七誌◆7SHIicilOU氏による作品です。
真珠のようだ、と思った
いつもより五分家を出るのが早いだけでこうも変わるものかと感嘆しつつ
俺は早起きは三文の徳という言葉を反芻する
雨上がりの登校道で、いつもの坂を上っていてそれを見つけた
木々の間にあるのは主不在の小さな家
葉と葉を繋ぐように張り巡らされた粘着質の糸は複数の水滴をその身にぶら下げていた
木漏れ日がその水滴をキラキラと反射させてまるで宝石だと少々の感銘を受けていると
「先輩、なにを見ているんですか?」
透き通るような、という比喩がしっくりくる声がした、それは頭の中で誰か検索をかけるまでもない
「みなみ、これを見てみろ」
クモの巣を指差して振り向き様に声をかける
みなみはキョトンとした表情を浮かべていたもののそれに従い顔を覗かせてきた
薄緑の短い髪がフワッと小さく揺れて、シャンプーかなにか柑橘系の香りがした
「綺麗ですね」
みなみは短く言葉を紡ぐ、言葉も紡ぐものそして目の前にあるこの宝石のような輝きもくもが紡いだもの
こういった言葉遊びが出来るのは日本人に生まれた特権といえるのだろうか
俺は無言でみなみに同意する、もう既にいつもより早く出た分の時間的貯金は使い果たしているのだが
毛頭焦る気持ちにはならないのはなぜだろうか?
はらり、と風によって落ちた一枚の葉がみなみの頭にそっと着地する
朝露で湿った深緑の葉をそっと摘み上げると、ひんやりした感触を指先に感じる
ようやく気付いたみなみが顔を上げ、俺が摘んでいる葉を見て状況を察する
「すみません」
ぎこちなく笑うみなみの顔は、ハルヒやこなたにはない別の種類の笑顔で
俺は不覚にもそれに見とれてた
「先輩?」
「いや……なんでもない、そろそろ行こうか」
「はい」
微風に揺れて煌く糸と水滴
それは真珠のネックレスのようで
刹那の瞬間に点在する色々な宝石を見たい
きっとこれはハルヒが世界の不思議を見つけたいと思うのと似通っていて
なにか、わかった気がした
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最終更新:2008年01月25日 14:15