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族未結

七誌◆7SHIiciIou氏の作品です。

自宅玄関前

ほう、と息がいつも以上に長い間滞空している
単純に考えてそれだけ寒いということなのだろうか?
いやまて、北極などでは息が白くならないと聞いたことがある
では気温はこの現象に大した影響を及ぼしてるとは言えないのか?
だがしかし少なくとも体感的には今日は非常に寒く、そして息が凍った
「…結論、俺には学がない」
まったくもって情けない結果だし、そもそも思考放棄するのが早すぎる気もしたが
そろそろ予定の時間なのでくだらない思考に脳の容量を割くわけにはいかんのでな
「と、噂をすれば…か?」
俺が腕時計から目を離して正面を向いたのとほぼ同時にとある人物が瞳に映る
「キョン君、おはよう」
遠くから手を振りあやのがあるいてきた
「おはよう、今日も寒いな」
言いながらふと視線をしたにやる
おとといと違うサンダルだった
俺の視線に気付いたのかどうなのか、あやのは小さめのバックを持ちながらニコニコしている
「…とりあえず、入るか?」

今日も今日とて家には(母と妹が悪い方向に気を利かしたらしく)俺しかいなかったので
当然暖房なんて効いてなく、俺とあやのはちょいと早足で部屋に入る
パタンと扉を閉めて部屋に入り一息ついてから
もはや定例になりつつあるが、こたつにもぐった
「あっ、そうだこれ泉ちゃんから」
あやのは言ってバックからケースに入ったCDを渡してきた
それは何の印刷もされてない素のCD-Rでマジックで"あれ"と書いてあった
「それ中身はなんなの? 私よくパソコンのこと知らないし」
「いや、ちょっとこの間聞いていいなと思った音楽を入れてもらってさ」
……あの野郎、よりにもよってあやのに渡させるとは相も変わらず悪戯好きの奴だ
まだあのときのことを根に持ってるのだろうか?
こなたは結構その手のことには強いと思ってたんだが…
「怪しいけどいいわ、キョン君ちょっとしたかりていい?」
した、ってのが台所であることは察しがついたので俺は快く許可した

・・・やっぱり怪しまれてやんの

さて俺は紅茶はあまり飲む方じゃない、基本的には珈琲ばかりを好んで飲んでいる
だからか新しくいい葉を買ってみたとあやのが入れてくれたこの紅茶も
「なるほど、美味いな」
口にした程には違いがわかっていなかったりする
確かにいつもより香りが上がってくるような気がするが―
「ほんとにわかってる?」
口調は疑問文だが顔はいつもの笑顔だ、別に疑ってるわけじゃなく
俺が特にわからず言ったのを完全に理解してうえで意地悪に聞いてるわけだ
「うん、そうだな、よくわからん」
そして俺もそれが完璧に理解できてるからすぐに自白する
あやのはそれを受けてくすくすといつも通りの笑いを浮かべる
俺は誤魔化すようにマグカップを口元まで運び、音を立てて啜る
「ねぇキョン君、ちょっと動かないで」
と先ほどまでクスクス笑っていたあやのが急に真剣な顔をして顔を近づけてくる
俺はコップを置いてジッとしていると
「ぃてっ!」
あごに手を伸ばしてひげを抜かれた
「ダメだよ、ちゃんと剃らないと」
「いや、髭剃りをこのあいだ捨てて新しいのを出してないんだ」
いきなりの痛みにあごを擦りながら弁解する
あやのは座ったまま腰に手を当てて頬を膨らましている
俺はなんとなく悪戯心を起こしてその頬を指でギュッと押す
「もう! キョン君!」
お返しと俺の頬を両手で伸ばすあやの
人間の頬とはここまで伸びるとは知らなかったぜ
あやのはうめく俺を見て手を離した後、べっと舌を出した
「あっ、そういえば泉ちゃんに入れてもらった音楽ってどんな曲?」
ここで来るとは思わなかったが、二回目の追求があることは想定済みさ
「いやこなたがみてるアニメの曲らしいんだが、普通にいい曲でさ」
あやのは、そうなんだ~、といって頷いてこたつにおいてあるみかんに手を伸ばした
産地は愛媛だそうだ
まだダンボール箱いっぱいにあるのでどんどん食べてもらいたい
俺はそんなあやのを眺めてまたコップに入った紅茶を音は立てずに啜った

「またね、キョン君」
玄関外の道路でこっちを向いて手を振るあやの
今日も送ってくつもりだったんだが、今日はいいと言われてしまった
「あぁ、また明日学校でな」
俺が言うと同時に離れていく背中、なぜか呼び止めなくちゃいけない気がして

「あやの! 来週にでもこの前行ってた水族館行こうぜ!」

叫んでみた、既にそれなりの距離が開いていたあやのに言った台詞は
当然関係ない人にも届き、多少気まずい思いをしたが構わない
あやのは突然かけられた言葉に戸惑っていたが、またクスクスと笑ってから
「キョン君!」
「なんだ!?」
「やっぱり送ってって!」
最高な気分だ、これ以上ない
俺は速攻で靴を履いて、鍵を閉めてあやのを追いかける
さっきまで感じてた寒さは高揚感で全部飛んでいってしまった気がする
「なぁあやの」
「今度は何?」
「紅茶、美味かったよ また入れてくれるか?」
いつもの、さっきと同じ、手を口に当ててクスクス笑ってあやのは
「ず~っと、死ぬまでいれてあげるわ」
「おいおいおい、プロポーズは男からだろう?」
「じゃあ今のなし、キョン君が言ってよ」
足を止めてジッと俺を見つめる瞳
それに一抹の不安も、一片の期待も、一瞬の疑惑もなかった
あるのは絶対的な信頼、信用
俺がこれから言うことをあたりまえの様に確信してる
俺がそれ以外のことばを言うわけが無いと理解してる

「愛してるよあやの、一生一緒にいよう」
「ありがとうキョン君、私も愛してる」

雨と雪がちらちらとぱらぱらと降り始め
俺達はだが、しばらくそこにたたずんでいた

第三者に気付くはずもなく、佇んでいた

 

 

次の日、俺は、学校で、大変な、目に、あった


~~~

「いんや~、キョンキョンがこんなところでプロポーズかますとは…」
私は公園の樹木に身をよせてそっと呟く
こんなときは自分の身体の小ささがありがたい―
「わけないじゃん…」
しっかし、困ったね
こんなんじゃしばらく動けないよ、寒いのは苦手なんだよわたしゃ
とりあえず手に持ってる買い物袋を足元にそっと下ろして携帯を取り出す
「まぁなにはともあれ激写激写…」
多少暗くなってはきてるものの、取れない程じゃないからね
もちろんこんなこともあろうかとシャッター音は出ないようにしてあるよ
その辺抜かりはないのさ、こなたさん

さて、コンビニで印刷して学校で撒くべさ

…そういや、CDで変な空気になったかな?
ふふんいい気味だよね


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最終更新:2008年02月10日 07:44
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