「ちっさい偶像」4
痛みによく耐えがんばった、感動した
俺はそう自分に対していったやりたいね
なんてったってハルヒの化け物キックを思いっきり食らってなお
その日の残りの授業をきちんと受けて
その上今日も休むことなく、学校に向っているというのだ
多少自画自賛したところで罰は当たるまいて
しかし何だろうな、あのちっさい有名人に出会ってから
やけに俺の体の負担が増えた気がする
肉体的にも精神的にも、な
しかも、今日に至ってはまだ学校についていないのに
と、俺は横にいるピンクの目立つ髪の毛の少女に目を向ける
学校は山の上にあるから、どこからどんな交通手段であろうと
必ずここは通らなくてはいけないため、こういう事態になることは
あらかじめわかっていたものの、まだ初対面から三日目だ
いくらなんでも展開が速すぎてついていけない
一体なにがどうなってこうなったのか、誰か俺に説明してくれ
「おいキョン、ちゃんとあたしの話聞いてんのかよ?」
俺が思考している間、延々と話し続けて
スパーン、と小気味いい音が鳴り
ついでキーン、と耳鳴りがした
俺は耳を押さえながら痛みと騒音をシャットアウトしようとしたが
さらに追い討ちをかけるように俺に大音量の罵声が浴びせられる
曰く馬鹿野郎、単純であるが故に破壊力は折り紙付である
続けざまに不意打ちをくらった俺は傍から見ればアホのような顔をしていたに違いない
しばらくして、耳鳴りがおさまりはしないまでも小さくなったため
ようやく身を起こして振り向くと、ちっこい後輩がふんぞり返って立っていた
「あきらか、一体どうした、俺が何をした?」
俺がその小学生とも間違えかねない体躯に向かって問いかけると
彼女は腰に当てていた手を力一杯握り締めて
俺の腹に見事と言ってやりたいほどのストレートパンチを叩き込んできた
「どうしたじゃねーだろ!今日は仕事も無くて久しぶりに一日学校にいられるからって
一緒に昼休みに弁当食べるって約束したじゃんかよ!」
そうだった、久方ぶりの丸一日のオフだということでずいぶん前に約束をした覚えがある
一体全体なんで忘れていたのか甚だ疑問ではあるものの
今は忘却の理由を究明よりも優先すべきものがある
「すまなかった、いやこのところ慌しくてな」
すなわち自己弁護と謝罪、それと機嫌直しにあたらしく約束を取り付けることか
俺は一体どこに行こうか、などと一人考えていたのだが
今までと違い、今回はそれよりもさらにすることがあったのだった
「私が一人で浮かれて馬鹿みたいじゃねーか!キョンの馬鹿!」
そういって俺を罵倒するあきらにはいつもの覇気が無く感じて
よくよく見てみると目には涙を浮かべて俺を見上げるように睨んでいた
俺はここにきてようやく、自分がどれだけのミスを犯したかを知った
あきらはまだ16才であるもののそれなりに多忙のアイドルだったりする
なのにこうしてたまの休みは俺に会いに来てくれてる
いままで、適当にあしらっていた俺だがなるほどハルヒにドンくさいだの鈍いだの言われても
これは仕方が無い、まったくその通りだ
俺はあきらにそっと手を伸ばすと、一瞬驚いたように目を瞑ったが抵抗はされなかった
細い桃色の髪の毛を手のひらで感じつつ、俺はもう一度心を込めて謝ってみる
「すまん、俺が全部悪かった」
「…なら、許してもいいけど条件がある」
そういってあきらは服の袖でごしごしと目を擦って俺に向かって指を立てながら"条件"を言った
突然のことで多少驚いたものの、俺はその条件を当然承諾した
言った後で照れたようにうつむいた彼女の珍しい表情を目に焼き付けながら
一応まわりを確認する、あまり見られたくないものだからな
どこにも立ち聞きしている連中がいないのをすばやく確認した俺は
そっと目を瞑ったあきらに顔を近づける
「なんでおでこなんだよ!」
「ちゃんとしたのはまた今度な」
「約束だぞ!」
「わかったよ」