吊り橋 -16-

何がなんだか分からないまま、私はこなたに手を引っ張られて神社に着いた。
鳥居前には古泉君が呼んだというタクシーが着いていた。
タクシーってよりハイヤーね…。
私はそんな感想を抱きながらやはりこなたによって乗せられていった。
運転手は珍しく若い女の人だった。
助手席に座っていたのはキョン君。運転手の人と二、三言交わしている。面識があるようだ。
私は後部座席の右側。続いてこなた、みゆきと来る。3人は少し窮屈だが仕方がない。
「この場所まで」
キョン君が運転手にそう告げ、タクシー、もといハイヤーは出発した。
「ねぇこなた、事情を説明してくれない?私達、今どこに向かってるの?」
「えっとね…キョンキョン、地図貸して」
キョン君がこなたに紙を渡す。
「ここ」
と言ってこなたが指さしたのは…どこだここ?
「どこよここ?」
「しょうがないなぁ。一から教えるとね…」
こなたによる、この地図(らしい)の解説とつかさの行動についての説明がなされた。
それによると、つかさは私のラノベを読んだらしいこと、そのラノベにあった呪いを信じたらしいこと、そして呪いをかけようとしたらしいこと…。
ショックだった。まさか、あのつかさがそんなことを考えていて、そして実行しているなんて…。
でも、そうだとすると、昨日の不可解な言動も頷ける。
こんなことを考えていたから、つかさはおかしかったんだ。
双子なのに、姉なのに気づいてやれなかった自分が腹立たしい。
私は自責の念でいっぱいだった。

ハイヤーは結構早く止まった。
キョン君の
「俺が払うから先に出とってくれ」
という言葉に従って私はハイヤーを出る。
いつもの私なら「私も払うわ」とか言って財布を取り出すのだが、そんな気分どころではなかった。
着いたのは近所の空き地だった。
私の家から近くもなく、かといって遠くもない。
少々しんどいが、歩いてだって行ける距離だ。
ここにつかさの手がかりが…。
私は思わず身構える。敵とかいないのに。
「おいおい、身構えて何やってるんだ」
キョン君に言われて私は気づく。
「あ、ああ…何でもないわ…」
こなた、ニヤニヤ笑うな。

私達は散り散りになって手がかりを探した。
もし、つかさがあの呪いを実践したなら写真を燃やして埋めた跡があるはず。
私は目を皿のようにして地面を見る。
空き地はそんなに広くないので、数分もしない内に跡が見つかった。発見者はこなただ。
「土の色が少し違うし、柔らかいな…。ここで間違いないな」
そうキョン君が断言する。
「じゃあ掘り返してみようか」
こなたが提案する。
呪いを崩す。そんなことして良いのかは分からなかったけど、誰も反対しなかった。
有希が持ってきたスコップ―何で持ってたのかしら―で色の違う土を掘る。
数回掘り返すと、何かが出てきた。
黒く縮れた薄い物……燃えた写真だった。
一部は燃え残っている。その部分には……ハルヒの顔があった。
みんなは何も言わない。
他にも穴からはライターも出てきた。この写真を燃やすのに使ったのだろう。
「決まりだな…」
キョン君が独り言のように呟いた。
「よし、この近くに住む人達につかさを見なかったか聞くんだ。1時間したらまたココに集合だ」
キョン君はそう提案し、私達は力強く頷いた。

1時間後。
全員、元の空き地に戻ってきた。
収穫は……ゼロ。この近辺に住む人は誰もつかさを見ていなかった。
これで話はふりだしに戻ってしまった。
一体どこに行ったの、つかさ――。
悲しみで胸が潰れそうになった、その時――。
ピリリリリリリ
みんなが私を見る。
何っ?と思ったら、私のポケットから音がする。電話だった。
「あっ…みんなちょっとごめん」
私はそう言って電話を取る。もちろん、心は冷静にしてだ。
『かがみ?』
「あ、お母さん。どうしたの?」
『……帰ってきたわよ』
声が涙ぐんでいる。
「え?」
『つかさが帰ってきたの』
一瞬、何を言っているのか分からなかった。
「………本当に!?」
『ええ、早く帰ってらっしゃい。お友達にもお礼を言わないと』
「う、うん!わかった!じゃあ!」
ピッ
私はみんなの方を振り向いた。
顔が笑顔と涙でいっぱいになりがら
「つかさが帰ってきたって!」
そう…言った。平穏が戻ったと信じて。






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最終更新:2008年01月28日 20:37
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