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『初め(まし)て』

七誌◆7SHIicilOU氏の作品です。


初めて、初めて…か
そういえば私が何歳の頃だったろうか
小学校でたまたまお友達になった女の子
子供の集まりの小学校の中で、さらに特出して子供っぽいその女の子と友達になった
「みよこちゃんて言うんだ、じゃあ……ん~ミヨキチだねっ!」
いつだったか掃除の班のときに私がその子な間違ったやり方を直してあげるときに
彼女は私に満面の笑みで言った
「ミヨキチ…うん、ありがとう――ちゃん」
その時つけられた名前は今でもずっと続いている大事な名前になってる
今だって……
「おいミヨキチ!」
「なんでしょうか?」
「これ、お前の日記か?」
「昔から、なにかあるごとにつけてた日記です」
――


――

「お、ミヨキチ」
その女の子のお兄さん、キョンさんも私のことはミヨキチって呼ぶ
「いきなり呼び出したりしてどうしたんだ?」
いつもと変わらない柔和な笑み、大人っぽい服装に態度
私も同年代の子だけじゃなくお兄さんのお友達とか、みんなが大人っぽいと言うけれど
お兄さんの"それ"とは違う種類なんだろう
普通に見えるのに、でも同じ場所に立てないで上にいるような神秘的な感じをさせる人だった
今日という日がどんな日か知らない人はきっと居ない
そんな日に年下とはいえ女の子から呼び出されても
こうも平然としているお兄さんはやぱりずれてる気がする


『おいおい、俺のことそんな風に思ってたのか?』
『今だってたまに感じるとき、あるんですよ?』


「これ! チョコレート、手作りでへたっぴかもしれないけど食べてください!」
それは私の始めてのチョコレートで、初めての手作りのお菓子で、初めての本命だった
お兄さんは本当に想定外のようにびっくりしてから
やわらかい笑みで私の頭をくしゃっとなでて受け取ってくれた、でも告白なんてしなかった
年の差だとか以前にお兄さんの周りにライバルが多すぎたのが原因だ
きっとたまに会話に出てくる、ヒイラギさんとかコナタさんとかと付き合ってるのかもしれない
だから受け取ってくれるだけで嬉しかった
「ありがとうミヨキチ、すごく嬉しいよ、来月楽しみにしててくれよ?」

 

『あの時は知らなかったけど、この台詞ってチョコくれた人たち全員に言ってたって聞いたんですよね』
『そ、そんなことないぞ、誰だ? こなたからでも聞いたのか?』
『教えません』

 

 

私が中学に入ってしばらくした頃も私はお兄さんが好きだった
その友達とは同じ中学に入ったから
たまに遊びに行ったり泊まりに行ったりと交流はしてたけど
でも決定的に私は他のライバル達と接触時間が短かった
やっぱり同じ高校に通ってる友達と妹の友達じゃハンデが大きい気がするし
休日だって土曜日には部活で毎日どこか行ってしまうから
…体型じゃコナタさんこといずみさんとかには負けてないと思うんだけどな
お兄さんは美人だとか可愛いとかよく言ってくれるし
"ミヨキチは近い未来絶世の美小女になる"なんてのもよく言われたけど
それは親戚の姪とかに言うような叔父さんレベルの言葉であることもキチンと理解していて
実際にそう本心で思ってるのはわかってても
それ以上の下心とかの他意はまったくなくて、時折自信をなくしそうだった


『おいおいおじさんは無いだろう?』
『じゃあ近所の女の子に声をかけるおじさん』
『かわりが無いように思えるのは俺だけか?』
『ふふっ』
『まぁでも間違いじゃなかったろ、俺の言葉もさ』
『え?』
『俺の目の前には絶世の美少女がいるぜ』
『お上手ですね』

 


