吊り橋 -9-

「後で持っていってね」とお母さんに頼まれたおにぎりを持ちながら、いったん自分の部屋に戻ってきた。
その時、つかさの部屋の前を通ったけど、やけに静かだった。その静かさがちょっと怖かった。
お菓子を食べたり、ラノベを読んだりして少し時間を潰した後、「そろそろ落ち着いたかな」と思い、つかさの部屋に行くことにした。

コンコン
乾いた音が響いた。
「はーい」
結構元気のある返事がした。
帰ってきた時よりは幾分マシになったようね。
「つかさー。大丈夫?」
「うん、結構落ち着いたよ」
「そう、なら良かったわ。そうそう、お母さんがおにぎりを作ったんだけど、食欲ある?」
「あ、おにぎり?食べる食べるー。じゃあ、ドアの前に置いといてー」
「え?何で?……つかさ、入るわよ」
「あ、待って……」
私はお構いなしにドアノブを捻った。

ガチャガチャ


鍵がかかっている。

「つかさ?どうしたの?何で鍵かけてるの?」
「あ…えーと…今、気分転換に部屋の模様替えしてて…部屋が散らかってるからあまり見せたくないんだ…だからお 姉 ち ゃ ん、おにぎりは置いといて」
何故か、最後につかさが言った「お姉ちゃん」という言葉がすごく怖かった。
それはまるでつかさの言葉じゃないような…。

コンコン

いきなりノックの音が聞こえて私はビクっと体を震わせた。
「どうしたの?お姉ちゃん、もう部屋に戻っちゃったの?」
いつも通りのつかさの声だった。

「あ、いやー…何でもないわ、じゃあ、ここにおにぎり置いとくわね。お皿は自分で片づけなさいよ」
「うん、ありがとうお姉ちゃん」


つかさの部屋からはゴソゴソと音が聞こえた。
どうやら本当に模様替えをしているみたいだ。全く…今何時と思ってるのかしら。
ま、いいか。明日は休みだし、つかさのさせたいようにさせるか。
部屋に戻り、バタンとドアを閉めた。
その音で何故かさっきのつかさのあの声が思い出された…アレはなんだったのかしら…今まで聞いたこともない、ぞっとする声だった…。
つかさじゃなく別の「何か」が言ったような……。

少し考えて、私はフッと笑った。
気のせいよね。最近、ホラー小説ばかり読んでたから、そんなことばっかり考えちゃってるのかもしれない。
つかさがあんな声を出すわけないしね。

私は自分で結論を出し、読みかけだったラノベを再び読み始めることにした。

 

次の日。
昨日の疲れからか、私はいつもより少しだけ遅く起きた。
いつもなら低い位置にある太陽も、今日ばかりは私と部屋を高々と見下ろしていた。
つかさは元気になったかしら。そう思い、私はつかさの部屋に向かった。

……あら?
つかさの部屋のドアの前には、私が昨日置いたおにぎりが残っている。
置いた時と何ら変わっていない。強いて言うなら、私が置いた位置より少し左にずれていることぐらいだ。
つかさのやつ、食べなかったのか。いや…これは手もつけていない。食べようとも思わなかったということか。

少し不安がよぎったが、つかさの顔を見れば大丈夫。
そう思ってドアをノックした。

コンコン

昨日と同じ、乾いた音がした。

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最終更新:2007年12月30日 00:52
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