
「そう…」
少し腑に落ちないような顔で答えるいのり姉さん。
姉妹に嘘をつくのはちょっと苦しいけど、余計な心配はかけられない。
「じゃあご飯にしましょうか。かがみ、後でよろしくね」
「う、うん」
私は力なくうなずいた。






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最終更新:2007年12月30日 00:50
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