私は高校にはお兄さんと同じ高校を選んだ
坂を毎日上るのはちょっと大変だったけど、結構慣れるもんだと思う
お兄さん達がやっていたSOS団はもう形は無くて
文芸部は普通に文芸部になって、普通に活動している
やっぱりキャラクター性がなによりも大事なんだろうか?
それでも話だけはいまだに伝わっていて
どのクラスにもその時代にこの高校に居たかったとうらやむ人がたくさんいる
私もその一人で、そうすればもっと一緒にいられたのにとか
ちょっとだけずれた考え方をしていた気がする
そして入学して一年程度、順調に高校生活を楽しんでいるころ
お兄さんが当時付き合っていた柊かがみさんと別れた話を聞いた
当然聞いたのは妹であるあの友達で、私が席で座っていると
教室に入ったと同時に目をきらきらさせて私に説明を始めたのだった
まぁ私も真剣な面持ちで聞いてたのだからあんまりいえないけど
高校生になっても小学校とあまり変わらずに元気にはしゃぐ彼女は
いつまでも純粋でいて、私には無い魅力があって
同じクラスになってたのもありずっと仲良くしていた
多分、きっと彼女とはずっと切れること無いと思う、ずっと友達でいたい

『これもあってますね』
『ハハハ…』

この時期私はもう既に半分近く諦めてたのだけど
この日を境にまたアタックするようにした、年齢的にももう結婚できるし
なんてちょっと過激な想像を働かせて自分を鼓舞していた
今までと同じじゃ絶対私を選んでもらえないとわかってたし
なによりお兄さんは非常に好意に鈍いのだから私ががんばるしかない
猛烈って程じゃないけど、前からは考えられないほど積極的になった

『結婚て…ずいぶんと早いな』
『でもこれだって今考えれば間違いじゃないですよね?』
『まぁな』

 

「私と付き合ってください」
この台詞が言えたのはそれから一年後
私が17歳、お兄さんが22歳のときだった
適当に理由をつけてお兄さんの休日を私とのデートに割いてもらい
一日中一緒に遊んで、その最後の最後に私から話を切り出したのだ
初めての恋、初めて本命チョコをあげた人にこんなに一途に恋し続けるとは
正直私自身驚きだったけど、でもそれ位好きになってしまったんだろう
Love in Feel、恋は落ちるもの…だっけ?
非常に足は震えて心臓も壊れるかと思ったけど、それでもここで告白してよかった
「ありがとうミヨキチ、よろしく」
味も素っ気も無いけどそれが照れ隠しであることがわかる程度には長い付き合いになっていた
男の人に抱きしめられるのも、キスをするのもこのときが初めてだった


『私の恋愛関係の初めては全部"キョンさん"が相手なんですよね』
『はは、光栄なのかな?』
『痛かったりもありましたけど』
『…それに関しては発言を控えさせていただこうかな』

 

 

私は幸せになりました
高校を卒業し、十八歳と半年
初めての指輪、しかもペアリングを買ってもらい
お兄さんにプロポーズをもらいました
もちろん、これだって初めての経験でしたしなによりも嬉しかった
周りの友達は若いうちに結婚だとかしちゃうと遊べないとか言ってたけど
でもそれ以上に私はお兄さんが好きだったし愛していたんだと思う
高校時代、特に三年の時期はほとんど会うことも出来なかったし
その反動なのか私はずっと一緒にいられるってことにすごく魅力を感じた
友達は若いうちだと別れたりしたらもったいない、とか色々言ってたけど
結婚して一緒に住んでそれくらいで嫌になるほど短くないし
なによりお兄さんを嫌いになることなんかないと思っていた
だから私は二十歳になると同時に籍を入れた
多少早いんじゃないかとも言ってたけれどお父さんとお母さんは快く賛成してくれた
もともと家族ぐるみの付き合いもあったりして、仲が良かったから
それが…去年

 


「思っていた、ってなんか含みがあるな」
キョンさんが横から私の日記を覗き込みながらぽつりと言う
ちょっとした言葉だったんだろうけど、つい笑ってしまう
「じゃあいるに変えましょうか?」
くすくすと笑った後に意地悪く聞いてみると
「いや、俺が実感してればそれで十分」
腕を首から斜めに回して抱きしめてキョンさんはささやく様に言う
それがくすぐったくて身体をよじる
「そういえばミヨキチ、ハガキできたのか?」
「えぇできましたよ」
私は日記を閉じて机の上から二十枚程度のハガキを取る


『このたび私達の間に子供が出来ました』

筆ペンで書いた文字がうえに踊り
下に印刷した私達"三人"の写真が張ってある


『みなさん始めまして、私の名前は――』

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最終更新:2008年02月16日 13:44
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