七誌◆7SHIicilOU氏の作品です。
初めてのキス、俗な言い方を許されるならファーストキス
そんなものに幻想を持つほどに俺はロマンチストを気取っちゃいないし
そもそもロマンとリアルの境界があやふやで曖昧で有耶無耶な生活を
現在進行形で送ってる俺にとっていか程の意味があるのか知らないが
…かといってこうもたやすく"それ"が終わってしまうと
やはり呆気なさが先にたつ
「いまの、一応ファーストキスになるんですよ、一応」
俺は目の前の年上女性に一応を強調して抗議する
―あぁ念のために補足しておくが、俺はあのときのあれはカウントしてない―
さて、俺は念のため脳内整理を始める
場所はちょいとファンシーな感じの洋風な一部屋
間取りは広めの八畳ってところかね?
俺はキャスター付きの椅子に腰掛けて
正面には座ってる俺と同じ高さぐらいの身長の女性でここの持ち主
彼女は俺の台詞を聞いて驚いたように目を大きくさせて
グイッと顔を近づけて質問、というより詰問する
「嘘だぁ? キョン君絶対モテるもん、なんかいもしちゃってるんでしょ?」
それとも年上の女性用の鉄板トーク?
などと非常に失礼極まれりな台詞をのたまう彼女は本当に俺より年上なのだろうかと疑る
だがしかし俺はそんな風に思われてたのか…、少し、結構、相当ショックだ
まるで女なら誰でもいいスケコマシの軽薄なやろうじゃないか
それは谷口の役割であって、俺は真摯に一人の女性を愛すのですよ
「だってだって、かがみとかつかさとか他にも居るでしょう相手」
だが俺の弁解虚しく彼女はいまだに疑わしげな感じで言葉を重ねる
なぜそうも執拗に俺に疑念を持つのだろうか…
もしかしたら変な情報をこなたやなんかが漏出させてるんじゃないだろうか
十二分に考えられる可能性なので、非常に背筋が寒くなる
下手すると目の前の彼女以外にもそんな目で見られてるかも知れないのか?
想像するだけでぞっとしない話だった
まぁとにかくいまは彼女の誤解を解くところから始めよう
「本当ですよ、少なくとも気軽にキスをするような男じゃありません」
「え、怒った? そんな怒らないでよ、だってだって心配だったんだもん
結構私捨て身でキョン君にアタックして、簡単にオーケーされたし」
なるほど、大体のことは理解できた、少なくとも変な噂が流れてるわけじゃないんだな
ほっと胸をなでおろす反面、やっぱり若干胸に引っ掛かりが残る
「ごめんなさい! 許して…くれないよね? キョン君のこと信じれなかった訳だし」
「じゃあ目を瞑ってください」
不安そうに上目遣いで俺を見つめる彼女に強く出られるはずも無く
仕方なしに俺はなんの脈絡もなしに言う
え?、と俺の言葉の意味を租借するよりも早くお返しとキスをする
ぱちくりと目を瞬かせてからトロンと目を閉じる彼女を間近で眺めつつ
数秒後に唇を離す、よくある表現だが一瞬銀のような透明の橋が架かり
そしてぷつりと切れる
「これで手打ち、よろしくお願いしますね、まつりさん」
作品の感想はこちらにどうぞ
最終更新:2008年02月12日 15:49