「……それで?」
俺は思わず聞き返した。
無理もないぜ、なんせノックした場面から話すのをためらいだしたからな。
かがみは言おうかどうしようか迷っているようだった。
「かがみ…」
「かがみさん…」
2人もおもわず声をかける。
ようやくかがみが口を開いた。
「…いなかったの」
「いなかった?」
「つかさが部屋にいなかったの…ベッドにも寝ていた様子はなくて…最初は先に起きていると思ったけど、家族は誰もつかさを見ていないって…もちろん、みんなで探したわよ。ここだけじゃなく、神社の境内とか、後はつかさの行きそうなお店とか。でも、見つからないの…」
そこまで言うと、かがみは口を閉じ、その大きな瞳に涙を溜めていた。
「うっ…うっ…」
「かがみさん…」
高良さんはかがみの背中に右手を回し、左手に持ったハンカチをかがみに渡した。
「あ…みゆき…ありがと…ごめんね」
「いえ…」
高良さんの優しさに感銘を受けながら俺は考えることにした。
つかさが行方不明か…。
かがみの話からすると、つかさの家出ってところか…だが、俺の知る限りで、つかさがここを出るような理由はない。
じゃあ、誘拐か?
しかし、人の家にあがりこんでまで誘拐というのは考えにくい。一体なぜつかさはいなくなったのか…。
「探そう」
いきなり泉が口を開いた。
「え?」
ようやく落ち着いたかがみがキョトンとした顔で泉を見る。
「だから、つかさを探すんだよ。私達の手で」
「でも…どうやって?私達でもめぼしいところは全部回ったのよ。それに今日帰ってこなかったら警察に届けるつもりだし…みんなの手を煩わせるわけには…」
「何言ってるんだよ。友達を探すのは当たり前じゃん。つかさが誰にも黙っていなくなるなんて、よっぽどのことだよ」
「でも…」
「泉の言うとおりだぜ、かがみ」
「キョン君…」
「そうですよ、かがみさん。それでこそ、友達です。私達も喜んで協力いたしますよ」
「みゆき…みんな、みんなありがとね」
かがみがまた少し泣き出す。しかし、今度の涙は負の涙ではなかった。
「よし、それじゃ決まりだ。かがみ、まずは状況を整理してみよう」
「…そうね。なんでつかさがいなくなったか、しっかり考えなくちゃ」
「なかなか面白くなってきたね。かがみんもやる気だし」
「なっ…あんたね、真面目に考えなさいよ!」
「冗談だよ~。でもかがみが元気になって良かったよ」
「えっ…あんた…」
俺は少し笑った。
高良さんも微笑んでいる。
「おいおい、話がずれてるぞ。じゃあ始めようか。かがみ、ペンと紙を貸してくれないか?」
「良いわよ」
そう言って、かがみはノートとペンを用意し始めた。
その瞳にはもはや先ほどの暗さはない。
決意を新たに自信をつけていた明るい瞳だった。
最終更新:2007年12月30日 00:52