吊り橋 -14-

私達はキョン君が待つ部屋に戻ることにした。
先ほどの手がかりを持って。
ドアを開けると、そこにはなんと朝比奈さん、有希、古泉君がいた。
古泉君は「おじゃましてます」と首を下げ、朝比奈さんは微笑みながら会釈、有希は……相変わらずのノーリアクションだった。
「おや、みんなどうしたんだい?」
私がするべき質問をこなたが行う。
「ああ、俺が呼んだんだ。みんなつかさのことが心配らしくてな」
キョン君が答える。
「そうなの…みんなありがとう」
今度はしっかりと私が答えた。
「あれぇ?かがみ泣いているの?」
こなたのその言葉に私は自分が涙を浮かべていることに気づいた。
「な、泣いてなんかいないわよ!目にゴミが入っただけなんだから!あ、そういえばみんなにお茶でも出さないとね!ちょっと待ってて!」
必死に言い訳を取り繕って私は部屋を出た。

顔が熱い。きっと真っ赤っかになっているんだろう。
なんていう失態だ。私はひたすら後悔しながら台所へ向かった。


台所で、お湯を沸かしながらお茶うけを探していると、朝比奈さんがやってきた。
「あのぉ、何か手伝いましょうか?」
「あ、じゃあ、お茶を淹れてくれないかしら?私、実は苦手で」
「分かりました」
そう言うと、朝比奈さんは急須を食器棚から急須を取り出す。

コポコポ…。
お茶の音を聞きながら、私は戸棚を探る。
「おっ」
見つけたのはお気に入りのせんべいだ。これで良いだろう。
ちょうど良いお皿がないか探していると、朝比奈さんが話しかけてきた。
「……かがみさん」
「ん?何?」
「ええと…今言うべきか悩んでたんですけど…なかなか言う機会がないので…」
朝比奈さんは改まって、そして歯切れが悪そうに言う。
「何よ?何か言いたいことがあるならはっきりと言ってほしいわ」
「あ、そ、そうですね。実は…私はこの世界の人間ではありません。…もっと未来から来ました」

……んん?私の耳はどうかしたのだろうか?この人はいきなり何を言い出したのか?
「いきなりで信じられないかもしれないけど、私はあなたたちでいう『未来人』なんです」
「ちょ、ちょっと待って。朝比奈さんは…未来人?」
「はい。ある目的があって、この時代に来ました」
何なんだ?本当に何なんだ?私の頭は混乱する。と、その時

ガチャ

有希が入ってきた。
「有希?」
「な、長門さん…!」
有希は私を…ではなく、朝比奈さんを氷のような目で見ていた。
朝比奈さんは私と有希を交互に見ていたが、しばらくして
「あ、あの、ごめんなさい。い、今のは忘れてください。あ、お茶、持っていきますね」
と慌てて、お茶とせんべいが乗ったお盆を持っていった。
私がポカンとしていると、有希が右手を私に向けだした。
何しているの?、と、問おうとした瞬間、有希の口が、目にも止まらない速さで動いた。
ふっと、目の前が真っ白になった。

どれくらいそうしていたのか…気づくと、目の前にドアがあった。
「え?あれ?いつの間に?私、台所にいたんじゃ…?」
周りを見ると、どうやら私の部屋の前らしかった。
私、台所にいて…朝比奈さんがお茶を持っていって…有希が来て…。
駄目だ。その後に何かあったような気がするのに、何も思い出せない。
『何か』あって、その後は…そうか、有希を先に行かせて、私はトイレに行ったんだ。
だったら何で、トイレからここまで来た記憶がないのかしら。
少し不思議だったけど、今はつかさのことが大事だ。

私は目の前のドアを開けた。





作品の感想はこちらにどうぞ

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2008年01月25日 18:32
ツールボックス

下から選んでください:

新しいページを作成する
ヘルプ / FAQ もご覧ください。