七誌◆7SHIicilOU氏の作品です。
夜、明日の予定をすっかり忘れていた事
さっきみなみちゃんに言われてやっと思い出して
「お姉ちゃん、エプロン貸して」
コンコン、こなたお姉ちゃんの部屋を訪ねる
ちょっと遅い時間だけどもう半年ぐらい一緒に住んでいる私は
姉ちゃんはこんな時間に寝てることは無いのをすごく知っている
「ん? ゆーちゃんどしたのいきなり」
キャスター付の椅子をくるりと回してどてらを着込んだお姉ちゃんが振り向く
「えっと、明日調理実習あるんだけど…お姉ちゃんの位しかサイズ合うのないから」
小学生にも間違われる小さい自分の身体に合う市販のエプロンなんて子供用しかないし
さすがに高校生になってそんなのをつけるのも抵抗があるから
お姉ちゃんが自分で作ったデニム生地のエプロンを借りようと思ったの
「あぁ、ちょっと待っててね」
お姉ちゃんは椅子から立ち上がると箪笥からエプロンを取り出して私に渡してくれた
「ありがとうお姉ちゃん、明日も学校だから早めに寝たほうがいいよ?」
「ん~これが終わったら寝るよ、ゆーちゃんおやすみ」
「おやすみなさい、こなたお姉ちゃん」
私は両手でエプロンを抱えるようにして部屋に戻った
トントントン、包丁が野菜を切ってまな板にぶつかり音を立てる
当然包丁が勝手に動くはずが無いからそれをもって野菜を切ってる人がいる
「わぁー、みなみちゃん料理も上手なんだ」
みなみちゃんは私の目の前で、可愛いエプロンをつけて包丁で野菜を千切りにする
私自身が料理上手いわけじゃないので、よくわからないんだけど
それでもこなたお姉ちゃんが料理してるのを見てるので
上手なのだけは理解できた、少なくとも私にはとてもできない
「…そんなことない、ゆたかだって練習すればできる」
「じゃあみなみちゃんに教えて欲しいな」
みなみちゃんは私がそういうと包丁を置いて、そっと手招きした
私はそれに従ってみなみちゃんに近づく
「包丁はこうもって、野菜を押さえる手はこう…」
包丁をもった私にみなみちゃんは
左手の指の関節を全部曲げて、グーになるちょっと手前みたいな形をみせる
その手の位置が顔のちょっと前辺りだったのも手伝って、それはまるで…
「ねぇ、みなみちゃん、にゃーって言ってくれない?」
「…え、うん…………にゃー」
「みなみちゃん可愛い~」
少しだけお姉ちゃんのいう『萌え』って感情がわかった気がした
自分のやった行動に更に照れて真っ赤になってるみなみちゃんは本当に可愛かった
「いたっ」
みなみちゃんの方に気をとられて、なぜか包丁を持ってるほうの指を切ってしまった
「っ! ゆたか大丈夫!?」
ちょっとした切り傷だったけど、血が滲んでるのを見て
一気に我に返ったみなみちゃんが慌てた様に私の手をとる
「大丈夫だよみなみちゃん、小さな傷だからほっとけば治るよ」
みなみちゃんが慌ててるのをみて、痛みよりも嬉しさのほうがでる私
えへへと笑いながら、大丈夫だよと繰り返す
「…ちょっとごめんね」
パクッと私の手を引いてみなみちゃんが私の血が滲む指を口に含む
みなみちゃんもやっぱり恥ずかしいのか目をつぶっていて、ほっぺが少し紅い
ペロッとみなみちゃんの舌が私の指を舐める
「ひゃうっ!」
「ごめん、痛かった?」
「ううん、びっくりしただけよみなみちゃん」
手を振って不安そうなみなみちゃんを安心させるために言う
見るともう傷から血は止まっていた、唾液には治癒作用があるんだと聞いたことがあるけど
なんとなくそれだけじゃなくて、みなみちゃんがやってくれたのが私にはすごく関係ありそうな気がした
「ありがとうみなみちゃん、もう痛くないよ」
「よかった、じゃあ続きをしようか」
「うん!」
「いたっ! また切っちゃったよ~」
「ゆたか、大丈夫!?」
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最終更新:2008年02月16日 12:59